【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た   作:サクラン

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唯一無二のキャラをらしく見せるのってやっぱり難しいね…まあそれができれば嬉しいんだけど。

それではお楽しみください。


第十一話 不義遊戯

 雨降り続けるJ市。雷鳴も轟いている中ユウジ達はいつでも参戦できるようビルの影から戦況を伺っていた。そしてプリズナーがいよいよマズいかと思ったタイミングで、突如謎のヒーローが乱入して来たのだ。

 

「あのヒーローって…」

 

「A級10位のトウドウだ。わざわざ駆け付けて来たのか…?」

 

 ユウジ達も当然トウドウが表われ、黒い稲光のようなものが発生すると同時に深海王を蹴り飛ばした瞬間は目撃している。あれを見るに、彼も相当な強者なのだろう。

 

「今のトウドウなら、勝負の土俵には立てるだろうな。取り敢えず、俺達はこのままマキ達(こいつら)を守っておこう」

 

 イナズマックスは落ち着いた様子でトウドウを見ていた。

 

「…良いの?S級のプリズナーさんですら分が悪い相手なのに…」

 

 イナズマックスの言葉にユウジは少し疑問に思った様子で聞く。確かに普通に考えればS級ヒーローですら苦戦する相手に上位とは言えA級ヒーローが向かった所で何ができるのか、と思うだろう。

 

「安心しろ。トウドウはレベル“虎”を同時に5体相手にして勝った事もあるし、レベル“鬼”相手にも時間稼ぎを一人で成功させた事もある。それに“()()”をキメた状態なら、十分プリズナーさんの戦闘にもついて行けるだろ」

 

「黒閃…?」

 

 ユウジは慣れない言葉に疑問を浮かべたものの、今は聞くべきではないと判断し、戦局を見守るのだった。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「なんなの…あの男は…」

 

 深海王は困惑していた。突如現れた男は謎の術を使うようだが、感じる呪力量や筋力は今まで戦っていたプリズナー(変態)を越える程ではない。

 つまり今の自分ならば片手間で処理できる筈なのだが、あの黒い稲光を伴った攻撃は今の自分であっても脅威と感じる程の威力であり、感じる呪力の威圧感も中々のものだ。

 

「トウドウちゃん、来てくれた所で悪いんだが…ここは俺に預けてくれないか?いくらトウドウちゃんでもアイツは―」

 

 プリズナーは肩で息をしながら間接的にトウドウに撤退を促す。プリズナーもトウドウの強さは知っているが、流石に深海王相手は分が悪いと感じていた。

 

「分かっている。普段の俺だったなら、彼奴を相手にするのは厳しかったろう。だが、今の俺は黒閃をキメている。攻撃は通らずとも援護なら十分可能だ。それにMr.プリズナー、貴殿もそこまで余裕があるわけではあるまい?」

 

「む…」

 

 しかしトウドウは冷静に状況を分析する。実際トウドウの術式は攻撃性能こそゼロ同然だが、“相手を翻弄する”、“味方を援護する”という点においてこれ程適した術式は中々ない。

 それにこのまま単独で戦い続けたとして、事態が好転する可能性は限りなく低い。体力も呪力も相応に消耗している為、むしろ事態は悪化する可能性が高い。

 

「それにMr.プリズナーが譲れないのと同じように、これは俺にとっての戦いでもある。奴は…」

 

 

 

 

 

「奴はタカダちゃんのライブ…それもよりによってサビのタイミングで警報を鳴り響かせた!!絶対に逃がさん!!確実にここで倒す!!」

 

「そうか…それは許せんな!!」

 

 

 

 

 

 トウドウの中々にズレた理由にプリズナーは同調する。アイドルを崇拝しているわけではないが、守るべき者がいるという点ではプリズナーも同じなのでその気持ちは分かる。

 十分イカれているのだが、生憎ドルオタと変態の二人なので、その異常性をツッコむ者はこの場にいなかった。

 

「Mr.プリズナー、彼奴の手札を教えてくれないか?」

 

 しかしトウドウは戦闘においては謎の高IQを発揮する。連携を円滑にすべく、プリズナーに深海王の手札を聞く。

 

「おそらく海から発生した怪人で基本的には肉弾戦タイプだ。雨に濡れている今なら俺でもキツいパワーとスピードを誇る。口からは強酸性の溶解液を吐く…術式はあるか不明だが今のところは未確認だ」

 

「成る程…」

 

 プリズナーの情報を一通り聞き終えるとトウドウは顔の前で人差し指を立てる。これはトウドウが(自称)53万のIQを発揮する際に行う行動なのだ。

 

(彼奴の手札、及び思考傾向を整理しよう。

 

 

・思考傾向→これはおそらくプロレス精神があるタイプだ。どんな攻撃だろうとまずは受ける。Mr.プリズナーの連打を受けて倒しかけたという情報からも間違いない。ただ問題は追い込んだ時だな。自らの命の危機となれば攻撃を避ける可能性がある。会話もできる事から相当な知性もある。俺の術式も遅かれ早かれ看破する事が予想できる為追い込み方には注意すべきだろう。

 

・戦闘スタイル→これもMr.プリズナーの発言通りだろう。巨大化してからも徒手空拳しか扱わない事から最も強い戦い方は接近戦なのだろう。ただ、小細工や術式の有無によっては変わって来るかもしれない。要観察が必要だな。

 

・手札→今確認できた限りだと徒手空拳、及び口から吐く溶解液。徒手空拳の速さ、パワーはMr.プリズナーですら追い付けない。まともにやり合っては分が悪い為、俺の術式で補う必要がある。溶解液の速さはそこまでではない事から至近距離で放たれない限りは問題ない。未確認の小細工や術式がある可能性がある為注意が必要。

 

 

 ふむふむ…ざっとまとめられる限りはこんなものか。これらの情報を含めた上で不測の事態を考慮し俺の(自称)IQ53万の脳内CPUが導き出した結論は―)

 

 

 

 

 

「―勝利(ビクトリー)!!」

 

 トウドウは笑みを深め、高らかに宣言する。その笑みは過信でも慢心でもなく確かな勝算があるが故の笑みだった。

 

「Mr.プリズナー」

 

「!」

 

「貴殿は攻撃だけに集中してくれ。回避と防御は俺の術式で受け負う。奴を倒すには貴殿の火力が必要だ」

 

 そしてトウドウはプリズナーに端的に作戦を伝える。流石に長々と話すわけには行かない為、あくまで手短に済ませる。

 この状況下において、負ける事は許されない。しかもプリズナーはトウドウの術式すら把握していない。つまり即興の連携で深海王を仕留めねばならない。

 至難にも程がある状況。しかしトウドウはプリズナーに“できるか?”とは聞かない。

 何故なら―

 

 

 

 

 

「分かった!よろしく頼むぞ!!トウドウちゃん!!」

 

 

 

 

 

 ―プリズナーはS級ヒーローであり、トウドウもその強さはよく知っているからだ。

 

Good(グッド)、ならば俺の術式について説明しておこう。俺の術式は―」

 

 そしてトウドウがプリズナーに自らの術式について説明していると―

 

 

 

 

 

 ズンッ!!

 

「「!!」」

 

 

 

 

 

 ―遂に時間切れとなった。

 

「新しい兵隊さんが来たみたいだけど…わざわざ死にに来たのかしらぁ?」

 

 深海王は相変わらず上から目線でトウドウに話し掛ける。20メートル近くの巨体から発される威圧感を前にしてもトウドウは冷や汗一つ流さない。

 

「ふっ…怪人である貴様は知らんだろうが、この世にはどんな宝よりも、どんなものよりも尊く素晴らしい者が存在しているのだ。その存在の最も輝く瞬間を奪った貴様は、地の果てまで逃げても打ち砕く」

 

「できない事は言うものじゃないわよ。ここで…死ぬのだからねえ!!」

 

 トウドウの妄言を聞き流し、深海王は拳を振り下ろす。いくらトウドウであっても一撃食らえばそれで沈みかねない。そしていよいよ拳が直撃する直前―

 

 

 

 

 

 パァン!!

 

(!? また位置が―)

 

 

 

 

 

 ―トウドウが手を叩くと同時に目の前の景色が変わり、拳は地面を砕くだけで終わる。だがここまで経験すれば焦りや混乱も少なくなる。すぐに振り返って後ろにいるであろうトウドウに攻撃を仕掛ける。

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 ドゴン!!

 

「!?」

 

 だが、攻撃がトウドウを捉える前に超振動を伴った拳が深海王の顔面を貫いた。殴り飛ばされた深海王は顔を再生させながら、殴ってきたプリズナーと、現象の元凶と思わしきトウドウを睨む。

 

「…単純だけど、面倒な大道芸ね」

 

「フッ、流石に察したようだな。そう、俺の術式は呪力のあるモノの位置を入れ替える―“不義遊戯(ブギウギ)”!!

 

 深海王は不愉快そうに表情を歪め、トウドウは堂々とタネを明かす。

 術式は敢えて開示する事によって効果を底上げする事もできる。だが、トウドウの術式は“入れ替え”である為攻撃性能そのものは0である。それを考えるとトウドウの術式を開示する行為はあまり意味がないとも思えるが―

 

「ちなみに」

 

 パァン!!

 

「手を」

 

 パァン!!

 

「叩くのが」

 

 パァン!!

 

「発動条件だ」

 

 パァン!!

 

 ―全くそんな事はない。この術式は呪力差、実力差があろうと入れ替えにはなんら影響はない為、()()()()()()()()()()()()のだ。

 それどころか知る事で“いつ入れ替えるのか”、“何が何と入れ替わるのか”という選択肢が常に迫られる為、まともに戦う事すら難しくなる。

 

「ぬうう…!」

 

 互いの位置を入れ替えながら接近して来る二人に深海王は混乱する。手を叩くという前動作こそ必要だが、移動そのものは“瞬間移動”である為、深海王の速さですら対応に追われてしまう。

 

(手を叩く度に私と入れ替わるのか二人が入れ替わるのか選択肢が迫られて行動が鈍る!これは…)

 

「バイブレーション☆…」

 

 深海王が下手に動けずにいると、プリズナーか拳を引き絞りながら向かってくる。トウドウは深海王の後ろ―つまり二人で挟み込む形になっている

 

(入れ替えたとしても攻撃するのは二人!ならこの攻撃に有効なのは―)

 

 

 

 

 

「前後を両方を攻撃すれば関係ないわねぇ!!」

 

 

 

 

 

 深海王は片腕と片足を前後に振るい、プリズナーとトウドウ、どちらが自分と入れ替わっても対応できるように前後をカバーする。

 

「成る程、流石に対処が速いな。だがしかし!!」

 

 トウドウが空中に小さな何かを放り投げる。それは道路上から拾った小石だった。

 

 パァン!!

 

 そして拍手の音が鳴り響く。トウドウの突っ込むと見せ掛けて後ろに跳んだ為攻撃の射程外へ、プリズナーは―

 

 

 

 

 

(!? いない!?)

 

 

 

 

 

 ―腕と足、どちらも身体を捉えた手応えがなかった。深海王は思わず足を止める。

 

「忘れたのか?俺の術式対象は“呪力のあるモノ”だ。つまり―」

 

 困惑する深海王にトウドウが語っていると、突如深海王の頭上に影が差した。そこにいたのは―

 

 

 

 

 

「ダーク☆エンジェル☆バズーカ!!」

 

 ズドォン!!

 

「グゥッ…!」

 

 

 

 

 

「そこらに落ちている小石だろうと、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ―呪力を込めた小石と入れ替わったプリズナーが、渾身の一撃を頭部に叩き込んだ。いくらプリズナーが手負いと言えども頭部に食らうのは流石にダメージになる。深海王も堪らず体勢を崩した。

 

 パァン!!

 

「フン!!」

 

 ドゴォ!!

 

 当然トウドウはその隙を逃さない。即座に手を叩いてプリズナーと入れ替わると、怯んだ状態の深海王の頭部を蹴り飛ばした。

 

「効かないのよぉ!!」

 

 だが、深海王はすぐに体勢を立て直してトウドウに掴み掛かってきた。

 

「だろうな。俺も効くとは思っていない」

 

 パァン!!

 

 トウドウは深海王に掴まれる前に素早く手を叩き、深海王と自身の位置を入れ替える。

 

 パァン!!

 

 そして更に手を叩いて自身とプリズナーの位置を入れ替え、プリズナーは既に拳を構えていた。

 

「バイブレーション☆ダーク☆エンジェル☆ラァァッシュ!!!」

 

 ズドドドドド!!!

 

 そして間髪を入れずにプリズナーの連打が深海王に叩き込まれ、吹き飛ばす。

 

 パァン!!

 

 そしてトウドウは吹き飛ばされた深海王と自らの位置を入れ替える。すると深海王は自然とプリズナーのすぐ側に移動させられる。

 

「バイブレーション☆ダーク☆エンジェル☆ドロォォップ!!!」

 

 ズドォン!!!

 

 そしてプリズナーはすかさず飛び蹴りを食らわして深海王をビルに吹き飛ばした。そしてプリズナーの隣にトウドウが駆け付ける。

 

(かなり食らったわね…)

 

 深海王は身体の関節を鳴らしながら立ち上がる。相変わらず規格外の再生力だが、その再生速度や落ちてきている。つまり―

 

 

 

 

 

(呪力もそろそろ底が見えてきたわね…あまり使い慣れていないけど、やるしかないみたいね。最悪、()()()()()()

 

 深海王は立ち上がり、崩壊したビルの瓦礫をどけてトウドウ達を睨む。

 

「アナタ達褒めてあげるわ。私をここまで追い詰めたのは、後にも先にもアナタ達だけでしょうね」

 

「そうか。それは少し哀れだな。世界は意外と広いものだぞ」

 

 深海王の称賛に、トウドウは哀れみで返す。S級ヒーローの実力を知っている立場としてはこの程度で頂点を気取っているのは少し哀れにも思えたからだ。

 とは言え、自分にとっては油断ならない強敵だ。侮るなどという事は万に一つもない。

 

「フフ、そう。まあ、アナタ達もこれから死ぬけどね」

 

「「!」」

 

 そう言うと深海王は両手を組んで掌印を結ぶ。トウドウとプリズナーは深海王から異質な呪力を感じ取り、身構える。

 

「術式解放―“死累累湧軍”!!!」

 

 そして深海王が名を呼ぶと同時に現れたのは、巨大な海洋生物の形をした式神達。今の深海王に匹敵する程の巨体がトウドウとプリズナーに向かって襲い掛かって来た。

 

(この数!入れ替えは無意味!真正面から潰すしかない!)

 

 大口を開けて迫って来る式神をトウドウとプリズナーは片っ端から叩き潰していく。

 

(数こそ多いが、幸いにも強さは大した事はない!だが、彼奴の姿を見失ってしまった!Mr.プリズナーと合流し、守りを固めなければ―)

 

 

 

 

 

 ドゴォ!!

 

「グッ…!」

 

 

 

 

 

 ―トウドウが式神を倒していると、その奥から巨大な拳がトウドウに向かって振るわれた。式神の相手をしていた為反応が遅れ、そのまま殴り飛ばされた。

 

「トウドウちゃん!グッ…!」

 

 プリズナーもトウドウを助けに行こうとするが、式神が身体に噛み付き、動きを制限する。ダメージこそないものの、動きを制限される事は相応の隙を晒す事になる。

 

「式神じゃあ、アナタは殺せないでしょうね。だけど、視界を塞いで連携させない事に関しては効果抜群でしょう?」

 

 深海王は笑いながらプリズナーに近付く。どうやらこのままプリズナーとトウドウを各個撃破していくつもりのようだ。

 

「“死累累湧軍”は際限なく湧き続ける式神…当然私の呪力が尽きれば出現しなくなるけど、果たしてあの男はどれだけ耐えられるかしらねぇ…?」

 

「!」

 

 深海王が言った事でプリズナーは気付いた。トウドウが吹き飛ばされた方向に式神が向かっている。おそらくトウドウにとどめを刺すべく向かっているのだろう。プリズナーが行けば戻って来れるだろうが、深海王がそれを許す筈もない。

 つまりトウドウを助けるにはプリズナーが深海王を撃破し、式神を消すしかない。

 

「フフ、まあそんな険しい顔しないで、ゆっくり遊びましょ」

 

 深海王は敢えて緩慢な動作でプリズナーに近付く。プリズナーも構えて戦う気概は衰えていないものの、状況としてはかなり厳しい。

 

(くそぉ…!トウドウちゃんはおそらく術式の射程外にいる。戻って来るにしてもそれなりに時間は掛かるだろう。時間を稼ぐか…?いや!トウドウちゃんも苦戦しているかもしれない。俺がこいつをやっつけて、トウドウちゃんを救い出す!)

 

「オオオオオ!エンジェル☆スクリュー!!!」

 

 プリズナーは超振動させた身体を回転させながら式神の群れに突っ込む。噛み付いていた式神はもちろん、プリズナーを喰らい尽くさんと大口を開けて迫って来た式神もプリズナーの肉体によって弾き飛ばされる。

 

「バイブレーション☆ダーク☆エンジェル☆ラァァッシュ!!!」

 

 そして式神の波を突破し、その先で待ち構えていた深海王に対して連打をお見舞いする。

 

「━━━━━━━━━━ッ!!!」

 

 ズドォン!!!

 

 だが、今更パワーで上回れる筈もない。深海王の巨大な拳は、プリズナーの連打をあっさりと突破し、ビルに吹き飛ばした。

 

「勝てる筈もないのよ。全ての生命の頂点に立つこの私に楯突いた事自体が、アナタ達の敗因ってとこかしら」

 

「ハァッ…ハァッ…」

 

 プリズナーは遂に地面に膝を付き、深海王はそれを見下す。度重なる負傷に呪力も限界まで使っている事でプリズナーはもう限界だった。

 

「ふ…ふふっ…」

 

「? 何を笑っているのかしら?」

 

 だが、それでもプリズナーは不敵に笑う。まるでもう勝負は着いていると言わんばかりに。

 

「そう…だな…アナタの敗因は…“ヒーロー”を侮っていた事だ…!」

 

「…何を言っているのかしら?あまりの絶望に遂に頭が―」

 

 深海王がプリズナーの発言を笑い飛ばそうとした時、その頭に影が差した。そして―

 

 

 

 

 

 パァン!!

 

「!? アナタ、何故―」

 

 ズドォン!!!

 

 

 

 

 

 ―拍手の音が響き、プリズナーと傷だらけのトウドウが入れ替わり、深海王の目の前に現れた。そして思い切り拳を振り抜くと、黒い稲光が炸裂した。

 

(馬、馬鹿なっ!あの男は確かに“死累累湧軍”によって足止めされていた筈!!一体何故―)

 

 パパァン!!

 

 深海王の思考は拍手によってかき消された。目の前にいたトウドウが消え、ビルの瓦礫のみがある。そして拍手の音は二回鳴り響いた。しかし自分が入れ替わったのは一度のみ。という事は―

 

 

 

 

 

「決めろ。Mr.プリズナー」

 

 

 

 

 

 ―深海王が振り返った先には全身を超振動させたプリズナーが拳を構えていた。

 

「フン!アナタ達の拳なんて…」

 

 攻撃は間に合わないと察した深海王は全身に力を入れて防御を固めた。この男の連打は確かにダメージを与え得るが、決定打には到らない。そして今はダメージも蓄積し、呪力も消耗している。そんな状態で倒すことなどできる筈もない。

 

 

 

 

 

「バイブレーション☆―」

 

 

 

 

 

 今、プリズナーは極限まで集中し、視界に映る全てがスローに動いていた。普段は数えるなど馬鹿らしいと思える程振動している術式も、今は一回ごとの振動がちゃんと分かるほどに精神が研ぎ澄まされている。

 そして()()は、そういった時にこそ微笑む。10万分の1の可能性を手にする者のみに許された、黒い火花。

 

 

 

 

 

「ダーク☆エンジェル☆ラァァッシュ!!!!!」

 

 ズバゴォン!!!!!

 

 

 

 

 

 もはや本当に雷が落ちたのでは思える程の轟音と共に深海王を殴ったプリズナーの拳から黒い火花が発生した。その攻撃は深海王の防御をあっさりと貫き、身体の7割をミンチに変えた。

 

「あ…?一体…どういう―」

 

 ズドドドドド!!!

 

 深海王は変わり果てた自身の身体を見て呆然とするが、そんな疑問を吹き飛ばすかのように超振動の連打が追撃に掛かる。辛うじて原型を留めていた部分も粉砕され、身体からは命と呪力の気配がプツリと途切れた。

 

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」

 

 そしてその場に立っているのはプリズナー一人のみ。彼は肩で息をしながらも、しっかりと深海王が死んだ瞬間を見届けると―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 

 

 

 

 ―勝利した事を示すかのように片腕を天に掲げた。喝采を上げる者こそいなかったものの、その勝利は間違いなくJ市を救ったと言える。

 

「流石だ、Mr.プリズナー。俺の気配に気付いてくれたのは本当に助かった」

 

 傷だらけで上裸になっていたトウドウは力を抜いて道路に大の字に寝転がり、プリズナーに感謝を述べる。

 

「いやいや、トウドウちゃんがベストを尽くしてくれたからこそ、奴を倒せたんだ。それで、()()は無事か?」

 

「ああ、あくまで時間稼ぎに徹していたからな。イナズマックスもいたし、問題ない」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 所変わってプリズナーとトウドウのいる位置から少し離れた地点。

 

「! 式神が消えた!」

 

「終わったみたいだな…勝てたみたいで良かった…」

 

 ユウジ、パンダ、イナズマックスの三人は汗と血を拭いながら呼吸を整える。勝負を見守っていた三人が何故ここにいるのか。それは―

 

 

 

 

 

 ―数分前

 

「ヤバい!!トウドウとプリズナーさんが!!」

 

 深海王によって分断された状況にユウジは焦る。折角追い詰めていたのにここで負けてしまっては全てが水の泡だ。

 

「あの式神の量はヤバいな…トウドウなら対処できない事もないだろうが、それまでにプリズナーが殺られたら終わりだ」

 

「…逆を言えば、奴はこれで勝ったと思ってる。不意打ちの選択肢ができた」

 

「「!」」

 

 ユウジとパンダが焦る中、イナズマックスはこの状況を好機と捉えていた。

 

「見た感じ、あの式神のレベルは“虎”ってとこだろう。俺達でも足止めできない事はない」

 

「! じゃあつまり…」

 

「ああ、俺達があの式神を相手してトウドウを戻らせる。式神の状況が奴に分かるかどうかは賭けになるが、とにかくあの二人に任せるしかねえ」

 

「よし!じゃあ行こう!!」

 

 

 

 

 

 ―回想終了。

 

 こんな感じで、三人が式神の相手を引き受け、トウドウは即座に合流する事ができたのである。

 

「にしても本当に規格外だな、S級ってのは。それについて行けるトウドウもどうなってんだよ」

 

 パンダは下で話しているトウドウとプリズナーを横目で見ながら呆れたような声を上げる。初めてS級ヒーローの本格的な戦闘を見たが、終始圧倒されっぱなしだった。

 

「本当な。でも同じA級ヒーローとして、負けちゃいられないな」

 

 それはユウジもイナズマックスも同じだったが、今のままで満足しているつもりはない。必ず強くなる事を誓い、笑みを浮かべるのだった。

 

「おーい!三人共ー!怪我人を抱えて病院に行こうー!!」

 

 ビルの下からプリズナーが大声で三人を呼ぶ。どうやら協会への報告も終わったようだった。

 

「お、終わったみたいだな」

 

「病院か…消毒の臭いあまり好きじゃねえんだよなー」

 

「パンダ先輩って病院で怪我治せんの?」

 

 そして三人はマキ達を抱えてプリズナー達と合流する。いつの間にか雨も上がり、空には晴れ間が垣間見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗く、湿った空間。()()はモゾモゾと蠢いていた。

 

()()…!そんな…どこか…ろって来た!!」

 

「いーじゃ…()()…良い仲間…なると…よ?」

 

 それは声を聞いた。怒鳴る老人のような声と、軽薄な青年のような声。その声は初めて聞くはずのものだが、何故か安心感を覚えた。

 そしてそれは不思議とその声の主達に会いたいと思い、自身の周りを覆っている膜のようなものを突き破り、この世に生まれ堕ちる。

 

「お、生まれた」

 

「話を聞けい!!」

 

 生まれ堕ちたそれは、目の前で声の主達を見た。老人のような声の主は噴火口のようになった頭部と単眼が目を引く。老人のように体躯も小さいが、その身体から感じられる威圧感は山のように大きい。

 青年のような声の主はツギハギの身体が特徴的だが、それ以外は本当に人間と変わらない。その軽薄さも相まって少し変わった人間としか思えなかった。

 

「うーん、初めましてかな?君、自分が何か分かる?」

 

「ぶ、ぶぅ…」

 

 ツギハギの青年―真人はそれに問い掛けるが、それは困惑しているかのように身体を縮こませる。

 

「うーん、やっぱり分かんないか」

 

「此奴はまだ幼いじゃろう。親か仲間はおらんのか?」

 

「それっぽい奴らが攻め込んで殺られたっぽいんだよね。多分一人だよ」

 

 真人が淡白に告げた言葉に漏瑚は少し顔を伏せる。彼は直情的であるだけに情に厚い。幼い仲間が一人である事に思う事があるのだろう。

 

「で、今言った通り君は一人なわけだ」

 

 だが真人は特に気にする様子もなく話を進める。

 

「生まれこそ違うけど、俺達は同じ“怪人”。謂わば同胞なわけだ。今の世において、俺達は人間共に追いやられ、肩身の狭い生活を強いられてる」

 

「だけど、人間共はつまらない価値観に囚われてこの世界を生きている。同じ者同士の癖して誰も彼も仮面を被って生きている」

 

「俺達怪人は発生経緯の差こそあれど、人間の本心―負の感情から現れるのがほとんどだ。言うなれば俺達怪人こそが、本物の“人間”なんだよ」

 

 真人が語るのはこの世のあり方。真人達にとっては人間など弱く、浅ましく、臆病な癖にこの世界の頂点を気取っている愚かな生き物でしかない。そんな者達にこの世界の主導権を預けておくなど、到底我慢ならないのだ。

 

「けど、宛もなく暴れるだけじゃヒーローに狩られる。ムカつくけどね」

 

「だから今、俺達は仲間を集めてる。強く聡い仲間達をね。段々集まってきてるんだけど、まだまだ足りなくてさ」

 

 故に真人がするのは勧誘。この怪人はまだ幼いが将来相当化ける気配がする。今ここで保護も兼ねて引き入れるのが賢明だ。

 

「そこで、どう?俺達の目指す世界に、君も一枚噛まない?」

 

 気軽な様子で真人は手を差し伸べる。とても軽薄で、計画性があるようにも見えない。しかし何処か信頼を預けられる雰囲気を真人は放っていた。後ろにいる漏瑚が特に口出ししないのも、彼を信頼しているからなのだろう。

 

「ぶふぅ!ぶふぅ!」

 

 それもまた、真人に懸けたくなった。彼の作る未来は、それとしても見たくなるものであったから。

 

「ハハッ、元気だねぇ」

 

「フン!仲間になったのならさっさと行くぞ。()()()()にも伝えなければ」

 

「あー待って、まずは仲間になったからにはこの子の名前でしょ」

 

 漏瑚はさっさと話を進めようと急かすが、真人はマイペースにそれの名前を考え始めた。

 そしてしばらく顎に手を当てて悩んだ後―

 

 

 

 

 

()()、君の名前は陀艮ね。どう?」

 

「ぶふぅー!」

 

 

 

 

 

 ―陀艮という名前を授け、名前を貰った陀艮はぴょんぴょこ跳ねて喜びの感情を現した。

 

「よっし、じゃあ仲間も加わった事だし、行こうか」

 

「全く…指針は貴様が決めれば良いが、舐められるような真似はするなよ」

 

「信用できるの?そいつ」

 

「信用はせん。だが別の怪人の集まりとも繋がりがあるらしい。あくまで仲介役じゃ」

 

 そして呪われた者達は、暗がりを進む。いつか必ず、日の元を堂々と歩む事を願って。




また一万字越えた…もうちょいペース上げないとなぁ…


・ユウジ、パンダ、イナズマックス
三人で死累累湧軍引き受けたから相当頑張った。今回の経験を糧に成長できると良いね。

・トウドウ(東堂葵)
半裸ノルマ達成。こいつのハドル下手に理屈を捏ねくり回す必要ないけどフェイントとかでめっちゃ使いやすい…ちなみに全開の深海王の動きについて行けるのは黒閃キメてるからです。素の状態じゃ雨なしでもキツい。黒閃連発できなきゃ勝てないです。

・ぷりぷりプリズナー
なんかめっちゃ技増えた。バズーカはクロちゃんからの受け売り、ドロップは単純に飛び蹴り。これでも戦闘力ならS級最下位ってマ?

・深海王
なんやかんや強い。できるだけ強いとこ見せようと思ったらタフネスがヤバい事になった。術式は領域は持ってない。陀艮との関係は単純に呪胎より更に前の状態の時に面倒見てたってだけです。

・自然呪霊ズ
今作でのチラ見せ。原作ではもう出ないだろうからしっかり活躍させたい。愉快な事になるだろうね。


こんなもんかな。多分次回は羽休め回になります。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?

  • 五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
  • 宿儺(完全体、十種、術式情報なし)
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