【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在   作:Leni

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12.起業を前にして

 さて、ライドロイドも正式に完成し、エンジニア部もA.I.Sの武装開発に浮気しつつ、試供品としてのライドロイド複数台の生産を完了させた。

 そして、私はエンジニア部が所持している改造トラックで、このライドロイドをアビドス高校本校舎に運び入れた。

 

「はい、アビドスのみんなー。約束してたライドロイドだよー」

 

 アビドス校舎のグラウンドに停止させたトラックを降りて、私は集まってきていたアビドス生達にそう挨拶をした。

 そして、トラックの荷台から五台のライドロイドを降ろして、グラウンドに並べた。

 

「おおー」

 

 アビドス生の五人から、そんな声が上がる。まあ、なかなか格好良いフォルムをしているからね。アークス製のライドロイドとはまた違った形状をしていて、長時間の使用を前提とした、快適な乗り心地を実現している。

 

「じゃ、各自、自分のライドロイドを選んでね」

 

 私がそう言うと、アビドス生達が一斉にライドロイドに群がった。

 

「私、ピンクー」

 

「あっ、ホシノ先輩ズルいです!」

 

「ん、私は青……」

 

「赤に決めました!」

 

「うーん、本当に私が貰っちゃっていいのかしら」

 

 おっと、最後に不安そうに言ったのは黒見セリカか。

 彼女は確か……。

 

「ずっとお世話になっていたラーメン屋のアルバイトがあるから、こちらの手伝いはあまりできないんだっけ?」

 

 私がそう聞くと、セリカは身体を固くさせてうなずく。

 

「大丈夫だよ。これは宣伝のための試供品。学校とアルバイト先を往復するときに散々乗り回してくれればいいんだよ。それだけで、アビドスに住んでいる人達が、ぜひとも欲しいって思ってくれるよね?」

 

「ううーん、そうだけど、アビドス自治区に住んでいる人、もうそんなに多くないし……」

 

「逆に考えよう。アビドス自治区は人がまばらに住んでいるから、開いているお店の位置が地図上でバラバラになっているんだ。広いアビドス自治区で移動するには、徒歩じゃ無理。そこで、車以上の速度で飛べるライドロイドだよ。何せ、建物の上をまたぐようにしてショートカットできるんだ」

 

「なるほど、アビドスだからこその需要があるってわけね……。じゃあ、遠慮なく受け取っておくわ」

 

「そうしてくださいな。あ、もうみんな自分のマシンを選び終えてるよ」

 

「えっ、出遅れた!?」

 

 セリカが慌ててライドロイドを見ると、黄色い塗装のライドロイドが一台残されているだけだった。

 

「黄色かぁ……。あ、これ、ステッカーとか貼っていいの?」

 

「いいよー。もうそのマシンはセリカの物だから、好きにデコってね」

 

「えへへ……私のマシンかぁ……」

 

 そうして、セリカは皆に遅れてライドロイドにまたがり、マシンを起動させて空に浮いた。

 それからグラウンドの上をスイスイと進ませ、しまいには五人で空中チェイスなどを始めた。いきなり無茶するね。

 まあ、空中でぶつかっても、フォトンリアクターから発生したエネルギーでマシンと搭乗者の保護をするようになっているから、見た目ほどは危険ではないんだけどね。キヴォトスで出回っている対空砲を撃たれたら、さすがに撃墜されるけど。

 

 それから三十分ほどでライドロイドの試乗が終わり、興奮冷めやらぬアビドス生達を校舎の中に連れていく。

 今日は、ライドロイドの試乗会だけが用事ではないのだ。

 

「それでは、会議をはじめまーす。議題は、新会社の社名!」

 

 私がそう宣言すると、アビドス生達は「おー」と合いの手を入れた。どうもどうも。

 さて、ライドロイドが完成したのでいよいよ起業するわけだけど、起業するには新会社の社名が必要だ。そして、その会社は今後アビドス自治区の顔になる。そのため、ミレニアムのエンジニア部ではなくアビドスに社名の決定権を与えようと、わざわざ今日はここまでやってきたわけだね。

 

「では、どのような会社なのか、お手元の資料をご確認くださいー」

 

 私は用意してきていた会社概要をアビドス生達に確認させる。

 ライドロイドの販売・製造を始めとして、今後どのような事業を新会社で扱っていくかの資料である。

 

 資料は分かりやすく、かつ枚数を少なく作ってあるので、私の事業説明は十分もかからず終わる。

 そして、みんなが事業内容の概要を理解したところで、本題の社名を決めていくことになる。

 

「ん……『フォトンエレクトロニクス』なんてどう?」

 

 砂狼シロコが、早速案を出してくれた。なるほど、フォトンを扱う工業系の会社だと一発で理解できるね。

 

「うーん、その案はどうだろうー」

 

 と、ロリおじさん小鳥遊ホシノが否定の声を上げた。

 

「何か駄目だった?」

 

「うん、エレクトロニクスっていうのがねー。資料にある製品は、どれも『電力で動く』とは書いていないんだよねー」

 

「……ああ、なるほど」

 

「フォトンで動く製品を出すのだから、『エレクトロ』ではないってことですね」

 

 十六夜ノノミが、納得するようにそう言った。

 それから、アビドス生達がどんどんと発言を行なっていく。

 

「じゃあ、エレクトロニクスの代わりの単語は、フォトンニクス? フォトニクス?」

 

「フォトニクスでしょうね」

 

「なんとかフォトニクス社、ってことですか」

 

「それよりさー。目玉商品はライドロイドってことになっているけど、おじさんとしてはエーテル通信網の方が重要な気がするんだよねー」

 

「単なる通信技術じゃないの?」

 

「いや、これは革新的だよ。そして、インフラ整備は莫大なお金が動くんだよねー。想像したら、ちょっと怖いくらいだよー」

 

「じゃあ、エーテル通信が主体と言うことなら、エーテルを社名に入れるの?」

 

「そのままエーテルネットワーク社はどうでしょう」

 

「別の方向からも攻めてみない? ほら、この会社ってミレニアムで開発してアビドスで製造・販売するんでしょう? 二校の架け橋になるってことだから、コネクトとかコネクションとか……」

 

「そのままブリッジなんて単語も悪くないかも」

 

 会議は踊る。踊りまくる。なんか段々、ただの女子高生同士の雑談にシフトしそうにもなるけど、そこは私が軌道修正して、最終的な案が固まった。

 

「では、会社名は、新技術のエーテル通信とフォトンエネルギーを扱う会社だと一発で分かるように、『エーテルフォトニクス』ということで決まりましたー」

 

 最後に私がそう宣言すると、アビドス生の五人達が一斉に拍手をしてくれた。

 さて、社名も決まったし、後はミレニアムの生徒会『セミナー』と連邦生徒会に学生起業をする旨の書類を提出するだけだ。アビドス生徒会はホシノがいるから、アビドス側で必要な書類はホシノに用意してもらうとしよう。

 

 とりあえず、セミナーに時間を取ってもらえるよう、セミナーの一員でもあるユウカ会計に連絡を取っておこうか。

 

 ▲MomoTalk

 

ユウカ会計、ちょっといい?

 

 

 ん、既読が付かないな。忙しいんだろうか。この時間なら、セミナーに詰めて仕事をしているはずなんだけど……。ミレニアムに来ている先生とイチャイチャしていたならゴメン。

 

 仕方ないので、私はアビドスのみんなと別れ、トラックを運転してミレニアム自治区まで帰還した。

 アビドスからミレニアムまでは結構距離があり、日はスッカリ落ちている。そんな中で、ライトを照らしながらエンジニア部所有の車庫にトラックを駐車したところで、改めてスマホのモモトークを確認した。

 ん、メッセージがきているね。私はそのままやりとりを開始する。

 

 ▲MomoTalk

 

ユウカ会計、ちょっといい?

 

ユウカ

ごめん忙しかった

ゲーム開発部に襲撃受けてた

用件はなに?

 

襲撃!?

いったい何が

 

ユウカ

用件はなに?

 

お、おう…

先日の起業の件、おおよそまとまったので

明日以降、セミナーで時間を取ってください

 

ユウカ

了解

はあ……みんなあなたみたいに

しっかりした子だったらね

 

マジで何があったし

 

 

 廃部の危機にあるゲーム開発部が、セミナーを襲撃か。本当にいったい何があればそんなことになるのやら。

 

 その後、情報を方々で集めたら、事情がなんとなく分かってきた。

 ゲーム開発部は『G.Bible』なるゲーム開発ツールを手に入れたが、起動するにはハッカー集団ヴェリタスの『鏡』というツールが必要だった。

 しかし『鏡』はすでにセミナーによって押収されており、ヴェリタスの手元にはなかった。そこで、ゲーム開発部はヴェリタスと、さらに私以外のエンジニア部と徒党を組んでセミナーの差押品保管庫を狙ったそうだ。そして、差押品保管庫を守っていたエージェント集団『C&C』と、ゲーム開発部連合が激突したらしい。

 

 ゲーム開発用ツールを起動するためだけに、これだけのことが起きた。

 いやあ、キヴォトスは相変わらず頭がおかしくなりそうな殺伐とした都市だねぇ……。

 

 ちなみにゲーム開発部側には先生が味方に付いていたので、敵役にされたユウカ会計は心底へこんでいるらしい。かわいそ……あとでスイーツの差し入れでも持っていってあげよう。

 

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