「魅せてくれたな奥空アヤネェ!!」(両面宿儺感)
ほんとアヤネカッコよかったです。後、今回長いです(約1万2千文字)後一応謝っておきます。便利屋推しはごめん!
『なるほど、事情は理解した。確かにそれは難しい案件だな』
美食研究会を拘束し、人質となっていた愛清フウカを解放したアルプトラオムは、車に詰め込まれていく五人を眺めながらアコと通信で話し合っていた。
『突如現れた先生、とんでもない権限を保有するシャーレ…確かに無視出来るものでは無いな』
『でしょう?例の条約に悪影響を及ぼす可能性があると思い、確保しようと考えたのですが…』
『その先生がいるのはアビドス…よりによってか…』
『はい…一応、ある程度調べはついています。アビドスの自治区は殆ど無くなっているようですが…』
『しかし依然としてアビドス自治区周辺の警護はアビドスのMTが行っている…』
『先生を誘い出して確保すべきでしょうか?』
『やめておいた方がいいと思うぞ。アビドスの自治区では無いとしても、アビドスが関わって来るのは確実だ。便利屋を利用したとて、アビドスとの政治的な問題が起きる可能性がある以上、行動を起こすべきでは無い』
『では、先生は放置するしかないと?』
『それしか無いだろうな。先生は不確定要素だ、情報が少ない現段階では条約にどの様な影響を及ぼすか判断しかねる。しかし、アビドスは違う。あの学園はPCAとの強い繋がりがある。問題を起こしてPCAとゲヘナの関係が悪化する事になれば、それこそ条約への悪影響となる。だろう?」
『…そうですね』
『条約だけでは無い。PCAと何か問題を起こしたなんて事態になれば、万魔殿が何をするか…』
『ああ…あのタヌキ、PCA委員長をかなり気に入っていますからね』
『そういう事だ、先生に関しては巡り合わせが悪かったと思って確保は諦めるべきだな。しかし…』
『しかし…?』
『トリニティが既に接触しているんだ。こちらも先生に対して何かしらのアクションを起こすべきなのは間違い無いな』
『…何をするつもりですか?』
『私が単独でアビドスに行ってみよう。便利屋を追って来た名目なら理由としては十分だろう?ヒナにも万魔殿にもバレにくいだろうしな』
『行ってどうするつもりですか?』
『少し接触するだけだ、ベストな形としては便利屋の捕縛に協力してもらうのが一番だが…まあ、上手く動いてみせるさ』
『…本当に、大丈夫なんですよね?』
『最善を尽くすさ、ま、万が一戦闘になったとしても直ぐに撤退する。ランク9のACに
『…分かりました、ではこの件はあなたに任せますよ。ランク1』
『ああ、悪い結果にはしないさ。行政官殿』
「どういう事よ!?」
「せ、セリカちゃん落ち着いて…」
「落ち着いていられないわよこんなの!」
「…バルテ、今の話は…本当なの?」
『…ああ、アビドスの自治区の所有権は殆どカイザーに移っている。残念だが、全て事実だ』
「ん、私達が返済したお金も、ヘルメット団に流されていたのに…」
対策委員会と先生は、銀行強盗によって得た書類から返済金がヘルメット団に流されていたのを知り、更にバルテからアビドス自治区の所有権についての話も受けていた。
「…私もユメ先輩も知らなかった。きっと私達より前の生徒会が土地を売ったんだろうね」
「そんな…」
対策委員会に暗い雰囲気が流れる。
『しかし、これでハッキリした事がある』
「それは?」
『カイザーは最早借金返済などどうでもいいと思っている。奴等の目的は金ではなくアビドス自治区そのものだ』
「……まさか、砂漠で何かしているのと関係があるんでしょうか?」
『だろうな』
「…これは本格的な調査が必要になってきたね」
『……アビドスの砂漠にいるカイザーの動向を調べてみる。オフェアリスにも監視を頼みたい』
「分かりました!」
『先生、今後の予定について少し話したい事が。よろしいですか?』
「分かった」
「それじゃ、今日は一先ず解散するとしようか」
そうして対策委員会は解散した。
数時間後、ホシノは自室で砂祭りのポスターを眺めながらボーっとしていると、スマホから着信音が鳴り響き、すぐさまスマホを手にとって電話に出る。
「もしもし、バルテ?」
『ホシノ。すまないな、こんな時間に』
「いや、大丈夫……ユメ先輩も一緒?」
『ああ』
『ホシノちゃんやっほ〜!』
「はぁ、先輩…状況分かっているんですか?アビドスは…」
『──大丈夫だよ』
「………」
『あの時は二人だったけど…今は違う。頼りになる後輩たちも居るし、バルテちゃんや先生もいる。私達が力を合わせれば、きっと大丈夫だよ』
「…ま、そうですね」
『では、本題に入るとするか…カイザーに対して調査を入れるが…まあ、奴等の目的は大体予想がつく』
「……古代兵器を探している、だよね」
『それくらいしか無いだろうな。あの砂漠に私と同じような何かがある。そう捉えた方が良いだろう』
『だよね〜…』
『しかし、こうも大胆に、そして長期的に動いているとなれば、何らかの確信があると思った方がいい』
「だろうね…ま、その辺はその内分かるでしょ。確認だけど、コレからの動きは?」
『オフェアリスとオールマインドがカイザーの調査で砂漠に向かう。調査結果次第だが、それまでは待機だな』
「そっか、分かったよ」
『では、今日はここまでにするとしよう。進展があった後、また連絡する。ではな、ホシノ』
「うん、ありがとう。バルテ」
『ホシノちゃん、あんまり無理しちゃダメだよ?』
「分かってます。ユメ先輩も気をつけてくださいね。じゃあまた」
ホシノはそこで通話を切った…
「…さて、と…」
そしてバルテとユメは。通話を切った後に顔を見合わせる。
「取り敢えず、今日はもう休むとしますか」
「そうだね、明日に備えてもう寝よう!」
「ああ、それなんですが、ユメさん。明日、少し用事があるのでPCAの事は任せてもよろしいですか?」
「え、うん、大丈夫だけど…何かあったの?」
「少し、会わなければならない人が居まして…すぐ戻りますから、大丈夫ですよ」
「そっか!じゃあ私帰るね、また明日ー!」
ユメはそう言って委員会室から出て行き、バルテはそれを微笑みながら見送った後にパソコンの画面を見る。
「オールマインド、指定された時間と場所を教えてくれ」
『はい。時間は〜〜時〜〜分。場所は────のビルです』
「ああ、ありがとう。明日の調査は任せたぞ。ステルス機は…」
『既にアビドス自治区に向けて輸送中です……バルテ様、本当に行かれるのですか?』
「ああ、危険は承知だが、今は少しでも情報が欲しい。ある程度の証拠さえ掴めれば
翌日、柴関ラーメンにて…
「それで社長、どうするの?襲撃、続ける?」
「も、勿論よ!引き受けた以上、必ず依頼は遂行するわよ!」
「けど、正直もう無理なんじゃなーい?あの子達強いし、オフェアリスも強いし、先生の指揮も凄いしさー」
「うぐっ…」
「ま、今の私達じゃ何をやっても勝算はほぼ無いかな」
「うぐぐっ…」
便利屋68は腹拵えに柴関ラーメンに来ていた。ラーメンを待つ間に、アビドス襲撃の依頼を続行するかどうかを話し合う。
「罠を仕掛けようにも、ここら辺はアビドスのMTが巡回してるし…もう詰みだと思うよ」
「あ、アル様…」
アルが苦悩している表情を浮かべ、今後の動きについて悩んでいると、大将がラーメンを四人分運んで来た。
「お待ちどぉ!!」
「キタ〜!」
「…社長、依頼の話は後にして、取り敢えず食べよう」
「そうね…」
便利屋の面々は一旦運ばれて来たラーメンに集中する。アルは大将に感謝しながらラーメンを食べていると…
「君たちはアビドスさんとこらの
大将が言った友達、という単語にアルはハッとする。
「こんなに美味しいのに、全然人いないね」
「場所が悪いんじゃない?砂漠化が進んでるんだし」
「……じゃないわよ…」
「ん?アルちゃん?」
「友達じゃないわよぉぉぉぉぉぉ!!」
「「「!?」」」
突然のアルの叫びに三人は驚き、アルは机を叩いて立ち上がる。
「分かった、何が引っ掛かっていたのか分かったわ!問題はこの店、この店よ!!」
「どゆこと!?」
「私達は仕事をしにこの辺りに来ているの!ハードボイルドに、アウトローっぽく!!」
どうやらアルは柴関ラーメンにいると最終的にアビドスの皆とも仲良くなってしまいそうで、自分が目指すアウトロー像とは離れて行きそうな気がするらしい。
「…とは言っても社長。結局その仕事もほぼ失敗しているんだし、正直この件からはもう手を引いた方がいいと思うよ」
「で、でも…!」
大将も困惑しながら便利屋を見守っていると…
『便利屋68に告ぐ!』
「「「「!?」」」」
突然聞こえて来た音声に動揺する。
『こちらは、ゲヘナ学園、風紀委員会所属のAC、アルプトラオム。便利屋68に告ぐ、速やかにそのラーメン屋から出て来い!そして投降しろ!!』
「あ、ああああアルプトラオム!?な、何で!?」
「社長、落ち着いて…」
カヨコは柴関ラーメンの扉を少し開けて、外の様子を確認すると、店さら少し離れた場所に立つ紫色のACの姿を見て扉を閉める。
「本当にアルプトラオムだ…!」
「うっそーここアビドスだよ?何でー?」
「あ、アル様、どうしましょう!?」
「──!」
アルは冷や汗を掻きながらも、考える。そして大将の方をチラッと見ると、扉の前に立つ。
「アルプトラオムの他は?」
「いない、どうやら単機みたい」
「じゃあ逃げる?」
「いや、ACの機動力じゃ逃げ切れないよ…社長、どうする?」
「決まっているでしょ、迎え撃つわよ。けど場所は変えるわ……大将。悪いけど代金はまた後日払いに来るわ。それと、一応店の奥に隠れてなさい!」
「わ、分かった!」
「銃声が止むまで出て来ちゃダメよ!」
アルは決意を固め、扉を開けて店を出る。そして他の三人もそれに続いた。
『来たか、便利屋68』
「アルプトラオム…!」
『久しぶりだな。あの初陣以来か』
「くふふっ!あの時はアルちゃんの狙撃で頭が吹き飛んじゃったもんねー?」
『ああ、そうだな。あの記録は今もこの頭に保管されている。この日の為にな』
「…アルプトラオム、何でアンタがここにいるの?自分が何をしているのか、分からない筈が無いでしょ」
『さてな、私はお前達を追ってここまで来た。ただそれだけだ』
「………」
銃を向ける便利屋の面々に対して、アルプトラオムはゆっくりと歩き出す。
『さて、投降する気は無いみたいだな』
「当然よ」
『分かっていたとはいえ、面倒だな。あまり派手に暴れられないんだ、こっちは』
「!」
アルプトラオムの発言に対してカヨコは何かに気付く。しかしそれと同時にアルプトラオムはブースターを吹かし、便利屋に接近した。
「来るわよ!」
「!市街地で戦闘行為が発生した報告あり、場所は…柴関ラーメンの近くです!」
「え!?た、大将は無事なの!?」
「今のところ、小規模な戦闘みたいだし、位置も若干ズレてるから大丈夫だと思うけど…周囲のMTが現場に急行しています!」
『失礼、少しよろしいでしょうか?』
「あ、オールマインドさん。カイザーの調査は…?」
『そちらも進めておりますが、それよりその戦闘。どうやらただの生徒同士の争いでは無いようです』
「ん、どういう事?」
『今、その場所で戦っているのはACです。恐らくですが、相手は便利屋68』
「…AC?」
「それに、便利屋の皆さんが…?」
『はい。そのACは……ゲヘナの風紀委員会のAC、ランク1。アルプトラオムです』
「「「「「!?」」」」」
「ど、どういうよ!?何でゲヘナの風紀委員会のACがアビドスに…!」
「……バルテは土地の所有権の事を、ゲヘナの万魔殿から聞いたって言ってた。多分、風紀委員会も知っていたんだと思う」
「!アビドスの土地では無いと分かっているから、堂々と便利屋を追って戦闘行為を…?」
『しかし、妙ですね…』
「妙…?」
『アルプトラオムらしからぬやり方です。便利屋を追ってここまで来たのもですが…彼の特筆すべき点は戦闘能力の高さもそうですが、何より指揮能力です。MT部隊を率いるあのACの脅威度は空崎ヒナと並ぶほど…だというのに、単機で来ているようです』
「どういう事…?」
『…慎重に動いているような気がします。何かしらの…便利屋を捕える以外の意図があるのかもしれません』
「…分かった、ちょっと行ってみよう。皆、準備して。先生もお願い」
「分かった!」
ホシノが指示で対策委員会と先生は動き始める。
そして便利屋とアルプトラオムの戦闘は…
「ハルカちゃん!」
「消えてください消えてください消えてください!!」
ムツキが援護射撃しながらハルカが接近するが、アルプトラオムは射撃を回避しながらハルカと距離を取りながらマシンガンで牽制する。
「ぐっ…!」
『伊草ハルカ…私の評価ではお前の脅威度は便利屋では二番目だ。そう簡単には近付けんぞ。先ずは…』
アルプトラオムはアルの方を見ると、アサルトブーストで接近する。
『お前からだ、陸八魔アル…!』
「くっ…!」
アルは向かってくるアルプトラオムを狙撃するが、瞬時に横に回避し、突撃してくる。
「社長、退がって!」
側に居たカヨコがアルを退がらせてグレネードを投げる。アルプトラオムは急ブレーキをかけ、目の前が爆発する。
「させないよー!」
『!』
ムツキがすかさず射撃し、アルプトラオムは上昇して回避する。
(…おかしい)
カヨコはアルプトラオムの動きにある疑問を感じていた。
(右肩のミサイルを使って来ない、射撃も控えめだし…やっぱり…)
「カヨコ!」
「!」
アルの呼び声に反応し、咄嗟に横に動くとリニアライフルの弾丸が横を通り過ぎる。
「とはいえ油断は出来ないか…!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
ハルカが再度接近し、ショットガンを乱射するとアルプトラオムはクイックブーストで横に避けるがそれに合わせるようにムツキが射撃し、何発か被弾する。
「う〜んやっぱ硬いな〜、この距離じゃあんまり意味無いかも〜それにハルカちゃんも全然近付けないし」
「よっぽど警戒してるんでしょ、前回はハルカと社長にやられたし…けど、このまま機動力の差で振り回されるとジリ貧。社長、ちょっといい?」
(伊草ハルカ…彼女のショットガンの乱射はまともに喰らえばACSが一気に持っていかれる。陸八魔アルの狙撃も注意しなければな…)
すると便利屋の動きに変化が現れる。ハルカが退がると、カヨコとムツキが周囲にグレネードを投げる。アルプトラオムはそれを避け接近するとアルの狙撃が放たれるが、それも回避すると…
(…?)
カヨコがアルプトラオムに向かって走って来た。ハルカはアルの側に控えている。
(明らかに何かある動き。だが…)
『いいだろう、乗ってやる』
「くっ…!」
アルプトラオムは射撃しながらカヨコに接近する。カヨコは被弾しながらもその距離を縮めていき、アルプトラオムは左手の武器をパイルバンカーに持ち替え、カヨコに向かって突き出す。
「ッ!」
『!ほう、良い動きだ』
ガンッ!と音が響き、パイルバンカーが放たれるが、カヨコはスライディングで避け、アルプトラオムの股下を潜り抜ける。すると地面に何が転がる音が響き、次の瞬間、アルプトラオムを白い煙が包んだ。
(スモーク?ダメージを与えるなら、普通のグレネードの方が…いや、これは…)
アルプトラオムは自身の機能に変化が現れているのを即座に感知した。
(ジャミングか。上昇して…いや…上がった瞬間に狙撃されるかもしれん。ここは後退して…)
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『!伊草ハルカ!!』
アルプトラオムが動こうとした瞬間、ハルカが現れて銃を乱射する。ショットガンの至近距離での乱射にアルプトラオムは体勢を崩す。
『…!』
「ハルカ、退がって!!」
するとカヨコが再び現れ、グレネードを投げ付ける。ドガァン!!と音が響き、アルプトラオムを爆発が襲うと同時に爆風でジャミングが晴れ、アルプトラオムの機能が正常に戻った瞬間。
「捉えたわっ!!」
アルがそう叫び、渾身の一撃を放つ。狙うはベッドパーツ、弾丸はアルプトラオムの頭部へ真っ直ぐ向かっていき…
『まだだ…!』
寸前でアルプトラオムは左腕のパイルバンカーを盾にしてそれを防いだ。
「嘘っ!?」
「っ!」
アルが驚いているのを他所にハルカはこの隙を突いてアルプトラオムの懐に入り込もうと走る。するとアルプトラオム右手のリニアライフルを一瞬手放し、宙で回転させ、
「っ!?」
『迂闊だったな』
そう言ってリニアライフルをハルカに向かって振るが、ハルカはそれをしゃがんで避ける。するとしゃがんだハルカの目の前にアルプトラオムの左脚が迫り…
「かはっ…!?」
「ハルカ!」
ハルカの腹にアルプトラオムの蹴りが入り、吹き飛ばされる。カヨコが叫びながらハンドガンを放つが、その弾丸は虚しく装甲に弾かれる。
「っ…!」
『素晴らしい連携攻撃だ。更に、今の攻防の合間に周囲に地雷を設置したか』
「うっそ、もう気付くの?」
アルプトラオムはそう言いながらいつの間にか別の場所にいたムツキの方に目を向ける。周囲を確認すると爆発物が周囲を囲んでいた。
『これにより機動戦を封じた。空も無限に飛べる訳では無い、ジェネレーターの管理に気を配らなければ…?』
するとアルプトラオムは前方で倒れ伏すハルカが右腕を挙げたのを確認する。そしてその右手には…起爆装置が握られていた。
『!?』
アルプトラオムは下に目を向けると、そこにはC4が何個か置かれており…
(先程しゃがんだ瞬間に──)
カチッ
ハルカが握る起爆装置がそう音を鳴らした瞬間…
ドガァァァァァァァァァァン!!
アルプトラオムは爆炎に包まれた。
「はぁ…はぁ…」
ハルカは目の前に立ち昇る爆炎に目を向けて放心していると…
「ハルカ、大丈夫?」
「あっ、か、カヨコさん…」
カヨコが横に来てハルカに手を差し出す。ハルカはその手を掴むと、ぐいっと引っ張り上げられ、ハルカは立ち上がった。
「ハルカちゃんナイス〜!!」
ムツキも地雷を避けながら二人に近付き、ハイタッチすると、爆炎を見つめる。
「いや〜ランク1を倒しちゃうなんて、私達って自分が思ってたよりも凄いんだね〜、くっふっふ!」
「ま、今回はアルプトラオム単機で、ミサイル使われなかったから勝てたと思うけどね」
「あ、確かに。手加減してたのかな?」
「けど、ハルカのあの判断は凄かったよ」
「あ、ありがとうございます…!」
「うんうん、きっとアルちゃんも褒めてくれるよ!ホラ!」
そう言って振り返ると、アルが誇らしそうにしながら笑っているのが見える。ハルカはパァっと表情を明るくし、嬉しそうにする。そして三人がアルの方へ歩きだそうとした瞬間。
「「「?……っ!」」」
三人がアルの表情の変化に違和感を覚え、そしてアルが何かを叫ぼうとした瞬間に一斉に振り返ろうとしたその瞬間…
バァン!!
という音と同時に、カヨコの頭にリニアライフルのチャージショットが命中し、吹き飛ばされた。
「カヨコちゃん!?」
「っ!!」
二人が一瞬カヨコの方に気を取られたその時、爆炎の中からアルプトラオムがクイックブーストで飛び出し、ハルカの目の前に瞬時に現れる。その左腕ではパイルバンカーがチャージされており。
ガァァン!!
その轟音と共に、ハルカは凄まじい勢いで吹き飛ばされ、街の街灯に激突した。
「かっ……はっ……?」
「ハルカ!!」
「ウッソでしょ!?」
ムツキがマシンガンを構え、撃とうとしたが、既にアルプトラオムが目前に迫っており、蹴りでマシンガンを弾き飛ばされ、尻餅を着く。
「くぅ…!」
するとアルプトラオムはムツキのバッグにマシンガンを向けて発砲し…
「え、ちょっと待っ──」
ドガァァァァァァン
バッグが爆発して再びアルプトラオムはムツキと共に爆炎に包まれる。
「──っ!!は、ハルカ、しっかりし─」
ガシャン!!
アルはハルカに呼びかけていると、そんな音が直ぐ近くから聞こえる。アルはゆっくりと振り返ると、目の前にアルプトラオムが立っていた。こちらをジッと見つめる紫色の単眼は、アルに恐怖を感じさせた。
「───なん、で…?」
ハルカのC4による爆破、そしてムツキのバッグの爆破。その二度に大爆発を喰らったにも関わらず、アルプトラオムにはダメージが入っていなかった。そこで気付く、アルプトラオムを覆う、電気のバリアのようなものに。
『──拡張機能、パルスアーマー。要はバリアだ。あの初陣の後から搭載していた。実戦で使ったのは初めてだが…こうして、お前達へのリベンジを果たせたよ』
「───」
パルスアーマーが消失し、アルプトラオムはリニアライフルをアルに向ける。
『最後の忠告だ…降伏しろ、陸八魔アル。もうお前達に勝ち目は無い』
「っ…!」
(どう、する…?状況は、絶望的…三人はもうボロボロ…もうこれ以上抵抗しても…)
「───ぐっ、あっ…!」
「!は、ハルカ、大丈夫!?」
するとアルの腕の中にいたハルカが呻き声を上げながら、動きだす。すると…
「は、ハルカ?」
ハルカはゆっくりと、苦しそうにしながら立ち上がる。ショットガンはパイルバンカーに当たった時に手放してしまったので手元には無い。しかしそれでも臆すること無く、アルプトラオムの前に立つ。
「アル、様に……近付く…なっ…!!」
「は、ハルカ、やめなさい!もうこれ以上は…!」
アルの声も無視して、ハルカは手を広げてアルプトラオムを睨む。そしてアルプトラオムはリニアライフルをチャージしてハルカに向ける。
『伊草ハルカ…もしかしたら、便利屋68の脅威度はお前を1番上にしておくべきだったかもしれんな。いや、そもそも便利屋68自体の脅威度を更に上にしておくべきだった…』
「ふーっ…ふーっ…」
『その目…あの時もそうだった。お前は何度も立ち上がり、私に、風紀委員会に真っ向から立ち向かった。だからこそ…私はもう決めている……お前を無力化する時に、決して容赦はしないと』
「!や、やめて!!」
「っ、ア、ル様…」
アルは咄嗟にハルカの前に立ち彼女を守る。リニアライフルの銃口がアルの額のすぐ前に来る。
『私とて、お前達を痛めつけるつもりは無い。降伏するか?』
「わ、私は…!」
アルが目を瞑り、アルプトラオムの降伏勧告を受け入れようとした瞬間…
『ゲヘナ風紀委員会所属のAC及び、便利屋68に告げます!直ちに戦闘を中止し、武装解除してください!』
そんな声が響き、アルプトラオムは声がした方を向くとドローンが飛んでいた。
『こちらは、アビドス対策委員会です。繰り返します!両者、戦闘を中止し、武装解除してください!』
『…時間か…』
ドローンからの警告を聞いたアルプトラオムは全武装をパージした。
「…え?」
アルの呆気に取られた姿に目も向けず、アルプトラオムはある方向を見ると、遠くから近付いて来る対策委員会の面々と多数のMT。そして今回アルプトラオムがここに来た目的である先生がいた。
『さて、ここからが本番だな』
「えっ、えっ?」
アルは近付いて来るアビドスの面々とアルプトラオムを交互に見ながら混乱していた…
「…はぁ、どうやらもう終わっているみたいだね」
ホシノはそう言いながら戦場を見渡すと、ボロボロになった便利屋の面々と一機のACが居るのを確認した。
「取り敢えず、便利屋の皆を手当てしよう。あのACはMTに見張らせて…待った、地雷がそこら中にある。注意して」
ホシノが指示を出し、アルプトラオムをMTが取り囲み、シロコがアルとハルカに近付く。
「大丈夫?」
「わ、私は大丈夫よ、それよりハルカが…!」
「!…酷い怪我、取り敢えず運ぼう。手伝って」
「え、ええ!」
二人でハルカを運び、便利屋の面々を一箇所に集めて応急処置を施す。
「皆さんボロボロになってますね…」
「…一旦、アビドスの保健室に連れていった方が良いかも。アヤネ、オールマインドに連絡して輸送ヘリをこっちに回して」
『分かりました!』
「ノノミ、セリカはここで便利屋を見てて。シロコと先生は来て」
ホシノがシロコと先生を連れ、アルプトラオムに近付く。アルプトラオムはMTに囲まれて銃を向けられており、両膝を着いて両手を上げていた。三人はその包囲の中に入り、アルプトラオムの前に立つ。
「さて…取り敢えず所属を答えてもらおうか」
『─ゲヘナ学園、風紀委員会所属。アルプトラオム』
「素直にどうも。それで?今回の戦闘行為についてどう説明するつもり?」
『私はただゲヘナ学園の校則違反者である便利屋68を追って来ただけだ』
「へぇ?ここら辺、私達のMTが警備してるって分かっていたの?」
『ああ、それに関しては知っている』
「なら『しかし、この場所自体はアビドスの物では無い筈だ』……やっぱり知っていたんだ」
『勿論だ、ここがアビドス自治区の一部であれば。私はこのような行動はしていない』
「なるほど…つまりそっちとしては、ただ便利屋を追って来ただけで、アビドスに関わるつもりは無かったと」
『そうだ』
「………」
ホシノはジッとアルプトラオムを見つめる。理由としては文句の付けようは無い。しかしオールマインドの言葉が頭を過ぎる。するとホシノのスマホから着信音が響く。
「……もしもし?」
『ホシノ先輩、少しいいですか?』
「ノノミ、どうしたの?」
『便利屋のカヨコさんが、お伝えしたい事があると…』
「便利屋が?……分かった。変わって」
ホシノはそう言うとスマホのスピーカーをONにする。
『…聞こえてる?』
「聞こえてるよ」
『そっか…結構しんどいから手短に言うけど、そのACは今回の件について何て言ってるの?』
「便利屋を追って来ただけで、私達に関わる気は無いってさ。まあ、ここの所有権はアビドスには無いし、特に問題は無いとは思うけど…」
『そっちも色々あるんだね…けど、アルプトラオム。アンタの目的は私達じゃないでしょ?』
「!」
『……』
『私達はアビドスを釣る為の餌…いや、アビドスじゃない。正確に言えば先生を誘き出す為にアンタはここまで来たんだ』
「え、私?」
カヨコが放った言葉に先生は呆気に取られ、シロコは先生を庇うように立つ。
『アンタは…』
『いや、いい。全て説明するとしよう。大人しく寝ていろ、鬼方カヨコ』
『………』
アルプトラオムはそう言うと、先生の方を見る。
『確かに私は今回、先生に接触するのが目的でここまで来た。それは本当だ』
「嘘を吐いたのか?」
ホシノは通話を切ると、ショットガンをアルプトラオムの頭部に向ける。
「何で先生に近付こうとした?」
『…きっかけは行政官殿が先生に関する報告書に目を通した事だった。連邦捜査部シャーレ、突如現れた先生、その先生が有する権力…行政官殿は、先生がエデン条約に悪影響を及ぼすのではないかと考えた』
「そしてお前に命令したのか?」
『最初に受けたのは相談だった。最初は行政官殿が動かせる全ての部隊を使って先生を確保するという作戦だったんだぞ?流石に止めたが』
「何で?」
『先生がアビドスに居たからだ。お前達と問題を起こすと、PCAがどう思うか…それこそ条約への悪影響となる。だから私が単機で行く事にした。何かしら行動を起こさなければ、行政官殿は落ち着きそうになかったからな』
「…なるほどね」
『まぁ、分かっていて欲しいのは。問題を起こすつもりは無いという事だけだ。PCAに睨まれるのは御免だからな』
「……先生はどう思う?」
「うーん……ちょっといい?」
先生はホシノとシロコを近くに寄せて何か小声で話し合う。そして暫くすると、先生がアルプトラオムに近付く。
「一つ訊いていい?」
『何だ?』
「便利屋の子達はどうするつもりだったの?」
『無論、ゲヘナに連れて帰るつもりだ。先生へ接触する目的はあったが、便利屋に関する事は公務の範囲内だ。そちらでの治療が終わり次第、引き渡して欲しいのだが…』
「じゃあ、今回は見逃してくれない?それでここでの事は全部見なかったことにするから…!」
『何…?何故便利屋を庇う。彼女達はアビドスを襲撃したんだろう?君達にとって敵の筈だ』
「確かにそうだけど…根は良い子達なんだ」
『それは理由にならない。彼女達はゲヘナで様々な問題を起こした、然るべき処罰を受けるべきだ』
「うーん…じゃあさ…」
『…分かった。先生がそこまで言うなら、便利屋については諦めるとしよう』
「ありがとう!助かるよ!」
『先生は生徒の為なら自分に無頓着なところがあるな…改めた方がいいと思うぞ』
「そうかな?」
『しかし、少しだけだが先生がどのような人なのか理解出来た…便利屋に伝えてくれ、次に会った時は手加減はしない、必ず捕えると。対策委員会の方々も、今回はすまなかったな』
「ま、謝られる理由は無いけど…」
「ん、それはそう」
『寛大な対応に感謝する。何か力が必要な時はゲヘナに来てくれ。私に出来る事ならやろう。それが今回の件に関する私からのお詫びだ。では私はそろそろ…』
「あっ!最後に一ついい?」
『…何だ?』
すると先生はシッテムの箱を取り出す。
「ツーショット撮りたいんだけど、いいかな?」
「いい子だったね、アルプトラオム」
「それで済ませるんですか…はぁ、まぁ、こちらに最大限気を配ってくれましたし、この件についてとやかく言うのはやめましょうか」
「ん、特に大きな問題にはならなかったし、結果オーライ」
「そうだね。じゃあ私達も帰ろっか!」
そう言って三人はアビドスに戻り始めるのであった…
「因みにアルプトラオムと何を約束したんですか?」
「ん?アビドスでの仕事が終わったら、一回ゲヘナの風紀委員会に挨拶に伺うって約束だよ」
一方、ゲヘナに戻っていたアルプトラオムは、ある地点で足を止めると、周囲を見渡す。
『委員長殿、居るんだろう?』
「──気付いていたのね」
アルプトラオムの呼び声に応じて現れたのはゲヘナの風紀委員長…空崎ヒナだった。
『委員長殿は気付くと思ってな…それよりすまなかったな、勝手に動いて』
「大丈夫よ、寧ろあなたは事態を最小限に抑えてくれた。きっとアコが動いていたらもっと大きな問題になっていた」
『流石に行政官殿でも、あの小鳥遊ホシノに喧嘩を売るような事はしないと思うが…それより、ゲヘナに戻るのだろう?運ぼうか?』
「ええ、お願いするわ」
『承知した』
こうして、アビドスとゲヘナの間に発生した出来事は、無事に終わりを迎えつつあった…
そしてその頃…
「………ここか」
バルテはキヴォトス某所のあるビルの一室に足を運んでいた。部屋に入ると、
「……あなたか、私を呼んだ存在は…」
「クックック…お待ちしておりました、古帯バルテさん…いえ… BALTEUS、さん?」
「…それは兵器としての名だ。今の私はミレニアムのPCA委員長、古帯バルテだ」
「これは失礼しました、古帯バルテさん。さて、私の方も自己紹介しなくてはいけませんね…私の事はどうぞ黒服、とお呼びください。クックックック…」
睨みつけるバルテに対して、黒服と名乗った大人は怪しげに笑ったのだった……
ちょっとこのアビドス盤石過ぎない?カイザー大変でしょこんなの相手にするの。後、アルプトラオムがちゃんとランク1っぽく見えたかなぁ?