半端な終わり方なのはそっから先は原作と大差ないからです。
特級呪霊を払った突如乱入した謎の男に襲われた伏黒恵は何とかそれを越えることができた。
しかしそれでももう限界。手が柄になった剣を持った呪詛師に襲われ、しかしそれを撃退することができない状況だ。
「俺の十種影法術は最初にまず八握剣異戒神将魔虚羅だけが与えられる。それ以外の異戒神将を扱うには術師と魔虚羅で調伏を済ませなければならない。
魔虚羅は異戒神将の中では一番標準的な、基本の異戒神将だ。足りないところを他で補う必要がある」
自身の限界を悟った伏黒は最後の切り札の切りどころを決め、術式の開示を始める。
「異戒神将同士を合成することもできる。調伏の時も合成状態で呼び出すことができて、それを倒した場合は元になった異戒神将をすべて調伏したことになる」
朗々と続ける術式の開示。それを聞きながら声をかける呪詛師。
「すごく強いね。若いのに。ボロボロでも俺に近寄るスキを見せない。
でもその出血じゃ何もしなくても、ほら」
その言葉と共に倒れ伏す伏黒。しかしまだ術式の開示を続ける。
「調伏はな、複数人でもできるんだ。だが複数人での調伏はその後で無効になる。術師にとって意味はないが、使い道はあるんだ」
大人しく術式の開示を聞いていたが、飽きだした呪詛師が急かし始める。
「それで? もういいね?」
「まあ待てよ、もう少しだ。それでな、調伏する時も合成状態で呼び出せるって言ったよな。これ、すでに調伏済みの異戒神将も合成に使えるんだよ」
ここまで聞いた呪詛師は、直感的に理解する。自分が死地に近づいていることに。
「コイツは歴代の十種影法術師の中で調伏できたやつがいない、全種混合の異戒神将だ」
「待て!」
その言葉と共に駆けだす呪詛師だが、伏黒は既に祝詞を謳いあげ始めている。
「『一二三四五六七八九十』」
祝詞を謳いあげた直後、伏黒の背後から影が形を取り始める。
影は2メートル前後のある人型で、鎧を纏い、武具を持っていた。
その人型は右手を掲げ、左手を地に向けていた。
その人型は。
「せいぜい頑張れよ。俺は先に逝く」
その人型は、呪詛師に向けて不敵な笑みを浮かべ一言残した伏黒を殴りぬき、吹き飛ばした。
これより始まるは、十種影法術最強の異戒神将が巻き起こす蹂躙劇である。そう、調伏に巻き込まれた術師は思った。
「おい! 待てよ!!!」
どうにもならないことはわかっているが、しかしそれでも伏黒への叫びをやめられない呪詛師。
そして、そんな無防備な獲物を見逃す毘羯羅ではない。
一瞬で呪詛師の背後に移動し、腕を振り下ろす。
振り下ろした腕は道路に大きなクレーターを作り、しかし血は飛び散らせなかった。
この場に現れた、宿儺のせいだ。
(仮死状態か! このゴミを助けて正解だったな)
宿儺は冷静に状況を推察する。
(おそらく調伏の儀に巻き込のだろう。このゴミが死んだら伏黒恵の死も確定する)
伏黒の傷を治した宿儺は調伏の義を無かったことにするため、毘羯羅討伐を始める。
「味見、といったところだな」
初手を取ったのは毘羯羅。宿儺に向かって右手の刃を上段で振り下ろす。
「! この刃、退魔の剣か」
呪霊であったら宿儺であっても一撃で消滅する1撃。それを腕1本で受け止め、反撃する宿儺。数発拳を打ち込み、術式を使用する。
「解」
毘羯羅は見えない刃で切り裂かれ、しかし行動に影響が出るほどではない。そのまま宿儺に向って刃を振るう。
その攻撃を何でもないように回避した宿儺であったが、その隙に毘羯羅の背後の法陣が回転する。
(傷が癒えている。それに傷自体も浅い。何かあるな)
毘羯羅は法陣が回ると同時に傷が完全に治り、無傷に戻っている。
先と同じく解を放つ宿儺。しかし、毘羯羅をそれを切り払う。
(斬撃を弾いた! 見えているのか! 俺の術が!)
自身の術式を見られたことに驚いた宿儺。そして毘羯羅からの追撃の一太刀が振るわれる。
だがその一太刀は明らからに間合いの外で、宿儺に当たるわけがない一撃だ。だが。
(! これは、俺の術式か?)
毘羯羅が虚空に刃振るった直後、その延長線上が切り裂かれた。
一言で言うところ見えない斬撃。宿儺の術式と同質の攻撃である。
(術式のコピーか?)
毘羯羅の能力について考えを巡らす宿儺に対し果敢に攻め続ける毘羯羅。そして、数度目の攻撃を宿儺がガードし、受け止める。すると。
(爆破! それもなかなかの威力だ)
刃を受け止めた腕が爆発し、その爆風と剣の振り抜きで数百メートルは吹き飛ばされた。
「やってくれたな!」
その言葉とともに背後に現れる毘羯羅。全くの無音、一切の過程を感じさせなかった毘羯羅の移動からの一撃を、攻撃の予備動作の僅かな物音で把握した宿儺は回避する。
(いつの間に後ろに?)
後ろを取った方法を考えながら毘羯羅の頭に触れ解を放つ宿儺。落下し、地上に叩きつけられた毘羯羅の様子を見ながらその性質を確認しつつ、先程吹き飛ばされた腕を生やす。
「やはりな。この式神の能力はあらゆる事象への適応!
しかも、それだけではない。術式のコピー、爆発、想定より浅い傷、他の能力もあるだろうな」
背後の法陣が回転し、無傷の状態で立ち上がった毘羯羅は攻撃を実行するが、後ろに飛び下がり攻撃を回避する宿儺。その時、毘羯羅の刃が道路を粉砕したが爆発しないことを確認する。そして背後から攻撃を受け吹き飛ばされる。
「もう一体いるのか!」
目の前にいる毘羯羅とは別の毘羯羅。二体の毘羯羅を油断なく観察しつつも周囲に警戒を払う。いきなり二体目の毘羯羅が現れたのだ。いつ他の毘羯羅が現れたとしてもおかしくない。
すると、二体の毘羯羅が突如消え、次の瞬間には宿儺の左右を挟み込んでいた。
左右からの攻撃を跳躍することで逆に同士討ちへと変え、その同士討ちにより互いの刃が触れた部分が爆発することを確認する。
(ふむ、地面に触れても爆発しなかったが、今回は爆発する。呪力に反応……いや触れた呪力を爆発させるといったところか。他に、分身と瞬間移動もか? まだあるだろうな。あれは恐らく十種の式神の融合体)
「ケヒッ、クックックッ。魅せてくれたな、伏黒恵!」
「領域展開」
伏黒の異戒神将の性能に興が乗った宿儺は領域を開いた。
宿儺の領域は結界で空間を閉じず生得領域を展開する。それは空に絵を描くまさに神業。そしてその必中範囲は逃げ道を与えるという縛りにより底上げされ、最大で200メートル。
伏黒恵との距離が十分に離れており、相手は瞬間移動のような術を使う。それを考慮し宿儺の領域は最大サイズの半径200メートルに渡り展開されている。領域内の呪力を帯びたものには「捌」、呪力のないものには「解」が絶え間なく浴びせられ、無差別に降り注ぐ斬撃は半径200メートルを更地へと変える。
無論毘羯羅も絶え間なく斬撃を浴びせられている。しかし、動くことこそできないが原型を保ち耐えることができている。
その様子から宿儺は先程自身が背後を取られていた理由とまだ耐性を得ていない筈の「捌」の絶え間ない斬撃を受けて耐えれている理由を理解する。
(呪力が一切感じられないな。自身の呪力の完全な隠蔽といったところか?
普通なら領域の必中効果から逃れるであろうな。今もこいつの有利に働いている)
毘羯羅が耐性を得た宿儺の攻撃は「解」。「捌」は耐性を得ていない。本来ならば毘羯羅は既に切り刻まれている筈だが、そうはなっていない。毘羯羅が宿儺の領域を耐えれているのは単純な理由である。現在毘羯羅が受けている斬撃が「解」であるからだ。
呪力無いものは領域内において無機物として扱われる。毘羯羅は呪力で構成されているが、呪力を完璧に隠蔽する能力があり、これによって建物などと同じ呪力のない存在として扱われているのだ。そして宿儺の領域における無機物として扱われている存在に振るわれるのは「解」。既に毘羯羅が耐性を獲得しているものであり、ダメージの減算と自己治癒能力により耐えきれている。
領域が毘羯羅に対して致命打にならないことを理解したが、しかし足止めには役に立った。
毘羯羅は耐えるためにその場に留まり防御体勢を取っている。なにか縛りがあるのか、それとも他の理由か分身であるもう一体も消えている。
一人斬撃の雨に耐えている毘羯羅に悠々と近づき、そして宿儺は領域を閉じた。それに連動して斬撃も止まる。
斬撃の雨に耐えていた毘羯羅の背後の法陣が回転し始め、それと連動して再生が始まろうとする。その瞬間。
「
宿儺の放った炎の一撃が毘羯羅を消し飛ばした。