【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
ロリおじさんことホシノが姿を消した。
借金を返すために退学して大人の所に身売りしてきます。要約するとそんな感じの手紙を残していったらしい。
……一言いいですか?
「じぽー!!!」
ロリボディのホシノが身売りとか、じぽですよじぽ! 合法に見えてギリギリ違法! 高校三年生だけど十七歳です!
……まあ、そんなことより先生との連絡だ。
まず、先生はホシノの行方を知っているか……知らないと。
彼女はどんな人に身売りしたのか……知ってると。
ふむ? 他のシャーレメンバーの情報網で、ホシノがカイザーコーポレーションの大人となにやら取引しようとしていたと、調査が付いているんだね。
ということは……今度はカイザーコーポレーション本社への出入りか!?
と、期待したものの、先生は私を止めた。
なんでも、ここからは大人と大人の戦いだと。具体的には話し合いという名の戦いをしてくると。
いざというときは、『大人のカード』がある、と。……クレジットカードなんてなんの役に立つの? それとも別のアイテムの隠喩? えっちなお店の会員証とか? いや、いざというときに会員証は役には立たんわ。
ともかくして、私は先生の健闘をエンジニア部の工房から祈ることにした。
「リク……謎のポーズしているところ悪いけれど、リアクター見て。出力が安定しない」
あー、はいはい。うん、こっちも大事だからね。本気で研究を進めなきゃ。
なんてやっているうちに、数時間が経ち……先生からモモトークのメッセージが来た。
▲MomoTalk ⍰
| ホシノの身売りは阻止できたよ |
| あとはみんなで迎えに行くだけだ |
| みんな? |
| うん、シャーレのみんなで |
| 具体的には前回のみんなで |
| よろしい、戦争だね |
| そうだね、ラストバトルだ |
なにやら、またトリニティ、ゲヘナ、ミレニアムの大連合軍を動かすらしい。
名目は……連邦捜査部権限による、ロボおじさんことカイザーローン理事の家宅捜索。捜索先として指定された建物は……アビドス砂漠のアビドス高等学校旧本館、カイザーPMC基地だ。
ホシノが、そこで人体実験の被験者として監禁されているらしい。身売りって、そういう意味か……!
◆◇◆◇◆
砂漠をシャーレの軍勢が進む。
最初は衝突ばかりしていたトリニティ生とゲヘナ生も、なんだかすっかりマブダチ感覚。一緒に戦ってバーベキューも二回やったんだから、そりゃみんな馴染むよね。
そして、今回がカイザーとの最後の戦いになるだろうと先生が言った。
ここに来て、みんなの気合いの入りが違う。
だが、気合いの入りが違うのは……カイザーPMCもだった。
先日の衝突で数を減らしたPMCの兵隊だが、代わりにドローンや戦車、自動で動く人型ロボットのオートマタの軍勢が待っていた。
さらに、奥には巨大な人型ロボットの姿まで見えた。『ゴリアテ』というらしい。
私達は銃を手に、その軍勢に立ち向かっていく。
一番槍は……この私だー!
「オラーッ! 《パラレルスライダー零式》じゃー!」
「えー、リクちゃんそれどうやってるの」
「ホバリングしてる……?」
うふふ、フォトンアーツはフォトンの力で不思議な動きができるからね。スイーッと移動しながら銃を撃ち続けるよ!
そうして敵基地に斬り込んだ私は、
そうするうちに、残る敵はゴリアテのみとなり……。
「《スフィアイレイザー》、発射ーッ!」
大砲の最強フォトンアーツをゴリアテにぶち込み、一発で大破させることに成功した。
「うわー、なに今のー!?」
「ビームだビーム!」
「極太ビームが出た!」
「さすがミレニアムのエンジニア部……ッ!」
いや、今のフォトンアーツであって、エンジニア部の技術力とか関係ないからね!
と、騒いでいる間に敵兵力の鎮圧は終わり、カイザーPMCは戦う力を失った。
「敵基地制圧完了!」
ミレニアムのC&Cがシャーレの旗を基地に立て始めたが、これって制圧作戦じゃなくて家宅捜索だからね?
もっと正確に言うと、家宅捜索にかこつけたホシノの救出作戦だからね?
とかなんとか言っている間に、先生とアビドス生達が基地の内部からホシノを連れて戻ってきた。
すると、シャーレ軍のみんながワッと集まって、ホシノを胴上げし始めた。
「えっ、ちょっと、ちょっと待ってよ……」
「わーっしょい! わーっしょい!」
「うへー、待ってー! おじさんスカートだからー! 中身見える!」
「わーっしょい! わーっしょい!」
これには先生もニッコリである。
やがて胴上げが終わり、ホシノは大きく息を吐きながらつぶやいた。
「やれやれ、おじさん一人で借金が帳消しになるのに、みんなときたら……」
そんなホシノの言い様に、アビドス生達が口々に、ホシノがいないと駄目なんだと説得なんだかのろけなんだか分からない友情パワーを発揮し始めた。
と、そこで先生がなんとも軽い調子で言った。
「"それなんだけどね。リクに妙案があるそうだよ"」
その先生の言葉で、周囲の目が一斉に私へと集まる。
あー、ここで言うのか。まあ、シャーレ軍のみんなも気になっているだろうから、ここでいっか。
私はホシノの前に歩いていき、そしておもむろに話し出す。
「……アビドス廃校対策委員会で、アビドス生徒会のホシノ副会長。アビドス所属ではない私からだけど、あなたに一つ提案があるの」
私はホシノのオッドアイの瞳を見ながら、真っ直ぐに告げる。
「アビドス自治区に企業を誘致しない?」
そんな私の言葉の意味を理解できなかったのか、ホシノは「ほへ?」と奇妙な声をあげた。
それを気にせず、私は言葉を続ける。
「私が乗っている空飛ぶバイク『ライドロイド』。知っているよね? あれを販売する会社を今度作ろうと思っているんだ」
「あの空飛ぶやつ……売るの?」
「うん。私はキヴォトスの外の世界出身で、キヴォトスにない技術をいろいろ抱えているの。新しい動力のフォトンリアクターで動く新製品、そして地球の最新技術エーテル通信。これらを扱う新企業だよ」
ミレニアム生の私が会社を作ろうとしている。それなのに、なぜアビドスの誘致を希望しているのか。みんなそう思ったことだろう。もちろん、理由はある。
「私の所属しているミレニアム自治区で起業しようとずっと考えていたんだけど、ミレニアム周辺は地価が高くて、本社や工場を置く場所に困っていたんだよね」
そこまで告げたところで、ホシノは話の方向性を理解したのか、真面目な表情を作る。
うん、学生起業だから、ミレニアムで土地を大量確保できるほどの資本金は調達できないんだ。
「そこで、土地の安いアビドスに本社を置かせてもらうの。さらにその企業の社員かアルバイトとして、アビドス生の五人全員を雇えるよ」
いやー、ミレニアムはマンモス校で広い自治区を持っているのに、研究者が集まって研究所なり工場なりをどんどん作りたがるから、本当に地価が高い!
でも、アビドスはどうか? ここの地価は、砂漠化とカイザーローンの暴挙によって下がりに下がっている。
もちろん、アビドス自治区に本社の土地を借りるとなったら、アビドス生徒会の唯一のメンバーであるホシノが口利きしてくれれば助かるね。
「まずはライドロイドをキヴォトスに広く販売して、利益を上げよう。たくさん売ってくれればボーナスも弾むし、アビドスの借金も返せるようになるよね。いずれは事業拡大のために株式を発行するとして、アビドス高校の名義で株主になってくれれば、ホシノ達が卒業してもアビドス高校は継続的に配当を受け取れる」
私の熱弁を端から見れば、怪しい投資話に乗らせようとしているか、向こう見ずな馬鹿が計画性のないベンチャー企業を打ち立てようとしている感じになっているだろう。
だからか、ホシノだけでなく、アヤネが、シロコが、ノノミが、セリカが、アビドス生の五人全員が安藤先生の方を向く。この話は信用できるのか、信頼している先生に確認しようとしているのだ。
すると、先生はただ一言、彼女達に返した。
「"大丈夫"」
騙そうって言うんじゃない。詐欺なんかじゃない。それは先生が間に入ることで保証される。ゲルマニウムのブレスレットを売るマルチ商法なんかとは違う。
商材はある。ライドロイドという現物を私は彼女達に見せてきた。あれはシャーレ軍のメンバーにも大人気で、みんな自分も乗りたいと散々騒いでいたくらいだ。
そんな、真面目で真っ直ぐな私なりのプレゼンは続く。
「そして、製品が売れたら、この企業の資本でアビドスの土地をカイザーコントラクションからどんどん買い取っていって……アビドスから去っていった人を集めて、社員やアルバイトとして雇って、その人達が住む住宅を用意して、工場を建てて、エーテル通信塔を建てて……アビドスを地域密着型の企業が見守る地として再生させよう!」
「あはは……君、まるで大人みたいだねぇ」
私の説明を黙って聞いていたホシノが、表情を崩して笑いながら、そんな言葉をもらした。
「いいや、違うよ。これがキヴォトスでの子供の在り方だよ。キヴォトスに来てひと月も経っていない私でも分かる。学園都市は、子供みんなで動かすんだ」
「そっかー。とうとう、私達にも
ホシノはオッドアイの瞳をしばたたき、さらに笑った。
そのホシノをアビドス生の四人が、静かに見つめている。四人から私の提案に対する反対の声は上がらない。すると、ホシノは笑いながらうなずいて言った。
「じゃあ、アビドス廃校対策委員会として、ベンチャー企業の誘致を検討するよ。みんな、いいよね?」
ホシノの周囲から一斉に上がる賛成の声。
大人に騙されてばかりだったアビドスの五人は、安藤先生という味方になってくれる大人を知った。
そして今回、子供とも大人とも言える私という存在から、騙し目的じゃない商談を受けた。
世間は優しくはないけれど、厳しいことばかりでもない。
そんな当然の事実を彼女達は学園に入ってからしばらく経った今、ようやく学べたのかもしれない。