【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在   作:Leni

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43.虚妄のサンクトゥム攻略作戦

 エンジニア部での調査の結果、『虚妄のサンクトゥム』から採取した欠片から発せられる力は、フォトンに影響を与えることができないと分かった。つまり、フォトンリアクターで動くマシンなら『色彩』の侵食を受けないということだ。ライドロイドしかり、M.I.Sしかり。この場合エグは、戦力外でいいか。

 

 というわけで、限られた時間の中で私が着手したのは……M.I.Sゼロ号機の改修の続きだ。本物のA.I.Sに性能を近づけて、今回の作戦での決戦兵器としたのだ。

 この改修には引き続きアークス研究部も監修に入ってくれており、研究部側もエンジニア部独自の技術のフィードバックを受けてホクホク顔になっていた。これがアークス側の次の戦いで使われるであろう、『A.I.S-Vega』の性能向上に役立つなら、研究部とエンジニア部でWin-Winの関係を築けたってことかな。

 

 そしてさらにヴェリタスの調査で、空間中に散布されたエーテルも、フォトンと同じく『色彩』の力の伝播を邪魔していることが分かった。エーテルもフォトンを改変したものだからね。

 だから、それが分かった時点からキヴォトスに存在するエーテル通信施設は、全て最大出力で動かしている。

 ワンチャン、『虚妄のサンクトゥム』が臨界点を迎えた後も、エーテルが『色彩』による世界の崩壊を防いでくれるかもしれない。

 あまりにもエーテル濃度を上げすぎると幻創種が出てきたり、人がエーテル具現化の力に目覚めて具現武装の能力を身につけたりする危険性がある。だが、そうならないギリギリを攻めてなんとか空間中にエーテルを散布し続けている。

 

 私がM.I.Sゼロ号機をいじっている間も、エンジニア部のメンバーは慌ただしく作業を続けている。彼女達も、キヴォトスの明るい未来のために、全力で努力しているのだ。

 もちろん、ミレニアムではヴェリタスもセミナーも、それぞれできることをしている。

 

 そんな忙しい数日を過ごし、やがて訪れる作戦決行日。

 私は、改修を終えたM.I.Sゼロ号機に乗って、アビドス砂漠まで来ていた。

 

 アビドス砂漠に突き刺さった『虚妄のサンクトゥム』の一つを攻略するメンバーとして、私が選ばれたのだ。

 ここを担当するメイン主力のアビドス生は、五人しかいないからね。

 

 そのいつもの五人なのだが……そのうちのシロコが、気になることを先生に報告していた。

 どうにも『色彩』がキヴォトスに襲来した日、シロコは仮面をつけた謎の人物に襲われそうになったらしい。ライドロイドに乗っていたため、振り切ることができたらしいが……。

 

 シロコの苗字は砂狼。黒服が言っていた狼の神は、彼女のことなんじゃないかなんて一瞬考えたこともある。だが、こうして無事なら、彼女は狼の神でも『アヌビス』でもないってことだね。安心。

 

 さて、私達の任務は、『虚妄のサンクトゥム』を破壊するのもそうだが、それを阻もうとする塔の守護者を倒すことも任務に含まれている。アビドス砂漠の塔の守護者。それは、デカグラマトンの預言者である『ビナー』だ。

 なんとそのビナー、『色彩』にあっけなく侵食されてしまったらしい。自販機くんことデカグラマトンは、この事態を予想していただろうか。

 

「うへー、ビナーと戦うのかぁ。おじさんにはキツい仕事だねぇ」

 

 アビドス生のホシノがそんな弱音を吐いていたが、実際のところ、彼女のやる気は高かった。

 ビナーはアビドス自治区を衰退させた原因の一つ。彼女からしたら、仇に等しい因縁の相手だろうね。

 

「キヴォトスを救うついでに、邪魔なビナーを排除しちゃおうか」

 

 私がホシノにそう言うと、「そだねー」と軽い感じで返してきた。

 それから、なぜか六人で円陣を組むことになり、「頑張るぞー」「おー」とかいうスポーツ系の部活動みたいなことをやるはめになった。いやあ、アビドスの五人に私を含めたら、部活動じゃなくて『エーテルフォトニクス社』の社長と社員達なんだけど。

 

 そんな感じで気合いを入れつつも、作戦決行時間となる。

 私はM.I.Sゼロ号機に乗りこみ、アビドス砂漠の外縁に作られたベースキャンプを出発する。

 

 ここからどう行動するかは、予め決めてある。

 まずは、私がM.I.Sでアビドス砂漠の『虚妄のサンクトゥム』に突っ込む。すると、それをはばもうと高確率で侵食ビナーが出現するはずなので、それと戦う。

 アビドス生の奥空アヤネを除いた四人は、ライドロイドでビナーとの戦闘地点まで移動し、私のM.I.Sを壁というか囮にして、ビナーとの戦闘に介入する。そんな突撃作戦である。

 ちなみにアヤネは、ベースキャンプからエーテル通信を用いて私達五人をサポートするオペレーター役だ。

 

 その作戦を頭の中で復唱しつつ、私はM.I.Sを低空で飛ばし、『虚妄のサンクトゥム』に向けて真っ直ぐ進んだ。

 

『前方から巨大なエネルギー反応! ビナー、来ます!』

 

 アヤネの通信に、私は操縦桿を動かしてM.I.Sの速度をゆるめ、機体を上方に浮かす。すると、足元から巨大な機械兵器が砂をかき分けて飛びだしてきた!

 その姿は、蛇か東洋竜か、あるいはゲームでお馴染みのサンドワームか。そんな手足のない、長い胴と尾を持つ化け物マシンが、私の前に姿を現した。

 

 以前、先生がミレニアムの特異現象捜査部で集めてくれたデータによると、ビナーのボディカラーは白を基調にしているはずだった。

 しかし、全高十メートルあるM.I.Sとタメを張れるその巨体は、データとは異なる色をしていた。ビナーの装甲は、群青色に染まっている。おそらく、『色彩』に侵食されたことによる変化だろう。

 あと、頭部にヘイローが存在するのは、先生達が調べたデータ通りである。デカグラマトンの預言者っていうのは、漏れなくヘイロー持ちなのかもね。

 

「ビナーを発見。戦闘開始する!」

 

 私はアヤネにそう報告すると、操縦桿を動かし、ビナーをロックオンする。

 そして、私は初っぱなから大技を放つことにした。

 それは、M.I.Sの最大兵装、《フォトンブラスター》だ。

 

 実はこの兵装、撃てる回数に制限が存在しない。一度撃つと、冷却とエネルギーのチャージのために、一二〇秒のクールタイムが必要なのだが……。クールタイムを考えると、撃てるときにさっさと撃つことが重要。チャージが終わり次第撃てば、一度の戦闘で撃てる回数がそれだけ増えるのだ。

 

 だから私は、M.I.Sに《フォトンブラスター》を構えさせ、操縦桿の引き金を思いっきり引いた。

 

「さあ、ビナー。二つの世界の技術の結晶、新型M.I.Sと、どちらが兵器として優れているか確かめようじゃないか!」

 

 青白い光が、青黒いビナーの装甲を真っ正面から貫いた。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ビナーとの戦闘は、なかなか激しいものだった。援護射撃をしてくれるアビドス生の四人に攻撃が向かないよう、タンクとしてフォトンブレードを用いた近接戦闘を主にした。

 だが、ビナーも当然反撃をしてくるわけで、その中でも熱線攻撃はM.I.Sですら直撃はマズイ。なので、一箇所には留まらず、アビドス生達を巻き込まないようなルートで移動しながら戦った。

 ビナーはM.I.Sを超える巨体のため、こちらの攻撃を回避されるということはなかったが、ひたすらにタフであり……。

 撃破には結局、四度のフォトンブラスターを叩き込む必要があった。

 

 だが、勝利は勝利だ。

 私とアビドス生達は、その勝利にひたる間もなく『虚妄のサンクトゥム』の破壊に向かう。

 

『虚妄のサンクトゥム』は、爆薬を使って基部を破壊し、自重で崩壊させる作戦が事前に練られている。

 なので、M.I.Sに乗っている私は、爆破をアビドスの四人に任せ、周囲の哨戒を続けた。

 

 幸い、ビナー以外の強大な敵が現れるということもなく、『虚妄のサンクトゥム』は完全に崩れ去った。

 どうやら私達アビドス組が最初の成功組だったらしい。なので、私達はベースキャンプに戻って、次の作戦まで身体を休めることにした。

 

 作戦としては、五箇所の『虚妄のサンクトゥム』を破壊した後、最後に全勢力でD.U.中枢部の塔を破壊する予定なのだが……。

 アビドス砂漠外縁部のベースキャンプで身体を休めていると、次々と他の箇所の作戦成功の報告が入ってきた。

 

 しかし、全てが順調にいくとはいかなかった。五本目の塔破壊の成功報告が入ったところで、作戦本部からあせるような声で通信が来た。

 

『破壊された五箇所の塔のエネルギーが、D.U.中枢部に集まってきています……これは……きょ、強大な守護者を生み出そうとしている!』

 

 D.U.の映像が、エーテル通信を通じてベースキャンプ内に投影される。

 それは、サンクトゥムタワーのあった最後の『虚妄のサンクトゥム』の場所ではなく、D.U.沿岸部であるシラトリ区の映像だ。

 

 そこには、海から来訪する巨大怪獣の姿が映し出されていた。

 

 それはまるで、往年の怪獣映画のようなシチュエーションで……その巨大怪獣の姿にも、私は見覚えがあった。

 ゴジラ? いいや、違う。あの姿は……。

 

「ペロロだーッ!」

 

 私は思わず叫んでしまった。

 アビドス生の五人も、その姿に驚いたのか目を見開いて映像に釘付けになっていた。

 

「ペロロって、確かモモフレンズの……?」

 

 ホシノが不思議そうに言うが、その通り。ペロロは、『エーテルフォトニクス社』の商品であるエグの公式コラボ相手となった、モモフレンズのキャラクターの一人だ。

 愛嬌のある丸いニワトリの姿をしているが、クチバシからはみ出した長い舌がキモさをかもしだし、結果としてキモ可愛いの領域に達しているキャラクターである。

 そのペロロが群青色に侵食され、数十メートルの大きさをほこる巨大怪獣として現れた。そして、海を進んで、シラトリ区の鐘崎港へ上陸しようとしている。

 

『このままではシラトリ区が……! 最終作戦を繰り上げて実行! 作戦メンバーは、シラトリ区に至急集まってください!』

 

 お、おお。そういえば、私も最終作戦の参加メンバーだった。

 私は休憩を切り上げて急いで席を立ち、M.I.Sに乗りこむためベースキャンプのターフから出ていこうとする。

 そのときだ。

 

「社長ー。おじさんの代わりに頑張ってねー」

 

「ん、ぶっ飛ばせ」

 

「リクちゃんなら勝てます!」

 

「怪我には気を付けて!」

 

「帰りを待ってるから!」

 

 ホシノが、シロコが、ノノミが、アヤネが、セリカが。私にエールを送ってくれた。

 それを受けて、私はサムズアップを返し、M.I.Sに向けて駆け出していった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 M.I.Sゼロ号機には、一つの機能が付けられている。

 それは、《ハイブースト》。以前、エデン条約調印式のときに、ミレニアムからトリニティまで飛んでいったときにも使った機能だ。

 前方に向けて高速で飛ぶだけの機能なのだが……改修されたM.I.Sは、その機能が強化され、驚異的な速度で空を駆けることができるようになっていた。

 

 だからか、私がシラトリ区に到着したときは、まだ友軍の姿が見えなかった。

 私は、M.I.Sの何倍もの大きさを持つ巨大ペロロ怪獣、作戦本部が付けた仮称『ペロロジラ』と一人で戦うことになるのだった。

 

「アビドス部隊、道上リク、M.I.Sゼロ号機で、目標ペロロジラと交戦開始する!」

 

 エーテル通信で作戦本部と交信し、私はそう告げた。まったく、望んでもいないのに一番槍だ。

 

『こちら作戦本部。すぐに援軍が向かいますので、しのいでください』

 

「了解!」

 

 そうして、私はペロロジラとの戦いを開始した。

 

 とにかく、ペロロジラをこれ以上進ませるわけにはいかない。M.I.Sの背後には、シラトリ区の街並みが広がっているのだ。ペロロジラはすでにシラトリ区の港を破壊しているが、ここで被害は食い止めたい。

 

 だから私は、M.I.Sの普段は使わない兵装を使うことにした。

 

「《フォトンブリザード》発射!」

 

 M.I.Sの左腕から冷凍弾が発射され、ペロロジラの足元に命中。すると、ペロロジラの足に巨大な氷がまとわりつき、氷で足が地面と固定された。

 ペロロジラの足はとても短い。それはつまり、脚力を十全に発揮できないということでもあり……ペロロジラの進撃は、見事に止まった。

 

「よし、あとはこのまま、ここに釘付けにしてすり潰す!」

 

 鐘崎港の利用者には悪いが、ペロロジラを止めるためにここを戦場とさせてもらう。

 私は、早速、一撃目から《フォトンブラスター》を放つため、引き金を引いた、その瞬間。

 

『援軍、到着します! 皆さん、ご武運を!』

 

 作戦本部からそんな通信が届き、私のM.I.Sが放つ光の束とは別々の方向から、三つの光の束がペロロジラを蹂躙(じゅうりん)する。

 

『白石ウタハ、M.I.S一号機、目標を捕捉した。さあ、四発の聖剣に耐えられるかな?』

 

『猫塚ヒビキ、M.I.S二号機、戦場に到着。……怪獣はM.I.S隊が倒す』

 

『豊見コトリ、M.I.S三号機、参上しました! エリドゥでは叶わなかった本格的な共闘ですね、リク!』

 

 やってきた援軍。それは、エンジニア部が操るM.I.S三機だった。

 

「ふふっ」

 

 私は操縦桿をにぎりながら、思わずそんな笑い声を出してしまった。

 相手が巨大怪獣でも、彼女達と一緒なら、もう安心だ。

 

「道上リク、M.I.Sゼロ号機、援軍の到着を確認。みんな、来てくれてありがとう」

 

 四機のM.I.Sがこうして戦場にそろった。

 四という数は、アークス時代では馴染みが深いものだった。アークスにおいて、四人で組んで作戦を遂行することはよくあったことだからね。

 

 だから私は、上機嫌で操縦桿を操り、ペロロジラとの戦いを始めた。

 ペロロジラは目から怪光線を放ったり、手下として人間サイズのペロロを飛ばしてきたりして、反撃してくる。だが、負ける気は、まったくなかった。

 

「はっはっはー。こう、M.I.Sが何機も揃っていると、惑星ハルコタンの邪神をA.I.Sで囲んで倒した時を思い出すよ!」

 

 私はテンションが上がり、そんな言葉を口走っていた。もちろん、通信は入りっぱなしだ。

 

『何度聞いても、リクの人生密度濃いよね……』

 

 ペロロジラの足に《フォトンブリザード》を放ちながら、ヒビキが言う。

 

『A.I.Sで邪神退治か。それなら、私達はM.I.Sで『色彩』くらい倒してみせないと』

 

 小さなペロロを《ソリッドバルカン》で撃ち落としながら、ウタハ部長が言う。

 

『さすがに概念は撃てそうにないので、代わりにこの怪獣を撃ってみましょう! まずは三発!』

 

 ペロロジラの目に《フォトングレネード》を三発撃ち込みながら、コトリが言う。

 

 ふふふ。本当に楽しい時間だ。

 私はペロロジラの反撃で機体に傷を負った皆を集め、《エリアヒール》で装甲を修復させながら、コックピットの中でテンション高めに叫んだ。

 

「どうだ、見たか『色彩』!」

 

 これが私達、ミレニアムサイエンススクール、エンジニア部だ!

 

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