とある青年の転生奮闘記   作:恭也

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久々にネギまのゲームをしたらこんなの書いちゃいました。
暖かく見守ってくれたら幸いです。


零時間目

その日、俺は仕事後の日課となっている家から近い古本屋での立ち読みを終えて、これまた日課の家の側のスーパーに向かって大通りの歩道を歩いていた。大学を卒業して就職したそれなりに大きな会社で十年以上勤め、それなりに責任ある立場になってからは仕事後に古本屋で昔読んでいた漫画を読み返すのが唯一の娯楽と癒やしになっていた。

学生の頃は授業やバイトが終われば家で好きな漫画やゲームに時間を費やし、就職してからも数年はネットゲーム仲間とオフ会に参加したりイベントに参加したりと楽しい人生を送っていた。しかし年齢が上がり仕事でも責任が伴ってくるとその手の趣味に費やす時間は徐々に減っていき、大学の頃から住んでいたアパートが取り壊しになるタイミングでの引っ越しでやらなくなったゲームや読まなくなった漫画を纏めて売ってしまい、今となっては漫画位は残しておけば良かったと後悔が募り最近出来た大手の古本屋に通って青春時代に読んでいた懐かしい漫画を一から読み返す、それが俺の唯一にして最大の娯楽となった。

 

(はぁ…やっぱり昔の漫画は良いな…特に大人になってから読み返すと前は分からなかった事も読み解けるし主役以外にも良いキャラがいるのに気付けるもんな…)

 

子供の頃はどうしても物語の中心にいる主人公やヒロイン、敵の首魁にばかりどうしても目が行ってしまうが、三十代半ばになった今読み返すと主役の脇を固める脇役や敵方全体にも目が向けられて、それぞれの背景や人物像なんかもちゃんと見えて新たな発見もあったりする。今日最終巻まで読み終えた俺が特に好きだった漫画でも昔は分からなかった魅力を再発見させられた。

 

(前はネギと明日菜ばっかり注目してたけど改めて読み返すとどのキャラも個性的で良いよな…特に小太郎、最初は敵方で出てきたのが途中から共闘して親友かつライバルってポジションになるのなんか熱いよな。終盤はそのポジションがフェイトに変わったけど今の俺なら断然小太郎推しだな…それにヒロインも明日菜にエヴァ、千雨に注目してたけど…皆可愛いもんな、特にアキラとか刹那とか…五月も良いな)

 

そんな風に好きな漫画であるネギまの事を考えながら歩道を歩いていると、二つ先の大通りが交わる交差点の所に人だかりが出来ていて救急車やパトカーが停まっているのが見えた。普段はその交差点を渡ってスーパーに向かうがそこを通るのは面倒だと思い、一つ手前の交差点の信号を見ると丁度信号が青に変わったのでそこを渡ってしまおうと思い横断歩道に足を踏み出したタイミングだった。

 

『危ないぞー!!』『逃げて!!逃げてー!!』

 

そんな声が聞こえてそっちに顔を向けると、人だかりが出来ていた交差点の方からミニバンが猛スピードで走ってくるのが見えた。聞こえてくる声の様子からあの車が事故を起こして隙を見てこっちに逃げてきたのだろうと推測して踏み出した足を引っ込めようと前を向いた時に見てしまった。気付いてしまった。子供が横断歩道をこっちに向かって歩いてくるのを。

性別は分からないが背丈の感じからおそらくは小学校高学年位、キャップを深く被りスマホに集中してる、声が聞こえてない様子からイヤホンをしてるんだろう…猛スピードで近づいてくる車にも気付いてる様子は無い。車の方も事故を起こして逃げるのに必死なのだろう子供が歩いてるのにスピードを緩める様子は無い、このままでは轢かれてしまう。

 

(クソっ!!こんなの俺の柄じゃないだろ!!)

 

俺は心の中で悪態をつきながらも既に身体は動いていた。眼の前で子供が死ぬなんて流石に許容出来なかった。

俺は持っていた鞄をミニバンの運転席付近に向けて投げつけると子供に向かって走り出した。そして未だ車に気付かない子供を覆う様に抱くとミニバンの来ない方に向けて少しでも怪我をさせない様にする。その直後、ドーンッという派手な音と衝撃で俺は子供を抱いたまま吹っ飛ばされた。途轍もない痛みと衝撃で子供を抱き寄せている腕の力が抜けそうになるも、意地でも怪我をさせまいと必死に腕に力を込めながら吹っ飛ばされた勢いのまま道路を転がっていく。そして転がるのが止まると意識が薄れていく中で腕の中にいる子供に声をかける。

 

…だ…大丈夫…か…?

 

子供は腕の中でまだ状況を理解は出来ていないだろうが、俺の声に何度か小さく頷いてみせる。

 

…そ…そう…か…良かった…

 

もう身体に力は入らないし視界も霞んで何も見えないけど、こんな俺でも小さな命を守る事が出来たんだと思うと何故だが安心してこのまま目を閉じてしまいたくなる。周りから聞こえる喧騒やサイレンの音も次第に小さくなっていき、俺の意識は深い深い闇の底を目指して沈んでいった。

 

 

翌朝のテレビやネットのニュースでは子供を守って命を落とした勇敢な青年の事が取り上げられていた。

 

 


 

 

ふと目を醒ますと目の前には真っ白な空間が目に入った。俺は死んだんじゃ無いのかと思い周囲を見回してみるが辺りには何も無い真っ白な空間が何処までも広がっているだけで、ここが何処なのか、自分がどうなったのかも分からない。

 

「俺はどうなったんだ?コドモを庇って…死んだんじゃないのか?」

 

返事なんか期待しない独り言を呟いた時だった。

 

「ええ、確かに貴方は死にました。間違いありません。」

 

まさかの返事が聞こえて慌てて返事が聞こえた方に顔を向けると、そこには美人で凛々しく神々しい雰囲気をした女性が立っていて、その傍らには何故か土下座してる人が居た。

 

「意外と落ち着いてますね。普通は死んだと思ったのによく分からない場所に居たら混乱すると思うのですが。」

「混乱はしてますよ、ただこの状況があまりにも二次創作物のテンプレみたいな感じだし…何より初対面で土下座されたら逆に冷静になりました。」

「ああ…確かにそうですね、ではこれからどうなるのかも何となくは察してるとは思いますが、一応説明させていただきますね。」

 

そこから聞かされた内容は正に二次創作物のテンプレ的な内容だった。土下座してる人は神で女性は神の補佐をしていて、神のミスで本来ならミニバンを運転していた人物が死ぬ筈だったのが俺になってしまい、誤って死なせてしまった俺を転生させてくれるとの事だそうだ。

 

「ちなみに転生先の希望があれば伺いますよ、元の世界で新たな人生を生きるのも良し、これまでの知識や経験を得たまま人生をやり直すのも良し、ご自由にお選びください。」

「…じゃあ取り敢えずどんな形であれ元の世界に転生するのは無しで。」

 

俺の言葉に土下座してた神も補佐の人も驚いたらしく目を見開きこっちを見てくる。あの感じだとこれまで俺と同じ様に転生の機会を得た人は皆元の世界に転生してたんだろうな。

 

「一応理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?元の世界に何か不満でもありましたか?」

「不満とはちょっと違うけど…元の世界に未練とかやり残した事とかは別に無いし、あの親兄弟にはどんな形でも関わりたくない。」

 

そう、俺はもう自分の子供なのに優秀じゃないから、自分の思い通りにならないなら必要無いと見限り捨てた両親ともそんな俺を見下してた兄姉や弟とはどんな形でも二度と関わり合いになりたく無かった。

両親はどちらも日本が世界に誇る巨大企業の重役に名を連ね、兄はその傘下企業の社長、姉はモデルとして広告塔になりながら企画や開発にも携わってる。そして弟は兄や両親すらも上回る天才で既に父の務める巨大企業の次期社長になるのが決まってる程だ。

対して俺は只の凡才、普通に見れば悪くない成績を残しても常に期待外れだと言われ、常に比べられて見下し罵ってきた兄弟とは関わらない様にしてきたが、次第に屋敷に務める使用人やメイドからも同じ様に見られるのが我慢出来ず高校から屋敷を出て独り暮らしを始めた位だ。そして大学入学時に戸籍から消されたのを機に名前も変えて完全に関わりを絶った位俺はあの親兄弟の顔すら見たくないとずっと思ってた。だからこの転生はある意味渡りに船だ、あんな奴らが居ない世界に転生して気ままに生きていきたい。これが俺の嘘偽り無い本音だ。

 

「…分かりました。貴方が望むならこちらから言う事はありません。それで転生する世界の希望はあるのですか?無いならこちらが決めてしまいますが。」

 

補佐から言われて少し考える。この手の二次創作物のテンプレはやっぱり漫画やアニメ、ゲームの世界やそれに準じた世界だ。それなら一番好きなのを選ぶのがいいだろう。

 

「それなら魔法先生ネギまの世界がいい。一番好きな漫画だし前世から滅茶苦茶かけ離れた世界でも無いしな。」

「分かりました、しかし完全に漫画準拠の世界にはならない事は予め伝えておきます。貴方というイレギュラーがどう動くかによって未来は大きく変わる、これだけは覚えでおいてください。」

「分かった。それで転生する俺の設定とかはどれ位自由に出来るんだ?」

「最初から不死とか誰にも負けない等のあまりにも突飛な設定で無ければ好きな設定を盛り込んでもらって構いません。詳細に設定したいのであればこちらをお使いください。」

 

そう言って補佐がパチンと指を鳴らすと目の前に机と椅子が現れて、机の上には紙とペンが置かれた。それなら好都合と俺は椅子に座ると転生する自分の設定を色々と書き連ねていく。名前や転生するタイミング、種族や特徴、魔法や気、武術等色々と考えるとどんどん案が出てきて、俺の体感では三時間位は没頭していただろう。漸く纏め終えて一息つくとその紙が補佐の方に飛んでいき目を通していく。あまり滅茶苦茶にはしてないつもりだが果たしてどうだろうか…。

 

「…なるほど、分かりました。ほぼこの設定で大丈夫です。一応この魔法や技については最初から全て使えるのはあれなので、修行や鍛錬によって少しづつ使える様にさせていただきます。」

「ああ、それで構わない。むしろその方が修行や鍛錬に打ち込めるからありがたい。」

「それと転生した貴方の意識が目覚める時期ですが…五歳の誕生日位にしておきます。この設定だと幼稚園に行ってる訳では無さそうですし、貴方も世界に慣れる時間も必要でしょう?」

「ああ、産まれてすぐとか赤ちゃんの頃で無ければいいよ。」

「ああ、それと定期的に私が世界に降りて貴方の様子を観察させていただきます。そんなに頻繁にでは無いですし、この姿のまま降りる訳では無いですが憶えておいてください。では…そろそろ貴方を転生させます。」

 

そう言って補佐が又は指を鳴らすと足元に大きな魔法陣が現れる。そこになる今の今まで土下座してた神が立ち上がると何やら呪文を唱えると俺の意識がどんどん薄れていく。そんな中でふと補佐と目が合うと今まで無表情だった補佐が微笑んだ。

 

「また会う時まで…御武運を。」

 

その言葉を最後に、俺の意識は眩い光の中に消えていった。




主人公の設定等は次の話である程度明かします。
こんな駄文ですが読んでくれてありがとうございます。
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