【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
「できたね」
汗をハンドタオルでぬぐいながら、私が言う。
「できましたねー」
カラカラとした笑顔で、コトリが言う。
「うつくしい……」
うっとりとした表情で、ヒビキが言う。
「今回は、本当にやりがいがあったね」
締めるように、ウタハ部長が言う。
「フォトンリアクター付きライドロイド、完成ー!」
私がそう宣言すると、エンジニア部の一同は一斉にバンザイをした。
いやー、ここまで来るまで結構かかったね。私がキヴォトスに来てから一ヶ月くらい?
……いや、設計図はあったとしても、一から作ったにしては期間短いな!?
え、ちょっと。どうなっているのエンジニア部の技術力。恒星間航行ができる宇宙文明の最新技術が詰まった飛行マシンだぞ!?
「では早速、試乗と行きましょう!」
「誰から乗る……?」
「部長権限使っていいかい?」
と、驚愕している私を尻目に、いつもの三人がやいのやいのとテストパイロットの座を奪い合っている。
私はフォトンリアクター未搭載の試作機を散々乗ったので、その座は譲るが……喧嘩はしないようにね。
そうして激しいジャンケンを繰り広げる様子を私は遠目に眺めながら、スマホをいじる。
スマホで完成したばかりのライドロイドの写真を撮り、第一号機完成でーす、と各所に知らせてみた。
すると、先生がすでにミレニアムに訪れていたらしく、ゲーム開発部のメンバーと一緒にエンジニア部を訪ねてくると知らせてきた。
「あはは、『ミレニアムプライス』は貰った!」
ウタハ部長にそのことを伝えようと思ったが、工房内でライドロイドをゆっくり飛ばすのに忙しいようなので黙っておく。
ちなみに部長が口走ったミレニアムプライスとは、ミレニアムサイエンススクールが開催する品評会だ。ミレニアムに存在する様々な部活や研究会が成果物を持ち寄り、審査員達が順位をつけて優れた発明品と認定する催し物である。
ウタハ部長は、このライドロイドをそのミレニアムプライスに出品するつもりらしい。
こちらとしても、賞を取ってくれれば市販する際に箔が付いて売りやすくなるので、大歓迎である。
それから三人が順番にライドロイドを乗り回す様子を眺めていたら、工房に安藤先生が訪ねてきた。先生の背後には、猫耳を思わせるヘッドギアを付けた、双子らしき生徒が同行していた。
双子を率いて先頭を歩いて近づいてくる先生に、私は笑顔で話しかける。
「やっほー、先生。とうとう完成しましたよ、誰でも乗れるライドロイド」
「"うん、すごいね"」
「でしょうー。ミレニアム自治区の公道や上空を走らせる規則とかは、これからセミナーと話し合わなくちゃいけないですが……、とりあえずは一区切りということで」
私がそう言うと、先生は私のことを褒め始めた。いやー、照れるね。私一人で開発したんじゃないんだけども。
と、そんなことをしているとエンジニア部の面々も先生の存在に気づいたのか、ライドロイド試乗の順番待ちを止めて、こちらに近づいてきた。ライドロイドには現在、ウタハ部長が乗っている。
「そちらはシャーレの先生かい? ようこそエンジニア部へ」
ライドロイドの上から部長が挨拶した。
すると、先生に同行していた双子が、目を輝かせて「格好良い」とライドロイドを褒める。
その称賛に気をよくした部長が、ほこらしげに言った。
「ミレニアムプライスに出品するので、今回の大賞は期待してほしい」
そんな台詞を聞いた双子は、なぜか表情を曇らせた。
「ミレニアムプライス……」
「ううー、ゲーム開発部だってきっと……!」
そんな双子の様子に、部長は何かに気づいたように言う。
「ゲーム開発部……そういえば以前、ミレニアムプライスに出品していたね」
「えっ、『テイルズ・サガ・クロニクル』を知っているんですか?」
「ああ。プレイはしていないけれど……」
「ほあー、天下のエンジニア部に知られていたとは……」
ふーむ、この双子が、今回先生に救援要請を送ったゲーム開発部の部員かぁ。
高校生が部活動で開発したゲームって、そんなに興味をそそられない。けど、ミレニアムサイエンススクールの技術レベルで開発したゲームと思えば、実はすごいゲームの可能性もある。
でも、すごいゲームを作る部活が、廃部の危機で先生に救援を求めるかというと……。
まあ、そこは先生のやるべき仕事か。アビドスのときと違って、外部の戦力が必要なわけでもないから、私の出番もないだろう。
そう思っていたんだけど……。
「"これからゲーム開発部と出かけるから、その間、リクには一つ頼みたいことがあるんだ"」
「あ、はい。シャーレ部員としての仕事ですか?」
「"そういうわけではないけどね。これ、プレイして感想を教えてね"」
そう言って先生に渡されたのは、一枚のディスク。ディスクの表面には『テイルズ・サガ・クロニクル』と題字が印刷されている。
「これは……先ほど部長と話していた例のゲーム?」
「うん、私達ゲーム開発部が作ったRPGだよ。評判はいまいちだったけど……」
赤と緑の服の双子のうち、緑色の方の子が、不安げな表情でそんなことを言った。
廃部になりそうな部の作ったゲームをプレイするのか。ちょっと嫌な予感がしてきたな。
「"新作の開発の参考になるよう、プレイの感想を聞かせてほしい"」
「あ、はい」
先生に言われて、思わず返事をしてしまう私。
「"頼んだよ。ゲームには一家言あるんだよね?"」
うぐっ、以前のモモトークのメッセージを引き合いに出してきたぞ、先生。
まあ、やってやりますか。
「"では、私達は出かけてくるよ"」
そう言って、工房を去ろうとする先生。
その先生に、私は「どこへ行くんですか?」と尋ねた。
すると、先生ではなく双子の赤い方が答える。
「『G.Bible』を探しに!」
……開発ツールでも購入しにいくのだろうか。
私は先生が去った工房で、ゲームディスクを手に持ち首をかしげることしかできなかった。
◆◇◆◇◆
『コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた……』
「おおっとお。出だしからパロゲーの雰囲気がかもしだされたぞお」
私はエンジニア部の片隅にあったパソコンにゲームディスクを突っ込み、早速『テイルズ・サガ・クロニクル』をプレイ開始した。
ちなみに他のエンジニア部の部員は、ライドロイドの試乗に忙しく、私一人でのプレイだ。まあ、シャーレの部員を兼任しているのは私だけだから、仕方ない。
そして始まるチュートリアル。指示に従ってゲームパッドのBボタンを押して装備を……。
『ドカ――――ン!!』
「!?」
『<GAME OVER>』
指示に従ったら、なぜか唐突に画面内が爆発してゲームオーバーになった。
「……パロゲーじゃなくて、川越ゲーだったのかな……?」
うん、のっけからインパクトだけは十分だね。インパクトだけは。
まあ、気にせず進めていこう……。
『<GAME OVER>』
お、おう。じゃあ次は別の行動を……。
『<GAME OVER>』
理不尽すぎない?
それから私は、なんとか気を取り直してゲームを進めていく。
しばらくプレイを続け、何度もゲームオーバーを繰り返しながら、物語は進んでいく。
『ごめんなさい。私は植物人間ですので、女性に対して気軽に声をかけることはできません』
「植物人間なら、男女関係なく声かけられないやろがい!」
プレイしていて頭がおかしくなりそうな展開が続く。
最初はね? 素人がRPGツクールで作ったような、二十分弱で終わる『ゲー無』が待っていると思っていたんだよ。
でも、なんかこれ、無駄に壮大というか、しっかりテキストが作り込まれているんだよね。しかも、そのテキストが何を言っているのか、全然分からない。
これはあれだ。プレイするドラッグとか、そう言われる類のものだ。
「視聴者の突っ込みを受けながらプレイ風景を配信すれば、ドッカンドッカン受けそうだな、このゲーム……」
まあ、終わる頃には配信者も視聴者も脳がやられて死屍累々になっているだろうけど。
やがて、ゲームは終盤を迎える。
そして、なんかよく分からない展開のまま物語はメリーバッドエンドを迎えた。
『TIPS:周回をしてトゥルーエンドを探そう!』
エンディングの最後に、そんな開発者からの助言が残されていた。
「……いや、これプレイ後にもう一周する気起きる人、そうそういないでしょ」
私はヘロヘロになりながらスマホを取り出し、なんとか先生へメッセージを送る。
▲MomoTalk ⍰
| ゲームクリアしたよ |
| ありがとう |
| 開発者への助言はある? |
| ゲームシステムは十分 |
| レトロゲー感もしっかり出ていた |
| でも… |
| シナリオが意味不明すぎるので… |
| ライターとなる部員を集めよう |
| 伝えておくね |
……廃部になりそうな部活に、シナリオライターの才能がある部員が入ってくるかは分からないけどね!
いや、本当にゲームシステムはちゃんとしていたんだよ。レトロなギャグRPGとして、グラフィックも頑張りが認められる出来だったし。
でも、シナリオが埼玉県川越市のRPGすぎて、とにかく脳が疲れるのだ。
ある意味で、このゲームのシナリオを書いた人は、ゲームを作る才能にあふれていると見える。ネタゲーの才能だが。
しかしだ。
格式高いらしいミレニアムプライスで、この類のネタゲーが評価されるかというと……うん。
二週間後に迫ったミレニアムプライスで成果を出さないと廃部になるとかだったら……先生、ゲーム開発部をどう導くつもりなんだろうなぁ。
残り二週間ってことは、新作の開発ももう佳境だろうし*1、今さら手を入れられるんだろうか……。