9/22追記殺害ではなく死亡の間違いでした。お詫びして訂正いたします。
プロローグ
誰も居ないアパートの一室。
そのうちの一部屋に、テレビが一つ。
そのテレビの電源はついており、あるニュース番組が放送していた。
『昨夜未明、二十代女性が殺害されました』
『被害者の深海 静さんは、自宅のアパートから20キロほど離れた公園でベンチに座らせられた状態で発見され、警察は何かの事件に巻き込まれた形で捜査を進めています』
それから数年後。
とある病院で、一つの命が生まれた。
その命の灯火は消えかけていた。
医者に流産と判断され、母親の一度だけ抱かせて欲しいという願いを医者は聞き受けた。
死んでしまったと思われていたその赤子の命は、てろてろと燃え続けていた。
母親に抱かれ、母親の涙が頬にぽつりと流れた。
その時、初めて赤子が産声をあげたのだった。
医者も助産師も、母親も父親も驚きのあまり硬直してしまった。
最初に動いたのは母親だった。
「この子は生きている。体を洗ってあげて」と。
医者と助産師はすぐに用意していたお湯に赤子を浸からせた。
彼女と、彼女の母親はウマ娘であった。
生まれてから数年、赤子は泣かなかった。
頭をぶつけようとも、排便をしようとも、お腹がすいても。
依然として赤子は泣かなかった。
歩けるようになってからはトイレトレーニングなど、要らぬとばかりにトイレに行っては排便をする。
父親はウマ娘だからと、母親は頭の良い子だととても喜んだ。
だが、父親も母親も気付かなかった。
赤子の目に、生気がないことを。
母親は幼稚園を卒業した我が子に、将来何をしたいか聞いた。
「ねぇ、シーちゃんは将来何をしたい?」
当然、母親も
だが、彼女は違った。
「…将来なんて考えなくてもいい」
そんなことを言ったのだ。
母親は不審に思い、詳しく聞いた。
「レースに出たいとか、ないの?」
だが、返ってきたのは六歳になったばかりの、それも幼稚園を卒業した娘から聞きたくない言葉だった。
「…元々死ぬ運命だったこの命に、生きる価値なんてない」
母親はその言葉を聞き絶句した。
確かに出産時、一度流産かと言われた。ただ、この子が知っているわけがない。
じゃあ、この子は何を知って、こんなことを言っているのか。
彼女には、母親には分からなかった。
そして、娘はこう思っていた。
(転生したのだから、将来などどうだって良いだろう。好き勝手生きて、好き勝手に結婚して、好きに死ぬ。それでいいじゃないか)と。