【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
1.銃で撃たれても痛いだけで済む不思議生物
ファンタシースターオンライン2というゲームがある。
ジャンルはMORPG。宇宙を舞台にしたSFゲームだ。略称はPSO2。
プレイヤーは、オラクル船団という宇宙を旅する集団の、その中のアークスという組織の一員となる。
アークスは、未知の惑星の調査や惑星の原生種族との交流を行なう実働部隊であり、また『ダーカー』と呼ばれる敵性集団と戦う戦闘部隊でもある。なお、アークスの所属部隊員個人のことも、アークスと呼称される*1。
そんなゲームの中の存在、オラクル船団とアークス。だが、ゲームの世界は、あるとき私にとっての現実となった。
オラクル船団を構成する大型宇宙船、アークスシップ。その一隻の市街地に居住する一般家庭の子供に、私は産まれ直していた。
輪廻転生ってやつだ。しかも、前世の記憶を保ったまま。畜生道に落ちなくてよかった。
前世では地球生まれの地球人だった私だが、今世では宇宙生まれのオラクル人。
地球時代の常識が抜けない不思議な子として育った私は、ふと思い立った。
「せっかくPSO2の世界に生まれたなら、アークスになろうぜ!」と。
そうして幼くしてアークスの訓練校に入った私は、地球でいうところの十二歳で訓練を修了。それからすぐにまわされた新米アークスとしての初任務で、私はある重要人物と出会う。
のちに最強のアークス、
要するにファンタシースターオンライン2の主人公、プレイヤーキャラクターだ。その人はアフィン君っていう新米アークスと組んでいたから、本人に間違いないだろうと判断して交流を深めた。
その出会いから、激動の日々が始まった。宇宙の敵ダーカーが大量発生して、ダーカーの親玉のダークファルスが暴れ回り、そのさらに親玉の【深遠なる闇】が現れる。
それらを守護輝士を中心にしたアークス総勢で全部ぶっ飛ばし、一時の平和が訪れた。
で、守護輝士はダーカーの因子を吸収しすぎた影響で二年間の眠りについて、いつの間にかエリート扱いを受けていた私は次なる任務に駆り出された。
それは、別次元に発見された未知の惑星『地球』への侵入捜査。
前世以来の懐かしの故郷。その地球ではファンタシースターオンライン2のサービスが開始されていて、大人気ゲームとして世界に広まっていた……のだけど、このゲームはちょっと曲者。
私が前世でプレイしていたただのオンラインゲームPSO2とは、タイトルが同じなだけでひと味もふた味も違うんだよね。
アークスが発見したこの地球、エーテルという不思議粒子が存在するから『エーテル地球』と呼ぼうか。エーテル地球のPSO2は、別次元にあるオラクル船団のアークスシップにアバターを造り出して、ゲーム越しにアバターを操作してアークスの真似事をさせるという、とんでもない代物だったんだ。
ゲームに見せかけた別次元侵略プログラム。それがエーテル地球のPSO2だ。つまりこのエーテル地球は、PSO2が有名ゲーム会社制作のただの遊戯だった前世の地球とは、ちょっと違う世界だったってわけだ。並行世界ってやつかな?
そのPSO2の謎を調査するために、私はエーテル地球の日本にある学園に侵入した。
スパイ活動の最中、久しぶりの学生生活をエンジョイしているうちに、ようやく守護輝士が目覚めた。
そして、そこからまた大騒動。エーテルの存在を巡って、地球の秘密結社間のドンパチが起きて、アークスは東奔西走。
最終的に、エーテル地球がある次元の創造神をエーテルで具現化させた超存在が降臨しちゃって、守護輝士がその神様をぶっ飛ばすという超展開が待っていた。
さらに、その神様がエーテル地球から去る際に、一つの警告が残された。
それは、神様を降臨させた秘密結社の黒幕の残留思念が、莫大なエーテルと反応して新たな神を造り上げるというものだ。
そうして、私達アークスに緊急クエストが発令される。
浮上したムー大陸。そこを陣取るように産まれ出でたエーテル製の神様。十二名のアークスを選抜して、それを討伐することがクエストの内容だ。そして、そのメンバーの中に私も含まれていた。
ただ、討伐メンバーには守護輝士も居たので、クエストはそう難しくはなかった。
選ばれしアークス達の猛攻で、神様は倒れる。しかし、その今際の際に、奴は最期の抵抗をした。次元の異物であるアークスを別次元へと追放する『創造神の力』を発動したんだ。
でも、その力は以前、守護輝士に対して使われていた過去があったため、すでに対策済みとなっていて、十二名のアークスには通用しない。
……そのはずだったんだけどなぁ。
なぜか『創造神の力』は私に届いて、こうして見知らぬ世界に飛ばされちゃったわけですよ。
どう思います? 先生、信じてくれます?
「"うん、信じるよ"」
ありゃ、あっさり。じゃあ次の質問。私は、これからどうすればいいですかね?
「"学園で侵入捜査していたと言ったね。それなら、その要領でどこかの学園に通うのはどうかな?"」
学園に? そりゃまたなんで?
「"ここは学園都市らしいからね。まだ生徒をやっているような年頃の君なら、ちょうどいいんじゃないかな"」
なるほどなるほど……。
「"君が単なる外から来た人間なら、私が保護する必要があった。でも、君は、アレだ……"」
アレ?
「"ここの生徒達と同じように、銃弾を受けても『痛い』だけで済むんだろう?"」
あー、アレですねぇ。
私は『フォトン』で身を守っているんですが、ここの人達はなんなんでしょうね……。
「"『神秘』がどうとかだったかなぁ……"」
はー、神様の次は神秘かぁ。ここの女子生徒の人達みんな、天使の輪っかみたいなのが頭にあるし、私、天国にでも飛ばされちゃったのかなー。
「"そういうわけで……お互いキヴォトスで頑張ろう。よろしくね、リク"」
はい、よろしくお願いしますね、安藤先生。
◆◇◆◇◆
さて、そんなやりとりがあったわけだけど。
ついでなので、私がこの世界に飛ばされた直後の話をしておこう。
私が飛ばされたのは、街中だった。雑居ビルが並ぶビル街って感じの場所で、そこは騒乱の場となっていた。
なにやらブレザーやセーラー服を着た女子学生達が、銃を持ってあちらこちらで弾を乱射していたんだ。
サバゲー会場にでも迷いこんだかな? そう思った私に、流れ弾が当たった。
「痛えっ!? あっ、これ実弾じゃん! 金属弾だ!」
アークスは大気中に存在する『フォトン』という不思議粒子を取り込み、不思議パワーを発揮する。
その防御力は、サバゲーに使うBB弾なんてものは皮膚に到達することすらなく弾くほどだ。だが、私の頭に当たった流れ弾は、私に痛みを与えた。
アークスとしての任務で、実弾は何度も食らったことがある。
惑星リリーパという星には機械兵器のエネミーが存在し、実弾をメインにした攻撃をしてくるのだ。
そして先ほど、その機械兵器の実弾と同じ痛みが、私を襲った。
「ええっ、じゃあここ……、戦場ってこと……?」
学園の制服を着た少女達が、実弾を撃ち合っている。どう考えても修羅場だ。
だが、しかし。
「いたっ、あいたたたた」
「ぎゃー、にげろー」
「てったい、てったーい!」
実弾を食らった少女達は、まるでフォトンに守られたアークスである私のように、大きな怪我もせず痛がるだけのようだった。
「なんだここ……」
少女達を見るに、フォトンを使っている様子はない。なのに、実弾が当たっても「痛い」だけで済んでいる。なんなんだ、この人間の姿をした不思議生物は。頭ファレグ*2か?
あ、頭。なんかみんなの頭に、天使の輪っかみたいな綺麗な何かがついている。
それによく見てみると、天使の羽みたいなのを背中から生やしている子もいるぞ!
うーん、もしかしてこの子達、天使か何かかな?
私は神様の力で天国へ飛ばされたのか?
と、そんなことを能天気に考えていたときのこと。
「なんだあいつ?」
「大人かー? 変な格好しやがって」
「もしかしてカイザーPMCか?」
「めんどくせえ、まとめてやっちまえ!」
周囲の天使達の銃口が、なぜか私に向いた。変な格好とは失礼な。そりゃあ学生用の制服の類じゃなくて、オラクル船団特有のSFっぽい服を着ているけどさ。
って、いたっ、いたたたたたたっ! 集中砲火とかズルくない!?
「ヒャッハー、まるでカカシだぜー!」
「オラッ! 泣けッ! 泣きわめけッ!」
「止めてほしかったら土下座でもするんだな! オラァ!」
いったー! くそー、こうなったら反撃だ!
私はアークス用のアイテムパック*3から武器を取り出し、構える。
「そっちが泣いて謝れやッ!」
愛用の
弧を描いて飛んだ砲弾は、三人固まっていた黒セーラーの天使達の足元に着弾。爆発を起こし、ギャグ漫画のように天使達を吹き飛ばした。
「よし、死んでないな!」
地面に倒れた三人の天使達を確認した私は、大砲をさらに別の方向へと構える。
「げえっ、あの大人やべえッ!」
「バズーカーとかありかよ!」
「逃げろーッ!」
「逃がすかボケー! あと誰が大人じゃ! どこからどう見てもうら若き乙女やろがい!」
私はユニオンランチャーにフォトンをさらに込め、こちらに向けて銃口を向けてきた周囲の天使達を吹き飛ばした。
私に銃口を一切向けなかった天使達もいたが、そちらは無視。とりあえず敵ではないと判断しておく。
そして、吹き飛ばした天使達のいる方向から、さらに増援らしき者がやってきた。
フルフェイスのヘルメットを被った天使達。そして、戦車。
……戦車?
「やっぱりここ、ガチの戦場だった?」
戦車とは戦ったことがある。エーテル地球の東京でだ。でもあれは、エーテルが作り出した仮初めのハリボテ戦車で、挙動も本物とは言いがたい代物だった。
しかし、この戦車は、どうにも本物っぽい。重厚さがハリボテ戦車とは違うんだよね。
その戦車は、砲塔を回転させ、私に狙いを付けだした。
「お、おわーッ!」
私はとっさにその場で前方にダイブロール。地面を転がった私の頭の上を砲弾が通り過ぎていく。
殺す気か! それとも戦車砲でも天使は死なないのかな!?
くっそー、戦車がなんぼのもんじゃい! こちとら空飛ぶ戦艦大和を破壊したこともあるんだぞ! もう、戦車の乗組員もろとも吹き飛ばして――
「"ハスミ、戦車に《アーマーピアッシング弾》"」
と、不意にそんな男性の声が聞こえ、どこからか飛来した弾丸が戦車に突き刺さった。
「!?」
大砲を構えながら、私は声の方向へ目を向ける。
すると、そこには隊列を組み戦車へ銃口を向けている、三人の天使の姿が新たにあった。さらに、その隊列の後方では、白いスーツを着た大人の男性が、ピンク髪の天使に守られながら三人の天使に戦闘の指示を出していた。
大人の男性の指示を聞くに、彼らの狙いは戦車。どうやら、私の敵ではないようだ。
頼もしい援軍に、私は大砲を再度構えて笑みを浮かべる。そして、大砲からグレネード弾を撃ち出すフォトンアーツ*4《ディバインランチャー零式》を戦車に向けて放った。
これが、私ことアークスの『リク』と、連邦捜査部シャーレ顧問の『