双子の英雄 Re:Build   作:黒い騎士王

2 / 4
第一部 アインクラッド
プロローグ:Aincrad


2022年11月06日

埼玉県某所

 

「そう言えば、貴方達宿題終わってる?私は眠かったけど昨日の午後終わらせたわ!」

『ソードアート・オンライン─プログレッシブ─冥き夕闇のスケルツォ』を見て映画館から帰宅する途中、あったことを思い出したのか、散々いじられたので話を逸らすためか、亜莉沙がこんなことを言い出した。

 

 

結局の所、昨晩の俺の懸念通り亜莉沙は寝坊した。

お袋もあいつの寝坊癖を知っているので一応早めに設定しておいた時間の数分後に妹の椎花に引っ張られて欠伸を隠しながら現れたので、俺達二人はあの時───俺達が人界と暗黒界を隔てる山脈にある洞窟に氷を探しに行った時の朝とは違う感情を込めて「「遅い!」」と叫んだのだった。

 

 

 

「今日は元気だな。いつもなら今頃授業中でぐっすりなのにな。宿題なら俺は金曜日にしっかり終わらせたぞ。」

 

「確かに。才色兼備で欠点がよく寝ることだけだって言われる亜莉沙がよく映画の途中で寝こけなかったものだ。

そしてハヅはいつ終わらせているんだよ…。大体《FGO》やってる所しか俺見てないぞ。」

カズ──桐ヶ谷和人が亜莉沙を茶化しつつ俺の宿題を解くスピードに異議を申し立てて来る。

まあ人生二週目なので中二の勉強で躓くことは無い。20分か30分ぐらいで解き終えているのだ。

 

 

 

そして現在俺がハマっているのが《FGO》──正式名称は《Fate/GrandOrder》。

《桐ヶ谷和人》時代もハマっていたが、この世界とは違ってVR版への移植は発表されていなかった。

この世界でも2018年から長きに渡り続いた第二部『Cosmos in the LostBelt』は終盤に入っており、現在はNo.7『黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン』が控えていると言う状況だ。しかし、俺は「LBNo.7後直ぐには終局にはならない」と言う未来を知っている。型月最悪の厄災《ORT》に対し、召喚した全てのサーヴァント(理論上は三百八十騎近くが参加することになる)と共に決戦を経て初代カルデアへと向かい、白紙化地球を巡る旅に出ることになる。アルターエゴについての答えを出し、アヴェンジャー、ルーラー、フォーリナーについても答えを出した後に終局へ向かうのだ。

前回割と謎だったのが、召喚で異様に出易いサーヴァントと出難いサーヴァントが居たことである。強い縁があるのかはわからないがアルトリア系やアーサーは出易かった。その代わりに、モルガンやトネリコを実装時や福袋と言った時に召喚することがかなりの期間できなかったのだ。

事態が動いたのは、2026年正月。年明けの福袋を開けた際に虹回転と狂戦士のセイントグラフ。またアルジュナ・オルタなのか(今になって知ったのだが、俺と優人の中の人同士が親友だったため優人の中の人が声を当てている一人である彼は出易かったらしい。)と当時の俺が絶望した時、声が響いた。『……私を召喚したのですね。』と。思わず立ち上がったさ。大声も出した。そして母さんに煩いと怒鳴られた。

これは2025年12月28日に《アルヴヘイム・オンライン》内の地下世界《ヨツンヘイム》にあった氷の三角錐ダンジョンの最下層にて、妖精郷最強の武器(《伝説級武器(レジェンダリーウェポン)》と呼ばれる)である《聖剣エクスキャリバー》を引き抜いた数日後であった。

“恐らく俺が聖剣を抜いたことがきっかけだったのだろう。と言うことは21年6月に『アヴァロン・ル・フェ』が配信された時には、どうやって知ったのかはわからないがモルガンには「聖剣を引き抜く」のが俺の未来だとわかっていたと言うことだ。《Fate/GrandOrder》と言うゲームの中の存在であるのに現実の俺のことをどうやって知ったのだろうか。まあ、かのマーリンと渡り合ったモルガンだしなぁ…。”でその時済ませてしまったのだ。

 

「一時間掛からずに終わらせられるだろ。」

この生では昨年6月にモルガンをあっさり召喚できたので、“まさかとは思うが、以前の武器がそのままであり縁も繋がったままだからなのか?”と疑心暗鬼になっていることを隠しながらカズに言葉を返す。

そんな会話をしながらも、俺達三兄弟妹の家に到着。花園姉妹は右側の家、紺野三兄姉妹は左側の家へ戻って行く。

最後の平和な時間。

アイツらと次に会うのは、《Sword Art Online》にログインしてから。

《浮遊城アインクラッド》の第一層《始まりの街》で会う約束だ。

 

 

 

 

 

 

双子の英雄【Twin Hero】

第一部【The 1st Episode】

アインクラッド【Aincrad】

プロローグ【Prologue】

 

 

 

 

 

 

「「せいッ!」」

声と共にアリスとユージオはそれぞれ青イノシシこと《フレンジーボア》に《ソードスキル》(決められた動作を行うことでシステムが動きを制御し放つ技。ライトエフェクトやサウンドエフェクトが発生する。)を放ち、綺麗に命中させる。

ぷぎーッ×2

断末魔を響かせながら二頭のイノシシはガラスのように砕け散った。

 

「どうだった?私の一撃!」

ソードスキルの硬直が解け、剣を腰の剣帯に吊った鞘に戻したアリスが聞いてくる。

《整合騎士》だったから当たり前だが、高熟練度で覚えられる一撃技でしか攻撃していない。

一撃技なのは別にいいが、長く硬直することがこれからのデスゲームでは完全に命取りとなってしまう。

結局ALOとその直ぐ後のURでも連撃技は覚えたとは言え好むのは一撃技で余り変わらなかったからな…。

 

「単発技だけで戦うのを辞めればこの世界でも十分通用するぞ。向こうとはシステムだいぶ違うしな。」

 

「ここじゃ物足りないのよねー。実際にボスと戦う時は連撃技も使うから!」

 

「駄目だ。絶対忘れる。いいか?命取りになるんだぞ!」

 

「むぅぅぅぅぅ。」

 

「まあまあ落ち着いてアリス。僕はどうだったかな?キリト。」

俺の言葉に膨れるアリスを宥めながらも、同様に剣を腰の剣帯に吊った鞘に戻したユージオが聞いて来る。

 

「そうだな……。ユージオは免許皆伝に近いな。後で最も俺が愛用する技を教えよう。」

一撃を尊ぶ整合騎士に染まったままのアリスに比べれば、真っ新な状態でこの城に由来する剣術を教え込んだことで連撃技に忌避感の少ないユージオの方が適合は速いだろう。

 

「おお……。ひょっとして、《テュデルキン》に放ったあれだよね?《ハイ・ノルキア流》を思わせる大技。

でも伝統流派にあった様式美が完全に無く、敵を貫く為だけにあると言っていいあの一撃。」

ユージオの目が期待に輝いている。

 

「ふ、ふーん。いーんだ。ヴォースト私はできるし!」

アリスは、あらぬ方向を見ながら言いつつも、チラチラ見てくる。

 

「あの時そんなこと思っていたのか。っと、そうだ。

この城で俺が愛用し、俺こと《“黒の剣士”キリト》の象徴となっていたソードスキル。

片手用直剣スキルが熟練度950に達することで覚えられる、単発重攻撃技。

その名は──《ヴォーパル・ストライク》。」

言いつつも俺は右手で柄を握る剣を肩の高さまで持ち上げて完全な水平に構え、大きく引く。

左手をカタパルトの様に宛行い、剣を構える左腕を限界まで引き絞って初動モーションを検出させ、剣が深紅に包まれる。

大地を蹴って加速し、それを回転力に変えて右肩に伝え、回転を再び直線運動に変えて右腕と一体化した剣に叩き込んで放つ。

二人が(と言うより、主に連撃技を余り使わないアリスが)SAOでのソードスキルに慣れている間に大体俺の調整は終わった。と言うのも“この城の中ではALOとは違い魔法属性は乗らないし、UWの様に心意で拡張はできない。”と確認するだけだったからである。

 

 

 

 

何はともあれ、俺達三人が居るのは、巨大浮遊城《アインクラッド》の第一層。

直径1kmの半円を描く城壁に囲まれた《始まりの街》を南に臨む、《ラータ平原》。

多くのプレイヤーは《街》の西側の平原で狩りを繰り返しており、川を越えた所まで進出して来ているのは俺達三人ぐらいか。

「僕は、ベータで来たのが初めてだけどアリスは何度も来てるんだっけ?」

感嘆するかの如く息を漏らし、ユージオはアリスに問うた。

 

「まあね。でもわたし──と言うより《“騎士”アリス》の記憶だし、そもそも彼女が来たのはこのアインクラッドじゃない。この城が崩壊した後に妖精郷──アルヴヘイムに現れたと言う新しいアインクラッドだった筈。そうよね?はづ。そういう意味では騎士時代を含め私もベータが初よ。」

のほほんとした風にアリスが答える。

 

 

 

 

 

 

このゲームの舞台は《アインクラッド》。幾つかの都市と、多くの小規模な街や村、森と草原、湖まで存在する、百層からなる巨大な石と鉄の城。

俺達は、武器を手に駆け抜け、上層への道(《迷宮区》と呼ばれる)の最奥を護る強力な守護モンスター達(第一層の《イルファング・ザ・コボルトロード》から百層の《アン・インカーネイト・オブ・ザ・ラディウス》)を倒して登り城の頂上を目指す。

竜の探求とか最後の幻想の様なファンタジー系ゲームでは必須と思われていた《魔法》は大胆に排除され(イメージすることでシステムを上書きする《心意》がこの世界における魔法に近いが、この時点では発見されていない。)、代わりに《剣技》と言う必殺技が無限に近い数設定されている。己の身体、己の武器を実際に動かして戦うと言うフルダイブ環境を最大限に活かすためだ。

戦闘用以外にもスキルは設定されており、旧友であるリズベットの取った鍛治をはじめ革細工、アスナの取った裁縫といった製造系、俺が投げた釣りやアスナの料理、ユナの吟唱の様な音楽など日常系まで多岐に渡り、プレイヤーは広大なフィールドを冒険するだけでは無く、《生活》することが可能となっている。

俺とアスナが二十二層にログハウスを買った様に、望み努力すれば、自分の家を買い、畑を耕し羊を飼育しながら暮らすことができる。

 

 

 

改めて自己紹介しよう。嘗ての『俺』は『解放の英雄』または『黒の剣士』キリトという名で知られたゲームプレイヤーだった。

現世は、その双子の弟で俺の記憶には存在しなかったキリハこと《桐ヶ谷葉月》として転生した。

《ナーヴギア》は発売日に買った物のSAO開始まではVRゲームをしないと決めていた俺はβテスターをすることは無かった。

 

 

そして今日──2022年11月6日、日曜日。

午後十三時に兄に引っ張られる様な形でアバター作成(後のことを考えれば、リアルと同じ姿の方が面倒がなくて良いためリアルの姿に寄せるがせめてもの足掻きで《アンダーワールド》での身長にしておく。)し、《始まりの街》に降り立った。

キリトの姿は俺が降り立った時には既に無かったが、俺の経験からしても“値段が安いが現状ではいい性能の武器を買える武器屋へと突撃しようとした所で、クラインに捕まったんだろうな。”と思いながら、取り敢えず俺は共にプレイすると約束していたアリスとユージオと合流するために路地裏に向かう。

 

 

『私達のリアルが流出し切る前に急いでーーーを拉致るわよ!』

 

『そうよね!』

と言いながら急いで走る紫の衣類に身を包んだ鎌使いの少女と傍を走る栗毛の少女とすれ違うこととなった。

 

 

何か嫌な予感がしたものの、取り敢えず待ち合わせ場所であった路地裏に到着。二人──ユージオとアリスに合流する。

「待たせたか?」

 

「キリトいやキリハだししょうがないかなって。」

 

「そうそう。それにしても、いつも思うけど安直ね。貴方のPN。名字と名前の前をくっつけただけじゃない。

あの時は名字の前と名前の最後くっつけてたんだっけ?」

 

「昔からずっとこれなんだよ。あの時使ってた《キリト》だって同じだ。

わざわざ仰々しい名前じゃなくてもいいだろってな。

それに脱出したら学校に通うんだ、覚えやすくていいだろ。」

と言いつつ、取り敢えず無防備なのは怖いと右手の人差し指と中指をまっすぐ揃えて掲げ真下に降る。シャラランと鈴を鳴らす様な効果音と共に紫色に発光する半透明の矩形が現れる。

初期状態では左側に幾つものタブが並び、右側には装備状況を示す人型シルエットこと装備フィギュアが表示される。

装備・アイテム・スキル・フレンド・マップ・クエスト・オプションなどのタブの内、剣を装備する為にはアイテムタブを開き、オブジェクト化。装備フィギュアへとセットする必要がある。

アイテムタブを押すつもりがうっかり押し間違えて出て来たステータスウィンドウをざっと見る。レベル1なので大したことは書いていない────。

「ん?」

目を擦り、もう一度見る。

【レベル:96片手用直剣使い スキルスロット:12】

【設定スキル(熟練度):片手用直剣(1000) 二刀流(1000) 投剣(967) 武器防御(1000) 戦闘時回復(944) 索敵(1000) 追跡(963) 隠蔽(1000) 暗視(908) 限界重量拡張(949) 疾走(870) 釣り(643)※体術(991)】

【装備:《スモールソード》】

 

「おいおい…。何でアインクラッドと共に消滅した筈がALOに引き継がれ、あの事件後に初期化した筈の《“剣士”キリト》の最終的ステータスが今目の前に表示されているんだよ…。」

目覚めぬアスナの手がかりが漸く見つかり、ALOへと飛び込んだ際に確認した時は二刀流など一部を除いたステータスの残存は旧SAOのシステムをそのまま流用すると言う運営側の手抜きが原因だと、義娘が言っていたが今回は訳が違う。

まだこの城を俺が攻略したと言う事実は存在せず、開始宣言すらされていないこのタイミングで俺が《二刀流》を保持していることは非常に問題なのだ。

この世界の支配者である、茅場───《ヒースクリフ》によって【所持する者は奴に対抗する“勇者”の役割を持つ者】と《二刀流》は定められていて、奴の《神聖剣》と同じ一人しか保持者が居ない《ユニークスキル》(クラインの《カタナ》の様に出現条件が不透明な武器スキルを指す《エクストラスキル》の一種。SAO中に十数種類確認されたが、いずれも十人以上取得者が確認された。)となっているからだ。

二刀流を俺が持ってしまうことはかつての俺───《キリト》の元に《二刀流》が現れないと言うことになる。それとも、俺が保持していても五十層を越えた際にキリトが《二刀流》を手に入れることができるのだろうか。どうなるのかは分からない。分からないのだから、俺の元に二刀流がある理由と俺が持っていても二刀流がキリトに渡るのかどうかがわかるまでは一本で行くしかない。

まあ、大丈夫だろう。本来俺は一刀流だしな。と酸っぱい葡萄理論で慰める。

 

 

嘗てのSAOでの最終ステータスが表示されていたためまさかと思って、ステータス画面から移動する。

「装備もあるのか……。素材もポーション類も……だと?」

アイテムストレージを見てみると《黒の剣士》《影妖精/開拓者》《銃剣士》《星王》といった嘗ての仇名が付けられており中にはその時の全装備や終結までに入手した素材類などが入っているボックスが有った。

《黒の剣士》内には血盟騎士団に入団した際に受け取った、両襟に小さく二つ背中に巨大な一つと真紅の十字架が染め抜かれた白いロングコート(長い付き合いになると思っていたが、あの騒ぎがあり一時脱退。最終決戦はいつもの黒革のロングコートで挑んだ様な気がする為初めて着た日とその翌日の二度しか手を通していない。)があり、《星王》内に本来なら『青薔薇の剣』と同時に存在する筈の無い『赤薔薇の剣』(ユージオの血を元に折れた刃を直した『青薔薇の剣』のため。)があった。なら、今回はシンボルカラーに黒は使えないのでシンボルカラーは白にしようかと考える。《黒の剣士》では無く、《赤光の剣士》にでもなろうかと思ったのだ。

だが流石に75層決戦以降も浮遊城を登った世界の方で俺が入手した装備は無かった。“《赤光の剣士》となるのに最適だと思っていたのは『Alicizition Lycoris』であった白い『夜空の剣』だが──”と思ったら入っていた。

“どう言うシステムなのだろうか。”と疑問に感じつつ次いでなので、『Fatal Bullet』での俺の装備『コート・オブ・ノクターン』も追加しておく。SAOに入ってしまったのだから、男の娘になってしまうのは確定している。一応差別化だ。

ふと“ポーション系は無償で配ってしまおうか。今の段階で回復量の高いポーションがあれば生存率は上がるかも知れない。”と考える─────。

 

嫌々まずは感覚を取り戻す事を最優先だと俺は初期装備(白い麻シャツと紺のズボン、茶色い革鎧)から黒シャツ黒ズボン、リベット付き黒ブーツ、黒い指貫グローブ、黒革のロングコート『ブラックウィルム・コート』に服を、『スマートソード』から漆黒の片手用の両刃直剣『エリュシデータ』に武器を変更すると、淡い光と共に全身が発光。黒シャツ黒ズボンに服が変わり、足にブーツ、手には指貫グローブが現れる。

裾を翻らせながらロングコートが実体化、背に吊った剣からはかつて慣れ親しんだ重みを感じた。右手で柄を握り引き抜いた剣に呟いた。

「久しぶりだな。これからまた宜しくな、相棒。」

 

返事をするかの如く煌めいた剣を一撫でしてから背の鞘に戻して、幼馴染達の方を見ると

「キ、キリハ助けてくれ!」

 

「またあの時、《ユナイタル・リング》になった時みたいにいつの間にかに別の世界にログインしたんじゃ無いかと疑うレベルで剣が凄い重いの。」

と剣を装備して跪き梅いている。

ユージオの腰にあるのは生前の愛剣であり彼の死後は俺が用いた『青薔薇の剣』(なぜか並存している『青薔薇』と『赤薔薇』に続く三本目だ。一本しか無い筈の《神器》なのだが、何故だろうか。なおこの先《ユージオ》の剣として四本目が現れることになるだろう。)で、アリスの腰にあるのは愛剣である『金木犀の剣』(こちらもこの先二本目が現れる。)だ。

いや、待て。確かかつては二人とも剣を振るえていたんだから、アンダーワールドでの武器使用制限である《Object Control Authority》は最低でも45(因みにだが、アンダーワールドでの俺の愛剣『夜空の剣』は46無いと振るえなかった。)を超えている筈──。とまで考え、ふと思い立った。

『Alicization Lycoris』あったよな?《OCA》関係無しに、武器を装備できる──。

もしかしてだが、ALのレベル(確かあちらの世界での人界編からLycoris編へ分岐する直前のアドミニストレータ戦は推奨がLv20だった筈だ。と言うことは本来あそこで死亡していたユージオは20だろう。なら、アリスは何レベルだろうか。《アンダーワールド大戦》の最終盤での脱出──とは言え、途中で戦闘には参加していなかったため40あたりになるだろうか?)とSAOのレベルが同一視された結果、要求筋力値が足りないことになっているのだろうか。

そうだとしたら、《ユナイタル・リング》の最序盤で引き継いだ武器を装備した俺がどんな格好になっていたのか覚えてなかったのかよアリス……。

 

 

「取り敢えずまずは、剣を装備から外せ。立てないだろ?そしてステータス可視化して二人とも俺に見せろ。あー、うん。そりゃそうだ。セルカを助ける為にゴブリンと戦った後、OCA(オブジェクト・コントロール・オーソリティー)が38から48に上がった俺がクラス45の『青薔薇の剣』握った時に今背負ってる剣と同じぐらいの重みだって感じたんだ。『金木犀の剣』だって同じぐらいの重みだったしな。

今のお前らには二本とも相当重いよ。大人しく《スモールソード》装備しとけ。

後、二人とも《スキルmod》取ってないよな。俺が覚えておいた方がいい奴教えてやる。

そしてアリスはちゃんと連撃技使える様にしような。

……と言うことで、フィールド出て肩慣らしだ。」

俺はSAOでの最終ステータスだったが、やはりアリスとユージオはゲームでのアンダーワールドを参考にしたレベルとスキルになっていた。ユージオは俺の予想通りレベル20で、アリスは俺の予想より低くレベル34だ。武器スキルは共に【片手用直剣:1000】。肝心のソードスキルは、ユージオは連撃技も含め大分修得できていたが、アリスはALOでは無くアンダーワールド時の様な連撃技をすっ飛ばして修得している状態だった。いや、ALOも反映されたのか一応連撃技も修得してはいたが連撃技の熟練度が非常に低い。

話を戻し、それぞれの愛剣が俺の愛剣と同じ重さだとするならば装備するには筋力値が足りないため『スモールソード』を装備してフィールドに出る様忠告する。剣を振れなければ、死に直結するのがデスゲーム化したSAOだ。振れる武器を装備することが大切なのだ

ついでに、《スキルmod(スキルの強化オプション。どのスキルも鍛えると熟練度50毎に取得する事が出来る。)》についてのレクチャーをすることにした。

 

「「はーい。」」

幸いにも大人しく二人は『スモールソード』を装備したので《ラータ平原》へと向かい、二人のスキルmodの選択を手伝う。しっかりアリスが連続技を繰り出せる様にすることと、ユージオの復習、そして俺の調整のために戦闘を繰り返しているのが現在だ。

 

 

 

 

 

感覚を取り戻す為に四時間半程狩りをした俺達は一回ログアウトしようとした。

「取り敢えず、現実戻って夕ご飯食べよーっと。キリハ達は?」

大分連撃技が繰り出せる様になり手応えを感じたのかアリスがウッキウキでメニューを開く。

 

「僕も食べて来る。多分戻って来るの八時ぐらいかな。風呂入ってこようかな。」

とユージオもまたメニューを開いた。

 

「あー、うん。俺はどうするかなぁ……。」

実は朝起きて両親と直葉、そして某眼鏡の人への手紙を書いておいたのだ。そして、ログインする直前に机の上に置いておいた。

取り敢えず、両親への手紙には謝罪と手紙を眼鏡の役人に渡してくれるように書き、直葉へは必ず二人で生きて帰ると誓いを記したついでにギアを外したら死んでしまう為外さない様、両隣の家に伝えに走ってくれとも記した。

眼鏡の役人こと菊岡さんには、挨拶とSAOプレイヤーに関するこれから行って欲しいこと。特に《レクト・プログレス》の動きに気を付けて欲しいことを記しておいた。

 

 

そんなことを考えながらぼんやりしていた俺の耳に声が入った。

 

 

俺達三人にとって、アインクラッド──或いは《ソードアート・オンライン》と言う世界で起こる事件前の最後の時間が、この時終わったのだと分かった。

 

 

「あ、あれ?」

 

「どうしたんだ?」

 

「どうしたの?」

困惑しているユージオに俺とアリスは聞く。

 

「ログアウトできないんだ。やっぱりデスゲームやるのかな……。」

 

「え?本当だ……。ねぇ、キリト。まさか《ユナイタル・リング》と同じことが───。」

 

「どうやらアイツの思いは変わってないっぽいからそらそうだよなぁ…。

アリス、あれトラウマになってたんだな…ってしょうがないか。

あのタイミングで武器着けてなかったから丸腰だったもんな。ついでに俺はパン1だし。

その内アイツから───、茅場晶彦からの説明あるからとりあえず二人とも落ち着けよ。

それにしても───。」“あの小説全部詳細に書いていたな。”

ログアウトボタンを探している二人を見ながら俺は一部言葉に出さず呟く。

覚悟は決めたと言っていたが、俺の話や『ソードアート・オンライン』を読んで得た知識なのでどこか空想感はまだあったのだろう。

アリスも共に駆けたとは言え、長きに渡った俺の戦いの一部分しか共にしていない。

とは言っても、《ユナイタル・リング》は《ユナイタル・リング》でゲームの中の死が現実での死な《ソードアート・オンライン》とは違う形(ゲーム内で死亡した場合現実では生存するが二度とログイン不可)だがデスゲームだったからな。

 

「やっぱり?嘘でしょ……!?」

 

「そうじゃないのよ。キリトがパン1は自業自得でしょ。死がゲームからの退場なのか、現実からも永久退場になるのかってことなのよ。

私はURの時はAIだったから死が現実からも永久退場だった。この世界でも永久退場なら、私は死なない様に気をつけなければいけないのよ。」

二人がぼやく中、俺は騒いでもしょうがないとウィンドウを開きストレージへと移動。二本の剣を実体化して見せる。

 

「それにしても、おかしいんだよな。

本来なら同時に存在しない『青薔薇の剣』と『赤薔薇の剣』が同時に存在しているんだぜ?」

 

 

「本当だ。最高司祭との戦いの決着は僕は死にそうで見られていないけれど、あの後って戻ったんだよね?」

 

「戻ってたわね。わたしは見てないけど、私が確認したわ。」

現在共に居るアリスは俺とユージオの幼馴染である《アリス・ツーベルク》と整合騎士でありケットシーの《アリス・シンセシス・サーティー》が混ざり合った形となるため複雑な語りとなる。

わたしと言っている時が《ツーベルク》の記憶で私と言っている時が《サーティー》の記憶に基づいて話している時……とは本人談だ。

 

「で俺が目覚めた時に、折れていた刃を回復させた時もアンダーワールドへの再ログイン時の《アビッサル・ホラー》戦の時も青薔薇だもんな。」

謎だ。なぜ青薔薇と赤薔薇が分かれて二本になったのか。

 

「……って!気を逸らそうったって行かないからな。」

 

「取り敢えず、青薔薇が分裂して青薔薇と赤薔薇の二本になった話は置いておいて。

まあ、この城から出るには百層まで登る必要があるな。」

 

「急に落ち着かないでくれる!?」

俺は本当に謎に思っていたのだが、ユージオが叫んだので不可視設定に戻しながらスンとした顔で答えるとアリスが突っ込んで来る。

 

「いや、散々クラインと騒いだからスンとしかこの感情表しようがないんだよ。」

と言いつつ、ストレージに剣を戻して左上のボタンを押し、メインメニューに画面を戻す。

タブを一番下まで滑らせ、ログアウトボタンの消滅を確認した。

 

「さて、一応言っておくがログアウトするにはメニュー操作しか方法は無い。

この事件を受けて電磁パルス機能の低下や外部からの刺激等異常検知による強制ログアウト機能の付与とセーフティを強化した《アミュスフィア》が発売され、メニュー操作以外でもログアウト出来る様になったんだ。」

 

「そう言えば、小説で読んだけど《ユナイタル・リング》の時すぐちゃんが揺さぶってたけど起きなかったって言ってたね。

でもあの時使っていたのはアミュスフィアなのになんで?ログアウトにならなかったよね。」

 

「さてな。さっぱりだ。それに今はもう俺達からも外部からもナーヴギアの除装は無理だ。

延髄で脳からの現実の体を動かすための信号を全部引っ張って来てこっちを動かす信号に変換しているから自発的に俺達はギアを外すことも電源を切ることもできない。そもそもデスゲーム化したから、外部からの行動は脳破壊の条件である『10mの外部電源切断、2hのネットワーク回線切断、ギア本体のロック解除または分解または破壊の試み』の内の本体のロック解除分解破壊の試みになっているからやられたら俺らがお陀仏だ。」

 

「どうしよう。ユウが大人しく外そうとしないでいられるかな。

って危険なのはアリスだよ。椎ちゃん外しちゃいそう。」

 

「一応お袋家に居るしスグに手紙は書いておいたから教えに走ってはくれる筈だ。後は運に任せるしかないな。」

 

「「そっかー。」」

 

三人顔を見合わせ、同時に息を吐く。

アインクラッドは現実の四季に準拠しており、今は現実と同じ初冬となる。

冷たく乾いた空気を深く吸い込み、肺に冷気を感じながら俺はクラインと迎えたあの11月6日の様に視線を上に向ける。

100m上空には第二層の底部が薄紫色に霞み、目で追うと彼方に《迷宮区》の塔が聳え、外周の開口部へと繋がっているのが見てとれる。

 

 

時刻は17時半を回り、空は真っ赤な夕焼けに染まっていた。夕陽が広大な草原を黄金色に輝かせ、何度感じたのかも覚えていないが仮想世界の美しさを俺に感じさせた。

 

 

 

 

 

直後。世界はその有りようを永久に、変えたのだった。

 

 

 

 

突然リーンゴーン、リーンゴーンと鐘の様な大ボリュームのサウンドが鳴り響き──。

俺達の体を青い光が覆い、《始まりの街》の中央広場に強制転移させた。

 

 

 

約一万人ものプレイヤーが集められた事でざわめきが広がったが、真紅の市松模様が上空を染め上げたことで収まった。

市松模様の中には赤字で【Warning】【System Announcement】の二つの英文が交互にパターン表示されている。

真紅のパターンの中央部分から赤ローブが現れる。ゲームマスターだ。

しかし、男性社員なら白髭の魔法使い染みた老人、女性社員なら眼鏡の少女がローブの中には収まっていたのだが───収まっていない。なら出て来るのはただ一人──と考えた所で俺の思考は明後日の方向へと飛ぶ。“今から見ればずっと先に存在するアンダーワールドにて《カーディナル・システム》(この世界のエラーチェックとバランサーを担い、以降の世界でもダウングレード版が使用されたプログラム)のサブプロセスを名乗った少女の姿が女性社員がなった時のGMと重なったのは因果だろうか。”と。

 

 

 

──そして、赤ローブは名乗りを挙げる。

『プレイヤー諸君、私の世界へようこそ。私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』

 

 

 

誰にも言っていなかったが、嘗てのこの時俺は疑問に思っていたのだ。

 

何故奴は“この世界をコントロールできる唯一の人間”と自分の事を言ったのか。

 

今ならすぐに導き出せる。

“奴の他はAIである『カーディナル』が殆ど世界を管理しているからなのだ”と。

そう俺が考えている間にも茅場の話は進んでいく。

 

『プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。

──しかし、ゲームの不具合では無い。繰り返す。

これは不具合では無く、《Sword Art Online》本来の仕様である。』

 

『諸君は今後、この城の頂に至るまで自発的にログアウトすることはできない。』

 

『……また、外部による《ナーヴギア》の停止あるいは解除も有り得ない。もし試みられた場合──。』

 

数人を除く一万程の人が息を詰めた重苦しい静寂の中、ゆっくりと発せられた。

『───ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。』

 

人々が騒めく中、話は続く。

『具体的には10分の外部電源切断、2時間のネットワーク回線切断、ギア本体のロック解除または分解または破壊の試み──以上のいずれかによってシークエンスが実行される。この条件は既に外部世界では当局及びマスコミを通して告知されている。……なぜか流される前に勃発が塞がれた家もあった様だが。

因みに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視して強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果───。』

響く金属質の声は、一呼吸入れ。

『───残念ながら、既に213名のプレイヤーが、この城及び現実世界から永久退場している。』

 

流石にこの情報にはユージオとアリスも息を呑んだのが聞こえた。

二人を含めたプレイヤー達は、放心したり薄笑いを浮かべたりしたままだった。

 

そして俺を除くプレイヤーの望みを薙ぎ払う様に、事務的なアナウンスが再開された。

『向こう側に置いて来た肉体の心配は無い。現在あらゆるテレビ局、ラジオ、ソーシャルメディアはこの状況を、多数の死者のことを含め、臨時ニュースで報道している。

よって諸君のナーヴギアが強引に除装される危険性はかなり低くなっていると言っても良かろう。

今後諸君の現実の肉体は、装着したまま二時間の猶予時間内に病院その他の機関へと搬送され、二年前の某病の患者が如く厳重な介護体制の下に置かれるだろう。

諸君には安心して……ゲーム攻略に励んで欲しい。』

 

 

一人の叫び声とそれに答える形で穏やかに茅場が告げた。

『しかし、充分留意して欲しい。諸君にとって、《Sword Art Online》は、既にただのゲームでは無い。

もう一つの現実、と言うべき存在だ。……今後、この城において、あらゆる蘇生手段は機能しない。

ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に。』

 

「『諸君ら(俺達)の脳は、ナーヴギアによって破壊される。』」

続く言葉を予想した俺は奴の言葉と同じ言葉を述べた。

 

 

俺の視界左上には、細い横線が青く輝いている。フォーカスすると、上に24000/24000と言う数字が表示される。

ヒットポイント、命の残量。ゼロになった瞬間、俺はマイクロウェーブに脳を焼かれて即死すると、奴は言ったのだ。

かつてこの城の最上階を目指して駆けた二年間、何度も死にそうになった。死地へやむを得なく飛び込んで行った場合もあれば、自らの手で落としたこともある。

それでもそうしなければ行けない理由があった。それは───。

 

 

『諸君がこのゲームから解放される条件はただ一つ。先の通り、城の最上部たる第百層に辿り着き、最終ボスを倒してクリアすれば良い。倒したその瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう。』

 

 

『……と言いたかったのだが、かの小説でアインクラッドを見事クリアした英雄に免じてもう一つクリア条件を決めておこう。

七十五層を突破するまでに城のどこかに居る私を探し出し、怪しみ、七十五層で私との戦闘に勝利する……と言うのはどうだろう。

どちらにせよ、勇者の証を持つプレイヤーがいなければいけないのは変わらないが。』

 

……!かなり踏み込んだな。《二刀流》を持つ者──勇者が戦うことは変わらないが七十五層までにプレイヤーに紛れ込んだ茅場を探して、七十五層のボス《the Skull Reaper》戦後に糾弾し戦う……と言うことだろう。俺は直前に茅場とデュエルをしたと言う偶然で気が付いたが、この世界ではどうなるのだろうか。

 

 

 

『それでは最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。

諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え。』

 

それを聞くや否や、俺は半自動的に右手の指二本を揃えて真下に振り、電子的な鈴の音と共にメインメニューを出してアイテムストレージを見ていた。

アリスとユージオにパーティーを組ませ俺はアドバイスをしながらもソードスキルを空撃ちしていたため四つのボックス以外は初期装備とポーションぐらいしか無いアイテムストレージに在った《手鏡》を取り出してみると光が体を包み、背が縮んだ。

 

 

 

 

多くの人が呆然としている中、茅場は話を続ける。

『諸君らは今“なぜ?”と思っているだろう。“なぜ私──SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?これは大規模テロなのか?或いは身代金目的の誘拐事件なのか?”と。』

初めて茅場の声が感情を、憧憬を思わせるかの様な色合いを帯びた。

 

『私の目的はテロを起こすことでも誘拐でも無い。今の私は、目的も理由も持たない。この状況こそが私にとっての現状の目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのみ私は二つを造った。

そして今、第一段階は達成されたので君達の魂の輝きを見ると言う第二段階に進むこととしよう。』

 

 

 

無機質さを取り戻した茅場の声が響く。

『……以上で《SwordArtOnline》正式サービスのチュートリアルを終了する。

プレイヤー諸君の健闘を祈る。』

 

音も無く上昇した真紅のローブ姿がシステムメッセージに同化して行き、終わった直後にメッセージも又出て来た時同様に唐突に消滅する。

NPC楽団の演奏する市街地のBGM───よく聞いてみるとアニメ版『SAO』のBGMだ──が近づいて来て、穏やかに鼓膜を揺らす。

幾つかのルールが恒久的に変更はされたものの、ゲームは本来の姿を取り戻していた。

 

 

 

そして────漸く状況が飲み込めたのか。(まあ、無理も無いが。)

プレイヤー達は、然るべき反応を見せた。

つまり悲鳴、怒号、罵声、懇願、咆哮。頭を抱えてうずくまり、両手を突き上げ、抱き合い、罵り合う。

 

 

彼らのことを冷静な目で観ながら、ユージオとアリスの手を掴み、集団から抜け出す。

同様な行動をして居たのは、黒髪の少年と長身の男、栗髪の少女二人と黒髪をポニーテールにした少女ぐらいだった。

 

早足で、宿屋に向かいながら二人に問いかける。(なお宿屋に向かっているのは、単にかつてこの城で暮らしていた頃は、十五時頃まで狩りをしては寝ぐらに戻ると言う生活だったことによる。)

「さて、本格的にデスゲームが始まった訳だが。俺達は、全力で頂を目指す。で大丈夫か?」

 

「ふー、何とか落ち着いたよ。」

 

「うん。大丈夫。私達は出来るだけ全てを拾い上げながら100層まで向かう。そう決めたでしょう?」

俺が手を引いていた二人がそれぞれ答えた。

 

「巻き込んでしまってごめんな。」

思わず、手を離して振り返り言葉を漏らしてしまう。俺にはもうアスナと二十層で別れた後や判断ミスでギルドを壊滅させてしまった後に罪悪感で無茶な戦闘を繰り返した頃の様に一人で戦い抜くことはできない。

必ず仲間のステータスを考えて戦略を考えてしまう。だからこそ、これから始まる戦いに幼馴染達を巻き込んだ。二人なら戦い方も大体は把握できているしな。

 

「謝らなくて大丈夫だよ。キリト。小学生の頃かな?君が用事があって居ない時アリスが言っていたんだ。

『アスナやすぐちゃん、ユイ達と一緒に《ユナイタル・リング》を駆け抜けたのはいい思い出だ。』って、にこにこしながらね。

それを聞いてとても羨ましかったんだ。『ああ、僕もあの時違う選択をすればリアルワールドに出られてキリト達と一緒に戦えたんだろうな。』って思う程に……ね。

だから僕は君に感謝しているよ、キリト。君のお陰で君やアリスが見た物、感じて来たことを僕も見たり感じたりすることができる。

あの時、君と《アリス》の二人と道が別れた時とは違い今度は僕とアリスそしてお前の僕ら三人一緒にどこまでも行ける。そうだろ?」

俺の謝罪に首を振った二人。ユージオが口を開いて言った。そしてアリスがいい笑顔で肘鉄をユージオの脇腹に叩き込んだ。どうやら知られたくは無かった様だ。

 

 

「……ありがとう。この御礼はいつか必ず、物理的に。」

俺は思わず込み上げた気持ちをどうにか飲み込んで、頭を下げ再び走り出す。三人分の足音が路地に響く。

始まりの街にある宿屋の一つに俺達は、一番乗りで飛び込んだ。

 

 

ここに、俺にとって二度目のアインクラッド攻略は始まった。

宿屋に到着した俺達は三人部屋にチェックインし、改めてこれからのことを話し合った。

落ち着いたことで行われた俺のプレイヤーデータの精査と発見による議論を交わし、どうにかこうにか翌日からの行動として、俺が大量に所持していたポーション系の配布とアルゴへのマップデータの無償譲渡が決定されることとなった。

 

 

 

本日開始が宣言され、現在の最前線は一層。

一層も未突破のため残り層は百、生存者は9787人。

ここにアインクラッドでの戦いは幕を開けた。




本に描かれた自分らしき人物と同じ景色が観たい一心で作った模様。
結果、解放条件が緩和されたらしい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。