【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
『虚妄のサンクトゥム攻略作戦』が終わってから流れるように、次の作戦へ。
『ウトナピシュティムの本船』を探しに、皆でアビドス砂漠を横断する。
その最中、私は地球から持ちこんだエーテル通信端末で、オラクル船団と連絡を取っていた。
事態はキヴォトスの滅亡がかかっている。なので、私は恥も外聞もなくアークスのシエラに泣きついたのだ。解析作業を手伝ってくれと。
そうしたら、こちらの状況を絶えず向こうに流すことを条件に、協力を取り付けることができた。
『まったくもう、こちらでは異世界オメガで、新たな強敵が何度も現れて大変だったんですよ! そのたびに、
いやー、知らんし。まあ、多分、紅き邪竜か、オメガファルス・ルーサー、オメガファルス・アプレンティスとの戦闘があったんだろうね。さすがにまだダークファルス・ペルソナは現れていないだろう。あれは確か、オメガの外での戦いだったはずだし。
しかし、守護輝士が私の支援を欲しがっている、か。まあ、レイドボス戦だと、レンジャーは《ウィークバレット》を撃つ奴隷みたいなものだからね。
『もともとあなたはアークス戦闘部から高く評価されていましたが、守護輝士からの評価はもっと高かったみたいですね』
「おっ、もしかして私も三人目の守護輝士就任、ワンチャンある?」
『いくら強かろうが、フォトンの許容量が規定に達していませんので、無理です』
ガーンだな。これでも私、身体に受け入れられるフォトンの量、訓練校の同期の中でもダントツトップだったんだけどなぁ。やっぱり原作主人公と張り合うのは無理か。あの人、宇宙の創造とか最終的にやらかすし。
「で、頼んでいた解析は?」
『ああ、アレですか。結論から言いますと、フォトンやエーテルには『色彩』を浄化する能力はありません。あくまで、侵食を防ぐことができるだけです』
「あー、そっかぁ。残念。フォトンで浄化できるなら、いざとなったら私がみんなを殴り飛ばせば、神秘の反転から救えると思ったんだけど」
『フォトンやエーテルが侵食を受けない理由は、もともとそちらの次元に存在しない粒子だからですね。『色彩』が侵食できる対象は、あくまで地球やキヴォトスの次元に存在するものだけのようです』
「なるほどね。じゃあ、私でも『色彩』を直接撃ち抜くことは無理ってことか」
『粒子ですらない『概念』を撃つことは、さすがのフォトンでも不可能ですね』
となると、やはり『色彩』をどうにかするには、尖兵である『色彩の
「ま、分かったよ。シエラ、わざわざありがとうね」
『お礼は今度、シャオに言ってくださいね。マザーシップに情報が残らないように演算していましたから』
「おー、うん、それは正解だね。アークスの新たな敵に『色彩』の情報なんて渡ったら、一体どうなることか」
『本当に、新たな敵なんて現れるのですかね?』
うん、来る来る。それも規模はダーカーよりヤベー敵なので、本気で覚悟していただきたい。言わないけど。
と、そんな会話をしていたら、どうやら目的地に到着したようだ。
現在、私達はエンジニア部製のミレニアムスペースシップに乗って、アビドス砂漠のカイザーPMC基地まで向かっている最中だった。カイザーPMCがアビドス砂漠で発掘したというオーパーツ『ウトナピシュティムの本船』を奪いにやってきたわけだ。
メンバーは、以下の通りだ。
まず、連邦生徒会の幹部メンバー。
黒いシロコが気になって参加したアビドス生の五人。
『名もなき神』の遺産に詳しいであろうケイを有するアリスと、彼女を一人でいかせるわけにはいかないと奮起したゲーム開発部。
同じく『名もなき神』の技術に詳しいリオ会長と、ヴェリタスを代表してヒマリ部長。
ミレニアムスペースシップを操作しているエンジニア部の三人。
シャーレ部員から選抜された、シャーレの初期メンバーであるユウカ、スズミ、ハスミ、チナツ、そして私。
最後に、戦闘の総指揮を執る安藤先生。
なかなかの大所帯だが、これでもメンバーを絞った方だ。
本当なら、三大校の最強メンバーを連れてきたかったところだ。
ゲヘナ風紀委員会のヒナ委員長、ミレニアムC&Cのネル部長、トリニティ正実の
しかし、彼女達には、再度地上に『虚妄のサンクトゥム』が出現したときに、それを破壊するという役目がある。三人とも組織の長だからね。強さだけでなく、指揮力も発揮してキヴォトスを守るという使命があるのだ。
だから、私達は今のメンバーで敵拠点を落とす必要があるのだ。その中でも、私は一番の戦力として、地上に残るシャーレ部員達から思いを
さて、そんなわけで、アビドス砂漠にミレニアムスペースシップを着地させたわけだが……カイザーPMCの基地には、守りの兵隊がしっかりと駐在しているようだった。カイザーグループはもはやお尋ね者の集団であるので、彼らを蹴散らすことに
私は武器パレットから『ユニオンランチャー』を取り出し、基地前に展開する兵隊に向かって《ロデオドライブ零式》のフォトンアーツで突進を開始した。
うりゃー! 一番槍は貰ったぞ!
◆◇◆◇◆
カイザーPMCの基地の奥深く。そこには、ちゃんと『ウトナピシュティムの本船』が存在した。なかなかに大きなオブジェクトだ。
しかし、私と安藤先生は、その形状を見て困惑していた。
「飛空艇なんかじゃなくて、宇宙戦艦だったとは……」
「"ファンタジーじゃなくて、SFだったかぁ"」
「うん、でも……」
「"これはこれであり!"」
いや、確かに船っぽい形はしているのだ。でも、その船の上部にどうみても宇宙戦艦としか言いようがない構造物がくっついており……。ファンタジーかSFかで判断すると、これはSFなのだ。
その宇宙戦艦を外側から眺めてから、私達は内部に乗りこんでいった。
うーん、中身の構造も、ファンタジーよりSFって感じだな!
宇宙戦艦か……オラクル船団でSFジャンルには慣れた身としては、飛空艇の方が嬉しかったかな?
「先生! ケイが何か言っています!」
と、艦内を確認していると、アリスが不意にそんなことを言ってきた。
私は先生と一緒にアリスに近づいて、アリスの左肩に浮くケイに注目する。
『『ウトナピシュティムの本船(もとぶね)』は、宇宙戦艦ではありません。高度も取れなければ、宇宙に進出する能力もないガラクタです』
お、おう……ケイのもともとの所属の敵艦だからって、罵倒するねぇ。
だが、ケイの言葉は、それだけではなかった。
『しかしそれは、一つの目的に特化しているゆえ。『ウトナピシュティムの本船』は、対『アトラ・ハシースの箱舟』決戦兵器です。すなわち、『名もなき神々の王女』の敵対勢力が造った、悪あがきの産物です』
一言余計だが、言いたいことは分かる。この艦は、私達の目的に合致している存在だと。
『この船があれば、確かに箱舟への突入は可能でしょう。そう造られていますから。……しかし、こうして敵の兵器の中に乗り込んで、あまつさえ利用を試みている現状は……非常に不愉快と表現すればよいでしょうか』
本当に嫌そうに言うなぁ、このAI。
そんなに箱舟勢力と本船勢力は仲が悪かったのだろうか。いやまあ、対抗兵器を用意するんだから、相当仲は悪かったんだろうが。
だが、そんなケイの心情をどう思ったのか、アリスが左肩に向けて話しかける。
「ケイ、アリスの話をよく聞いてください。ラストダンジョンの魔王城にある宝箱、つまり魔王の宝は勇者がいただいていいんですよ!」
『なるほど、敵戦力の
そんな会話をしている間に、艦内を調査していたメンバーが、艦橋らしき場所を見つけてきた。
早速、私達はゾロゾロと連れ立って、その艦橋へと向かう。
そこで、ケイが再び何かを言い始めた。
『ですが、起動次第、『ウトナピシュティムの本船(もとぶね)』は敵対勢力アリスに攻撃を仕掛けるでしょう。私は、先生がこの船を拿捕することに反対意見は持ちません。ですが……アリスは本船の攻撃が及ばない遠くまで逃げるべきです』
あー、なるほど。敵対勢力の艦だから、『名もなき神々の王女』であるアリスに攻撃を加える機能がついているのか。
しかし、いきなりアリスを戦力外にするのは、どうかと思う。
なので、私はケイに向けて言った。
「攻撃を仕掛けてくるなら、攻撃しないよういじっちゃえばいいよね。乗組員の意志に関係なく、勝手に攻撃の判断を下す古代の宇宙戦艦とか、怖くて乗っていられないし」
「"そうだね。ケイ、この艦の乗っ取り作業を手伝ってくれるかい?"」
私と先生がそう言うと、話を聞いていたエンジニア部の面々が、用意していた荷物から通信ケーブルを出した。そして、ケイの外装を剥いてケーブルを差し込み、未だ起動していない『ウトナピシュティムの本船』の艦橋と接続をはかる。
『よいのですか? 私に通信機能を使わせて』
私達がわざわざケイをエグに隔離した理由は、ケイが外部に対して悪さができないようにするためだ。
だが、こうして今、ケイに通信ケーブルを使わせ、『ウトナピシュティムの本船』というトンデモ科学兵器との接続を許している。なぜ、そこまでケイを信じるのか。その理由は、私達を代表して先生が述べてくれた。
「"アリスのことをちゃんと名前で呼んで、しかもこうして警告まで出してくれた子を今更疑うのもね"」
『……分かりました。『ウトナピシュティムの本船』、しっかりと支配して見せましょう』
そんな会話をしていると、リオ会長とヒマリ部長もこちらに近づいてくる。
「サポートするわ」
「リオが役立つかは分かりませんが、天才病弱美少女の技術なら、少しは助けになるでしょう」
リオ会長とヒマリ部長がそう言って、艦橋のコンソールをいじり始めた。
そして、リオ会長は横目でアリスのことを見て、言う。
「アリス。あなたのヘイローを破壊しようとしたことは、私の過ちだった。今のあなたとケイを見ていると……本当にそう思うわ」
そんな会長のセリフに、横にいるヒマリ部長が薄く微笑む。
それを見たのか見ていないのか、リオ会長はさらに続けた。
「たとえ機械でできた身体であろうとも……古代のオーパーツであろうと、あなたは一人の人間として、しっかり生きているのね」
◆◇◆◇◆
『ウトナピシュティムの本船』を発見してから少しの時間が過ぎ、生活環境の整ったミレニアムスペースシップで夜を明かした翌日の朝。ケイは、本船の掌握を成功させていた。
もちろん、ケイ単独で成功させたわけではない。リオ会長と、ヒマリ部長の努力の甲斐もある。そしてなにより、私のエーテル通信端末越しに参戦した、オラクル船団のシャオの尽力が大きかった。
なんでも、シャオは別次元の古代兵器に興味津々だったらしい。多次元解釈で防御膜を作る箱舟と、それに対抗する能力を持つ本船。それの技術をぜひとも吸収したかったようだ。
『フォトナーから続くフォトン技術や、エルジマルトや惑星リリーパの機械技術、地球のエーテル技術。それらとは系譜が異なる技術は、なかなかに面白かったよ』
エーテル通信で別次元から語るシャオは、心底愉快という様子だった。
まあ、私がアークスの役に立ったなら何よりだ。今後、アークスの敵となるシバに、この技術が奪われないとよいが……。
さて、そういうわけで本船の調査も一通り終わり、出発準備が整った。
そしてここで、本船を降りる者達がいた。私以外のエンジニア部の三人だ。彼女達が調べたところ、本船はどんな技術が使われているか分からないことが分かったらしく……本船に乗っているより、ミレニアムスペースシップに乗って本船と一緒に飛び、緊急事態に備えて高空で待機することを選んだようだ。
そして、船を降りる者達は他にもいた。
それは……本来ここにいるはずではない密航者。
「降船は断固拒否します! キヴォトスを襲う脅威との最終決戦! これを市民の皆様に伝えずにいられるでしょうか!」
密航者の正体は、クロノススクールの報道部。要するにマスコミである。
彼女達は、私達の戦いを地上に生放送で伝えるつもりだったらしく……いや、それは別に構わないのだが、非戦闘要員をこれ以上抱えて挑む余裕は私達には無かった。
なので、下手したら死ぬぞと脅して、私達は無理やり彼女達を船から降ろすことにした。
「ああー、せめてカメラを! カメラを持っていってください」
報道部の人がそんなことを叫ぶので、私は冷たい声になるよう努めて言う。
「片手をふさいだ状態で戦えるわけないでしょ。帰った、帰った」
「大丈夫です! このエグはエーテル通信内蔵のカメラの役割があるので!」
そう言って、報道部の人は私ではなく先生に一つのエグを押しつけた。
うん? 改造エグだって?
「……よくエグの構造を解析できたね。改造した人初めて見たよ」
私がそう言うと、報道部の人は「いえいえ」と首を横に振った。
「ミレニアムのエンジニア部部長の特製エグですよ!」
……ウタハ部長の仕業か!
私は船から先に降りたウタハ部長の方を見ると、彼女は「フフン」と笑ってみせた。くっ!
まあ、実害がないなら多少の小遣い稼ぎは許すけどさ!
そうして私達は、『アトラ・ハシースの箱舟攻略作戦』のテレビ放送を許可することになってしまった。
とりあえずカメラエグは、先生の左肩の上に浮かばせておくとしよう。私は戦闘用のマグを肩に浮かべているから、カメラエグなんて担当しきれないよ!