【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在   作:Leni

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11.聖剣フォトンレイ

 私がゲームをしている間にも、エンジニア部の面々はライドロイドの試乗を終え、次に何を開発するか議論を交わしていたようだ。

 そうして決まった開発品目は、予想を外さず人型搭乗ロボット『A.I.S』であった。

 

 学生起業をする身としては、使いどころが限られる兵器よりも、もっと汎用性の高い商品を送り出したいんだけど……。まあ、ライドロイド開発ではみんなに活躍してもらったし、ここはご褒美感覚で機能制限版A.I.Sの情報を提供しようか。

 

「では、どのパーツから開発します?」

 

「それはもちろん……」

 

「主砲からだね」

 

 あー、主砲かぁ。A.I.Sのメイン兵装には、銃弾を放つ『ソリッドバルカン』、ブレードで斬りつける『フォトンセイバー』、ホーミングするグレネード弾を三発撃ち込む『フォトングレネード』がある。

 だけど、それとは別に決戦兵器とも言える主砲が存在する。その名も『フォトンブラスター』。

 

 攻撃性のあるフォトンエネルギーの束を敵に向けて放つ……簡単に言うとビーム兵器だ。

 照射時間はそれなりに長く、しかも一度撃っても一二〇秒でリチャージが完了し、再度撃てるようになる。

 

 アークス製端末から予めスマホに移しておいた設計図を渡すと、エンジニア部の三人はその設計図の解釈と代替パーツの選定で、騒がしくし始めた。

 いやあ、私も混ざってもいいんだけど……もう時間も遅いからね。まだ設計図の確認段階で徹夜する気もないし、私は大人しく退出することにしよう。

 

「それじゃあ、お先に失礼しまーす」

 

 そう言って工房を出るが、返事はこない。まあ、いつものことか。

 とりあえずシャワーを浴びて、それから学園の食堂で夕食を取るとしようか。今日の夕食は麻婆定食の気分かなー。

 

 と、一晩ぐっすり寝て川越ゲーで汚染された脳を洗浄し、翌日の授業を真面目に受け*1、放課後。

 エンジニア部に行くと、なんとそこには、驚きの光景が。

 

「やあ、リク。君には悪いけど、先にフォトンブラスターの開発を終えておいたよ」

 

 ……あのー、ウタハ部長。なんで、一晩で主砲が完成しているわけ?

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 気を取り直した私は、とりあえず試作フォトンブラスターのパーツチェックを行なった。

 A.I.Sはフォトンを扱えるアークスが乗ることを前提とした兵器だ。だから、武装に使われるフォトンは搭乗者であるアークス本人がメインとなって供給するわけだけど……。もちろんエンジニア部の三人はアークスが使用すること前提の兵器では満足しない。

 試作フォトンブラスターには、大気中のフォトンを効率良く集める機器とフォトンリアクターが取り付けられており、アークスでなくても撃てるように改造されている。というか、A.I.Sに取り付けなくても撃てるな、こりゃあ。

 よくもまあ、一晩で作ったものだね。

 

「しかし、これでは未完成ですね」

 

「そうだね……道半ば」

 

「ああ。本来のフォトンブラスターは、ソリッドバルカンと合体して真価を発揮するマルチウェポンだからね」

 

 徹夜明けの三人娘がそんなことを口々に言った。

 

 うん、そうなんだよね。

 A.I.Sのアームが握ることになるブラスターとバルカンの組み合わせ。これは様々な機能が詰め込まれたよくばりセットなんだ。なんというか、二つを合体させたり分離させたりして、複数の役割をこなすみたいな動きをする。

 

 だから、フォトンブラスターを作っただけでは未完成だと言える。

 

「よーし、それじゃあ、次の兵装をくっつけていきましょうか!」

 

 コトリが目の下に隈を作りながら、皆にそう発破をかける。いやー、私は寝た方がいいと思うんだけどね?

 いやまあ、それよりもだ。

 

「これ、試し撃ちした?」

 

 私がそう言うと、エンジニア部三人衆は一斉に「あっ!」という顔をした。

 あのねぇ。まずは単体試験をしておかないと。いきなり結合試験とか勘弁だぞ!

 

 それじゃあフォトンブラスターの試験をしようと言うことで、代表してヒビキが試そうとするが……。

 

「ん……大きすぎる重すぎる」

 

 ……人型搭乗ロボットが持つはずの兵装だからね。人が持って使うことは想定していない。

 というわけで、何かに固定して大砲のように撃つべきかと話し合いが始まった。

 

 私もその話し合いに参加していたんだけど……不意にエンジニア部にお客さんが訪ねてきて、話し合いは中断することになった。

 

「エンジニア部のみんなー」

 

 おっと、やってきたのはゲーム開発部の双子と先生だ。それと他に、ゲーム開発部のメンバーなのか何なのか、黒髪のミレニアム生も後ろに付いてきている。

 

「実は、エンジニア部に頼みたいことがあるんだよね!」

 

 双子の赤い方が、ウタハ部長に絡みにいく。

 ウタハ部長は嫌な顔一つしないで、それに対応する。そして、双子の赤い方から、ゲーム開発部の用事が語られた。

 

 なんでも、このたびゲーム開発部は廃部回避のために新入部員を迎えることになった。

 しかしその生徒は、まだキヴォトスの生徒としての必須アイテムである銃を所持していない。そこで、ミレニアム中の武器が集まるエンジニア部に、いらない銃を貰いにきたとのことだ。

 

 すると、ウタハ部長は頼られたことを嬉しく思ったのか、機嫌良くそれに応えた。

 

「なるほど、いい選択だね。試作品ならばどれを持っていっても構わないよ」

 

 そうして始まったゲーム開発部の試作品漁り。

 だが、エンジニア部クオリティと言えばいいのか、余計な機能がついて使いづらいものばかりが出てくる。まあ、試作品だからね。

 やいのやいのと銃を選んでいく一同。だが、そんな中、新入部員と紹介された黒髪の生徒は、一つの兵装をじっと見つめていた。

 それは……フォトンブラスター。

 

「こちらは……?」

 

 新入部員のアリスが、ペタペタとフォトンブラスターの銃身を触っていく。

 それを見て、ウタハ部長が困ったような顔になる。

 

「ああ、それも確かに『試作品』だね。しかも、たったいま完成したばかりの」

 

 すると、双子の緑色の方が、近寄ってきてフォトンブラスターをマジマジと観察し始めた。

 

「これは……大砲?」

 

 すると、今度はコトリがやってきて、緑の子に向けてセールストークを始めた。

 

「お客さん、お目が高い! こちら、人型決戦兵器A.I.Sの主砲『フォトンブラスター』です!」

 

「人型決戦兵器……! なんか凄そう……!」

 

「フォトンという最近新たに発見された粒子から得られるエネルギーに攻撃性を持たせて、長時間照射する兵装で、まあぶっちゃけて言うとビーム砲ですね!」

 

「ふおお……ビーム砲……!」

 

「ただ、一つ問題がありまして……」

 

「自爆でもするの?」

 

「いえいえ、追加武装がまだ未完成なのと、試験射撃をまだ行なっていないのです!」

 

「へー、試験射撃やらないの?」

 

「今からやろうとしていたのですが、なにぶん大きくて重いので、固定の方法で困っておりまして……」

 

 コトリが双子の緑色の方にそう言うと、新入部員アリスは不思議そうな顔をしてフォトンブラスターに触った。

 そして、そこから抱え込むようにしてフォトンブラスターをおもむろに持ち上げ始めた。

 

「ふおっ!? ふおおおお、フォトンブラスターが軽々と……力持ちさんですね!」

 

 コトリが驚愕して声を震わせている。いやあ、大型ロボット用の銃砲を人が持つとか、キヴォトスは相変わらずぶっ飛んでいるね。

 すると、それを見ていたウタハ部長が笑みを浮かべて、言う。

 

「ふふっ、これは手間が省けたね。このまま試験射撃を行なうことにしよう」

 

 そういうことになった。

 すぐさま工房に的となるスクラップが用意され、それ以外の物を避けて試験用のスペースが作られる。

 

「簡単に説明すると、引き金を引くとフォトンエネルギーでできたビーム……光の束が出るよ。そうだね、ゲーム開発部向けに言うと、最強の光魔法だ」

 

「最強の光魔法……!?」

 

 ウタハ部長の説明に、新入部員アリスが目を輝かせる。

 

「さらに今後の機能追加で、その武器はビーム砲の他に、銃にもグレネードランチャーにもなる。いわば、万能な存在である勇者のために用意された『聖剣』だよ」

 

「あー、最近のゲームの聖剣って、光のビーム撃つもんね」

 

 ウタハ部長のゲームにたとえた台詞を聞いて、双子の赤い方が納得するかのようにそう言った。

 

「わああああ、勇者の聖剣……!」

 

 アリスが興奮したようにフォトンブラスターをブンブンと振り回す。

 おおう、重いはずなのに軽々と扱っているなぁ。

 

「それでは、しっかり照準を合わせて撃ってくれたまえ。なに、照射時間は長いので、狙いは付けやすいはずさ」

 

 ウタハ部長に促され、アリスがフォトンブラスターを抱きかかえるようにして構える。

 

「刮目せよ、《フォトンレイ》!」

 

 何やら光の魔法っぽいアリスの技名宣言とともに、フォトンブラスターからフォトンエネルギーのビームが照射された。

 青白い光が解き放たれ、光で周囲を照らしながら突き進み、一瞬でスクラップを吹き飛ばし、工房の壁へと向かい、そして軽々と工房の分厚い壁を突き破った。

 それは五秒ほど続いただろうか。暴力的なまでの光の奔流が、ただ真っ直ぐと放たれていった。

 

 やがて、照射は終わり、銃身の冷却とフォトンのリチャージが始まる。

 試験射撃がもたらした結果に、ゲーム開発部のメンバーと先生はただ唖然とするばかり。

 

 一方、エンジニア部の面々は一箇所に集まってハイタッチを交わしていた。

 

「いやー、予想よりもはるかに高い威力でしたね! これがフォトンのもたらす光!」

 

「最強の光魔法も過言ではない……」

 

「ふふふ、主砲でこれなら、全兵装が完成したらどうなってしまうんだろうね」

 

 ……言わないでおこう。本物のフォトンブラスターは、これよりもはるかに威力があるということを。

 本物だったら工房どころか校舎が半壊していたかもしれない。

 

 ただまあ、キヴォトス内の生徒間の騒乱で使うには、威力は十分すぎると言っていい。

 なんだかんだで治安最悪のキヴォトスでも、殺人は禁忌だしね。……このエンジニア部製フォトンブラスターが直撃しても、キヴォトスなら死人は出ないよね? ちょっとだけ不安になってきた、今日この頃です。

 

「ごまだれー。勇者アリスは聖剣『フォトンレイ』を手に入れた!」

 

 そんなアリスの台詞を笑って受け入れたウタハ部長。彼女はアリスに、定期的にエンジニア部に来てフォトンブラスター改め聖剣フォトンレイを持ちこんで、改修を受けさせることを了承させた。

 これからあの聖剣は、ウサギの賢者の手により、銃やグレネードといった追加武装を増やされていくことになる。

 

 勇者アリスが聖剣を振るうとき、そのデータは賢者ウタハの手に渡ることになり……まあなんというか、試作品は収まるべき所へ収まったのでしたとさ。

 

*1
ディスクを用いた映像授業の類。担当教師は居ない。

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