【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た   作:サクラン

18 / 37
予言します。後四話以内には終わる。ってか流石に後四話以内で終わらんかったら本当にヤバい…そろそろ話進めたいんじゃ!けどS級とまこーらが強過ぎてどうなるかが作者でも分からんのじゃ!(逆ギレ)

S級特訓会が全部終わる頃には本誌呪術終わってそう(小並感)

それではお楽しみください。


第十八話 S級特訓会―肆―

 いきなりミンチにされるというショッキングな絵面から始まったゾンビマンVS魔虎羅。モニタールーム側のヒーロー達の間では不穏な空気が流れていた。

 

「生きてる…っすよね?」

 

「じゃなきゃタツマキさんが止めてる…と思う」

 

 ミズキが不安気に呟き、ユウジがなんとか言葉を絞り出すが、その声色は震えている。ヒーローとして覚悟はできていても、首が180度回転した人の身体を見るのは誰だってしんどい。

 だが、タツマキが介入していない以上死んではいない筈だ。一先ず全員が自分をそう納得させ、ゾンビマンの身を案じた。

 

「━━━━━」

 

 しかしいつまで経ってもタツマキが止める様子を見せない。しかも魔虎羅はミンチになったゾンビマンに向かってゆっくりと歩を進めている。

 

「おい…止めなきゃ本当に…!」

 

 早過ぎたのかとも思ったが、タツマキはもちろん他のS級も焦る様子を見せない。無情にも魔虎羅とゾンビマンの距離だけが縮まって行き、魔虎羅が不意に姿勢を低くすると―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 

 

 

 

 ―魔虎羅が地面を蹴って突貫し、ゾンビマンに向けて剣を振るう。

 

「ゾンビマンさん!!」

 

 ユウジと何人かのヒーローから小さな悲鳴が上がると同時に、魔虎羅の剣が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え?」

 

 その次の瞬間起こった事に、ユウジは目を疑った。何かを叩き潰すと同時に響き渡ると思っていた轟音は響いて来ず、代わりに一つの銃声が聞こえると同時に魔虎羅が少し吹き飛ばされたのだ。

 画面をよく見ると、完全に砕き折れているゾンビマンの手にはいつの間にか銃が握られており、そこから硝煙が上がっている。

 そうして起こった事に困惑していると更に驚くべき事が起こった。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「…これでようやくダメージが通るぐらいか。何発撃っても足りねえじゃねえか」

 

 不意に声が響くと、首が回転した状態でゾンビマンは起き上がった。そして砕け折れていた腕、足が見る見る内に治癒して行き、回転していた頭はまるでカートゥーンアニメに出て来る人形のように元の方向に回転して戻った。

 

「━━━━━」

 

 一方、銃撃をまともに食らった魔虎羅は特にダメージを引きずるような様子もなく、食らった箇所からは銃弾が落ちていた。

 

 ここまで見れば分かるが、ゾンビマンは“不死身”である。

 

 しかもこれは術式として備わっているわけではなく、身体機能の延長線上としてのものであり、呪力が切れたからと言って不死性が失われる事はない。

 ゾンビマンは身体能力で言えばS級最弱クラスだが、この不死身を活かした徹底的な泥試合の末に疲弊した所を叩いて粘り勝ちをするのが基本である。極端な話相手に呪力切れの概念さえあれば一定の勝ち筋があるのだ。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 そして今度はゾンビマンから仕掛ける。背中に隠した剣を引き抜き、魔虎羅に向かって斬り付ける。最弱クラスと言えども、レベル“虎”程度ならば造作もなく倒せる。超人揃いのS級の中では見劣りするというだけで、不死身の身体を除いても十分人間離れしているのだ。

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 ドゴシャッ!!

 

 

 

 

 

 だが、今回に限っては相手が悪い。

 確かにゾンビマンは素の状態でも決して弱くはないし、特注品の銃はA級ヒーローでも反動で腕が粉砕骨折してしまう程の威力であり、当たりどころによってはレベル“鬼”すら一撃で倒せるものだ。

 しかしレベル“竜”クラス、特殊能力があるとは言え素の身体能力が主な武器である魔虎羅相手ではそれでも火力不足だ。

 

 ガコンッ

 

「━━━━━」

 

 しかもダメ押しと言わんばかりに適応によって攻撃の通りが悪くなる上、調伏の儀によって召喚された魔虎羅には呪力切れが存在しない―つまり得意の持久戦による粘り勝ちも狙えない。この魔虎羅相手にゾンビマンは何から何まで相性最悪の相手なのだ。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 魔虎羅はミンチになったゾンビマンを見過ごす事なく、仕留める為に駆け出す。明らかに死んでいると思えるが、適応によって学習したのか、あるいは別の何かで判断しているのかは分からないが、とにかく死んだフリは通用しないようだった。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「聞いてはいたが本当に不死身か…」

 

「本人としては得意じゃないだろうけど私はああいった泥臭い子好きだよ。またお茶にでも誘ってみようかな」

 

 ゾンビマンの戦闘を見ていたジェノスは驚いたように呟き、ツクモはゾンビマンの戦闘スタイルに好感を示していた。

 

「…にしても改めて疑問なんだが、魔虎羅は何故ゾンビマンが生きていると分かるんだ?」

 

 タンクトップマスターがふと疑問に思った事を口にする。適応後なら学習したと説明が着くのだが、魔虎羅は初撃からゾンビマンが生き残ったと判断し、仕留めるべく動いていた。調伏していない以上メグミから命令が掛かったとしても意味がない為、魔虎羅が“何を視て”相手が倒せたのか判断しているのかが知りたいのだろう。

 

「心臓の鼓動音とかじゃねえのか?」

 

「いやーあり得なくはないが式神だろう?そんな原始的な方法で確かめるかな?そもそも聴覚があるのかも分からないけど」

 

 金属バットの推測に対しツクモが更に疑問を呈する。そうやってああでもないこうでもないと他のS級が議論を交わしていると―

 

 

 

 

 

「呪力でしょう」

 

「「!」」

 

 

 

 

 

 ―童帝が割って入り、その確信を覚えているような言い振りに他のS級は耳を傾ける。

 

「呪力?」

 

「そりゃ式神が分かんのか?」

 

「少なくとも視覚や聴覚よりもよっぽど現実的ですよ。調伏されていない以上メグミさんが調伏の儀に引き摺り込んだ際の判断は意味を成していないと見るべきです。その上で誰だろうと誤魔化す事のできない要素は何か、と聞かれたらそれはもう呪力しかありません」

 

 童帝の説明に何人かは納得したような表情と共に頷く。

 呪力はヒーローでない者であっても持っているものであり、出している、いないに関わらず呪力を持っているという事は感じ取れる。全く呪力が感じられないという事はそれは無機物か、理論的にはあり得ないが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「確かに、帳や領域などの結界術を使う際にも呪力の有無というのは重要だからね。魔虎羅の―調伏の儀の判断基準が“開始した際に一定範囲内にいた呪力を持つ者”でもおかしくない」

 

「死なない限りは人は誰しも呪力を持っています。ゾンビマンさんも同じでズタボロにされたからって呪力が無くなるわけじゃないですからね」

 

「成る程…納得した。ありがとう」

 

 ツクモと童帝の説明にタンクトップマスターは納得し、頭を下げて礼を言った。

 

「どういたしまして…にしても、彼色んな意味でタフだねえ。どうにか一発食らわせて欲しいけど…」

 

 そしてツクモは戦闘エリアに目を戻し、再び魔虎羅に叩き潰されるゾンビマンの姿を見据えるのだった。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

(やべえな…適応が重なって俺が回復に時間の掛かる方法を取り始めた。このままじゃミキサーにされちまう)

 

 絶えず再生と破壊が繰り返される中、ゾンビマンは冷静に思考する。常人ならば発狂間違いなしの地獄だが、こんな状況を数え切れない程経験して来たゾンビマンにとっては痛みなど無いも同然。それよりも現状を打破する方法を思案する。

 先程までは再生能力を活かしてどうにか翻弄していたのだが、法陣が三回回転するとゾンビマンに対して有効な攻撃手段を見つけたのか、腕に装備した剣をドリルのように回転させたのだ。

 

 ゾンビマンは不死身だが、再生能力に限度はある。決定的な弱点はないが、どんな損傷でも瞬時に回復できるわけではない。

 絶え間なくグチャグチャにされれば再生が追い付かなくなる事もあるし、全身の細胞をくまなく潰してミキサーに掛けられたような状態にされれば死ぬ可能性もある。

 身体を単純に“斬る”のではなく複雑に“斬り潰す”ような手法を取って来た為、ゾンビマンは身体の再生が追い付かなくなりつつあった。

 

(武器による攻撃はもう通用しねえな。困った…状況を打破するには()()()を使うしかねえわけだが、この場で見せて良いのか?)

 

 とは言え、もう何の抵抗手段も残っていないわけではない。が、これを使うとゾンビマンはもう()()()()()()為、この後の事を考えると使って良いのかは微妙な所だ。

 ズタボロにされながら内心迷っていると―

 

 

 

 

 

 ボチュン!!!

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―猛攻を加えていた魔虎羅が突然叩き潰された。それはタツマキによる終了の合図だった。

 

「…終わりか」

 

「流石にあの絵面のまま放置するわけにも行かないからねえ。この後の事考えると不死身とは言え無茶し過ぎるわけにも行かないし」

 

「俺としてはもう勘弁して欲しいがな…」

 

 ゾンビマンはボロボロになって血痕が付着したコートを羽織り直し、煙草をふかしながら観客席へ戻って行った。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「んじゃ次―童帝ー!!

 

 サトルが呼ぶと童帝が観客席から飛び降り、トコトコとサトルの元まで歩いて向かった。

 

「頑張ってね。君なら一番上手く見せられるでしょ?」

 

「ハァー…簡単に言わないで下さい…魔虎羅相手だと一回戦うだけでもヒヤヒヤするってのに…」

 

 サトルの軽い口調に童帝は心底しんどそうな様子で答える。S級の中で最も大局を見て動けるだけに心労も多い。

 

「…ま、これで他のヒーロー達の為になるならありがたい事だし、頑張りますよ」

 

 しかしこれで燻っている、あるいは伸び悩んでいるヒーロー達にとって何か為になるのなら力を入れない理由はない。童帝は改めて、ランドセルを背負い直した。

 

「それじゃあ、始めましょう」

 

 そして年相応のあどけなさが残る少年の表情ではなく、覚悟と威圧感が感じられる、S級ヒーローとしての表情に変わった。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「━━━━━」

 

 メグミによって魔虎羅が召喚され、フラッシュがそれを救出したのを確認すると、童帝はランドセルの中から一つのボールを取り出した。

 それは上半分が青く、下半分が白の子どもに人気の出そうなデザインのボール。上半分にはデフォルメした龍のようなものが描かれていた。

 

「今回は君に決めた。“青龍(カイリュウ)”」

 

「グオオオオオ…!」

 

 そして童帝がボールを投げるとボールが開き、中からまるで折り紙のように式神が現れた。その式神は全身に鎧を纏った青白い龍、と言った見た目だ。しかも冷気を司っているのか、常に白い風が身体から溢れて、地面には霜が降りていた。

 

「先手必勝だ!“青龍(カイリュウ)”!!」

 

「グオオオオオ!!」

 

 童帝が命じると、“青龍(カイリュウ)”は吼えて口から冷気のブレスを放ち、地面が一瞬で凍る。

 冷気は地面を滑るようにして迸って行くと―

 

 

 

 

 

 バギィン…!!

 

 

 

 

 

 ―メグミに襲い掛かろうとする魔虎羅を一瞬で凍らせ、氷像に変えた。それと同時に童帝は“青龍(カイリュウ)”と共に駆け出した。

 

「アイスラスター!!」

 

「グオオオオオ!!」

 

 そして童帝のランドセルから様々な兵器が飛び出すと同時に“青龍(カイリュウ)”が冷気を操作して兵器の先端を凍らせ、更に鋭くすると共に氷の礫を生み出し、弾幕として放った。

 

「━━━━━ッ…!」

 

 それらは寸分違わず魔虎羅に直撃し、凍っていた事で防御ができなかった魔虎羅は吹き飛ばされた。ガリガリと音を立てて氷刃と礫が魔虎羅を襲うが、魔虎羅もされるがままでは終わらない。

 

「━━━━━ッ!!」

 

 魔虎羅は氷刃と礫を跳ね除けると、凄まじい速さで童帝と“青龍(カイリュウ)”を狙う。童帝も子どもながらにA級上位クラスの身体能力があるが、魔虎羅が相手では心許ない。

 

 

 

 

 

「超強力トリモチショットガン!!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 だからこそ、童帝も真っ向勝負では戦わない。

 童帝はランドセルからバック型のショットガンを取り出して魔虎羅に放つと、着弾と同時に粘着力の高いトリモチが飛び出し、魔虎羅の行動を制限する。

 

 童帝はヒーロー協会のシステム関係のほとんどを担っており、中々自分から怪人討伐に出向ける機会は少ない。

 だが、それでも怪人の討伐記録や他のS級ヒーローとコミュニケーションを重ね、超災害規模の怪人相手を想定した兵器開発を進めている。

 それこそこのショットガンが魔虎羅相手に効果を発揮したのもそういった研鑽の成果である。

 

「━━━━━…ッ!」

 

「…想定はしてたけど適応抜きに対応早過ぎるなぁ…」

 

 しかし理不尽が具現化したような存在が災害レベル“竜”という相手だ。

 魔虎羅はトリモチを必要最低限な分だけ取り払い、力ずくで動き始めた。童帝はその力に冷や汗を流していたが、確かな勝算のある笑みは消えていない。

 

「けど、僕もそれだけじゃないんだよね。“青龍(カイリュウ)”!」

 

「グオオオオオ!!」

 

 童帝が“青龍(カイリュウ)”に声を掛けると、“青龍(カイリュウ)”は周囲に冷気を展開する。それは先程のように魔虎羅を凍らせられるようなものではなく、あくまで周囲の気温を数十度下げるだけのものでしかない。何の意味も無いかと思われたが―

 

 

 

 

 

 ビシィッ!!

 

「━━━━━!?」

 

 

 

 

 

 ―身体に付着したままのトリモチが一気に膨張し、茨のように広がると同時に凍り付き、魔虎羅の身体を貫いた。

 

「そのトリモチは周囲の気温や状態に合わせて様々な反応を見せる特性のトリモチだよ。名前は…“不可思議トリモチ”じゃちょっと締まらないから“エレメントリモチ”の方が語彙が良いかな?」

 

 氷の茨に串刺しにされてなお藻掻く魔虎羅の前で童帝は心なしか満足気な“青龍(カイリュウ)”を撫でながら解説する。

 ヒーロー協会内だと兵器関連はメタルナイトが凄腕で有名だが、童帝も負けていない。子ども故の自由で柔軟な発想と、それを実現させられる腕は“天才少年”の異名に恥じないものだ。

 

「━━━━━……」

 

 一方藻掻き続けている魔虎羅は少しずつ凍った箇所を砕き、自由を取り戻しつつあった。しかし身体を貫いた氷の茨はそのままであり、ダメージ自体は負っていた。

 

 

 

 

 ―が。

 

 

 

 

 

 ガコンッ

 

「━━━━━」

 

「…流石に適応されちゃったか。まあこれだけやれば当然だよね」

 

 魔虎羅の法陣が回転し、これまでのダメージは全て帳消しとなった。

 

「グルルルルルル…!」

 

「大丈夫だよ。まだやりようはある」

 

 適応した事によって更に手強くなった魔虎羅に威嚇する“青龍(カイリュウ)”を撫でる事で諌めながらも、魔虎羅の次の動きを見逃さないよう一挙手一投足に目を光らせる。

 

「ま、まずは適応がどこまでされたかだよね。“青龍(カイリュウ)”!」

 

「グオオオオオ!!」

 

 童帝は魔虎羅の適応結果を確かめる為、様子見の意味を込めたブレスを放った。魔虎羅は躱す事はなく、先程と同じように氷像と化したが―

 

 

 

 

 

 ピシィ…!バリィン!!

 

 

 

 

 

 ―魔虎羅はすぐに砕き割り、脱出した。そのまま童帝と“青龍(カイリュウ)”がいた場所を剣で薙ぎ払うが、既にそこに一人と一体は消えていた。

 

「やっぱり凍結ぐらいはもう意味ないか。こっちの防御に対する解答はもうしてるのかな?」

 

 童帝は“青龍(カイリュウ)”に乗って空中で様子見していた。既に適応を経た魔虎羅の前で一度食らった攻撃がもう一度通用すると思う程童帝は馬鹿ではない。魔虎羅に向かってブレスを放つと同時に“青龍(カイリュウ)”に飛び乗り、その場から離脱した。

 

「━━━━━」

 

 しかし魔虎羅も空中にいる標的を黙って見ている筈もない。力を溜めるように身を屈めた。

 

「! “青龍(カイリュウ)”!!」

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 童帝が焦った様子で呼び掛けると同時に魔虎羅の姿が搔き消え、“青龍(カイリュウ)”が大きく移動するも魔虎羅の剣が“青龍(カイリュウ)”の鎧を傷付けた。

 

「グウウウウウウ…!」

 

「距離を取るんだ“青龍(カイリュウ)”!魔虎羅はまだ空中戦には適応していない!」

 

 大切な主人からの鎧を傷付けられた事によって唸る“青龍(カイリュウ)”を童帝は宥めて距離を取らせた。そして鎧の傷付けられた箇所をランドセルから出した機器によって詳しく調べる。

 

「この傷痕…切り口が高温だ。明らかにただの摩擦熱じゃ説明しきれない程の…」

 

 鎧は“青龍(カイリュウ)”の冷気に当てられて常に氷の鎧なのだが、傷痕の周辺を見るとその氷が溶けていた。

 

「理屈自体は単純だからか、一回の適応で有効な攻撃手段を見つけられちゃったか…まだやれない事はないけど、ここからは一発も貰わないぐらいの気持ちで行かなきゃダメだね」

 

「グルルルルルル…!」

 

 童帝が更に手強くなった魔虎羅相手に気合いを入れ直し、“青龍(カイリュウ)”もそれに応えるように唸った。

 

「今はこのまま空中から攻め続けよう。突進のタイミングだけ気を付けていれば魔虎羅はずっと無防備だ。…空中戦に適応されるまでがリミットになるけどね」

 

 童帝は状況を改めて整理し、戦略を立てる。魔虎羅の性質上、適応完了までの時間は一撃を入れる度に短縮される。よって残り時間はもう30秒もないだろうと、童帝は考えをまとめた。

 

「さあ、ここまで来たらもう出し惜しみは無しだ!“青龍(カイリュウ)”!!」

 

「グオオオオオォォォォォ!!」

 

 “青龍(カイリュウ)”が今までの中でも最大の咆哮を上げると空中に氷の礫が大量に発生し、それが猛吹雪の風に乗って凄まじい速さで射出される。

 その堂々たる風格も相まってまさに吹雪そのものが式神の形を形取ったものにも見える。

 

「━━━━━」

 

 しかし適応を経た魔虎羅にとっては対処可能な攻撃でしかない。吹雪の風の中に巻き込まれても一切動じず、腕に装備した剣で襲い掛かって来る氷の礫を次々と弾き飛ばす。

 

「(適応を経た以上単純な力押しだけじゃダメか…動きを止めるなり何なりしなきゃ削り殺されるね)“青龍(カイリュウ)”!地面へ!」

 

「グオオオオオ!!」

 

 童帝が指示を出すと“青龍(カイリュウ)”は地面にブレスを放ち、氷の波を発生させて地面を隆起させる。地面を巻き上げながら迫る氷の波を魔虎羅は腕をクロスさせて防御するが、圧倒的質量を防ぎ切れず後退る。

 魔虎羅が適応したのはあくまで“冷気に対する耐性とそれに有効な攻撃手段”のみであり、今回のような“質量攻撃に対する対抗策”は得ていないのである。

 

「今だ!決めるよ!」

 

「グオオオオオ!!」

 

 その勢いのままに童帝は“青龍(カイリュウ)”と共に突っ込み、“青龍(カイリュウ)”は口内に力を収束させる。

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 そして魔虎羅は氷塊を砕き、周囲を確認すると―

 

 

 

 

 

「グレイシャルフィニッシュ!!!」

 

「グオオオオオォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 ―目の前には童帝と力を溜めきった“青龍(カイリュウ)”が接近し、防御する間もなく渾身の一撃が放たれた。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「ハァッ…ハァッ…」

 

「コオオ…」

 

 最後の一撃によって戦闘エリアのほとんどが氷漬けになり、吐く息も白くなる程度には気温も低下していた。それ程の攻撃をもろに食らった魔虎羅は―

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 ―適応を経てなお法陣を含めた全身が凍らされ、右腕と左足に至っては砕けていた。

 

「グルルルルルル…」

 

「! そっかぁ…マジかぁ…」

 

 力をほぼ全て使い果たした“青龍(カイリュウ)”が唸ると、童帝は何を感じ取ったのか疲れた様子で呟いた。すると―

 

 

 

 

 

 ガコンッ

 

 バリィン!!

 

 

 

 

 

 ―凍っていた法陣が一瞬で砕けると同時に回転し、魔虎羅の凍結も同じように砕かれた。

 

「グオオ…!」

 

「くっ…!」

 

 “青龍(カイリュウ)”が戦おうと前に出ようとするが、呪力がほぼ完全に尽きている以上、もう戦力としては期待できない。せめて守ろうと、童帝がランドセルから武装を展開し、“青龍(カイリュウ)”を庇うように前に出るが―

 

 

 

 

 

 ボチュン!!!

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―タツマキの介入によって、その心配は無用に終わった。

 

「ハァ〜…終わりですか」

 

「うん、まだ戦えない事はないけどこれ以上は出したくないでしょ?」

 

「そうですね。補給量が馬鹿にならなくなっちゃうので…お疲れ様、“青龍(カイリュウ)”」

 

「グオン」

 

 童帝が脱力した様子で安堵し、“青龍(カイリュウ)”を労うと、始めに出したボールを取り出し、“青龍(カイリュウ)”に向かってかざすと、“青龍(カイリュウ)”は折り畳まれるようにして戻って行った。

 

「ふう、じゃあ戻りますね」

 

「ん、お疲れー」

 

 そして童帝はランドセルを背負い直し、トコトコと観客席に戻って行った。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「いやー凄かったな」

 

「ッスね、童帝先輩あんなに強い式神連れてたんだ」

 

 一方、モニタールーム側で見ていたユウジ達も童帝の戦い振りに様々な感想を言い合っていた。

 S級ヒーローの中でもぶっちぎりで最年少である童帝がどのように戦うのかは興味があったが、魔虎羅ともやり合える程の式神を連れて次々と連続攻撃を繰り出すど迫力の光景にはユウジ達も驚いた。合間合間に見せていた童帝の動きも小学生とは思えない程にキレが鋭く、とても見応えのある模擬戦だった。

 

「俺もあんなカックイイ式神と戦えたりすんのかな?」

 

「流石にあれは術式じゃないッスか?術式なしのヒーローが使える式神って言ったらあくまで呪符で扱える簡易的なものが多いので、あのレベルの式神は私達には難しいんじゃないッスかね…」

 

「そっかーちょっと残念」

 

 ユウジが少し残念に思っていると、童帝が観客席に戻り、次の戦いの準備を進めていた。

 

「そういや、次から後回しにされたヒーロー達の戦いじゃない?」

 

「あ!そうッスね!次に戦うのは…」

 

 ミズキが言い淀んたと同時に画面では次に戦うヒーローが飛び出した。そのヒーローは―

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「トップバッターだけど、緊張してない?」

 

 サトルが横に並んだ影に少しからかうような口調で問い掛ける。

 

「いや、全く!むしろ最初という事は注目が浴びられる!俺の筋肉が輝くその瞬間を!」

 

 タンクトップマスターやプリズナーと比べても規格外と言える巨体、日焼けしたその肉体は日光を浴びて輝いている。

 

 

 

 

 

 ―S級13位ヒーロー“超合金クロビカリ”。

 S級ヒーローの中でも単純な戦闘力だと上位に位置する者達。その中でも“最硬のヒーロー”、“ダイヤモンドの肉体を持つ男”とも称される男が、先陣を切った。




はい、今回はここまで。どうにか上位の戦いまで行けて良かった…


・ゾンビマン
魔虎羅との戦いはやっぱり泥試合化。作中での説明通り不死身は術式じゃないです。一応奥の手もありますがそれ使っても魔虎羅相手は厳しい。

・ツクモ(九十九由基)
何気にゾンビマンがタイプ直線どストレートの女。同じ声優さんのキャラを考えるとゾンビマンがタイプなのは中々面白い。

・童帝
あーでもないこーでもないと試行錯誤してたらいつの間にかポ◯モンマスターになってた男。今回は氷テラスカイリューでした(対戦エアプ)。

・魔虎羅(まこーら)
今日のまこーらは氷漬けでした。耐性だけ増やしてばつぐんに切り替えるってやっぱ普通にズルだなお前な?

・クロビカリ
原作での覚醒が待たれる男。凡夫メンタルから成長できているのかは次回までお楽しみに。


こんなもんかな。次回からいよいよS級上位陣の戦いです。せめて及第点の描写はしないと…

それから今後の展開について軽くアンケート取ってます。皆様が何が見たいのか気になってるだけで特訓会の内に全て描きますので、気軽にお答え下さい。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?

  • 五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
  • 宿儺(完全体、十種、術式情報なし)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。