【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
安藤先生によると、アビドス高校は三つの問題を抱えているらしい。
一つは、アビドス自治区郊外の砂漠化。
もう一つは、アビドス高校が負った多額の借金(いくらあるのか先生は教えてくれなかった)。
最後の一つは、不良集団のカタカタヘルメット団による学校への襲撃
この三つの問題により、生徒達がアビドス高校から他校へと逃げるように転校していった。
その生徒数の大幅減にともない、アビドス自治区にいた住人も多数が自治区の外に引っ越していってしまったらしい。
そして、現在アビドス高校所属の生徒の数は、たったの五人。
その五人で、なんとか借金の利息を払いながら今日までしのいできたとのこと。
借金は銀行からの融資ではなく大手貸金業からのもので、しかも闇金の類らしい。そのため、金利も法的にブラックな疑いがあると先生は言っていた。
闇金なら連邦生徒会に訴えてどうこうするという手段もあるかもしれないが、ここは無法が横行するキヴォトス。借金相手のカイザーローンは、カイザーPMCという民間軍事会社を有するカイザーコーポレーションの傘下。踏み倒しを狙おうものなら、カイザーPMCが無理にでも取り立てようと兵隊を送ってくる危険性があった。
問題だらけのアビドス高校。そんなヤバすぎる状況に先生がまず取った手は、対症療法。連日のように校舎を襲撃してくるヘルメット団をまずは撃退しようと、シャーレ所属の生徒に大号令をかけた。
シャーレには現在、何名の生徒が登録されているか私は知らない。
だが、初期に加入した生徒だけでも、なかなかの大物揃いだ。
その初期生徒四名を紹介していこう。
陰湿なお嬢様達が派閥抗争を繰り広げていると噂のトリニティ総合学園所属、
トリニティでは『正義実現委員会』という生徒の無法を取り締まる、武装した風紀委員会的な組織に参加しているぞ。
同じくトリニティ総合学園所属、
トリニティでは『トリニティ自警団』という、他校の生徒からトリニティ生を護るための非正規組織に参加している。
頭世紀末のヒャッハーどもが集まっているらしいゲヘナ学園所属、
ゲヘナでは『風紀委員会』に所属。無法なゲヘナ学園で風紀を取り締まれる組織ということで、強力な力をもった集団だ。
マッドサイエンティストの巣窟と評判の、我らがミレニアムサイエンススクール所属、
ミレニアムでは『セミナー』という名の生徒会に所属。セミナーの直下には『Cleaning&Clearing』というエージェントの集団がいるぞ。
この四名が全員、今回のアビドス高校防衛戦に参加しているが、それだけじゃない。
四名とも、それぞれの所属組織から援軍を引っ張ってきてくれたんだよね。そのせいで、トリニティの正義実現委員会とトリニティ自警団が、ゲヘナの風紀委員会と先ほどまでにらみあっていた。こわー。
でも、先生が「"みんなを呼んだ子の顔を立ててあげて"」と言ったら表面上の対立は収まった。先生がすごいのか、シャーレの初期メンが所属組織内で慕われているのか。
ちなみにミレニアムからはCleaning&Clearing、略してC&Cが援軍に来ているが、二校の対立は知らんぷりしていた。
それよりこのC&C、なぜか全員メイド服を着ているんだよね。生徒会のエージェントだよね? 家政婦の派遣会社じゃないよね?*1
で、わたくし道上リクは、援軍を呼ばずに単独での参加でございます。
いや、ミレニアムに編入直後なので、この場に呼べるような武装集団とのコネなんてないからね。それでも、先生には「"来てくれて嬉しいよ"」と喜ばれた。
さて、そんなわけで援軍含めたシャーレの部隊は、全部で四十人を超える規模に膨れあがったわけだ。
これにはアビドス高校のメンバーもびっくり。
「いやー、さすがにこの展開はおじさんも予想してなかったよ」
そんなことをアビドスの一人が言う。
なんだこの子。ロリっぽいちんまいボディで自称おじさんとか、あざといかよ。
「でも、これならヘルメット団も一網打尽です……!」
アビドスの黒髪眼鏡の子が、そう言って両手の拳を胸の前で握りしめた。
まあ、これだけの武装集団が居たらそもそも襲撃されない気がするが……私達だって何日もここに張り付いているわけにはいかない。だから、援軍のほとんどは校舎の中に隠して、無防備を装ってヘルメット団に襲撃させる作戦を先生が立てていた。
「不良の集団といえど、廃校寸前のアビドスに襲撃をかけるにはなんらかの背景があるはず。捕まえたヘルメット団は、情報をとことんまで搾り取らせていただきます」
そんな恐ろしいことを言ったのは、シャーレ初期メンバーのゲヘナ所属、チナツだ。
すると、同じくシャーレ初期メンバーのトリニティ所属、ハスミが彼女に向けて言った。
「今回ばかりは、ゲヘナに頼るのがよさそうですね」
うん、ゲヘナ特有の倫理観で拷問……尋問するんだろうね。
尋問能力はアークスにないから、そういう点では私は彼女達に頼り切りとなる。
アークスの敵って、会話能力を持たないダーカーとか、ダーカーに侵食されて暴走した惑星の原生生物とか、暴走した無人兵器とかばかりだからね……。交流可能な種族とは友好に接するから、ほとんど敵対しないし*2。
さて、それからしばらく経ち、集まった援軍は先生の指揮の下、校舎の各所に配置された。さらに、一部メンバーを校舎の外へと偵察に出す。
そして……。
『本校舎の北部でヘルメット団の集団を発見。数は二十四。本校舎へと向かっていきます』
偵察から通信が入り、いよいよアビドス高校防衛戦が始まった。
◆◇◆◇◆
ヘルメット団の本校舎の敷地への侵入を確認し、戦端が開かれる。
先生は校舎の中から少人数ずつ戦力を出していく作戦を取った。援軍を全部一斉に出しては、相手に撤退を選ばせてしまう可能性が高いかららしい。まあ、相手は二十四人なのに、四十人の集団をぶつけたら脇目も振らずに逃げていくよね。
少しずつ、少しずつ校舎から兵力を出していく先生。
ヘルメット団は奮戦していたが、じわじわと増えていく相手戦力に気づかない。そして、ヘルメット団は本人達が気づかない間に包囲網を敷かれていた。
そして、先生の指揮でヘルメット団へと一斉攻撃がなされる。降伏勧告は出さない。ここで、少数のヘルメット団を包囲から脱出させ、校舎の外へと逃がす作戦を組んでいるからだ。全員は逃がさないけど、少人数は逃がしておくってわけ。
先生の目論見通り、殲滅されそうになったヘルメット団は必死になって包囲網を解こうとし、その結果、わざと包囲をゆるめた箇所から三名の逃亡者を出した。
包囲を突破した逃亡者は、それぞれバイクや軽トラに乗って校舎の北部へと逃げていく。
だが、相手の位置はつかめている。なにせ、空を飛んでいる私がいるからね。
今回の私の役目は、ライドロイドを使って逃げるヘルメット団を上空から追うこと。そして、アビドス高校に襲撃をかけているヘルメット団の拠点を特定することだ。
それから必死で逃げる相手を追うことしばし。
ヘルメット団の逃亡者は、アビドス自治区郊外にある廃工場へと逃げ込んでいった。
「こちら道上リク。カタカタヘルメット団の隠れ家らしき廃工場を発見。座標送ります」
『"こちら作戦本部。座標を受け取った。戦力の半分を廃工場へと向かわせる。そちらは引き続き怪しい動きがないか監視されたし"』
「了解」
そうして私は、アークス端末のマップ機能で廃工場から生命反応が動かないかどうかを確認しながら、援軍の到着を待った。
やがて、ゲヘナの風紀委員会を中心とした追撃部隊が到着し、廃工場を襲撃する。
まさかの拠点襲撃に、カタカタヘルメット団は大混乱におちいった。
とにかく逃げ出そうと、ちりぢりになって廃工場から飛び出していくヘルメット団の団員。
だが、廃工場の上空で監視している私が逃亡を許さない。
ライドロイドのハンドルから手を離し、上空からアークス製の次世代量産型
ちなみにこのライドロイドには、手に長銃を持つ必要もないくらい様々な武装が搭載されている。エンジニア部は時間を与えるとすぐに余計な機能を付けたがる人達の集まりだからね。なので、ヘルメット団相手にいくつかの武装を試してみた。
そうしてまたたく間にカタカタヘルメット団の拠点は制圧され、一人の逃亡者も出さぬまま全員お縄となった。
ヘルメット団はアビドス高校本校舎へと送られ、ゲヘナの風紀委員会による尋問が始まった。
尋問にはシャーレの初期メンバーと先生も参加し、情報を搾り取っているようだ。
私は尋問の雰囲気が怖かったので、お疲れ様会を開くと言い出した他の援軍メンバーと一緒に、バーベキューの用意をすることになった。
アビドス高校の人達から自治区内に残っている食料品店の場所を聞いて、ライドロイドを使って買い出しにいく。
そうして活躍することで、私は援軍メンバーにライドロイドの存在をアピールした。
ふふふ、フォトンリアクターが完成してライドロイドが市販されたら、ぜひとも買ってね。ロイヤリティが私に入るから。
それから尋問が終わったようで、ヘルメット団のメンバーをアビドスまでやってきたヴァルキューレ警察学校*3の車両に引き渡して、アビドス高校防衛戦は見事に任務達成となった。
やがて尋問を担当していたメンバーも合流し、バーベキューが開始される。
打ち上げならどこかのお店で飲み食いして騒ぐのも悪くはないのだが、なにせこの場には四十名を超える生徒がいる。さすがにお店には入りきらないということで、校舎の敷地内でのバーベキューだ。
「本当なら、美味しいラーメン屋さんがあるんだけどね。さすがにここまでの人数は入りきらないわ」
そんなことをアビドスの生徒の一人が言い、援軍メンバーの何人かが目を輝かせていたので、二次会とか言って何人かがラーメン屋に突撃するかもしれないね。
そんな祝勝ムードの最中だが、尋問の結果を先生が発表すると言いだした。
そこで私は肉を口の中へ運んで消費するのを止めて、先生の近くに陣取る。
「カタカタヘルメット団は、カイザーローンからの依頼でアビドスへの襲撃を行なっていたと判明したわ」
先生の横に立つシャーレ初期メンバー、ミレニアムのユウカ会計の言葉に、生徒達からざわめきが起こる。
「カイザーローンはアビドスがお金を借りている会社。つまり、この状況は、アビドスを借金苦に追い込もうとするカイザーローンによる、マッチポンプの疑いがある」
周囲の面々の顔に、義憤に駆られた怒りの表情が浮かぶ。アビドスという生徒を、カイザーという大人が食い物にしている。典型的な生徒と悪い大人の構図であり、キヴォトスの生徒達が嫌う組み合わせでもあった。
「近日中にカイザーローンが、利息の集金のためにアビドスまでくるそうよ。支払いは現金のみとなっているらしいの。なので、そのときの資金の動きを追って……連邦捜査部の権限で、不正の証拠を押さえるつもり」
そのユウカ会計の言葉に、生徒達から「おおっ」と声が上がる。
「だから、今度はカイザーPMCといった大人の勢力と衝突するかもしれない」
「"……みんなには、また力を貸してほしい"」
ユウカ会計から言葉を引き継いだ先生が、そう言って皆に頼み込んだ。すると、話を聞いていた生徒達から「任せてください」だとか「今度の相手は大人ね!」だとか「やってやるぞ!」だとか、次々とやる気のある声が上がった。
もちろん、私も次の作戦への参加を表明しておいた。
そうして、盛り上がった生徒達はバーベキューを再開。大いに食べて大いに騒ぎ、それから二次会の流れとなり、集団でカラオケボックスに押し掛け、さらに三次会ではアビドス自治区のラーメン屋で締めの一杯を堪能した。
いやー、お酒も入っていないのによくもまあここまで騒げるものだね。
それから数日後、ライドロイドを使ってカイザーローンの動きを追った私は……先生と一緒に闇市『ブラックマーケット』にある銀行を襲撃することになった。
……いや、銀行強盗じゃないよ? れっきとした、連邦捜査部の権限にのっとった強制捜査だからね!