【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
エーテルとは何か。それを語るには、まずオラクル船団が存在する宇宙の歴史から話す必要がある。
遠い昔、宇宙の彼方に水の惑星があった。その惑星は自ら考える知性を持つ、一種の生命体とも言える星で、星全体を使った膨大な演算能力を有していた。
その水の惑星のもとに、ある生物が宇宙を旅してやってきた。その宇宙生物は水の惑星と交流を深め、水の惑星は宇宙生物に『フォトン』の知識を与えた。
フォトンの力を得た宇宙生物は自らを『フォトナー』と名乗るようになり、彼らは水の惑星に『シオン』という名を与えた。
そしてフォトナーは惑星シオンを外殻で包み、宇宙船マザーシップとした。さらに、外宇宙調査団『オラクル』を設立するなどして、フォトナーはフォトンの力で栄華を極めた。
宇宙に覇を唱えたフォトナーだが、彼らは欲深かった。高度な演算能力を持つマザーシップが一つでは足りないと、シオンの模倣体をいくつも造り上げた。
だが、それら模倣体はいずれもシオンの能力には届かなかった。中にはどうしようもない失敗作もあり、亜空間の先に棄てることまであった。
そのフォトナーの失敗は、やがて【深遠なる闇】という負の遺産を造り出すに至った。【深遠なる闇】はフォトナーに封印されるが、代わりにダークファルスを生み出し、フォトナーの文明はダークファルスによって滅びた。
それからダークファルスは、フォトナーによって造り出されたオラクル船団、そしてアークスと戦いを続けた。
オラクル船団は、生来的にフォトンを扱えるようフォトナーが造りあげた改造生物の末裔であった。
さて、ここまでがオラクル船団の存在する宇宙の歴史だが、途中にあったある出来事を思い出してほしい。
フォトナーは、シオン模倣体の失敗作を亜空間に棄てた。
この亜空間の先には何があったか。実は、地球のある別次元の宇宙があったんだ。
シオン模倣体失敗作……個体名『マザー』は、宇宙を漂流し、やがて太陽系に辿り着く。そして、マザーは太古の地球と衝突し、その後、マザーは『月』になった。ジャイアント・インパクトってやつだ。
そして、今から十二年前の西暦二〇一六年に月面調査をしていた人物が、眠っていたマザーの中枢と接触。そこでマザーは、人類に『エーテル』の力を与えた。
さて、本題。このエーテルとは何か。それは、マザーがアレンジした改変フォトンだ。フォトンとは少し性質が変わっていて、情報伝達能力に優れている。その性質から、地球では『エーテル通信』が最新のインフラになっているんだよね。
光回線や電波よりも速く、そして大容量を伝達できる。そんな夢のような情報伝達粒子なんだ。
だから、キヴォトスでもエーテルが観測できたってことは、エーテル通信がここにも敷けるってこと。
うん、だからね。
私が地球から持ちこんだ情報端末はエーテル通信ができるパーツが組み込まれているけどね。それ、一個しかないから、壊したら駄目だよ。本気で言ってるからね、私!
「大丈夫……基板を見るだけだから」
分解は覚悟していたけどさぁ……。本当に壊さないでよね、エンジニア部の皆さん!
◆◇◆◇◆
エンジニア部謹製のエーテル通信機が完成したところで、せっかくだからそれを作り上げたエンジニア部のイカれたメンバーを紹介するぜ!
三年生、
ウサ耳を思わせる特徴的なシルエットが魅力。彼女のような天才的ロボットエンジニアでなければ、曲者揃いのエンジニア部の部長は勤まらない。
「サポートパートナー、ハイ・キャスト……資料が、資料がほしい!」
一年生、
眼鏡が特徴のキュートガール。フォトンやエーテルの資料もすぐに読み解いた、どんな知識でも扱ってみせる才女だ。
「リクとは『A.I.S*1』について三日三晩語り合ってみたいものですねー」
一年生、
全身黒のファッションが光る。限られた面積に多彩な機能を詰め込む技師としての才能は天下一品。自爆機能は無駄? クソ機能多すぎ? だから何。
「これからの新作は……エーテル通信機能搭載を必須にする」
この三人をメインにして、エーテルとフォトンの研究を進めていくぜ!
「違いますよ、リク」
……ん?
「リクも含めて四人で新生エンジニア部です!」
……オーケー、コトリ。改めて、新メンバーを紹介するぜ!
一年生、
パステルグリーンの髪色がお気に入り。アークスの研究機関に出入りして学んだ技術を大放出してみせるよ。でもスパイ容疑だけは勘弁な。
「……と、いうわけで、エーテルとフォトン両方の観測が成功したところで、何から手を付けていこうか」
私がそう言うと、エンジニア部のメンバーが目を輝かせた。
そして、まずはコトリが私に向けて言った。
「回復剤は、キヴォトスにも速効性がある薬があります。なので、薬学系の部活に委託すればいいですよね」
その意見には、他の二人も賛成のようだ。エンジニア部は機械工学系の部活だからね。薬学や化学は専門外ってことだ。
「武器はー……フォトンを扱える改造人間じゃないと使えないなら、正直、食指が動かないですねぇ」
コトリのその言葉に、私は苦笑するしかない。
アークスが使う武器は、基本的にフォトンを扱えることを前提とした特殊装備である。だから、オラクル船団の人でも、生まれつきフォトン適性が低い人はアークスになれないんだよね。
「フォトン研究を進めるついでに、リクが自分で整備できるようになればいいよ」
うーん、ヒビキのこの言葉は一理ある。こんな見知らぬ世界に飛ばされたんだから、自分で整備できるようになるのが一番だよね。
「では、『A.I.S』の完成を目指すのはどうだろうか。うん、それがいい。部長権限で決定していいかな?」
「それは私も魅力に思いますけど、いきなり大物に挑戦できますかね? まずは基礎的な物から研究しませんか」
おっと、ここで強権を振るおうとしたウタハ部長に向けて、コトリが常識人っぽい発言をした。意外だ。
「なので、私がオススメするのはこれ! 『ライドロイド』です!」
「……私は『A.I.S』でも『ライドロイド』でもどっちでもいい。でも、コトリはなんでそれを選んだの?」
ヒビキが、コトリに向けて質問を投げかける。
すると、コトリはにんまりと笑って答えた。
「オートバイ感覚で乗れる個人用飛行マシン! これは売れ筋商品になりますよ! 部費ががっぽがっぽ!」
「おお……」
「なるほど。それはいい。部長権限で決定しようか」
なるほど、ライドロイドかぁ。ヒビキが説明した通り、一人乗り用の飛行マシンだ。ラスベガスでのアークス任務で散々乗ったなぁ。
でも、ライドロイドは、私が持ちこんだ設計図のそのままだとフォトンを扱える私にしか起動できない。そこんところはどうするんだろうか。
「では、まずは大気中のフォトンを動力に換える『フォトンリアクター』の設計からだね」
……おお、さすが部長。目の付け所がいいやん。
◆◇◆◇◆
▲MomoTalk ⍰
| 空飛ぶバイク、もうすぐおめみえ! |
| 一台欲しい…… |
| 先生は銃で撃たれたら死ぬ耐久性なんだよね? |
| それだと高所から落ちたら洒落にならないので |
| 先生は普通のバイクで我慢してください… |
| そんなー |
| まあ私は高所が苦手なのだけど |
| 高所恐怖症の人はアークスに向いてないね |
| とりあえずこちらはそんな感じだよ |
| 先生の方は最近どう? |
| アビドスって学園から救援要請が来たよ |
| 遭難者が出る広さの自治区らしいね |
| 遭難したら空飛ぶバイクで助けにいくね |
| さすがに遭難はしないよ |
◆◇◆◇◆
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