【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在   作:Leni

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 ▲MomoTalk

 

というわけで古巣と連絡がついたよ!

 

先生

おめでとう!

宇宙を旅する船団かぁ

ロマンだね

 

だよねー

これで外敵がいなければもっとよかったけど

残念ながら戦いの連続なんだよねぇ

 

先生

スペースオペラだね

 

宇宙海賊とかは見たことないけどね!

 

先生

連絡がついたということは

古巣に帰るの?

 

帰らないかなー

連絡が付いただけで

キヴォトスの座標は不明だって

 

先生

そっか

ならお別れしないで済みそうだね

 

私も卒業まではこっちにいたいかな

新開発したいガジェットとかあるし

 

ところで先生は次の出向先決めた?

 

先生

SRT特殊学園っていうところが閉校

していて、そこ関連のお仕事かな

 

廃校、廃部、退学の次は閉校かー

そういう話が大きいのばっかやね

 

先生

閉校を防ぐわけじゃなくて

もう閉校したところに関わるわけだから

いつもとは違うよ

 

なるほど

たとえケースが似通っていても一人一人が

抱えている問題は違うとか

先生なら言いそう

 

先生

私に理想見過ぎじゃない?

 

 

 トリニティの問題が一段落付いたので、どうやら先生は次の出向先へ向かったようだ。

 困った生徒がいたら放っておけない人だから、休む暇がないんだよねぇ、先生って。

 

 私もエーテル通信塔の仕事が一段落付いたので、しばらく営業は夏の間に新規で雇った社員や、アビドス生に任せるつもり。営業もいいけど、開発チームで新商品をそろそろ用意しないと、せっかく会社が乗った新しい波から振り落とされちゃうからね。

 

 しかし、SRT特殊学園か……。

 確か連邦生徒会長の指揮下で動く特殊部隊を集めた学校で、責任者の連邦生徒会長の失踪により統制を失って閉校になったとかニュースで見たね。

 で、閉校の際に、SRTの所属部隊がそれに抵抗してあちこちで問題を起こしたとかなんとか。

 中には連邦生徒会を襲ったなんていう、クーデター一歩手前のことまでしでかしたケースがあって、大ニュースになっていたなぁ。

 

 こりゃまた、厄介そうな案件に首を突っ込んだものだねぇ、先生。

 ま、事態が大きくなったらまたシャーレ部員がヘルプに入るし、先生なら全部なんとかしてくれるだろう。今回の案件で、何をなんとかするのかは知らないけど。

 閉校の撤回とか? いや、それはないでしょ。責任者不在で閉校になったんだから、立て直すには連邦生徒会長を連れてこないと。

 

 ……先生が新しい連邦生徒会長を擁立しても、私は驚かないけどね。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ある日の放課後、エンジニア部の工房で私は部員のみんなを集めて大発表をすることにした。

 

「実は先日、古巣であるオラクル船団とエーテル通信が確立しましたー。はい、拍手ー」

 

「えっ、本当ですか?」

 

「ええっ……」

 

「それは由々しき事態だね」

 

 あれっ、諸手を挙げて喜んでくれると思ったのに、反応が微妙だぞ。

 私が首をかしげていると、おずおずとコトリが声をかけてくる。

 

「あのー、つまり、リクはオラクル船団に帰るということでしょうか……?」

 

 あっ、ああー、そうか。それを心配していたのか。

 

「大丈夫だよ。通信が確立しただけで、オラクル船団とキヴォトスを行き来する方法は不明なまま。なので、帰りません!」

 

「おお、そうですか! それはよかった! いえ、よくはないのですが……」

 

 よくはないか。まあ、本来の場所に帰れないことを本人の前で素直に喜べはしないだろうな。本心はともかくとして。

 でも、大丈夫。

 

「もしオラクル船団に帰れるようになっても、ミレニアムを卒業するまではこちらにいるつもりだよ。社長業だって道半ばだし、アークスがこちらの世界に来たときのための足場作りもしないといけないからね」

 

「ほっ……」

 

「よかった……」

 

「部員が減るんじゃないかと気が気じゃなかったよ。ただでさえ部の存続も危うい人数しか残っていないのに」

 

 ウタハ部長は部長らしい心配をするなぁ。まあ、エンジニア部は私も入れて四人しか居ないし、部長はもう三年生だからね。気持ちは分かる。

 しかし、エンジニア部の人達は、こんなにも私と離れがたいと思っていてくれたんだなぁ。ありがたいことだ。

 エーテル地球で学園に侵入したときは任務だったので、ここまで学園生活で積極的に友情を育むことはなかった。だから、キヴォトスでの楽しい学園生活は、なんともまあ前世の学生時代をつくづくと思い出すよ。卒業したくないでござる! 卒業したくないでござる!

 

「というわけで、本題に入るよー」

 

 友情再確認タイムを一方的に打ち切り、私は手を叩いて部員達の注目を再度集める。

 そう、今日はオラクル船団の話だけをするためだけに、みんなを集めたわけではないのだ。

 

「実はオラクル船団から、キヴォトスで公開していい技術のデータを貰いました!」

 

 私がそう言うと、三人は一斉に「!?」といった週刊少年マガジン顔になって、私に詰め寄り始めた。

 あー、困ります。お客様困ります。一度に来られては対応しかねます。

 と、いうわけでみんなを落ち着かせた後、一息ついてから私は話を再開させた。

 

「さて、技術と言っても多岐にわたり、三人それぞれ興味のある分野も少しずつ違うよね? そこでー、私から、みんなに共通の開発テーマを与えます!」

 

 私がそう言うと、三人は一斉に「えー……」という顔をした。まあ、情報を与えてもらって好き放題できると思っていたなら、そういう反応にもなるよね。でも、全部のデータを閲覧なんかして全てを検証なんかしていたら、それだけで今年の活動が終わってしまう。

 なので、私はエンジニア部にテーマという名の課題を与えることにした。

 

「今回のテーマはこちら! 『エーテルフォトニクス社』で販売できる新商品!」

 

 私がそう発表すると、三人はほぼ同時にブーイングをし始めた。

 

「リクの個人的な事情じゃないか!」

 

 ウタハ部長がそう言うが、それはちょっと違う。

 

「そうは言っても、ライドロイドの販売で稼いだ部費、M.I.Sの開発でだいぶ使いこんじゃったよね? それなら、また一発、新商品を当てて部費を確保しようよ」

 

「うーん、しかし、リクの会社で売る商品となると、機能の過搭載は駄目だろうし……」

 

「そりゃあ、商品だからね。余計な機能を付けて製造コストを上げるわけにはいかないんだよ」

 

「機能美は確かに素晴らしいが、エンジニア部の方向性とは正反対だよ」

 

 まあ、エンジニア部の方向性は、つけられる機能はつけまくって好き放題する、だからね。ライドロイドの量産型では、私が徹底的に機能を絞らせたけど。

 

「私は新商品の開発に賛成するよ」

 

 そう言ったのはヒビキだ。ウタハ部長が何故だと問い詰めるが……。

 

「『エーテルフォトニクス社』のマージンは、部費だけじゃなくて個人的にも入ってくる。お金は大事。具体的にはコスプレ衣装に使う生地をこだわっても財布が傷まなくなるよ」

 

「ヒビキの個人的な事情じゃないか!」

 

「それなら私も、資料集めにお金を使うので、収入増は大歓迎です!」

 

「コトリの個人的な事情じゃないか!」

 

 ウタハ部長、部員への突っ込み、疲れない?

 まあ、多数決で言うと三対一なので、エンジニア部のしばらくの行動は、新商品の開発で決定することにした。部長権限は使わせない。

 

「で、リクはどんな新商品を作らせたいんだい? どうせもう決めているんだろう」

 

 少しふてくされたウタハ部長がそう言ってきたので、私は正直に新商品の企画を発表することにした。

 

「うん、新商品は、『マグ』だよ!」

 

「マグか……」

 

 私の宣言に、エンジニア部の目は一斉に私の左肩部分に向いた。

 私の左肩の上。そこには、小さなロボットが浮遊している。実はキヴォトスにやってきてからずっとこのロボットは私の左肩の上を定位置にしている。これは、アークスの標準装備であるマグだ。

 私のマグは、猫の形を摸した『シャト』という種類のマグだね。

 

「確か、アークスの戦いをサポートしてくれる、戦闘マシンだったね」

 

 ウタハ部長は、普段のエンジニア部の活動中に、私がふと説明したマグについて覚えていたようだ。

 

「ああ、ときどき餌をやっていますよね。可愛いですよねー」

 

 お、そのコトリの着眼点はいいね!

 私は気をよくして、テーマの発表を続けた。

 

「そう、私が提案したいのは、戦闘兵器としてのマグではなく、ロボットペットとしてのマグだよ!」

 

 私がそう言うと、三人はキョトンとした目で私を見てきた。

 

「最初は小さいただの浮遊する球体。しかし、毎日餌をやり、成長させることで、様々な見た目に変化する。それがマグの醍醐味なんだよ!」

 

「成長……?」

 

 ヒビキが首をかしげたが、うん、マグは餌を食べて成長するんだよ。機械なのに。

 

「なるほど、電子ペット育成ゲームのようなことをリアルのロボットでやるつもりだね?」

 

 はい、ウタハ部長正解!

 というわけで、私が今回企画したのは、餌を食べて育つ大衆向けのロボットペットだ!

 

 そこまで発表したところで、三人は特に反論もなく企画を受け入れてくれた。成長する機械というワードが琴線に触れたらしい。

 受け入れられたところで、私はシエラから受け取ったマグについての資料を三人に配った。

 だが、この資料にはある問題があった。

 

「なんだか中枢部分がブラックボックスになっているような……」

 

 コトリが言った通り、肝心かなめのマグの中枢演算装置と動力源の情報が載っていない。

 餌を食べて増殖する機械部分はしっかりと載っているのだが、やはり伏せられた部分は気になるのだろう。だから、ここで私は、私が本来知るはずのない情報を三人に公開することにした。

 

「一般アークスには情報が伏せられているのだけれど、マグの中枢機関は、とある小動物を改造した生体脳が詰まっているよ」

 

「小動物の脳ですか!?」

 

「うわ……」

 

「さすがに引くね……」

 

 ふふ、だろうね。私も前世でPSO2の設定資料集を読んだときにこの情報を知ったときは、思いっきり引いたからね。

 ただ、これ、理には適っているのだ。

 

「改造された小動物は、アークスのようにフォトンをエネルギーに換える能力を持つ。さらに、それを機械装甲でおおうことで、アークスの戦闘に耐えうるだけの耐久性を確保してある。要するに、マグは改造生物のサイボーグなんだよ」

 

「ミレニアムでもそこまでやる部活は、さすがに少数派だよ……?」

 

 ウタハ部長がジト目になって私を見てくる。うん、ミレニアムってマッドサイエンティストの集まりに思えるけど、生き物の死に関しては割と敏感で、生体兵器みたいな冒涜的な発明品はまず見ないんだよね。

 さすがに薬学系の研究室は、動物実験をしているようだけど。

 

「リクには悪いけど、中に脳が詰まった商品はとても売れるとは思えないよ」

 

 と、ウタハ部長が言うが……それに関しては私も同意見だ。

 

「脳を使うのはフォトンを扱う高い能力を確保するためなので、ただのロボットペットには不要だよ。だから、今回のマグ開発では完全な機械製のロボットで行く!」

 

「ああ、そういえば戦闘用にはしないのでしたか。脳を使わないならば、開発に問題は生じませんね」

 

 コトリがホッとしたような顔で、そう言った。

 うん、ロボットペットに過剰なフォトンの運用能力なんていらないよ。それに、マグは古い技術であり、今のアークスの技術力なら完全な機械のロボットでもフォトンを十全に扱えるんだ。アークスが所有する『サポートパートナー』なんてまさにそうだね。

 

「ともかく、このマグに似せたロボットペットを作って、『エーテルフォトニクス社』で販売してみないかというのが、私の提案だよ」

 

 締めるように私がそう言うと、エンジニア部の三人は互いに向き合って、話し合いをし始めた。

 

「ロボットペットですかぁ。個人的に一機欲しいですね!」

 

「わたし的には、開発は有り寄りの有り……」

 

「武装はどれだけ付けていいんだろうか」

 

 そういうわけで、エンジニア部は新規に完全機械式マグの開発を進めることで合意した。

 ただ、名前をそのままマグとしてするのは、本来の小動物の脳を使うマグを連想してしまうので止めたいと言われた。そのため、新たに開発コードを付けることにした。

 それは、エクストラマグ。

 マグの先を行くマグという意味を込められたそれは、すぐに略されて皆から『エグ』と呼ばれるようになった。成長させる前の初期段階はただの球体のロボットなので、卵を意味するエッグに近くて、悪くない名前だよね。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 新商品の開発に取りかかってから、数日後。開発は順調に進んでいる。

 まず、エグの基本である浮遊機能は、新規にアークスの技術を使うまでもなく実現した。もともと、ライドロイドで空力に頼らず物を浮かばせる技術を研究済みなのだ。

 おかげで、ライドロイド用に生産されていたパーツを流用して、安価かつコンパクトにエグの浮遊機能を搭載することができた。

 

 さらに本来なら小動物の脳を収めるスペースに単純な構造の軽量フォトンリアクターを載せたり、最重要である餌を食べて装甲を増殖させる進化機能を搭載したりと、私達は開発を続けながらエグを弄り倒して存分に遊んだ。

 

 開発は順調だ。

 

「それじゃあ今日は、エグの進化先のデザインを決めていこうか」

 

 エンジニア部の工房で、そう意気込んだときのこと。不意に、スマホに着信が入った。モモトークや電子メールではない。電話だ。

 

 スマホの画面を見て、相手の名前を確認してみると……なんと安藤先生からだった。

 普段はモモトークでやりとりをしているのにわざわざ電話とは、よほど急ぎの用があるらしい

 そこまで確認した私は、すぐさま電話に出ることにした。

 

「もしもし、先生ですか?」

 

『"うん。リク、いきなり本題で悪いけど、頼みたいことがあるんだ"』

 

 本当にいきなりすぎるよ。ただ、やはり電話で伝えてくるほど、重要で緊急な状況にあるというのは予想がついた。

 なので、私は先生の言葉にハッキリとした声で応える。

 

「いいでしょう、我々シャーレ部員は、日々生徒のために頑張り続ける先生の助けとなるためにいます。要件をどうぞ」

 

『"ありがとう。実はね、リクには……ヴァルキューレ警察学校の不正の証拠を調べてほしいんだ"』

 

 ……今度は何に巻き込まれたんだ、先生。

 確か先生の今の出向先って、閉校したSRT特殊学園の生徒のところじゃなかった? この人、本当にすぐ厄介ごとを見つけてくるなぁ。

 

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