【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在   作:Leni

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40.ヴァルキューレの救出劇

 ライドロイドでD.U.内を飛ぶ。カイザーPMCの戦力がドンドン投下されてくるが、全てライドロイドの武装でなぎ倒していく。

 弾切れや燃料切れはない。弾丸はフォトンを固形化させて作り出しているし、燃料は私の身体の中でフォトンから変換して生みだしているからね。

 一方、同行するカンナのライドロイドはというと、市販品なので本来なら武装が付いていないはず。だがしかし、改造したのだろうか、機関砲が二丁備え付けられていた。

 

「さすがはミレニアム、すごい武装だな……!」

 

 機関砲をピンポイントで撃ちながら、カンナがこちらに声をかけてくる。

 まあ、私はキヴォトス製ライドロイドの開発者の一人だからね。当然、市販品よりは高性能な機体に乗っているよ。

 

 そして、カンナのライドロイドはさすがに弾切れという概念があるのか、先ほどから無駄撃ちをしていない。フォトンを固形化して弾丸にする技術は、エンジニア部の外にはほとんど出していないからね。フォトン固形化技術を外に出したのは、アリスの聖剣に追加機能として付けた『ソリッドバルカン』くらいしかないんじゃないかな。

 

 そんな性能差がありつつも、カンナは私に食らいつくようについてきて、カイザーPMCに攻撃を食らわせ続けている。

 カイザーPMCをなぎ倒し、やがて私達はヴァルキューレ警察学校の分校まで辿り着いた。分校の周りにはカイザーPMCが多数展開しており、重要な何かがあることを隠すことすらしていなかった。

 

 それを見て、私は上空からカンナに向けて言う。

 

「うん、先生はあそこにいそうだね」

 

「だが、あの数を突破できるか?」

 

「押し通る! 突進するから、私の後ろをピッタリとくっついてきて!」

 

「ははっ、そういう頭悪いやり方も、たまにはいいな!」

 

 そして私はライドロイドのアクセルを全開にして、空の上から分校の校舎に向けて突撃を開始した。

 当然、戦闘ヘリやドローン兵器が行方を阻もうとするが……。

 

「《ホーミングミサイル》からの《回転体当たり》じゃー!」

 

 包囲に穴を空けるように前方を吹き飛ばし、そこを突進して無理やり突破した。

 さらに、校舎の玄関を体当たりで破壊して、私達は校舎の中へと侵入する。

 

「先生が捕らえれているところ、分かる?」

 

 校舎の廊下をライドロイドで進みながら、私はカンナに話しかけた。

 

「おそらくは留置場だ。言ってしまえば地下牢だな。案内するが……ライドロイドは降りなくていいのか?」

 

「もし降りたら、後からついてくるカイザーの兵隊に機体を確保されて、脱出困難になるよ!」

 

「分かった。……はあ、校舎の廊下を乗り物で走るとか、不良になった気分だ」

 

 カンナはそう言い、私を先導するようにゆっくりめでライドロイドを走らせ始めた。

 その道中、ヴァルキューレ警察学校の生徒が私達に立ちはだかろうとするが……カンナが率先してそれを撃って倒した。

 

「わお、同じ学校の生徒相手でも容赦ない」

 

「いや、こいつらはヴァルキューレ生ではない。各学校を退学になったところをカイザーPMCが確保した人員だ。つまり、生徒に変装したヘイロー持ちのカイザー社員だぞ」

 

 私の茶化しに、カンナのそんな答えが返ってきた。

 

「ちゃんと制服着ているのに、見て分かるものなの?」

 

「これでも、ヴァルキューレのスキャンダル発覚前は、校内でもそれなりに偉い立場にいたんでな。生徒達の顔はある程度知っている。それに、奴らの中には、他校の不良生徒としてブラックリストに載っていた顔もあった」

 

 よく分かるなぁ。この人、かなり優秀な警察官なんだろうな。

 そして、スキャンダル発覚で偉い立場から落とされたということは、カイザーグループとの癒着にも関わっていた可能性がある。うーん、人には裏表があるってことだね。

 

 そうして、校内を進むことしばし。私達は、鉄格子の牢屋が並ぶ場所に突入した。

 

「先生、私がきましたよ!」

 

 牢屋の一室に先生の姿を見つけたので、私はライドロイドを降りて駆け寄った。

 

「"リクだね。ありがとう、助けにきてくれたんだ"」

 

「今、鍵を開けます」

 

「ああ、確かこの留置場の鍵は――」

 

 カンナもライドロイドを降りて、鍵を探そうとし始める。だが、その時間も今は惜しい。アークス端末のマップ機能に、カイザーPMCの兵隊らしき光点がこの場へ向けて、大量に移動してきているからね。

 なので私は、鉄格子の扉を開ける『さいごのかぎ』を取り出すことにした。

 

「先生、ちょっと離れていてね」

 

 私は、アイテムパックの中から一つの武器を取り出す。

 それは、大剣(ソード)。名前を『デイジーチェイン』と言い、メインクラスが大剣使いのハンターでなくても装備可能な、全クラス対応の大剣である。

 

「"光の剣? 格好良いね"」

 

『デイジーチェイン』を見た先生が、目を輝かせてそんなことを言った。

 うん、この大剣、刃部分が金色に輝く固形化フォトンで作られているからね。まさしく光の剣なのだ。アリスが見たらすごく欲しがりそうな大剣である。

 

「んじゃ、こじ開けるよー。せいやっ!」

 

 私は上段から大剣を振り下ろし、鉄格子の鍵部分を真っ二つに破壊した。それにより、牢屋の扉が見事に開いた。

 

「よし!」

 

「こいつ、もうなんでもありだな……」

 

 カンナが呆れたようにつぶやくが、バッチリ聞こえているぞ!

 そうして私は先生を牢屋から出し、アイテムパックの中にしまっていたスマホとタブレット端末を先生に渡した。

 

「さ、先生。逃げましょう」

 

 私はそう言って先生を促そうとするが、先生は「"ちょっと待ってね"」と言ってタブレット端末を手に持った。

 そして、先生は唐突に何かの文言を唱えだした。

 

「"……我々は望む、七つの嘆きを。……我々は覚えている、ジェリコの古則を"」

 

 先生がそう言い終わると、タブレット端末の画面が点灯した。

 

 なるほど、今のが、『シッテムの箱』の起動パスワードか。多分、同じセリフを他人が唱えても起動しないんだろうな。この端末は、先生しか扱えないと聞いているからね。

 

 それから先生はタブレットに向けて何か話しかけ始める。うーん、アロナとかいうOSと会話しているんだろうか。私にはアロナの音声が聞こえないが、先生には聞こえているのかもしれない。キヴォトスは不思議でいっぱいだ。

 

「"お待たせ。じゃあ行こうか"」

 

 先生はタブレットを白スーツの懐にしまうと、私達に向けてそう言った。

 よし、じゃあ脱出だ。

 

『D.U.郊外の子ウサギタウンに、シャーレ部員と有志が集結しています。そこへ向かってください』

 

 コタマ先輩のアナウンスが私のスマホから届き、私達は急いで留置場を後にした。

 そして、再びライドロイドに搭乗する。

 

「先生はカンナのライドロイドにタンデムしてください」

 

 私は、カンナが乗るライドロイドを指さして言った。

 私が先頭を進んで体当たりとかもするつもりだから、危なくて先生は乗せられない。だから、カンナのライドロイドに乗ってもらうことにした。

 

「"よろしくね"」

 

 カンナに先生が挨拶する。すでに知り合いなのかな? 初対面という雰囲気ではない。

 

「……ええ、先生は守り切ってみせます」

 

「"あまり高度を取らないでね。高所恐怖症なんだ"」

 

「それは……。いえ、その言葉は聞けません。カイザーPMCの包囲を突破するには、高所を飛ぶことが一番ですので」

 

「"ええっ……"」

 

 それからカンナは先生を後部に乗せ*1、私達はヴァルキューレ警察学校の分校内を再度爆走し始めた。

 カイザーPMCは、玄関をガッチリと固めて、さらに校舎内に兵隊を送り込んでいる。

 となると、やるべきことは……。

 

「校舎の壁をぶち抜くよ!」

 

「……はあ、修理費で頭が痛いが、それが正解か」

 

 カンナが頭を抱えるが、緊急事態なので許してほしい。

 

 それから私達は一階の廊下を進み、玄関とは逆の方角に向かった。そして、私はライドロイドのホーミングミサイルを、校舎の壁に向けて発射した。

 爆発を起こし、崩れる壁。そこから私とカンナのライドロイドは、校舎の外へと飛び出した。

 そして、まんまと包囲網を突破して、私達はD.U.の上空へと逃げ出すことに成功した。

 

「ふう、なんとかなったか」

 

 先生に抱きつかれるようにしてライドロイドに乗るカンナがそう言うが、まだなんとかなったわけではないようだ。

 アークス端末のマップに、敵の集団が高速度で近づいてくるのが分かった。

 そちらを見てみると……カイザーPMCの兵隊が、ライドロイドに乗って飛んできている。数は五機。

 

「うーん、カイザーグループとは、ライドロイドの取引していないんだけどなぁ。ペーパーカンパニーでも経由されたかな」

 

 そう言いながら、私はカンナを先行させて、彼女達を守るよう後ろを取る。

 それからしばらく敵ライドロイド隊とのチェイスが始まるが……どうやら、敵ライドロイドは市販品から機体性能は変わっていないようだ。まあ、フォトンリアクターの改造をしないと、速度を上げることは不可能だからね。この短期間でリバースエンジニアリングなんてできるはずもなし。

 

 一方、私のライドロイドは、市販品よりもはるかに優れたフォトンリアクターを積んでいる。そのフォトンリアクターの名前は、『道上リク』って言う生身のアークスなんだけどね。だから私は、カンナを先行させたまま、敵ライドロイド隊を撃ち落としにかかった。

 敵のライドロイドも機銃を積んでいるようだが、性能差は大きい。カイザーPMCの兵隊達には、ホーミングミサイルとフォトン弾で汚い花火になってもらった。

 ま、キヴォトス人ならこの高所から落ちても、死なずに大怪我で済むでしょ。

 

 そして私達は、悠々とD.U.中枢部を脱出し、郊外の子ウサギタウンへと到達した。

 コタマ先輩によると、シャーレの軍勢は子ウサギ公園とかいう大公園に集結しているらしい。

 

 私とカンナは、念のため高所を飛んでその公園へと向かった。

 

「おっ、みんないるね。おーい!」

 

 私は公園の上空から、少しずつ高度を下げて、シャーレ軍が構築した拠点へと降りていった。

 私がライドロイドを着地させ、それからカンナのライドロイドも降りてくると、シャーレ部員がワッと先生に群がり始めた。

 

「"みんな、心配かけてごめんね"」

 

 先生がそう謝ると、先生は女子生徒達に囲まれてもみくちゃにされることとなった。

 

 さて、そんな感動の再会を楽しむのもいいが、これでは状況が前に進まない。

 そこで私達は一箇所に集まって作戦会議を開くとこにした。とは言っても、すでにシャーレ部員達がある程度の作戦を立て終わっていたのだが。

 

 曰く、カイザーグループが占拠しているサンクトゥムタワーを直接奪還するよりも、先生の『シッテムの箱』を使ってサンクトゥムタワーの権限を奪い返すのがよいと。

 ああ、そういえば、私がキヴォトスに飛ばされた初日。先生とシャーレ初期メンバーは、シャーレビルの地下にある『クラフトチェンバー』なる設備を『シッテムの箱』を使って起動させていたね。その手順を踏んで、連邦生徒会長が行方不明になったことにより機能を停止していたサンクトゥムタワーを再稼働したんだった。もう半年以上前のことだが、ちゃんと覚えている。

 

 そして、その『クラフトチェンバー』があるシャーレビル内には、連邦生徒会の幹部数人が捕らえられているとのこと。

 で、シャーレビルにシャーレの軍勢を進ませて、ビルを奪還するわけだが……。

 

「地下室は数でいけば押せるだろうけど、連邦生徒会の幹部達については、下手に動くと人質に取られない?」

 

 私がそう疑問を投げかけるが、それに対する回答もしっかり用意されていた。

 

「人質救出は、私達に任せてくれ!」

 

 そう言って前に出てきたのは、八人の女子生徒達。おや、シャーレでは見た覚えがない顔だね。

 

「SRT特殊学園所属『RABBIT小隊』です」

 

「同じくSRT特殊学園『FOX小隊』」

 

 SRT特殊学園! 確か既に廃校になった学園で、元々は特殊部隊を育成する連邦生徒会長直下の組織だったはずだが……。そんな人質救出に役立つピンポイントな人材が、なぜここに?

 そのことを尋ねてみると……。

 

「私達の住処にやってきたのは、お前達の方だろうが!」

 

 ウサミミ型のヘルメットを被った少女に、そんな反論をされてしまった。

 なんでも、SRT特殊学園がなくなってしまい行き場を失った彼女達は、この公園で野宿生活をしているというのだ。最初は四人だったが、後でもう四人合流して計八人の大所帯で過ごしているという。

 ……ああ、そう言えば以前、先生がそんな生徒の手助けをしているとか言っていたね。

 

 ともあれ、必要な人材はそろった。

 それから私達は早急に、シャーレビルへと進軍することとなった。『色彩』が攻めてくるかもしれないんだ。カイザーのクーデター軍なんて余計なものは、さっさと排除してしまうに限るよ。

 

*1
キヴォトス製ライドロイドは、アークス製と違ってオートバイの形状に近い。

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