【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
善意の協力者であるSRT特殊学園の八人を中心にして、作戦を立てる。
まずSRTの二つの小隊が連携して連邦生徒会メンバーを確保する。それを確認したら、シャーレ軍が数でもってシャーレビルを奪還だ。
おおまかな作戦はそうだが、細かいところを詰める必要がある。シャーレビルの地図を用意したり、どこにどんな荷物が置かれているか確認したりと、SRTのメンバーはいくつも有益な意見を出していった。
さらに、突入方法だが、シャーレビルの周辺にカイザーPMCが詰めていると想定できるので、正面から行くわけにはいかない。
そこで使用するのが、シャーレ部員の何人かが所持しているライドロイドだ。
SRTのメンバーを後部座席に乗せたライドロイド隊が上空から降下して、SRTの小隊をシャーレビルの屋上に下ろす。ライドロイド隊はそのまま速やかに退散だ。
建物内で連邦生徒会メンバーを発見したら、SRTが連邦生徒会メンバーを連れて一室に立てこもる。
それと同時にシャーレ軍がシャーレビルを強襲。そのまま連邦生徒会メンバーが逃げ込んだ部屋と地下室を確保する、という流れに決まった。
「それでは、『シャーレ奪還作戦』を始める!」
『FOX小隊』のリーダー、
その中には、ヴァルキューレ警察学校のカンナが入っていた。どうやら、まだシャーレに付き合ってくれるらしい。そして、もちろん私もメンバーに入っている。
私のライドロイドの後ろには、『RABBIT小隊』のリーダー、RABBIT1こと
「よろしくお願いします」
礼儀正しく、ミヤコが挨拶してくる。
「よろしくね。高高度から降下するけど、高いところは大丈夫?」
「SRT特殊学園の生徒に高所が苦手な者はいません。ヘリからの降下訓練や、ビルでのロープワーク訓練等、みっちり仕込まれますので」
「ああ、特殊部隊だもんね。そりゃそうか」
そんな会話を交わし、作戦開始時間となる。私達ライドロイド隊は子ウサギ公園を出撃し、高度を取った。
サンクトゥムタワーを掌握するカイザーグループには、D.U.内での飛行を察知されるだろうが……察知されても対応されるより素早く行動してしまえばいい。
飛行していると、地上から地対空ミサイルが飛んでくるが、私のライドロイドの武装で全て落としてやる。
その他にも様々な迎撃システムが私達を襲う。だが、ライドロイドで飛べるギリギリの高さを飛行しているからか、ライドロイド隊に被害が出ることはなかった。
「これがライドロイドですか……この火力と飛行能力は魅力的ですね」
「あー、これ、開発者権限でバリバリ改造しているから、市販のを買ってもこんな武装はついてこないよ」
ミヤコのつぶやきを拾った私は、そう教えてあげた。すると、ミヤコは返答することなく口を閉じた。作戦中だから無駄話はしないってことかな。
それから私達はD.U.の空を悠々と飛行し続け、目標地点であるシャーレビルの上空に辿り着いた。
『下降開始!』
FOX1こと七度ユキノのそんな指示を聞き、私はライドロイドの高度を一気に下げた。
そして、シャーレビルの屋上にいるカイザーPMCの兵隊に《ホーミングミサイル》をお見舞いしてから、屋上のヘリポートで一時停止した。
すぐさまミヤコがライドロイドの後部から降りたのを確認し、そこから私は再びライドロイドを操作して高度を取った。
さあ、後はSRTのウサギとキツネが連邦生徒会メンバーを確保することを信じて、シャーレ軍と合流だ。
ライドロイド隊で固まって高高度を飛行し、D.U.の空を駆ける。
途中、カイザーPMCが戦闘機の小隊なんていう本格的な追っ手を出してきたが、私がしっかり撃ち落としておいた。敵パイロットが落ちる戦闘機から無事に脱出できたかは知らないが……もうここまできたら戦争みたいなものだし、敵の人死にを気にしている場合じゃない。
そして、そのままの勢いでD.U.を進軍するシャーレ軍と合流し、シャーレ軍とカイザーPMCの衝突が始まった。
私もそこからはライドロイドの高度を下げ、先生を救出しに行ったときと同じようにPMCを蹴散らしていく。先生の指揮もあって、シャーレ軍は脱落者を出すこともなくシャーレビルに近づいていき……。
『こちらFOX1。目標の確保に成功』
七度ユキノからエーテル通信が届き、作戦の第一段階は成功した。
さあ、人質の心配がなくなったら、次はシャーレ軍総出でビルの奪還だ。戦車隊を出してきたカイザーPMCを難なくなぎ倒し、シャーレビルへと到着した私達は、突入部隊をすぐさま送り込む。
私はライドロイド隊なので、ビル内に入っていく突入部隊と先生を見送って、シャーレビル周辺を哨戒だ。
カイザーPMCが生意気にも戦闘ヘリやドローン兵器を飛ばしてくるので、ライドロイド隊でそれを撃破していく。
そして……。
『"地下室を確保したよ。サンクトゥムタワーの権限奪還は成功だね"』
先生からの通信を聞いて、ワッと地上から歓声が上がる。周囲にはもう立っているカイザーPMCの兵隊はいない。
シャーレビルは完全に私達、連邦捜査部シャーレの手に戻り、サンクトゥムタワーの機能もカイザーグループは使えなくなった。最早、カイザーグループのクーデターは失敗に終わったと言っていいだろう。
後は、サンクトゥムタワーを物理的に奪還するだけだ。
次なる進軍を行なうため、私達地上組は先生がシャーレビルから出てくるのを待つ。
すると、そんなときに余計な
「いました、連邦捜査部シャーレです! カイザーグループのクーデターをくつがえらせようとする勇士が、シャーレビルを奪還したようです!」
それは、何度かテレビの画面で見た顔。クロノスジャーナリズムスクールの報道部だ。
先ほど先生がサンクトゥムタワーの権限を確保するまでは、D.U.内では報道規制が敷かれていた。それだというのに報道部が戦場で活動していたということは……サンクトゥムタワーの機能で遮断されていた電波等を使わず、エーテル通信オンリーで放送を続けていたな?
「あっ、シャーレビル内から安藤優先生が姿を現しました。連邦生徒会の七神リン代行の姿もあります! ということは、サンクトゥムタワーの権限は、連邦生徒会の手に戻ったとみてよいでしょう。カイザーコーポレーションのクーデターは、失敗に終わりました!」
報道部のメンバーが、カメラを前にそんな実況をしている。
その様子に、シャーレビルから脱出したリン代行は苦笑い。どうやら、彼女達連邦生徒会メンバーは全員無事だったようだ。
さて、ここからは部隊の再編だ。シャーレビルに守りを残しつつ、サンクトゥムタワーの奪還部隊にも数を割く。
事前に決めていた通り、それぞれの部隊に分かれていくが……。
そこで、先生のスマホが鳴る。この緊急事態に、誰だろうか。先生はスマホの画面をチラリと見ると、画面に映った相手の名前を見て驚いていた。
そして、先生はスマホを操作し、耳に当てた。どうやら通話の着信だったようだ。
「"……うん、分かった。当然、信じるよ"」
先生は相手の話をしばらく聞き、そう言ってから、通話を切る。
そして、スマホをしまってから、私達シャーレ部員達に向けて言った。
「"サンクトゥムタワー奪還作戦は中止! 代わりに、サンクトゥムタワー周辺から人を避難させるよ!"」
ここに来て、どういうことかと思うが……先生はしっかり説明してくれた。
なんでも、先ほどの電話の相手は、トリニティ総合学園のティーパーティーの一人、
彼女には、夢を介して未来を見るという特殊能力がある。その未来予知能力で、先ほど数時間後のD.U.の様子を見たらしいのだが……。
「"空から何かが落ちてきて、サンクトゥムタワーが崩壊するみたい"」
まさかの未来に、シャーレ部員は絶句する。
あの、キヴォトスの中枢であり、連邦生徒会の権力の象徴であるサンクトゥムタワー。それが、崩壊する。正直、信じがたい未来である。
しかし、先生はセイア生徒会長の言葉を完全に信じているようで、すぐさまリン代行と相談を始めた。
「"D.U.にあるエーテル通信塔の特別広域緊急警報は実行できる?"」
「あれは本来、手続きが必要なのですが……分かりました。緊急事態ですので、手続きは後回しにします」
「"外から何か言われたら、私に責任を押しつけてくれて構わない"」
「いえ、私の連邦生徒会長代行としての全責任をもって、緊急事態宣言を発令させていただきます」
そんなやりとりを私達は周囲で見守っていると、不意に第三者の声が聞こえた。
「なんと、サンクトゥムタワーの奪還を行なわずに、周辺から住民を避難させるようです! サンクトゥムタワーの崩壊は、本当に起こってしまうのかー!?」
あっ、ヤッベ。今までの全部、報道部に見られていた。
シャーレ部員が先生に「追い払いますか?」と聞くが、先生は首を横に振る。
「"私達にやましいことは何もない。キヴォトスの人達もこの事態は気になるだろうから、見守っていてもらおうよ"」
ということになり、私達はD.U.中心地から人を避難させるべく、動き出した。
先生曰く、タイムリミットは二時間。その時間で、カイザーPMCの妨害をどうにかしつつ、人を避難させる。避難させる対象にはカイザーグループの人間も混じっているのだが……サンクトゥムタワーからカイザーグループの人間を避難させるには、どうすればいいのか。
それをみんなで急いで考えたところ、全戦力を持って最速でサンクトゥムタワーを攻略すべしとなった。
要は、ぶん殴って言うことを聞かせて、外へ運び出そうということだ。
そう決めたところで、まずはエーテル通信塔で特別広域緊急警報を発し、あらゆる携帯端末から避難を呼びかける。
そして、私達はシャーレビルの守りすら放棄して、サンクトゥムタワーへと向かっていくが……向かう途中で、各学園から集まった有志の戦力が合流してきて、シャーレ軍の規模は三倍以上に膨れあがった。
どうやら、クロノススクールの報道を見て、シャーレを援護しようと決めた学園がいくつもあったようだ。
「"さあ、みんな。行こう"」
サンクトゥムタワーの前に陣取るカイザーPMCの大軍を前に、先生が言う。
「"言うことを聞かない悪い大人は、殴ってでも止めようか"」
すっかりキヴォトス流に染まった先生の言葉を聞き、シャーレ軍は雄叫びを上げて突撃を開始した。
◆◇◆◇◆
サンクトゥムタワーの制圧は無事に成功した。
カイザーグループの総帥である『プレジデント』は途中で不利を悟って逃げ出していたのか、捕まえることはできなかった。だが、サンクトゥムタワーから、カイザーグループの人間を全員追い出すことはできた。
それから慌てて重要な物資をサンクトゥムタワーから運び出す連邦生徒会メンバーを横目に見つつ、シャーレ軍は周辺住民の避難を行なった。
エーテル通信塔の特別広域緊急警報が無事に機能していたからか、カイザーグループのクーデターで参っていたのか、避難要請には素直に従ってくれた一般市民達。
やがて、セイア生徒会長が言ったタイムリミットが近づいてきたため、シャーレ軍もサンクトゥムタワーから離れ、シャーレビルまで撤退した。
留守の間にカイザーPMCが再度ビルを占拠していたということもなく、無事に帰還できた私達。
シャーレビルを連邦生徒会の臨時本部とし、私達はタイムリミットとされる時を待った。
そして……。
「うわっ、何あれ」
シャーレ部員の一人が、空を見上げてそんなことを言った。
それに釣られて何人も空を見上げるが……そこには、赤く染まった空があった。
夕日ではない。一面真っ赤な空。
「待って、何かが降ってくる!」
空を指さした一人が、そんなことを叫ぶ。
すると、次の瞬間、空のはるか彼方から、赤黒い塔がサンクトゥムタワーに向かってまっすぐ落ちてきた
赤黒い塔はサンクトゥムタワーのてっぺんに命中すると、サンクトゥムタワーは一瞬で粉々にくだけた。さらに砕けたサンクトゥムタワーの瓦礫は、赤黒く侵食されて地面に突き刺さった赤黒い塔の周辺を円く囲むように浮遊しだした。
「なんだあれ……」
未来予知でサンクトゥムタワーが崩壊するとは知っていたが、いざ目にしてみるとその衝撃は大きかった。
そして、あの塔の赤黒さ。色合いとしてはダーカーの侵食に似ている。
だが、私の中のフォトンは、ダーカー因子を感じ取ることはなかった。となると……もしや、これが。
「『色彩』……」
そんな言葉を私はつぶやいていた。