【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在   作:Leni

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36.対デカグラマトン防衛戦

 デカグラマトンによる先生への宣戦布告。それを聞いて、場は騒然とした。あのリオ会長ですら驚いている。

 なんともタイムリーすぎる話題に、私も驚いてしまう。フラグを立ててしまったか、なんてアホらしいことまで考えてしまう始末。

 

 そして、最初に正気へ返ったのはユウカ会計だった。

 

「安藤先生、ヒマリ部長。これまであったことを順番に話してください」

 

 そうして、二人の口から宣戦布告までの経緯が語られる。

 

 ヒマリ部長は、特異現象捜査部の部長だ。その特異現象の捜査対象として、今回、デカグラマトンが選ばれた。

 

『神を研究し、その存在を証明できれば……その構造を分析し、再現できるだろう。すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である……』

 

 そんな仮説を元に作られた、対・絶対者自立型分析システム。神性を探し出す人工知能。それがデカグラマトンだという。

 実は先生、そのデカグラマトンの存在をあのゲマトリアから事前に聞いていたらしい。なんでも、夏頃にシャーレ部員を率いて、デカグラマトンの手下と戦ったことがあるのだとか。夏頃なら私も忙しかったし、知らないのも仕方ないか……。

 そして、その報告書が、巡りに巡ってリオ会長のもとへと届いた。

 

 先ほども言った通り、デカグラマトンには手下がいる。『預言者』と呼ばれる存在だ。その手下の一体として、『ハブ』と呼ばれる個体がいるそうだ。

 ハブは元々、ミレニアムサイエンススクールの通信ユニットAIで、それを搭載する超高性能演算機関でもあった。それが、デカグラマトンと思われるAIによりハッキングされてしまった。そして、ハブは自ら『ホド』と名乗り、八番目の預言者であるとのメッセージを残して消えた。

 

 それにより、存在すら疑われていた対・絶対者自立型分析システム、デカグラマトンは実在すると、リオ会長は判断した。

 そしてリオ会長は、特異現象捜査部の部長にヴェリタスの部長、すなわちヒマリ部長を抜擢し、デカグラマトンの本格的な調査を任せたというわけだ。

 

 そして今日、ヒマリ部長はC&Cと先生を招集し、預言者の一体であると目されるビナーを調査しに向かった。

 アビドス砂漠では、ビナーの痕跡だけでなくデカグラマトンの配下と思われる多数の自律機械兵器を発見できた。先生達はそのデータを収集し、ミレニアムの特異現象捜査部の部室に帰還した。

 

 しかし、そこで突然、デカグラマトンが部室のサーバをハッキングしてきた。自称天才美少女ハッカーのヒマリ部長の防壁を軽々と突破してサーバに侵入したデカグラマトンは、電源を完全に落としたはずの部室を乗っ取り、先生にアプローチをかけた。

 デカグラマトンの目的は、先生が持つ連邦生徒会長が遺したタブレット端末。

 

 先生のタブレットは『シッテムの箱』と呼ばれる、謎の多い端末だ。

 そこへハッキングをかけようとしたデカグラマトンだが……。

 

「"アロナのパンチで撃退されていたね"」

 

 と、いうことらしい。アロナとは、先生のタブレットのOSだ。少女の姿をしたアバターで、天真爛漫に振る舞っている対話型AIだと先生はよく言っている。

 私が思うに、『シッテムの箱』にも何かすごい『オーパーツ』が組み込まれているのだろう。キヴォトスには古代文明のなんちゃらだとか、過去のすごいなんちゃらがあちらこちらにあるみたいだからね。

 

 さて、そのアロナに敗北を喫したデカグラマトンだが、負けた瞬間、部室にいたC&Cのメンバーに煽られた。

 すると、デカグラマトンはそれを挑発と取り、煽り返すように宣言した。同士である預言者を向かわせ、先生から直接『シッテムの箱』を奪うと。

 その宣言ののち、デカグラマトンは特異現象捜査部の部室のサーバへのハッキングをやめ、応答が止まった。

 

 明らかな宣戦布告。アビドス高校を廃校の危機に追いやった預言者ビナーと同等の存在が、デカグラマトンに率いられ先生を攻めにやってくる。それを緊急事態と判断したヒマリ部長は、先生を連れてセミナーの執務室まで急いでやってきたのが現在というわけだ。

 ちなみにC&Cと特異現象捜査部の部員は、デカグラマトンの撃退をするために本格戦闘の準備をしているので、ここには来ていないようだ。

 

 そこまで説明を聞いたリオ会長は、その場でゆっくりと立ち上がる。そして、室内に通るような声で、言った。

 

「私の弾劾は、少し延期してちょうだい。会長権限で、特殊作戦を発令させてもらう」

 

 その会長の宣言に、否を唱えるセミナーメンバーはいなかった。

 

「至急、要塞都市エリドゥに先生を移動させ、そこで防衛戦を行なうわ」

 

 会長の横領によって作られた要塞が、まさか先生を守るための砦になるとは……。

 まったく、何がどう転ぶか分からないものだ。

 

「さて、ユウカ。あなたの言うシャーレ最大の暴力装置……当然貸してくれるわね?」

 

「えっ、あー……そこは本人に聞いていただかないと」

 

 ん? もしかして私の話してる?

 会長が、私の方を向いている。

 

「道上リク。安藤先生を守るための戦い。参加してもらえるかしら?」

 

 そりゃ、考えるまでもない。

 

「当然! むしろここで仲間外れにされたら、さすがに怒ってたよ!」

 

「ここで暴れるのはやめてちょうだい……」

 

「怒るとは言ったけど、暴れるとは言ってないよ!?」

 

 ともあれ、こうして先生の『シッテムの箱』を巡る戦い、特殊作戦『対デカグラマトン防衛戦』が行なわれることになったのだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 私達は、すぐさま要塞都市エリドゥに場所を移した。

 エリドゥは、中央に巨大なタワーが建っており、そのタワーが都市の防衛システムを一括管理している。タワーにはヒマリ部長とセミナーの全員が入り、さらに今回狙われている先生もタワーの安全な場所に配置している。

 戦闘部隊の指揮は、その安全な場所から先生が遠隔で行なう。

 

 一方、戦闘部隊はC&Cのいつもの四人と、会長直属のメイド、トキがいる。トキは何やら格好良いパワードスーツを着て、タワーの入口を守る配置についている。私は遊撃だ。ライドロイドを持ってきたので、それを使って都市の中を縦横無尽に駆け抜けることを期待されている。M.I.Sは大きすぎて地上での運用が難しいため、乗ってきていない。

 そして、戦闘部隊は他にもメンバーがいた。それは……ゲーム開発部。そう、戦闘に関係ないアーティストの部活である彼女達が、援軍としてやってきたのだ。

 

 いや、本人達の大部分は戦う気などなかったようなのだが、そんなゲーム開発部に、一人だけテンションの違う者が混じっていた。

 それは、アリス。彼女は、デカグラマトンとその預言者を魔王の軍勢と判断し、勇者ならば魔王退治に行かなければならないと、作戦への参加を表明した。ちなみに特殊作戦の情報をアリスにリークしたのは、C&Cのアスナ先輩らしい。

 

 そうして戦闘準備を進める間にも、要塞都市に無人機の軍勢が迫っていることが判明した。要塞都市には多数のドローンが用意されており、それで都市の周囲へと放って偵察をさせていたのだ。

 敵の軍勢は、ミレニアム自治区の郊外にある廃墟から湧いて出て、次々とこちらへ押し寄せているらしい。

 

 その情報を受けて、リオ会長がエーテル通信で全員に向けて話す。

 

『あの方角から来るであろう預言者は、デカグラマトンによってハッキングされる以前は、キヴォトスの古の民『名もなき神』の遺産として存在していた』

 

 むっ、聞き覚えのある単語だ。アリスの正体が、『名もなき神々の王女』だったよね。

 

『すなわちAL-1Sと同列の技術によるもの。本来ならAL-1Sでの制御が可能なのだろうけど……残念ながらデカグラマトンによって変質してしまっている。破壊するしか止める方法はないわ』

 

 まあ、今さら戦闘以外で決着が付くとは思っていないよ、私も。

 そうして、敵の軍勢が要塞都市の入口まで到達する。

 

 それを映像で見ているだろう、ヒマリ部長が通信で言ってきた。

 

『預言者の姿を確認しました。機械兵器の軍団が、軍需工場『ケセド』によって生産された配下達。そして、巨大な多脚戦車が『ケテル』です』

 

 うわあ、新規に兵器を生産する預言者なんてものがいるのか。材料が十分にあるなら、長期戦になるぞ。

 そんなことを思っているうちに、敵の軍勢は要塞都市へ攻城戦を始めた。対空砲やドローン兵器が用意されているとはいえ、敵も大量の飛行兵器を送りこんでくる。

 敵の狙いは、当然ながら中央タワー。その侵入を防ぐため、私達の戦いが始まった。

 

 地上の敵は要塞都市の防壁に防がれているため、まずは空中の敵をどうにかせねばならない。そこで、私はライドロイドに乗りながら、エンジニア部が過剰に搭載した兵器でドンドン敵を撃ち落としていく。

 弾丸はフォトンを固形化して創り出すため、機関砲の弾切れの心配はない。

 

 そうして、空中戦を繰り広げることしばし。空から見える地上は、膨大な数の敵兵器に防壁を乗り越えられようとしていた。餌にたかる蟻の群れと言った様子だ。

 そこに、多脚戦車が到達し、激しい砲撃で防壁の一角が破壊された。その多脚戦車は巨大であり、そしてなぜか機体上部に『ヘイロー』が存在した。

 

「作戦本部、こちらリク! ケテルによって防壁一部突破されたよ!」

 

 そう報告すると、先生からC&Cに指示が飛ぶ。

 すると、私と同じようにライドロイド(市販品)に飛び乗ったC&Cの四人が、すぐさま防壁の破られた箇所に飛んでいった。

 さて、私もそろそろ降りて、あのケテルとかいう多脚戦車の相手をしに向かうかな。

 

 そう思った瞬間、リオ会長の声が通信から響く。

 

『――アバンギャルド君、発進』

 

 その言葉と共に、都市の一角から一体のロボット戦車が出現する。

 それは、奇妙ないでたちをしていた。脚部に戦車の無限軌道。その上部からガンタンクのように生える人型ロボットの上半身。本来、二本の腕が生えているべきところからは、四本の腕が生えて、それぞれの手に大きな盾とバズーカ砲、機関砲、ガトリング砲がすえつけられている。

 

 敵の預言者ケテルが多脚戦車なら、これは多腕戦車とでも言うべきだろうか。おそらく、リオ会長渾身の秘密兵器なのだろうが……人型ロボットの重要パーツである頭部のデザインが、致命的にダサかった。

 

 まあ、ダサくても強ければいいのだ。私が空中の敵を撃ち落としている間にも、中央タワーで操作する街中の隔壁がケテルを誘導していき……ケテルと多腕戦車、会長のいうところのアバンギャルド君の対決が始まった。

 多脚で素早く動き回るケテルと、四本の腕を柔軟に使って攻撃を仕掛けるアバンギャルド君。アバンギャルド君は見事にケテルの足止めをしてくれて、その間にも私は空中の敵を落としに落とした。

 

 だが、敵は次から次に補充されていく。敵にはどれだけ兵器のストックがあるというのか。それとも、リアルタイムで生産して送り届けているのか?

 いっそのこと、敵の進行ルートを逆算して軍需工場『ケセド』なる場所を襲撃してやろうか。そう思ったときのことだ。

 

 アバンギャルド君が不意に動きを止めた。

 そして、ケテルのアバンギャルド君への攻撃も止まってしまった。いったい何があった?

 

『そんな……アバンギャルド君が……』

 

 リオ会長の呆然とした声が通信から届いた。

 

「こちらリク! アバンギャルド君が停止したよ! 作戦本部は、何が起きたか把握している!?」

 

 私が通信に言葉を投げかけると、リオ会長ではなくヒマリ部長の声が返ってきた。

 

『リオの悪趣味なロボットは、ハッキングされました。おそらく相手は、ハブ……預言者『ホド』ですね』

 

 ここに来てハッキング!? そんなことが可能なのか? ……もし会長がアバンギャルド君を遠隔操作していたのなら、その操作系に割り込むことも可能なのか。

 くっ、ここでアバンギャルド君が敵に回ったら、戦況が一気にあちらに傾くぞ。

 どうするんだ、作戦指揮官の安藤先生!

 

『"リク、地上に降りてアバンギャルド君を破壊して"』

 

「ッ! いいんですか、私が空中の担当から外れると、タワーに飛行兵器が到達しますよ」

 

『"大丈夫、頼もしい援軍が到着してくれたから"』

 

 援軍? まさか他校のシャーレ部員ではないだろう。距離があって、そう簡単に辿り付けはしないのだ。

 いったい誰が。そう思ったら、聞き慣れた声が通信から聞こえてきた。

 

『さあ、暴れますよー!』

 

『リク、空中戦は私達に任せて』

 

『M.I.S隊、到着したよ!』

 

 それは、まさかのコトリ、ヒビキ、ウタハ部長の声。

 エンジニア部の三人が、それぞれM.I.Sを駆って戦場に舞い降りた。

 

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