【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た   作:サクラン

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さっそくお気に入り登録10人突破ありがとうございます!

今回は呪術の第一話です。ただ原作程じっくりではなくある程度ダイジェストになりますがご了承下さい。

それではお楽しみください。


第二話 両面宿儺

「本当に馬鹿過ぎるだろ…」

 

 Z市某学校。一人の少年がスマホを眺めながらボヤいていた。黒い制服のような服装に刺々した髪型の姿は少し特徴のあるどこにでもいる学生と言った姿だが、彼の周りの生徒は少しざわついていた。

 

「ねえ…あの人って…」

 

「ああ、最近話題のB級ヒーローの…」

 

「噂だとS級のサトルさんの弟子だって話でしょ?」

 

「マジで!?サイン貰おっかなー…イケメンだし!」

 

(…あの人まさかこれを見越して百葉箱にあるなんて言ったんじゃないだろうな)

 

 そう、少年はまだ学生と言った年齢だが、既にヒーローとして活躍している者である。まだB級とは言え()()()()()()()()()、市民の間でもちょっとした有名人というわけである。

 彼としては目立つのはあまり好きでない為にあまり良い心境とは言えなかった。ヒーローである彼が本来いない筈の高校にいるのも、れっきとしたヒーローとしての任務で訪れている為だ。

 今はその()()の回収任務で訪れている。百葉箱というどうしてそうなったという場所にあると聞き、それを回収するだけの簡単なお使いレベルの任務だったのだが…本来ある筈のブツが無く、校内を探し回っている。

 だがどれだけ探しても見つからない為、彼の師匠が最早おちょくる為だけに自分をハメたのではとすら思い始めていた。

 

(…まあ、流石にそれは無いだろうが)

 

 とは言え、少年はそんなことはあり得ないと確信していた。他の生徒は気付いていないが、この土地からはブツが放っていると思われる並々ならぬ気配を感じる。あまり想像したくないが、誰かが持ち去ったと考えるのが妥当だろう。

 

(クソッ、全校生徒を見て回るのは相当面倒だぞ…!)

 

 ブツの気配があまりにも大き過ぎる為、正確な位置が掴めないが、持った人物が近くにいれば流石に分かる。だが、時間帯としては既に放課後。残った生徒を見て回るのは相当時間が掛かるし、帰宅部の生徒もいる為その中にブツを持ち出した生徒がいれば時間の無駄になる。

 

(だが、足踏みしてても仕方ない。取り敢えず校内に残った生徒から…)

 

 少年は頭を掻きつつも見つける為に行動をする事を決め、校内を目指して歩く。

 

「いそげー」

 

 その時、向かい側から走ってくる淡いピンク色の髪をした生徒が少年の横を通り過ぎた。

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

 

 

 

 少年は生徒が走り去った後、思わず鳥肌が立った。

 

(今の気配!明らかに強くなった!!)

 

 校内全体から何となく感じ取っていた気配が生徒が走り去った直後に明らかに強くなったのだ。少年はその生徒を呼び止めようとするが―

 

 

 

 

 

「おい!お前…って速過ぎんだろ!!」

 

「アイツ50メートル3秒で走るらしいぞ」

 

「車かよ」

 

 

 

 

 

 ―生徒はもう校門を通り過ぎて姿を消していた。側にいた別の生徒の会話に少年も驚いた。ヒーローに超人は多いが、それはとある力を利用して身体能力を向上させている者が多く、少年も例に漏れずその内の一人だ。素の状態で化け物じみた身体能力をしていると言えば、それこそA級、S級ヒーローの者達ぐらいだろう。

 

「仕方ない…気配自体は覚えたし、追うか」

 

 とは言え、今はあの生徒が唯一の手掛り。ため息を付きつつも、気配を辿って少年は生徒を追った。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「はー…爺ちゃん、居ねえんだなー」

 

「大丈夫?」

 

「やっぱり初めてのことなんであんまり無いですけどねー…でもあんまり引き摺ってると爺ちゃんに怒鳴られそうなんで、後は笑ってこんがり焼きます」

 

「言い方…!」

 

 夜もふけ、人数の少なくなった病院の窓口にて、一人の少年が看護師と会話をしていた。

 彼の名はユウジ。どこにでもいる普通の高校生―だが現在の置かれた環境は普通とは少し掛け離れていた。

 

 

 

 

 

 彼の祖父が、今日息を引き取ったのだ。

 

 

 

 

 

 随分前から入院していたが、それでも衰弱しきっていたわけでは無かった。息を引き取る直前も、いつもと何ら変わりなく孫と言葉の取っ組み合いができる程度には元気が有り余っていた。そして見舞いに来る唯一の人物にして、身内である孫に言い残したのは―

 

 

 

 

 

「お前は強いから人を助けろ。大勢に囲まれて死ね。俺みたいにはなるなよ」

 

 

 

 

 

 ―と言った内容だった。このらしくない言葉以外には、本当にいつもと変わりなく、突然息を引き取ったのだ。

 いつも通りの日常に突然訪れた身内の“死”。TV等で怪人災害による死者は何度か見聞きしたことがあるが、ここまで身近な“死”は初めてである為、ユウジは困惑していた。

 まだ割り切ることはできていないが、いつまでもへこたれているわけにはいかないと、ユウジは心の整理をつけていた。

 

「おいお前」

 

「!」

 

 そんな中、暗がりの中から話し掛けて来る影が一つ。ユウジが目を凝らして見詰めていると、その人物の表情が見えてきた。

 

「あー!アンタ最近話題のヒーローの影の魔術師(ブラックマジシャン)!!」

 

「え!?本当!?」

 

 ユウジが指を指して大声を出すと、看護師が驚いた様子で窓口から顔を覗かせる。注目を浴びるのが嫌なのか、ヒーローネームが嫌いなのか、少年は露骨に表情を顰める。

 

「…メグミでいい。それより知ってるなら話が早い。お前が持っている呪物は危険なモノだ。今すぐこっちに渡せ」

 

「ジュブツ…?」

 

 ユウジは顔を傾げる。メグミの言ったモノに心当たりが無かったからだ。そんなユウジの様子を見て、メグミはスマホを取り出して画面を見せる。その画面には手のひらより少し大きい小箱にびっしりと何か文字が書かれた紙に細長い何かがグルグル巻きにされていた。

 

「あーはいはい拾ったわ。でも俺は良いけど先輩達が気に入ってんだよね。理由ぐらい説明してくれないと」

 

 ユウジの言う先輩は高校で所属している部活、“オカルト研究会”の先輩のことだ。彼なりに愛着もある為、やはり理由もなく渡すというのは納得が行かないのだろう。

 メグミはかなり渋ったような表情を見せたが、埒が明かないと判断したのか、理由を語り始めた。

 

「…今の世の中で、死人が出るって言うのは何も珍しい話じゃない。そしてそのほとんどが怪人による被害だってことは知ってるな?」

 

「うん」

 

 メグミの話の内容はかなりショッキングなことだったが、ユウジにとってもそれは既知のことであった。

 数十年前から発生が増え始めた人類の天敵―“怪人”。それによる被害は最早数え切れない。ランクごとに分けられているが、その中でも特に危険な“鬼”や“竜”となると、死人が出ない方が珍しい。

 

「広義として“怪人”と一括りにして語られているが…怪人の中でもある程度種類がある」

 

「種類?」

 

「例えば“動物”って言っても犬や猫、兎とか沢山の種類がいるだろ。それと同じだ」

 

 次にメグミが語った内容は、ユウジの知らない情報だった。

 それもその筈、このことは基本的にヒーロー、あるいは余程の物好きでもない限りは知ることのできない情報なのだから。

 

「劣等感やコンプレックスによってフラストレーションを爆発させ、人間から変異したもの。人間以外の生物が環境なんかによって突然変異を引き起こしたもの。住む場所や環境が根本的に異なり、知性を持った人間とは別の種族として生きているもの。負の感情が折り重なって具現化したもの等など…様々な種類がいるが今回の問題は一番最後の奴だ」

 

「な、成る程…」

 

 ユウジは話に若干ついて行けなくなりかけていたが、それが言い出せる空気ではなかったので雰囲気で誤魔化した。

 

「負の感情ってのは、病院や学校は特に集積しやすい。辛酸、後悔、恥辱…人間が記憶を反芻する度に、その受け皿となるからな」

 

「だからそう言った場所には大抵魔除けの呪物が置いてあるんだ。お前が拾ったのもその内の一つだ」

 

「魔除けなら良いもんじゃねえの?」

 

 ユウジは疑問を口にする。怪人についての知識は大してないが、魔除けと言われて予想できるのは何か神聖なモノであるイメージが強い。単語だけ聞くと何も問題はないように思える。

 

「確かに聞こえはいいかもしれないが、実際は強い呪物を置くことで怪人を怯えさせて遠ざける、毒で毒を制する悪習だ。現に長い年月が経って封印が緩んで逆に怪人を呼び寄せるようになってる。中でもお前の高校に置かれてた呪物は特に危険度が高い。人死が出ない内に早く渡せ」

 

 メグミは苛立ったように渡してくるよう急かす。ユウジとしても納得は行った為―というより本人としては別に渡しても良かったので忌避なく投げ渡す。

 

「いや、だから別に俺は良いんだって」

 

 メグミは渡された箱を開け、その中身を見て驚いた。

 

 

 

 

 

「先輩に言えよ」

 

 空だったのだ。そこにある筈の呪物はどこにもなかった。ならば今まで追ってきていたのは―

 

 

 

 

 

(箱にこびりついた呪力の残穢だったのか…!!)

 

 こうなると一気に話は変わる。どこに呪物があるのか分からない―下手をすれば一般人が持っている可能性もある。

 

「中身は!?」

 

「だぁから先輩が持ってるって…」

 

 メグミが焦った様子でユウジに問い掛けると、ユウジもしつこいと言わんばかりに声を荒げるが、途中でその勢いが萎縮する。

 

「なんだ?」

 

「そういや今日の夜学校でアレの御札剥がすって言ってたな…もしかしてヤバい?」

 

「ヤバいなんてもんじゃない」

 

 

 

 

 

「そいつ死ぬぞ」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「御札ってそんな簡単に取れんの?」

 

「いや、呪力を扱えない人間にはまず無理だ!」

 

「だが今回は中身が強過ぎる!封印も年代物だし紙切れ同然だ!」

 

 ユウジとメグミは大急ぎで学校に向かっていた。ユウジ自身はイマイチ状況を掴み切れていないものの、ヒーローであるメグミがここまで焦っていることから並大抵の事態でないことは分かる。

 実際に怪人と相対したことがあるわけではない為戦いというものもイマイチ分からない。あくまで地元で不良相手の喧嘩が精々だった為命の取り合いまでは経験していないのだ。

 だが―

 

 

 

 

 

 ゾアッ!!

 

「「!!」」

 

 

 

 

 ―学校に到着した瞬間に感じたプレッシャーから、不良相手の喧嘩とはわけが違うことが嫌でも分かった。あまりの圧にユウジは動けずにいると、メグミは気付いているのかいないのか、特に気にすることもなく踏み込んで行く。

 

「お前はここにいろ。部室はどこにある?」

 

「! 待てよ!俺も行く!やばいんだろ!?」

 

 ユウジもメグミの後を付いて行こうと進み出る。まだ高校に入って二月程度しか経っていないが、ユウジにとっては友達なのだ。友達に危険が迫っていると聞いて何もしない程、ユウジは薄情者ではない。それは友達として、人として、正しい選択と言えた。

 だが―

 

 

 

 

 

「ここにいろ」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―メグミの強い声色と表情を見ると何も言えなかった。ユウジが動けずにいるとメグミは学校の中に入って行った。そしてその場にはユウジがただ一人残される。

 

「…何言う通りにしてんだ。俺は」

 

 ユウジは自分自身に問い掛ける。何故メグミの言う事を聞いているのか。それは―

 

 

 

 

 

(死ぬからか。学校からは強い死の気配がする)

 

 

 

 

 

 ―そう、死ぬ可能性があるからだ。ユウジ自身も死ぬのは怖い。それは当然のことだ。別に駄目なことではない。

 

(…爺ちゃんも死ぬのは怖かったのかな)

 

 そこで思い出すのは祖父のこと。今日いなくなってしまった祖父は死を怖がっているような感じはしなかったが本心は分からない。それは祖父しか知り得ないことだ。

 

(俺も泣いたけど怖かったからじゃない。少し寂しかったんだ)

 

 祖父が息を引き取った直後はユウジも涙を流した。だがそれは死を恐れたからではなく、唯一の身内だった祖父がいなくなって寂しかったからだ。

 なら、今恐れている死と祖父の死は何が違うのだろう?

 

 

 

 

 

 

“お前は強いから人を助けろ”

 

「!」

 

 

 

 

 

 ユウジの脳裏に祖父の言葉がフラッシュバックする。その瞬間にユウジは地面を蹴って駆け出していた。

 

(短気で頑固者、見舞いなんて俺以外に来なかった)

 

 ユウジは入院中の祖父の様子を思い出していた。確かにあの様子を思い出すと「俺みたいになるな」と言うのも納得できる。

 

(でもさ爺ちゃん―)

 

 校舎まで近付いたユウジは思い切り跳躍し、四階の窓まで到達する。そこには怪人に取り込まれかけている先輩二人と、それを救おうと駆けているメグミの姿が見えた。

 その様子を確認したユウジは窓を蹴破り、校内に侵入する。

 

 

 

 

 

(―爺ちゃんは正しく死ねたと思うよ)

 

「お前!?」ここ四階だぞ!?

 

 

 

 

 

 驚いているメグミを尻目にユウジは先輩二人の身体を掴むと、怪人から強引に引き剥がした。

 

(正しい正しくないかなんて分からん。だけど、少なくともこっちは正しい死じゃねえ!!)

 

 そう、駆け出した理由はそれだけだ。自分が世話になった先輩がこんな死に方をするなんて納得できない。それだけの理由なのだ。

 

「(これが怪人!)思ってたのと違うな!」

 

 ユウジにとって初めて見る怪人の第一印象は“気持ち悪い”だった。ヒーローが戦うものというだけあり、特撮ヒーローの怪人を想像していたのだ。

 

「いまぁぁぁなんじぃい―」

 

「ッ!!」

 

 怪人が呻きながら近付こうとしてきたが、メグミが手刀で怪人の頭部を斬り裂いた。すると何か燃えるような音と共に怪人は塵となった。

 

「何で来たと言いたいところだが、よくやった」

 

「何で偉そうなの」

 

 メグミはため息をつきつつも、一人の死者も出ずに終わったことに安堵している様子だった。

 

「ちなみにあっちで怪人喰ってるのは?」

 

「俺の式神だ」

 

「へーカッチョいい!」

 

 少し離れた場所では小さな怪人を白と黒の犬がハグハグと喰らっていた。初めて見るヒーローの相棒にユウジは興奮した。話題のヒーローであるメグミの式神というワードに憧れを感じていた。

 

「にしても、お前怖くないんだな」

 

「!」

 

 一方でメグミはユウジの精神性に驚いていた。怪人という異形の存在と戦うというのは、恐怖は勿論生物を殺すという都合上忌避感も生まれるのが当然だ。

 だがユウジは見る限りそう言った拒否反応が見られない。ついさっきまで一般人であった者としては異常な反応だった。

 

「いやまあ怖かったんだけどさ。知ってた?人ってマジで死ぬんだよ」

 

「は?」

 

 ユウジの突然の発言にメグミは眉を顰める。身も蓋もない回答だが、メグミとしては知ってるとしか言えない。怪人災害の現場ではヒーローも一般人の死体や死ぬ瞬間も見て来た。だが、一般人のユウジにとっては祖父の死が身近な死としては初めてであることは想像できる。そこで何か感じるものがあったのだろう。

 

「だったら自分の知ってる人ぐらい正しく死んでほしいって思うんだ。自分でもよく分からんけど」

 

「…いや」

 

 ユウジの意見に対してメグミは歯切れの悪い返事を返した。ユウジの意見を実現させるにはこの世界は残酷過ぎる。だが実現させられるならこれ以上ない程に正しいことだ。ヒーローとしては肯定するべきことなのだろうが、それができる程メグミは真っ直ぐではなかった。

 

「!」

 

 その時、先輩の制服のポケットから何かが落ちた。それは乾いた“指”だった。

 

「これが」

 

「ああ、怪人“両面宿儺”の一部だ」

 

「りょうめ…?」

 

「言っても分かんねえだろ。渡せ」

 

「はいはい」

 

 ユウジが指を渡そうとしたその時、メグミは何かが凄まじい勢いで近付いて来るのを感じ取った。

 

「「!!」」

 

「うおっ!?」

 

「逃げろ」

 

 メグミがユウジを突き飛ばし、突き飛ばしたユウジを式神二体が咥えて距離を取るのと同時に校舎の壁が床が突き破られた。

 土煙が晴れ、その中から現れたのは―

 

 

 

 

 

「おっおっおっ」

 

 

 

 

 

 ―校舎の横幅を全て埋め尽くす程の巨体を持った虫のような見た目の怪人だった。その怪人は六本ある足の内の一本でメグミを掴んでいる。

 

「鵺―」

 

 メグミは何とか脱出しようと手を交差させるが―

 

 

 

 

 

「ガッ…!」

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

「おい!」

 

 

 

 

 

 ―怪人は校舎の壁にメグミを叩き付け、そのまま突進して外にメグミを吹き飛ばした。ユウジは式神が溶けるように消えたのを見た後、吹き飛ばされたメグミを案ずる声を掛ける。

 

「クッ…!」

 

 メグミは何とか防御したものの、頭からは血を流していた。

 

(レベルは…おそらく“虎”近い“狼”だな。普段ならギリ何とかできるが…クソッ、術式途切れて頭回んねえ…)

 

 メグミは何とか手印を結ぼうとするが、頭を強打した影響で上手く式神を呼び出せない。万事休すかと思われたが―

 

 

 

 

 

「フン!!」

 

 ドゴン!!

 

「ユウジ!?(なんつー馬鹿力!)」

 

 

 

 

 

 ―ユウジが怪人を殴り倒して怯ませた。つくづくデタラメな身体能力だと、メグミは驚愕する。

 

「大丈夫か?」

 

「逃げろつったろ」

 

「言ってる場合じゃねえだろ。今帰ったら夢見悪ぃしな。それに―」

 

 一般人を戦わせるのはヒーローとして失格なのかもしれないが、自身に戦える力があってなお何もせずに他人を見殺しにする程、ユウジも薄情者ではない。何より―

 

 

 

 

 

“人を助けろ”

 

「―こっちはこっちで面倒くせえ呪いが掛かってるんだわ」

 

 

 

 

 

 ―祖父から最期にあんなことを言われては逃げられる筈もない。

 

「オオッ!!」

 

「シッ!!」

 

 ユウジは常人離れした身体能力で怪人の攻撃を躱し、パンチや蹴りを食らわせる。その体さばきは本職のメグミから見てもB級上位ヒーローと遜色ないものだった。

 

(…けど駄目だ。お前がいくら強くても)

 

「ツッ!!」

 

「怪人は呪力じゃなきゃ倒せない」

 

 ユウジの攻撃は怪人に効いておらず、反撃を食らって吹き飛ばされた。

 

「早く言ってくんない?」

 

「何度も逃げろつったろ。あの二人抱えて逃げられるのはお前だけだ。こんだけ派手にやれば協会に連絡も入ってる。モタモタしてると全員死ぬぞ。お前がいても意味ないしな」

 

「…お前はどうすんだよ」

 

「俺は本職だ。時間稼ぎぐらいてきる」

 

 ユウジは一目で分かった。無理だと。メグミはおそらく命懸けで時間稼ぎするつもりだ。

 ここはゴーストタウンと名高い廃墟の街のすぐ近くの学校だ。昼間はともかく夜は人通りも少ない為にヒーローが来るまで時間も掛かる。

 

「!」

 

 そんな中、ユウジは一つの仮定を思い付いた。

 

「なあ、なんで怪人はあの指狙ってんだ?」

 

「喰ってより強い呪力を得る為だ」

 

「成る程」

 

 ユウジはニッと笑う。聞きたい答えが返ってきたからだ。より強い呪力を得る為ということは、この指には呪力が宿っている。そして自分は呪力を操れない―なら操れるようにすれば良い。

 

「じゃああるな、全員助かる方法」

 

「あ?…なっ」

 

 メグミはユウジの発言に呆れつつ振り向くと、ユウジは指を呑み込もうとしていた。

 

「馬鹿!!やめろ!!」

 

 ゴクン

 

 メグミの制止も虚しくユウジは指を完全に呑み込んでしまった。

 

(トップクラスに危険な呪物だぞ!?猛毒で確実に死ぬ!!)

 

 呪物と呼ばれるだけあり悪影響しか及ぼさないものだ。そんなものを取り込んで無事で済む筈もない。だが―

 

(万が一…もし、万が一があったなら―)

 

 ―可能性はもう一つある。

 

「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」

 

 怪人が凄まじい勢いでユウジに突撃する。ユウジは特に動く様子を見せない。そして眼前まで怪人が迫ると―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 ザグッ!!

 

 

 

 

 

 ―腕を振るって怪人を消し飛ばした。明らかに寸前のユウジではあり得ない現象。

 

「ケヒッ、ヒヒッ」

 

 そしておもむろに噴き出すと―

 

 

 

 

 

「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!」

 

 

 

 

 

 

 ―今までのユウジとは似ても似つかない声で笑い出した。

 

「ああやはり!!光は生で感じるに限るな!!」

 

「…ッ!」

 

 変わり果てたユウジの様子を見てメグミは歯を噛みしめる。

 

(最悪だ!最悪の万が一が出た!呪物が受肉するなんて…!)

 

 そう、死ぬ以外にあり得た別の可能性。ユウジに呪物の中身が取り憑き、怪人と成り果ててしまう可能性が当たってしまった。

 

「呪霊の肉などつまらん!人は!女はどこだ!!」

 

 ユウジ―否、受肉した呪物は倒した怪人に興味も持たずに周りを見回すと、街の明かりに目を付けた。

 

「いい時代になったのだな。女も子供も蛆のように湧いている。素晴らしい!!」

 

 呪物は両腕を広げて絶望の宣言を告げる。

 

「鏖殺だ」

 

 今にも一般人の居住区を目指して進みそうな呪物を見てメグミは構える。

 

(指一本分とは言えレベル“鬼”は確実。俺の手に負える相手じゃない。ここでやるしかない)

 

「布瑠部―」

 

 彼にとっての奥の手を呼び出そうとした時、呪物は別の方向に視線を向ける。

 

「!」

 

 そして何かに気付いたように目を見開くと、目にも留まらぬ速さでその場から飛び退いた。すると―

 

 

 

 

 

 ゴオオオッ!!

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―凄まじい規模の爆炎が呪物のいた場所を薙ぎ払った。突然の出来事にメグミも思わず詠唱を止める。

 

(今の攻撃の規模…ブルーファイアさんじゃあり得ない。あるとしたらイサムか…駆動騎士か…メタルナイトか?少なくともS級じゃなきゃあり得ない)

 

 メグミは知り得る限りの候補を挙げるが、内心好機とも思っていた。少なくとも今の攻撃規模からして呪物を止められる存在―S級ヒーローが到着した可能性が高いからだ。

 

 

 

 

 

「高エネルギー反応を感知したが…この騒動の正体はお前か?」

 

 

 

 

 

 凛々しい声と聞こえる駆動音にはメグミは心当たりはなかった。爆炎の中から現れた人物にも。

 一見すると普通の人間だが、シャツから見える鋼鉄の腕と本来白目である筈の部分が黒で、黒目である筈の部分が金色であるその姿は明らかに人間でないことが分かる。輝く金髪を靡かせ、呪物の放つプレッシャーにも恐れることなく掌から()()を開いている。

 その男は―サイボーグだった。

 

 

 

 

 

「お前を排除する。そのまま動くな」

 

「フフ…俺を排除するか…やってみろ!!」

 

 

 

 

 

 現代に黄泉返った呪いと、鉄人が激突した。




ダイジェストにしたけど大分長くなった…わりとタイトル詐欺かも?ま、いいや。


・ユウジ(虎杖悠仁)
改めて見ても身体能力がヤバい男。わりと原作通りなので特に言うことがない。強いて言うなら素の身体能力でB級上位と同等ぐらい。…強くね?

・メグミ(伏黒恵)
ヒーローネームはそれっぽいの(確か遊戯王?)から取って来た。特に関係ないし、何なら本人もヒーローネームで呼ばれたくない。原作開始時点だとまだA級ヒーローには届かないかなって。原作最新話時点だとS級上位行けると思います(迫真)。文章上だと女の子みたいになるな…こっちも今の所特に原作と違いはなし。

・両面宿儺
原作だと凡夫の王だのマコラのサポートだの散々な言われような私の推し(迫真)。こっちも原作と違いはないけど指一本分だと災害レベルは鬼上位(深海王と同等)ぐらい。原作での見せ場はまだあると信じて待ってます。

・ジェノス
出そうか迷ったけど出すなら早めにした方が良いと確信してここで登場。原作開始時点だと精々鬼相手が限界だが男の意地を見せられるか…!?

・呪霊、呪力に関する設定
誕生経緯は大体原作と一緒。ただ違うのは一般人にも見えるってとこ。なんで一般人に見えるのか、呪力の扱いに関しては後で詳しい説明があります。


かなり長くなっちゃいました…できるだけ説明回は少なくできるよう尽力します。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?

  • 五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
  • 宿儺(完全体、十種、術式情報なし)
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