【完結】銃で撃たれても痛いだけで済む神秘的存在 作:Leni
9.ミレニアムの研究事情
一つ言い訳をさせてほしい。
私はこれまで様々なフォトン関連技術やエーテル通信技術をキヴォトスに流してきたが、そこにはなんの問題も生じていない。
問題とは。具体的に言うと、アークスやオラクル船団の秘匿技術を横流しにすることによる、背信行為のことだ。
私がエンジニア部やヴェリタスに渡した技術は、いずれもオラクル船団の外部に漏らしても問題のない技術ばかりだ。
まず、武器。これはフォトンが扱える人間でないと意味がない装備なので、生物を改造する技術とセットではないとなんの意味も持たない。しかも、武器は結局自分で技術を高めて整備することで落ち着いた。
ライドロイド。これはアークスの最新兵器だが、地球上でバンバン運用していた。そのため、搭載された高火力の武装を除きさえすれば、地球人に渡しても構わない技術扱いだった。
A.I.S。これは大型ダーカーや惑星の神などを相手取る秘密兵器だが、もちろんその技術の全てはエンジニア部に開示していない。本物のA.I.Sと同じスペックの機体が複数機完成したら、キヴォトス中枢部の制圧とかができてしまうだろうからね。エンジニア部で作るのは、先日カイザーPMCが出してきた大型の人型ロボット『ゴリアテ』を素早くそして少し強くした程度のものに収まる予定。
フォトンリアクター。これは何世代も前の古い型を交流先の種族に渡すことが、私の権限で許されている。アークスと友好を深め「共に高め合っていきましょう」という意図で、他種族への開示が許されているのだ。
回復剤。これは積極的な技術開示が許されている。速効性を持つ薬だからね。人道的な観点で、他種族に広めるべきとされている。まあ、キヴォトスにはアークスの回復剤並みに速効性がある薬が、すでにあったんだけれど……。
エーテル通信技術。これはそもそもアークスの技術じゃない。アークスが交流を持っているエーテル地球の独自技術だ。だから、私が技術を漏らしてもアークスには怒られない。キヴォトスって文化面の類似性を見るに、エーテル地球と何らかの関わり合いがある世界なんでしょ、どうせ。ならエーテル技術の定着も遅いか早いかだよ。
そういうわけで、私は何も悪いことはしていない。明かすべき所は明かして、秘めるべき所は秘めている。
こちらで買ったスマホには重要技術は残していない。重要機密は、フォトンを生身で扱えないと動かないアークス製端末に保存してある。地球製の端末はそもそもクラウドOSなので起動すらしない。
だからね。多分、ミレニアムサイエンススクールのハッカー集団『ヴェリタス』の人達がやっているんだろうけど……。
私の持つあらゆる端末にアタックかけようとするの、いい加減止めない?
エーテル通信なら、今度起業する会社で扱うし、自前でエーテル通信塔も建てるからさ。
新しい高度すぎる通信技術が待ち遠しいのは分かったから、大人しくしてよね!
そんなメッセージをヴェリタスが秘かに自作していたエーテル通信端末へと送ってやった、今日この頃です。
◆◇◆◇◆
そんな感じでヴェリタスとバチバチやり合う未来を想像しつつ、私は今日もエンジニア部で研究を行なう。フォトンリアクターはだいぶ出力が安定してきて、ライドロイドへの搭載が現実味を帯びてきている。
ライドロイドが完成したら、いよいよ起業だね。
みんなで作った完成品をひっさげて、銀行に融資を頼みにいくことになる。ちなみに起業する会社には、エンジニア部の三人も入ってもらうというか、役員になってもらうよ。
私のもたらした設計図がないと何も始まらないけど、エンジニア部の三人がいなかったら実用に辿り着かなかったのも事実なんだ。
だから、ライドロイドを売った利益はちゃんと受け取ってもらうよ。
「えへへ、売上金でどんな大規模開発に着手しましょうかねー」
「やはりA.I.Sかな? 胸が躍るね」
「それだけど、リクがドヤ顔で語るA.I.Sの性能は、あの設計図を見た限りでは出せない」
おっと、ヒビキ。君のような勘のいい子供は嫌いだよ。
ただまあ、言っておいた方がいいか。
「A.I.Sの本当の出力を出したら、頑丈なキヴォトス人ですらミンチになる可能性があるから機能を制限しているよ」
「えー」
「そりゃないよ」
「本物出せー」
「本物のA.I.Sは、ある惑星の邪神もボコボコにできた超性能だからね……?」
まあ、PSO2の主人公こと
「人死にを出したくないなら、我慢してね」
私がそう言うと、みんなは渋々引き下がった。
ふう、なんだかやる気が途切れちゃったな。開発作業は中断。休憩しよう、休憩。
スマホでもいじって……あ、先生からモモトークきているね。
最近の先生は、アビドスへの出向が一段落ついたので、百鬼夜行連合学院とかいうところでお祭り運営の手伝いをしているんだったかな。
前にモモトークで話したところ、そこで忍者の生徒を見つけたらしい。そして、ちょっとしたイザコザの結果、あるじと認められたとのこと。
忍者とかいるんだねぇ、キヴォトスって。リアル忍者かファンタジー忍者か気になるから、今度その子がシャーレ当番*1のときに会いに行ってみるかな。
さて、忍者も気になるけど今は先生のメッセージの確認だ。モモトークを起動して、先生とやりとりを開始する。
▲MomoTalk ⍰
| 次の出向先が決まったよ |
| おや |
| また支援要請でも来ました? |
| 次の行き先はミレニアムです |
| マージでー |
| エンジニア部には寄れそう? |
| 問題ないよ |
| ゲーム開発部が廃部の危機なんだって |
| ゲーム開発部! |
| こう見えてもゲームには一家言あるんだよね私 |
| オラクル船団ってゲームが盛んだったの? |
| 地球のゲームに詳しいんだよー |
| 学園の侵入捜査中にゲームで遊んでいたの……? |
| ふへへ… |
そういえばこの世界には プレステとサターンの戦いがなかったんだよなぁ |
| プレステ……プラステとは違うやつ? |
| うんうん、前世のゲームハード戦争の話 |
| プライステーションとは無関係です! |
うん、こっちのエーテルが存在する地球には、前世でPSO2を運営していたセガサターン、ドリームキャストの開発企業ってないからね。プレステとサターンがしのぎを削っていた時代は、こっちだと存在しなかったみたいだね。
ちなみにプライステーションことプラステは、ここキヴォトスのゲーム機だ。
いかにもプレステに関係がありそうなハード名でいろいろ怪しいのだが……やっぱり外の世界、地球となんらかのやりとりとかあるのかなぁ、キヴォトスって。
でも、外の世界とやりとりがあると仮定すると、エーテル通信がこっちで普及していなかったことに疑問が残る。
残るのだけれど、たとえやりとりがあってもこちらに技術が来ていない理由は、分からないでもない。
エーテル通信技術の核心部分は、『マザー・クラスタ』の秘匿技術だったからね。マザー・クラスタは、水の惑星シオンの模倣体『マザー』のもとに集まった者達による秘密結社だ。
そしてエーテルはマザーがもたらした改変フォトンなわけで……まあ改変フォトンだったから、アークスの技術力で簡単にエーテル通信技術の核心部分は解析できちゃったわけだけど。
そしてその技術をキヴォトスに横流しする私。エーテル地球とキヴォトスは別世界なので、技術盗用は見逃してほしい。
いやあ、エーテル技術横流しをマザーに知られたら、彼女にぶん殴られても文句は言えないね。マザーのコア人格は、もう死んじゃってるけど。
っと、そんなことを考えていたら、タイムリーな人からモモトークが来たな。
エーテル通信技術に興味津々なヴェリタスの一人だ。
名前は
▲MomoTalk ⍰
| ちょっと |
| ねえ |
| はいはいなんでしょう |
| 建設予定のエーテル通信塔 |
| もっと出力強くできないんですか |
| エーテル濃度が上がりすぎると |
| キヴォトスに怪物が出現します |
| なにそれ |
| エーテルは情報の伝達に優れた粒子だけど |
| 情報には人の感情も含まれるの |
| 恐怖や妄想に反応してエーテルが怪物を具現化するよ |
| 本当になにそれ |
| ゲームの話してます? |
| ところがどっこい、これが現実です…! |
エーテル地球は『エスカタワー』というエーテル通信塔で、エーテルを地球上に満遍なく散布しているんだけど……。それでエーテル濃度が上がりすぎて、『幻創種』という怪物が出現するようになっちゃった過去があるからね。
今は多分、エスカタワーの出力を下げて、幻創種の出現を抑えているんだろうけど。
あ、ちなみに私をキヴォトスに飛ばした神様『デウス・エスカ』も、幻創種の一種だよ。
マザー・クラスタとは別の秘密結社の黒幕の持つ絶望の感情がエーテルに反応して、神の力を具現化させた存在だ。ちなみにその黒幕の正体はアダムとイヴのアダムさん。キヴォトスは住民達のファンタジーっぷりがすごいけど、エーテル地球もだいぶファンタジーだった。
「リク……そろそろ休憩終わろう」
っと、ヒビキにせっつかれちゃった。
「はいはい。そろそろフォトンリアクター完成させちゃおうか」
「うん。今度こそ私は空を飛ぶ……」
「私もライドロイドを飛ばしてみたいですね!」
「なんとか『ミレニアムプライス』までには間に合わせたいものだね」
いやあ、アークスとしていろいろやってきたけど、研究職も悪くないものだねぇ。