第一層:星煌めく夜のアリア【Starry Night Aria】
2022年11月16日
アインクラッド第一層《ホルンカの森》/?????
第一話:十日目
開幕宣言の翌日は朝から露店を開き、回復や毒消しなど大量のポーションと転移結晶など結晶類の大部分(下層では俺のHPを削り切られる心配性が無いに等しいため死ぬ可能性が高い人々への支援に充てることにした。後は二人への配分とアイツに渡す分か。上層で買える様なポーションも混じっているためHP最大量が少ない今は瞬時回復をすることが可能だろう。)の無償配布に追われた俺とユージオそしてアリスの三人が《始まりの町》を出発しようとしたのは、結局7日と8日の二日かけて多くのプレイヤーに配り終えた翌日の11月9日のことだった。
朝になってかつて懇意にしていた情報屋が、開始から七日目の11月13日に《ホルンカの村》で遭遇した際『《始まりの街》に一度戻った。(意訳)』と言っていたことを思い出し、二人に出発を待って貰いフレンドリストを開いた所、かつての俺のフレンドが全て残っていたためグッと拳を握った。
アルゴを追跡した所《始まりの街》に戻っていることが分かったため昼頃捕まえ、路地裏に連れ込んだ。
「おーす、アルゴ。取引しようぜ。」
ユージオとアリスを傍に従え、話しかける。
「キー坊……じゃないナ。アイツの剣は《アニール・ブレード》なのにアンタのは情報屋のオイラすら知らない剣ダ。っと、《我が王のそっくりさん》に《グランドガーチャー》じゃないカ。それとも《キャスター》に《マスター》と呼べばいいのカ?
欠けてた一人が埋まった様だし君達三人を《躍動トリオ》とでも呼ぶ様に渾名を撒きたいナ。」
「俺が譲る情報の中だとこの剣の情報はずっと先だな。
それに、黒尽くめだとは言え俺は諸事情からオベは嫌いだ。なのでもっと別の渾名にしてくれ。」
「いや、それ《ユージオ》の中の人……。」
「自分でもそっくりだと思っているけど、アーサー王そっくりは畏れ多いかな。
…それにそっくりだとなんかアサシンに狙われそうだし。」
アルゴの返答に俺達三人は三様の答えを出す。
「二人の渾名に色々言いたい所はあるが、話を進めさせて貰おうか。
俺は、アンタに七十五層までの正確な攻略情報を少なくとも直前の層までには譲渡したいと考えている。」
「ン!?10層しかベータは登れていないんだゾ!75層分のデータがある訳無いだロ!?
なんでアンタは持っているんダ?」
「んー。実際に攻略したから、だな。
例えば、お前のヒゲは“二層にある《体術スキル》取得クエをリザインした証”だが、“《投擲》と《体術》で使える武器は二層のボスのモーションをディレイできる”とかな。」
「なるほどナー。オイラの秘密も知っているのカー。……ってちょっとまっタ。
二層のボスに《チャクラム》使わないといけなかった奴は居なかった筈だゾ!?」
「流石は《鼠》。スキルだけで使う武器わかったか。増えてたんだよ。大佐と将軍に追加して王がな。」
「オイラの知らない情報ばかりだナ。……これは貰う価値がありそうダ。」
「よし、なら一層から渡して行こうか。」
《正式サービス版第一層攻略データ》と《正式サービス版第二層攻略データ》ついでに余ったポーション系と大量の《col(コル:SAOにおける金の単位)》を無償で渡し、俺達は漸く出発する。
そして十日目である今日、俺は右手で『夜空の剣』、左手で『勿忘草の剣』の柄を掴んで赤竜と相対している。
10日に《始まりの街》北門から飛び出し《ラータ平原》を進み始めた。最初の目的地は《ホルンカの村》。目的は【森の秘薬】クエスト(《リトルネペントの胚珠》と言うアイテムを一つ納品する。かつての俺が初日にMPKを受けかけたのはこのクエストの最中の話だ。)を受けて二人の分の《アニール・ブレード》を入手することだが、まずβから変容した世界を知らなければどうしようも無い。なのでSAO正式版上級者の俺が正式版初心者である二人に正式版SAOの作法を教えるための寄り道─例えばであるがクエストのリキャスト時間の違いの伝授─をしながら《ホルンカの村》へ向かっていた。
「……あ、そうだ!忘れる所だったよ。アリス、あの立て看板どこだったっけ?
なんかキリトを呼んでいるっぽいこと書いてあったやつ。」
「んー。《森》入って少し入った所だったかなぁ。」
「なあ、その看板ってなんだ?俺が行った時は無かったぞ?」
「お前が言っているのは、お前の攻略したアインクラッドでのことだろう?多分そっちには無かった奴だ。
『SAO』にも書いてなかったから間違いないよ。
βテストで何度か《キリト》とパーティー組んで行動したことがあるんだけど、その時に偶然見つけたんだ。」
「そうそう。それに確か貴方が『聖剣エクスキャリバー』って言う金色の剣持っていたの覚えてたから。
どうせ序盤は前みたいに真っ黒黒でウロウロするんだろうって思ってたし。」
「つーことは、俺の知らないクエストだな。そしてなんか変な信頼してないか?取り敢えずいいぜ、立て看板のとこまで行こうか。」
2人の先導の元、村の周りを囲む《ホルンカの森》へと立ち入った所で立て看板が傍に立てられた小道を発見したのだった。
【この先、黒衣で金色の剣を持つ者とその仲間しか入るべからず】
嫌な予感がしたが、装備していた『エリュシデータ』を右手の装備欄から外し『エクスキャリバー』を空白になった右手の装備欄に設定。パーティーにユージオとアリスの二人が加入していることを確認して足を踏み入れた。
そして歩いて行った道の果て、剣が刺さった岩が配置されたピンクの花の咲き誇る広場で出会ったのは、杖を持った白髪の青年と小柄で青色の鎧に身を包んだ少女であった。
「ふーむ。よし。一応だけど、君の名前を聞いていいかな?肉体では無く魂の名前だ。
我らが王に本来の名は聞いているんだけど、一応…ね。」
俺が現れたのを見た青年は花を足元に咲かせながらこちらに向かって来て俺を眺め回し、名を聞いて来る。
名乗らないのは、俺が彼の名を知っていることを知っているからだろう。
「俺は───、“キリト”。キリハでありキリトだ。」
「…そうか。なら、キリト君。
君にはブリテンの象徴たる赤竜《ア・ドライグ・ゴッホ》と戦ってもらう。どちらかの体力ゲージが赤く染まった時点で終了だ。もしも君が勝った暁にはそこの岩に突き刺さっている『約束された勝利の剣』を贈呈しようじゃないか。
ああ、ここに刺さっているべきは『勝利すべき黄金の剣』だろう?って顔だね。
二本は同一視されることもあるんだ。別にいいじゃないか。」
俺が逡巡した末に名乗った名を聞いて一時考え込んだ青年──“花の魔術師”マーリンは、こう提案をして来た。
同時に、俺の前にはウインドウが現れる。可視化してユージオとアリスと共に覗き込む。
クエスト名は────。
【time when a star is born】
「───、ちょっと待ってくれ!マーリン、貴方は何がしたいんだ?そして察してはいるがここは一体どこなんだ。」
クエスト名が明らかに昨年の6月から8月にかけて猛威を振るった『Fate/GrandOrder』のシナリオ『LostBeltNo.6 「妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ」』の副題「星の生まれる刻」の英語版であったが、悲しいかなゲーマーとしてはあのアーサー王が振るったエクスカリバーその現物が手に入れられると言う誘惑に抗い難く俺が思わずスタートの可否を決めかけた時ユージオが声を上げる。
「おーっと。君の質問に答えるその前にいつかのマスターによく似た声の君とその傍のどこか王に似た風貌を持つ彼女の名を教えて貰いたいな。」
「…そ、そうだった。僕の名はユージオ。そしてこっちが──。」
「アリス。やっぱり貴方の王は、《アルトリア・ペンドラゴン》なのね。
私も聞きたいことがあるのだけど、貴方《人工フラクトライト》──じゃないわよね。
だからといってユイちゃんみたいな《トップダウン型AI》でもなさそう。貴方は何なの?」
「質問に質問を返したら質問が増えてしまったぞー。まずはユージオ君の質問からだ。
ここは、君達が居る浮遊城の内部に強引に捻じ込んだアヴァロンの欠片。君達が通って来たのが──、私達のことを知っているのならば言わずともわかるだろう?そして、私の目的は王に依頼されたので湖の妖精から受け取って来た聖剣を星の守護者《キリト》へ譲渡することだ。
そして、アリス君の質問だが私は《人工フラクトライト》なる存在でも《トップダウン型AI》なる存在でも無いとだけ言っておこうかな。」
ほう。とんでも無いことを言ったぞ、この冠位資格持ち。
つまり───、あの小道はアヴァロンに続くあの《オドベナ回廊》でそして彼らはAIでは無く本人だと言うこと。
どうやって来たのかは教えてくれなさそうだが、聞きたいことは聞けたと俺はクエスト開始ボタンを押す。
押すと同時に俺の何かが変わった…。そんな感じがしたため、“ポン”という音をさせながらメニューを開く。マーリンを睨んでいたが音に反応してこちらに寄って来たユージオとアリスと共に覗き込む。
するとユーザーインターフェースが変わっており、HPがあるのは変わっていないがNP──恐らくあの世界で宝具を放つ為に溜めなければいけない《ノーブル・ファンタズム》の欄が新設されタブとしては《ステータス》・《スキル》・《宝具》・《装備》の三つが鎮座する。
《ステータス》も気になったがまずは《スキル》を押して見ると出て来たのはクラススキルとして出て来た《対魔力:A》と《騎乗:A++》の他に、保有スキルとして《アインクラッド流:EX》《星王:EX》《戦闘続行:EX》と言う名のスキルが存在していた。一つずつタップして行くとそれぞれ説明のホップアップが出て来るが、説明が長々と出て来た《アインクラッド流》・《星王》が気になった。
《アインクラッド流》は説明だけで理解することができたのでスキルが複数統合されたスキルであると説明された《星王》を再度押すとブラックアウトして《気配遮断:A++》《カリスマ:A+》《軍略:EX》《直感:A》《心眼(真):A+》《投擲(短刀):A》《単独行動:B(EX)》《無限の魔力供給:EX》《原初のルーン:EX》《千里眼:EX》《投影魔術:ー》《女神の寵愛:EX》《神性:A》《独自魔術:EX》《幻術:EX》の十五のスキルに分解されることとなる。思わず再度《星王》を押し、【統合しますか?】と出て来たためyesを押すと同時にスキル達が統合されて《星王》に色が付いた。
ステータスに驚き、宝具の確認(なお並行世界で俺が入手した『勿忘草の剣』も存在していた。)を終えた俺は使う宝具を考える。
二刀流を使っても大丈夫なのかと逡巡し、一度は一本で戦おうと考えたものの使わないと《アルビオン》には勝てないだろうと思い直した俺が選んだのは───。
左手の装備枠には、使ったことが無かったため『AlicizationLycoris』で俺が入手した『勿忘草の剣』を。
ならばAlicizationで統一するかと思い立ち右手に彼方の俺が愛剣とし戦い抜いた『夜空の剣』をセットする。装備フィギュアを開いてから『エクスキャリバー』を右手の装備欄から外し、空いた設定欄をタップして『夜空の剣』を設定して確認ボタンを押した。
実体化した夜空の剣と勿忘草の剣の柄を握って引き抜き、SAO内ではない場所でも二刀流が使えるのか試しに技を使おうとした───。
「ああ、そうだ。一つ忘れていた。偶然立ち寄った《ナントカソフィア》で君達三人に言うよう託された《枢機卿》を名乗るある少女からの伝言だ。
『キリト、過去のお主の全ての持ち物の他に二刀流を使える様にしておいた。仮にこの世界のお主が条件を満たして得ることになっても別のすきると見なされる。ユージオには、青薔薇の剣。アリスは全ての持ち物を保持できる様にした他にお主ら二人の最終《オブジェクト・コントロール権限》と生活の中で身に付けた事柄を世界に即した形に直しておるが、二本ともキリトの剣と同等の重さなので筋力値が足りず暫く装備はできないこととなるじゃろう。アスナ様にもキリトと同じ操作をしておいた。このことはあの時与えることのできなかったアドミニストレータ攻略の報酬として与えたい。』
……とのことだ。」
枢機卿……。《カーディナル》か!彼女が言うならば使えるんだろう。そして《なんとかソフィア》…。多くの世界を統合したVRMMO《ユナイタル・リング》事件の最中の2026年10月7日、俺の誕生日の夜。俺とアスナが夢で迷い込んだ、フラクトライト(魂)の落ち着く先だと言う《アインソフィア》のことだろうか。恐らくだが、死を迎えた場合俺達はそこに行くのだろうな。ある意味では、Fateで英霊達が死後に呼ばれると言う《座》に似ているかも知れない。
どうやら俺は行けないらしいが。
かつてキリト/桐ヶ谷和人として過ごした世界の現実世界で寿命による死に瀕した俺の元に現れた、若い時の俺によく似た少年が俺に言って来たのだ。
「君が後悔していることは何だい。叶えてあげよう。その代わり、君の死後は貰うよ。」
「儂、いや俺は───。」
少年に俺が願いを伝えた際に光が溢れ、思わず眼を瞑る。
そして───。
“俺”の記憶が現れたのは、実父である鳴坂行人と実母の鳴坂葵、双子の兄弟である鳴坂和人と共に出かけて巻き込まれた自動車事故の時だった。つまりは、血を流し倒れる両親と泣き叫ぶ兄弟の姿を見たことでキャパオーバーを起こして意識を飛ばしたことで記憶が戻ったのだ。叔母である翠さんに俺達双子は引き取られ、直葉と共に育てられた。
幼稚園で黒髪であること以外は姿が変わっていないユージオとアリスに再会したので思わず俺は抱き締め、その状態で自己紹介をしあい、《ルーリッドの村》の時の様に三人で過ごす様になったのだ。三人で俺の祖父に剣道を習ったり、近かった互いの家を行き来して遊んだりして過ごす中、十歳の時に俺は転生の原因となった少年の真実を知ることとなった。真実、それはかつて親しんでいた物。だが晩年は記憶から消えていた物だった。
少年の名は───。
そこまで考えていた所で少女の声が聞こえてくる。
「ねえ。待ちくたびれたからそろそろ始めたい。」
「ああ、待たせてすまない。ではやろうか。」
50m先に居る少女の声に応えて左右の手で柄を握った剣を構える。
「それでは────始め!」
マーリンの掛け声と共に、俺は大地を強く踏んで一気にメリュジーヌに接近。右手で柄を握る剣を肩の高さまで持ち上げて完全な水平に構え、大きく引く。左手で柄を握る剣をカタパルトの様に宛行い、剣を構える左腕を限界まで引き絞って初動モーションを検出させ、剣が深紅に包まれる。蹴って加速し、それを回転力に変えて右肩に伝え、回転を再び直線運動に変えて右腕と一体化した剣に叩き込んで放たれた真紅の一撃、《ヴォーパル・ストライク》を何かに弾かれた。
俺には長い硬直が課せられる。───ことは無かった。この花園はアインクラッドにあってもその法則には縛られない…と言うことだろうか?
まあ、だからと言って“剣尖の距離は刃長足す腕の長さ”と言う概念が俺の深層にある限り心意を使ったとしてもソードスキルの距離を延ばすことはできないだろうが。
それに恐らくこいつと戦った俺は英霊だ。それは間違いないだろう。しかし今の俺は外に肉体があり、HPが0になって脳を焼かれると死だが、ナーヴギアが処理し切れない速さで戦闘を行った場合でも脳が焼き切れる可能性がある。そう思うと動きが鈍ってしまうため、メリュジーヌの攻撃で体力は削られて行くことになる。
一度は使ってみようと思って勿忘草の剣にすることを決めたが、やはり七十五層以降を戦っていない俺には違和感が存在したりそもそも試しを実践で行うことでは無いと感じたりしたため青薔薇の剣に変更することを決定。
メリュジーヌの宝具を左右の剣を交差させて受け止める。そのまま後方に衝撃を流しながら青薔薇の剣に変更。慣れた剣となったことで力の勝手が分かり、押し戻してバランスを崩させた所で一気に後方へと蹴り飛ばす。
バランスを立て直そうとしている間に俺は一気に接近。畳み掛けるかの如く夜空の剣での高速五連突きから斬り下ろし、斬り上げ、全力の上段斬りを行う八連撃ソードスキル《ハウリング・オクターブ》を放ち、左手で柄を握る剣で水平斬りをして敵に埋まった剣を九十度回転させ腹を垂直に斬り裂き抜け出ると上から垂直斬りを行う三連撃ソードスキル《サベージ・フルクラム》へ繋げる。再度右手の剣が輝き、バックモーションの少ない垂直斬りから上下のコンビネーション、全力の上段斬りを行う高速四連撃《バーチカル・スクエア》。そして最後の締めとして左手の剣に纏わせた深紅のライトエフェクトと共に超高速で腕を撃ち出す単発重攻撃《ヴォーパル・ストライク》。
片手用直剣用スキルの中でも一撃が重いものを選んだこともあり俺の得意とする二刀流スキル《スターバースト・ストリーム》に匹敵する十五連撃は四本存在していた彼女の体力のバーを一本半以上削り切り二本近く即ち黄色寸前にまで追い込んだ。
猛攻が無くなったことで俺の体力は黄色から緑にまで回復することになる。
「ふん。中々のものだね。でも、これならどうかな?」
「体内魔力上昇、マナ放出。ウウ、ウァァァァ……!」
【Melusine the water fairy/Fée de l'eau Mélusine】
少女は立ち止まり、名称が黒く塗り潰されるとともに姿もまた炎に包まれ───。
『損傷:拡大。目標:敵物体。』
【ALBION】
塗り潰された名称は変化し、飛ぶことで炎を振り払い現れた姿は漆黒に染まりし機械仕掛けの竜即ち───。
46億年を生きた竜であり、世界の裏側に向かう途中で死して迷宮となった、かの【アルビオン】だ。
その顎門が開き、光が収束して行く。
「いいだろう、楽しませてやるよ!」
俺が二刀を下げながら走りつつ答えると同時に顎門から光線が放たれる。
“当たり前だが、この世界において心意の防壁や神聖術は使えない。
いや、Fateが混ざったこのタイミングなら使おうと思えば使えるかも知れないが今試している時では無い。
だが、《スピニング・シールド》では完全に弾けないだろうしソードスキルをぶつけることで斬れるかどうか分からない。そもそもソードスキルで相殺できるかもわからないので却下。
ならば、あの剣を抜くしか無い。本来この姿では使えないけどな!”
光線が着弾するまでの時間に考え、結論を出した。
結論が出たのであれば、即座に行動に移そう。
二刀を鞘に仕舞いながら左に転がって一度目の着弾を避け、走る。
そして───、走りながら俺はニヤリと笑い右手で柄を握り一本の剣を引き抜いた。
瞬間に二発目の光線を放とうとしていた竜と、傍観する魔術師の視線が剣に集まったのを感じる。
当たり前だ。この剣は、
女王から俺に譲られる剣、『約束された勝利の剣』とほぼ同一の由来を持つ剣なのだから。
2025年の年末、数人の友と共に挑んだ正八角錐の形状の氷の迷宮。雷神と共に巨人を破り、進んだその最奥部に世界樹の根を絶った状態で氷に刺さり安置されていた黄金色の長剣。
その銘は───『聖剣エクスキャリバー』。
岩から引き抜いた剣が折れたアーサー王がマーリンの仲介の元、湖の乙女から借り受けた二振り目の剣を源流としている剣だ。
約一万二千年前にエクスカリバーの原型若しくはその物である“人の祈りを材料に人ならざる者が星の内海で鍛えし聖剣”が振るわれて白い巨人が撃退されたと言う伝承が『約束された勝利の剣』にはあるが、振るったのは北欧神話における世界の始まりとの関係性から白い巨人《ユミル》を兄弟二人と共に破り世界を創造した主神オーディーンだと今の所は考えられている。恐らくだが集めたモノと鍛えたモノそして聖剣使いの三者による《セファール》打倒を三兄弟の《ユミル》打倒としたのだろう。
そして、この剣は優れた鍛治師であり妖精の王ともされる鍛治神ヴェルンドが鍛造したとされる。ある時霜の巨人族の王《スリュム》によってヨトゥンヘイムの《ウルズの泉》へと投げ込まれ伸びていた世界樹の根を断ち切って氷の世界へと変えてしまった。巨人族のアルヴヘイム侵攻の前準備として聖剣を報酬とし妖精を釣って行われていた丘の巨人族の殲滅と成就により発生すると予測された北欧神話における世界の滅亡である《神々の黄昏》を防ぐことができた。
世界を救い北欧神話の始まりに導いたと考えられている剣と、世界樹の根に刺され景品とされたことで北欧神話の終焉を招きかけた剣。
どちらの聖剣も、北欧神話と縁があるのは意味があるだろうか。
兎も角として、気を惹きつけることに成功した俺は右手に握る剣とは別の剣(妖精郷での戦いで初期装備の剣が軽すぎたので買い、暫く使用していた鉄でできた大剣)の柄を握って左手で引き抜き、地上近くまで降りて来ていたが再起動した竜の顎門より放たれる光線を両手の二本の剣で斬り飛ばしながら走っていた。
既に至近距離まで近づいており、大地を強く踏み込んで強く左に一度捻った全身を螺旋回転させる。
左手に握る剣を斬り上げたコンマ一秒後、時計回りに旋転させた体の慣性と重量を余さず載せた右手に握る剣を左上から斬り下ろす。二刀流突撃技《ダブル・サーキュラー》。
クリティカルに入ったのか、一本近く削ることに成功する。
代償として、無防備だったために砲撃を喰らい続け緑色だった俺のHPは再度黄色へと下降してしまった。
双方が相手に最後の一撃を与えようと動き出す。
前傾姿勢になった俺は剣を今度はエリュシデータとダークリパルサーに変化させ、剣をクロスし青い光を灯して接近。
右手の剣での中段斬り払いから左手の剣での突き、両手の剣の同時斬りおろし……と一気に動きを繋げて行き、最後の一撃に入る。
最後の一撃は左手の剣で行うワンテンポ遅れるフルモーションの上段斬りだ。
無論俺は無防備になる為、赤竜の攻撃で赤寸前になっていたが共に最後の一撃を入れようとした時に────。
「対終末・対粛正防御、始め。」
そんな声が響く。
俺と赤竜の横に現れたのは長い金髪を二つ縛りにし、白い服を纏った少女。
白銀の大剣を俺達の間に突き出し少女は言葉を紡いで行く。
「異邦の国、時の終わり。されど剣(希望)は彼の手に。城壁は堅く、勝鬨は万里を駆ける。
冷厳なる勝利を刻め!」
「『真円集う約束の星』!!」
大剣の下から白亜の城が出現し、攻撃を強制的にキャンセルされる。
「よかった。間に合いました。……うっかりホープウィルっちゃわないでよかったです。」
少女は安堵したかの様に呟き、俺の方に顔を向けた。
「また、会えましたね?マスター《カズト》!」
少女──アルトリア・アヴァロンがなぜか近寄って来る。
俺の方に駆け寄ってこようとするユージオとアリスを制して彼女に声を掛ける。
「アルトリア?だよな…。なぜかつての俺を、《桐ヶ谷和人》のことを知っている?」
「なぜ…ですか。妖精國における顛末を承知であればわかっている筈でしょう?貴方は私の“運命”だからですよ。と言うのは冗談で、マスターの名前と符合する人物を色々座において調べていた所『SAO』について知りました。マスターは黒衣が妙に似合っていたので確定はしやすかったです。
話を戻して私の記録によると以前の貴方はモルガンを召喚できたのは、「黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン」後とかなり後のことでした。私の見えない誰か達や私と言った「アルトリア」は召喚できていたのに、です。
そして今の貴方はモルガンを「妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ」中に召喚できた。そうなのでしょう?」
“英霊が記録されると言う《座》はやはりこの世界にもあるのか。”と言う俺の驚き(《座》はあった。恐らく現代人でありながらミノタウロスなど怪物を多数倒し神代の英雄となった俺も招かれる事になっていただろう。なら、死ぬ直前に俺が手を取ってしまったのは──。)は一旦置いて置き、彼女の言った通り、《桐ヶ谷和人》はモルガンを「妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ」開始時のピックアップ召喚にて召喚できていない。だが恐らくこれだろうと思うものはある。しかしどうやって知ったのかがわからない。でも2026年の正月に漸く召喚ができたのでなあなあで済ませていた。
しかし今の俺《桐ヶ谷葉月》は実装時であっさり召喚できたが、以前の俺と今の俺の違いに散々首を捻った。
恐らくは───。
「かつての貴方がモルガンを「アヴァロン・ル・フェ」中に召喚できなかったのは、その時点で貴方がいつか聖剣を握る運命にあったことによります。つまり貴方は《アーサー王》であると看做されて居たのでしょう。故に、実際に会って縁を結ぶまでは召喚される気がなかった。
アーサー王と見做された貴方がモルガンを召喚できたのは、聖剣を握る際にモルガンと同じ湖の精と呼べる存在との縁を結んだことが理由になったと思われます。」
今回は不思議に思いアーサー王物語群やFateにおけるアーサー王伝説を調べたことで薄々感づいていたが、25年の年末に妖精郷の地下にあった巨人族の国にて世界樹の根を絶っていた聖剣を引き抜いた際に湖の女神(モルガン・ル・フェはケルト神話では戦の女神モリガンと同一視され、Fateでは人間モルガンと女神モリガンの他に湖の妖精ヴィヴィアンが加わり三人格とされている。つまり俺はモルガンを除く二要素であるモリガンとヴィヴィアンと縁を結んだと言える)と縁を結んだことによって同時にモルガンと深い縁ができたのが26年の正月にかつての俺がモルガンを召喚できた理由だったと言うことが、もう一体の『楽園の妖精』の言及によりはっきり分かった。
「ま、それは置いといて。マーリン、とっとと彼を剣の元に。」
「いきなり出て来て、それは無いと思うなぁ私達の知らないキャスター。
本当はドライグと決着を着けなければ駄目なんだけど、キミの言う通り案内しよう。そこの二人もついてきたまえ。」
アルトリアは説明を途中で投げてマーリンに話を振り、彼は文句を言いながらも俺達に着いて来るよう促してきた。
マーリン・メリュジーヌ・アルトリアの後に着いて行くと、剣が刺さった岩が見えて来る。
「さて、貴公にも問おうじゃないか。」
岩の前に俺が立つと、急に真面目腐った表情で岩を挟んで俺の向こう側に立ったマーリンが言う。
「それを引き抜く前に、きちんと考えて頂きたい。」
「それを手にしたが最後、貴公には今までよりも多くの勝利が求められるだろう。」
「それでも、この剣を引き抜くのかな?」
「この世界では常勝で無ければ駄目だ。生きて城から脱出する為に。
そして何より俺が望んだ物の為に、敗北は許されない。」
マーリンの問いに答え、右手で剣の柄に手を掛ける。
「だから───、俺はこの剣を引き抜くよ。」
手を掛けた勢いで言い切り、グッと上に引き抜いた。
「ああ、その苦難を我らは知っている。情報を出さなかったことで初めの一ヶ月だけで多くの死者を出したと言う言われも無い罪を背負い、戦い続けた。罪を背負った結果、バレることを恐れて救える筈の命を救えなかった。その苦難を越えた苦難へと貴方は踏み出そうとしているのだね。」
「奇跡の代償はあるものだけど、貴方は既に払われた。貴方の大切な物は思い出だ。
過去に戻ることでかつての仲間の多くは貴方との思い出を持たないと言う代償をね。」
哀しげな表情でそう彼は言い切った。そして、俺の元に鞘を運んで来る。『全て遠き理想郷』だろう。
鞘を受け取り、剣を鞘に差し込んだその時───。
【time when a star is born】
Quest Special Clear
いきなり視界中央にクエストの終了を示すシステムメッセージが現れた。慌てて鞘ごと剣を抱きしめる。
そして───────。
俺達の体を青い光が覆う。何者か(恐らくはマーリンだろう)により何処かへと転移させられた。
眼を開けると、森の中。小道と立て看板は消えていた。
剣を引き抜き鞘に納めた後に会話ができなかったことは不自然だったが、俺の手元から二刀流が消える心配をしなくてよくなったことと俺が抱きしめている聖剣(何の因果か、かつてALOでエクスキャリバーを完全入手するまでと同じ格好だ。)が鞘ごと入手できたことで帳消しにするべきだろう。
聖剣の鞘、それは所有者の傷を癒し老化を停滞させる物でいかなる魔術や呪詛も撥ね返すと言う物だ。
無敵とさせるからこそモーガン・ル・フェイが奪い、紛失させたことでアーサー王の死は決定付けられた。
アーサー王伝説内でも、Fateでも効果はほぼ変わらないこの鞘がこの世界ではどんな効果を発揮するのか。
ユージオとアリスが前を歩く中、後ろを歩く俺は剣を鞘から引き抜き呟いた。
「どんな剣なんだろうな?お前は。」
これで彼らの初クエストは終わりだ。最後が非常に雑、だって?
はっはっは、この世界の法則に則っていないんだから当たり前だろう?
ここから先は、ボーナストラックとでもしようか。とある二人の会話そして私からの彼らへの激励だ。
いずれ記される物語のネタバレが大いに含まれているので、注意してくれたまえ!
「いきなりでしたが参加させていただき、ありがとうございます。」
キリハとその友人達が青い光に包まれて消えた後、アルトリア・アヴァロンは不意に現れた女性へと頭を下げる。
「いえ、大丈夫ですよ。マスターである彼に会いたいと思うのは分かりますから。」
金髪に銀髪が混じった髪の一部を結い上げて纏め、残りは腰まで伸ばしているアルトリア・キャスターの第二段階の紺部分を黒くした服を着ている女性は手を振る。腰には金色の鞘に入った青い柄の剣。
女性の名は────⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️。
剣を引き抜き、常勝したブリテンに名高い女王。
「それはよかったです。しかしながら、私達同一存在ですよね?どうして知覚できているんです?」
彼女達は、異聞帯と汎人類史と言う立ち位置の違いさえあれど同一存在である。
故に、同じ魂を持つ者はお互いを人型の靄としてしか認識できない───とされている。
「同じようなことが《カルデア》でも起こっていたので理由はわかっています。本来知覚できない貴女と私ですが私の事情が関係しているのでしょう。」
「なるほど。習った場合基本的に半年後に辞めると言う貴女が、キャスターと同じ姿を取れる時点でと言う訳ですか。」
「ええ、まあそういうことです。」
「それでは、またどこかで。」
「いつかまた。」
握手をした手を放し、彼女達は別れる。
色違いのアルトリア・キャスターの服を着ていた女性は金髪に銀髪が混じった髪の一部を結い上げて纏め、残りは腰まで伸ばして黒に銀の甲冑を身に付けた姿へと変じ、呟いた。
「ええ。彼に、⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️に会えてとても嬉しかったですとも。」
「『赦されぬ、赦されぬ。汝が罪は赦されぬ。
自由を愛した妖精たち。愛を守った妖精たち。
でも、かわりに世界の未来を奪った仔どもたち。
幾度滅びを迎えても、あなたたちのブリテン(偽り)は栄えてしまうでしょう。
春の驚き(呪い)、夏の諍い(怒り)、秋の歓び(哀しみ)、冬の戦い(終焉)。
たくさんの咎を積み上げて、永遠に、永遠に。
でも、どうぞ、いつか報いを受けることを忘れずに。
どんなに丈夫なお城でも、土台だけは変わらない。
世界が新しくなるほど根は古び、誰も気づかぬまま、この通り。
誰も予想しない、小さな虫の一咬みで崩れるのです。
赦されぬ、赦しはせぬ。我らは決して赦しを与えぬ。』
私たちは──、汎人類史は遊び呆けたアナタ達六翅を許さない。」
そう女性が呟きながら歩いて行き、青天に浮かぶ浮遊城からアヴァロンの欠片は切り離されて行く。
え?最後に彼女が言って行った言葉が気になる。だって?
それはまあ、この世界──多くの世界が同時に観測できる様になって第二魔法を魔術にまで引き摺り下ろし、魂を物質化できる様になったことで第三魔法をも引き摺り下ろすことができる世界で語ることじゃないかもだ。
それにそもそも先程会った彼は僕らが知る彼とは、死後に呼ばれる場所がどうも違っている様だからね。
奇跡が起きて融合する可能性は無くも無いが。
「さて、君達の旅路に花の祝福を。君の旅路の果てにまた会えることを願っているよ。キリハ君。
いや、この浮遊城から人々を解放した後も多くの事件を解決した果てに一つの世界を統治した英雄。
───キリト君。」
花が舞うと共に、アヴァロンの欠片は完全に消えた。
理想郷と魔法使い、竜に二人の似て非なる女性達は浮遊城の管理者が作り出した幻なのか、或いは如何なる方法を用いて現れた本物なのか。
あらゆる可能性は、今はまだ不確定な光の彼方に微かに揺らぎ、揺蕩うのみである。
特攻的には対竜、対神性、対巨人、対妖精、対超巨大、対猛獣、対悪魔、対死霊、対王、対魔性、対人類の脅威、対領域外の生命、対機械、対鬼、対セイバー、対アーチャー、対ランサー、対ライダー、対キャスター、対アサシン、対バーサーカー、対ムーンキャンサー、対フォーリナー、対シールダー、対ビースト、対妖精王、対不死が挙げられる。
そしてFGOなのでセイバーはランサーに有利。
竜特攻と妖精特攻、機械特攻にランサー特攻があったためキリトはゴリ押し出来たが、本来は勝てない。
最後の最後に、キャスターの介入があったことで強制終了したが介入が無ければ削り取られ、ここで物語は終いになっていたことは間違いない。
ここに出て来たアルトリア・キャスターは我々の知るアルトリアだが、彼女以外は───。