【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
ライドロイドで急いで先生達を助けに行ったものの、先生達はカイザーPMCから追撃を受けることもなく、ごく普通に帰されたようだった。
どうやらカイザー側は自分達の勝利を疑っていないようだ。むしろ、退学や転校をすれば借金返済に追われなくて済むと、アビドス生達を
なるほど、アビドスの借金は人じゃなくて学校そのものが負っているものだから、生徒がいなくなって廃校になれば借金も消滅するってわけかー。学校そのものを借金を背負っている人間であると考える、いわゆる法人格ってやつだね。
それでみんなは敗北感にしょぼくれていたわけだ。そんな中、ライドロイドで先導する私は、努めて明るく言った。
「大丈夫、大丈夫。もう本校舎では、カイザーローンをぶっ潰す算段は付けていると思うから!」
「へっ? そうなの?」
ロリおじさんホシノが、驚き顔で言った。そんなホシノに私は返す。
「うん、ヒナ委員長がドヤ顔で『カイザーローン潰すゾ!』って言ってた」
「うへー。まさかの展開。じゃあ、カイザーローンが潰れたら、借金もチャラに?」
「いや、それはないと思うよ。親会社は残るから、債権をどこか別の企業に売り払うんじゃないかな? もちろん、そうなったら利率は合法なものになって、借金苦はだいぶ和らぐだろうけど」
「……そっか」
そうして私達はアビドス高校本校舎に帰還し、先生を中心にして作戦会議を行なった。
まず明らかに違法な金利を設定した点と、ブラックマーケットの銀行で集めた不正の証拠をもとに、連邦生徒会から捜査の手をカイザーローンへ入れてもらうことになった。
連邦生徒会長の行方不明により、ものすごく腰が重い現在の連邦生徒会。だが、トリニティ、ゲヘナ、ミレニアムの三大学園の組織とシャーレからの捜査要求を出せば、さすがに動かざるを得ないようだ。通信先で連邦生徒会の人*1が涙目になってた。
それだけでなく、次の一手も打つ。ミレニアムのハッカー集団『ヴェリタス』メンバーを一人雇ったのだ。
この場に参加しているミレニアムの生徒会『セミナー』の
そこで、エンジニア部のウタハ部長に相談すると、エーテル通信技術の資料をヴェリタスへ渡すことと引き換え条件にして、メンバーを簡単に雇ってもらえた。
そして、その雇ったヴェリタスメンバーにネット工作を任せて、カイザーローンの悪評(事実)をジャンジャン流した。
ヴェリタスのメンバー、
そんなあくどい作戦会議と作戦実行が終わり、シャーレ部員達は一息ついて休憩に入る。
ちなみに、アビドスの面々は皆、ポカーンとした顔になっていた。
「最初に先生へ救援を頼んだときは、努力友情勝利みたいな結末を想像していたんだけど……」
アビドス生の一人、黒髪ツインテールの
「なんというか、思っていたよりダーティーでしたねー?」
いつも笑顔でいるのが印象的だった
そんな二人に、私は横から一つ教えてあげた。
「昔からよく言うじゃん。大人が子供と話すときは、目線の高さを合わせるといいって」
「つまり、どういうこと……?」
私の言いたいことが伝わりきっていないのか、セリカが問い返してくる。
「大人が相手なので、子供の私達は相手と同じ高さまで跳び上がって目線を合わせて、対等な行動をするわけだ。大人の汚いやり方を押しつけるなら、こっちだって同じ手段で行くぞって」
「それはー……うん、仕方ないんですかね」
「問題解決は万々歳だけど、心にシコリが残る方法ではあるよねー」
眼鏡のアヤネと、ロリおじさんホシノも口をムニムニさせている。
こういうやり方を汚いと考える、キヴォトスには珍しい優しい子達なんだろうね*3。
「目には目を歯には歯を。殴られたら殴り返す。当然だと思う」
一方で、そう言って平然としているのは、温かい春だというのになぜかマフラーをしている
ま、こういう手段を取らないと対抗できない相手もいるってことさ。
「ただし、一つ問題があるんだよね、この理屈」
私がそう言うと、「まだ何かあるの?」とセリカが、うんざりとした顔をして問うてきた。
そんな彼女に、私は言う。
「大人の流儀に合わせてこっちがやり込めたってことは、逆に相手も子供の流儀に合わせてくるかもしれない」
つまり……。
「子供、キヴォトスの生徒達の流儀。つまり、銃を使った殴り込み。それがあるかもね」
キヴォトス歴が短い私でも分かる、キヴォトス脳な解決法。そんな禁断の一手を相手が取ってくる可能性が、未だ残されていた。
◆◇◆◇◆
カイザーローンの非道な手口は、ネット工作の結果、一晩でキヴォトス中の生徒達の間に知れ渡った。
これでカイザーコーポレーションは、決断を迫られるだろう。
評判が地の底に落ちる前に彼らが取る手段は、おそらく、子会社であるカイザーローンの切り捨て。トカゲの尻尾切りだ。カイザーコーポレーションは、これまで似たようなことがあるたびそうしてきたという。
その結果を見て、改めてホシノが言う。
「うへー。昨日もみんな言っていたけど、学生らしからぬ大人の戦いって感じに終わりそうだね」
それを横で聞いていたゲヘナ風紀委員長のヒナが、鼻で笑って返す。
「何年もアビドスで仲良しごっこをしていて忘れたの? ここは学園都市。子供である学生だって、大人顔負けの政治をするし、工作活動もするの」
そんな彼女達の雑談は、銃を構えながらなされている。そう、ここは戦場。いつものアビドス本校舎に、予想通り襲撃があったのだ。
私達の工作で追い詰められたカイザーローンは、最後の手段に出た。
工作活動を仕掛けているであろう相手、すなわちアビドス廃校対策委員会。彼女達を止めるため、武力を使って言うことを聞かそうというのだ。
本当に工作活動をしたのは、対策委員会に協力しているシャーレと善意で協力している三大校の勢力なのだが……その構図をカイザーローン側は読み切れていないのだろうね。だから、待ち構えていたシャーレ軍に、彼らは無策で挑むことになっている。
さて、今回、私は珍しくライドロイドから解放されて、援軍メンバーと一緒に
襲撃を仕掛けてきたカイザーPMCの兵隊の中身は、学園を退学した元生徒か、大人のロボットだ。どちらも銃で撃たれた程度では死なない。安藤先生みたいな銃で撃たれて死ぬ普通の人間は、キヴォトス内にはまずいないのだ。
キヴォトスにいる人種って、頭に天使の輪っか『ヘイロー』を持つ生徒以外だと、ロボットか二足歩行の動物なんだよね。ロボットの大人も動物の大人も、銃で撃たれても痛いだけで済む。
なので、今回の私は、ストレス解消の模擬戦感覚で戦闘に参加している。最近合流した援軍メンバーは、ヘイローがないまま戦う私を見てギョッとしていた。が、平気な顔をして長銃を撃つ私の様子を確認してから、釈然としない顔をして戦いに戻っていった。
というわけで、私は前線で『ユニオンライフル』を手に暴れ回り、最終的にシャーレ軍はカイザーPMCを壊滅させるに至った。
「勝利ー!」
そんなユウカ会計の気の抜けた勝ちどきを上げる姿が、とても印象的だった。
それからまた私達は祝勝会としてバーベキューを行ない、二次会でカラオケ、三次会でラーメン屋へと向かった。
ラーメン屋に向かったのは、アビドス生の五人と、シャーレ初期メンバーの四人、私、あと先生だ。
十一人の大所帯だが、ラーメン屋の大将は喜んで私達を迎え入れてくれた。大将は二足歩行の柴犬の姿をしている。
そんな大将は、店の土地を所有するカイザーコンストラクションからの退去勧告がなくなったと、私達に礼を言ってきた。
なるほど、アビドス自治区の土地の大半は、未だにカイザーグループが握ったままなのか。
カイザーローンは連邦生徒会が潰してくれるので、アビドスの借金はまともな金融会社か銀行が債権を買い取るのだろうが、土地の問題はどうしようもない。が、急ぎで土地を取り戻す必要は今のところない。まずは廃校を阻止できればいいのだ。
「つまり、あとは莫大な借金をどうにかすればおおよそ解決だね。九億円だっけ?」
私がそう言うと、ラーメンをすすっていたロリおじさんホシノが食べるのをやめ、ポツリと言った。
「そっかー。あとは借金をどうにかすれば、全部解決なのかぁ」
「砂漠化は?」
「自然現象は、どうしようもなくないかなー」
問い返した私に、気の抜けた声でホシノが答える。
まあ、そこはホシノの言う通りかぁ。
となると、やっぱり残る問題は借金と、おまけに土地か。おや? なんか私でも解決できそうな気がするぞ。
……なんて、ミレニアムに帰還して翌日、エンジニア部に顔を出していた時に思いついたんだけど。
しかし、先生から受け取ったモモトークのメッセージで、それどころではなくなってしまった。
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| 借金を返すために身売りするって…… |
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