【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た 作:サクラン
それではお楽しみ下さい。
「…なんだあの男は」
始まったアトミック侍VS魔虎羅。最初の先手を取ったのはアトミック侍故に魔虎羅は標的を切り替え、アトミック侍は油断なく構えているが、ジェノスはそれを見て訝しげに目を細める。
理由は―アトミック侍から
つまり今魔虎羅から攻撃を食らえばただでは済まないという事。そして防御力だけでなく反応速度や身体能力にも影響が及ぶ為、呪力を使わない事は戦う上ではこれ以上ない自殺行為だ。
「大丈夫ですよ」
「!」
しかしそこにユウタが待ったをかける。一見不健康にも見える顔だが、その表情には師匠への信頼が垣間見えた。
「師匠は強いですから」
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「━━━━━ッ!!」
魔虎羅が大地を踏み込み、アトミック侍に向かって突っ込んで剣を振り上げる。アトミック侍は未だに呪力を使っていない。そして遂に魔虎羅の剣が脳天を捉える―
キンッ
―直前に、刀を鞘に納める小さな音が響いた。それは決して大きな音ではなかったが、何故か妙に耳に残る音だった。
ズバンッ!!
「!!」
しかし次の瞬間、魔虎羅の身体に夥しい数の斬撃が刻まれた。アトミック侍はその場から一切動いていない。
「━━━━━ッ!!」
ズバァン!!
そして一瞬アトミック侍の姿がブレたかと思うと、凄まじい斬撃と共に魔虎羅が吹き飛ばされた。
「これぐらいやれば十分か?」
アトミック侍は刀の峰で肩を叩きながら飛んだ魔虎羅を眺める。その姿からは相変わらず呪力は感じられない。
「━━━━━……」
吹き飛ばされた魔虎羅は立ち上がろうとするが、全身を斬り刻まれた影響で上手く立ち上がれない。その頭頂部の法陣が震えると―
ガコンッ
「━━━━━」
―一つ回転し、適応した。
「さて、どんなもんかな?」
ビュンッ!!
アトミック侍はおもむろに呟くと、小手調べとして斬撃を
「━━━━━ッ!」
ガギィン!!
―自身の剣で斬撃を弾き飛ばした。それを見たアトミック侍は特に驚いた様子もなく当然と言わんばかりの表情だ。
「適応したってんならこんぐらいはできるよな」
「―じゃあ、これならどうだ?」
アトミック侍は挑発するような口ぶりで斬撃を放つ。それも今度は一発ではなく、同時に複数発を放ってみせた。
「━━━━━ッ!!」
ガギィ!! ズバッ!! ザザザン!!
放たれた斬撃に対して魔虎羅は何発かは弾き返したものの、全てを防ぎ切る事はできず、再び身体が刻まれる。
「━━━━━ッ!!」
しかし魔虎羅はそれだけで怯む事はなく、アトミック侍に向かって突進する。
「自分から向かって来るか!面白ぇ!」
突っ込んで来る魔虎羅をアトミック侍は楽しげに見つめて、刀を鞘に納めて構える。
「待ってるだけじゃつまんねえな。防げるもんなら防いで見やがれ」
そしてアトミック侍は目を細めて魔虎羅を睨みつけ、僅かに鞘から刀身を覗かせると―
「━━━━━━━━━━ッ!!」
ズバァン!!
―一瞬姿が消えたかと思うと、気付いた時には魔虎羅の背後に移動し、移動の衝撃か突風が吹き荒れると同時に魔虎羅は白い身体が見えなくなる程に斬り刻まれ、血塗れとなった。
ガコンッ
「━━━━━」
しかしその手数による影響なのか、魔虎羅の適応速度が早い。
「━━━━━ッ!」
そして傷を回復させた魔虎羅は一気に駆け出し、刀を構え直しているアトミック侍に肉薄する。
ガギィン!!
「刀比べか?二回適応しただけで超えられると思われるのは心外だが…良いぜ、乗ってやるよ!」
魔虎羅の振るった剣を弾いたアトミック侍は、そのまま魔虎羅の身体を斬り付ける。
「━━━━━ッ!!」
身体を斬られた魔虎羅だが、適応によってダメージは少なく済んだ為怯む事なく剣を振るい、アトミック侍を仕留めようとする。
「ハッ!」
ガギィン!!
しかしアトミック侍も魔虎羅の剣を見切り、難なく弾く。そして再び魔虎羅が斬り付け、アトミック侍が弾く。少しでもタイミングがズレてしまえば下半身と胴体がお別れしてしまう事になるが、アトミック侍は一手も見落とす事なく弾き続ける。
一人と一体にとっては何百回と打ち合っているが、実際の時間ではまだ一秒も経過していない。傍から見れば余波の斬撃が周囲に亀裂を入れてまるで嵐のように思えるだろう。
(おっと、そろそろ仕切り直しだな)
そして打ち合い始めてから0.94秒後、アトミック侍は時間の経過に気付き、仕切り直す事を考える。残り0.06秒。今の魔虎羅を相手に吹き飛ばすには手加減はできないと考え、全力を出す事を決める。
「フンッ!!」
ガギィン!!
そして魔虎羅が剣を振るったタイミングを僅かに身体をズラし、そのタイミングで魔虎羅の剣を弾く事で魔虎羅の体勢を崩す。
「━━━━━ッ!!」
体勢を崩されてしまった魔虎羅だが、剣をそのまま横薙ぎに振るう事で攻撃と防御が同時に行えると判断し、アトミック侍に向けて剣を振るう。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
ズドン!!
「!?」
―だからこそ、次の瞬間に起こった事は魔虎羅にとって理解不能だった。
アトミック侍が刀を振るったかと思うと同時に斬撃とは思えないような轟音が響き、魔虎羅を刻みながら吹き飛ばした。
「ほっ、特訓の名目上当たり前ではあるが
アトミック侍は少し一息付きながら刀を構え直す。一息付きながらも、その視線は油断なく魔虎羅を捉えていた。
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「…彼ひょっとして、呪力による強化時間を一秒以内に抑えているのかい?」
ここまで戦いを黙って見守っていたツクモがふとした様子で呟く。その言葉に反応したのは、弟子であるユウタだった。
「よく気付きましたね」
「流石にここまで頑なになっていればプライドとは言えないだろう。何かしらの“縛り”かい?」
そう、アトミック侍の戦い方はあまりにもリスクが高い。一見余裕があるように見えるが、彼の実力でなんとかなっているだけであり、一発食らえばゲームオーバーの綱渡りのような戦いである事に変わりはないのだ。
プライドが高いと言えども―否、プライドが高いからこそ、わざわざ負ける可能性の高い戦い方をアトミック侍がするとは思えなかったのだ。
そう思いツクモが注意深く観察していると、アトミック侍は呪力を使う際に解放時間を一秒以内に抑えている事に気付いたのだ。
感じられるアトミック侍の呪力総量や出力はS級相応の高さだが、それにしても攻撃力が高過ぎる。ツクモも火力の高さには自身があるが、アトミック侍は見た限り術式を使っていないにも関わらず、自身の火力を超えているように見える。
そしてあの極端な戦い方。“縛り”が関係しているとしか思えなかった。
「そうですね。師匠は“呪力による強化時間を一秒以内に抑える縛り”を自らにかけて、あの攻撃力と射程の長さを会得しています」
「やはりね。相当重い“縛り”故に得られる効果は絶大だ。あの攻撃力の高さにも合点が行ったよ」
ツクモはユウタの説明に納得する。一歩見違えれば死を招きかねない戦い方だが、アトミック侍はそれを許容してでも得られる効果を重要視したのだ。
強化の理屈を分かりやすく言うのであれば水鉄砲等と同じだ。呪力を極限まで圧縮し、一気に解放する事で圧縮されていた分の力も利用して攻撃力と射程を向上させる。そして呪力による身体能力の強化も一秒以内に留める事でその向上率は他の者と比較にならない程に高める。まさに破格の性能だ。
「だが、同格以上の相手には厳しくないかい?先のフラッシュ君の戦闘を見るに、そのインターバルの時間が命取りとなる相手もいると思うが…」
しかしツクモは更に疑問を抱く。
アトミック侍が挟む僅かなインターバル。その時間は僅かコンマ数秒。確かに並のヒーローであれば瞬く間に過ぎて行く時間だ。
しかしS級ヒーロー―その上位陣の実力者ともなればコンマ秒間の猶予で結末がひっくり返る事もあるし、速さに長けたフラッシュに至ってはコンマ数秒もあれば何十もの攻防をする事が可能だろう。
どれだけ有利に戦闘を進めていても、インターバルのタイミングで悪あがきで攻撃されればそれが致命傷となる可能性もあるのだ。呪力強化無しでも十分常人離れした身体能力をしているが、それでも同格の相手から呪力で強化した攻撃を受ければ良くても重傷だ。得られるメリットが絶大とは言え、リスクが高過ぎる。恐らくアトミック侍の実力であれば普通の呪力強化であっても十分でS級上位陣に食い込めるだけの実力がある筈だ。
「それは…」
「俺と同じ呪力特性だ」
「!」
ユウタが何か言い淀むと、そこにフラッシュが割って入った。
“呪力特性”。先のフラッシュの戦闘においても存分に強さを見せ付けられた為、他のS級にとっても聞き捨てならない言葉だった。
「奴の呪力特性が、“縛り”と何か関係があるのか?」
「関係があるどころか、“縛り”があって初めて成り立っているようなものだ」
「まるで普通に運用する事ができないような言い方だね。そんなに特殊なのかい?」
ツクモはフラッシュの断言するような言い方に引っかかるものを覚えた。
『“縛り”があって初めて成り立つ』こんな事は様々な呪術の形を見て来たツクモであっても初めてのケースだ。
術式を発動する上での手順としての“縛り”や生まれながら強制的に身体に架される“縛り”―“天与呪縛”等が近しいものとして思い浮かぶが、“呪力を行使する上での縛り”など見たことも聞いたこともない。
「性質自体は単純だがな。奴の呪力特性は―」
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ガコンッ
「━━━━━」
一方、戦闘エリアでは魔虎羅が適応し、ダメージから復帰していた。
「━━━━━」
そして魔虎羅は僅かに身体を屈める。アトミック侍との距離はおおよそ二十メートル程開いているが、両者共にこんな距離はあってないようなものだ。
そして両者の間に流れる緊張感。アトミック侍は刀を鞘に納めて迎撃体勢を取り、魔虎羅も身体を屈めて一瞬硬直する。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
そして始まる極限まで時間を圧縮した一秒間。
魔虎羅が大地を踏み込んで疾駆し、アトミック侍は構えたまま迎え撃つ。
「━━━━━ッ!!」
アトミック侍は魔虎羅が突進して来る延長線上に斬撃を放つ。
避けるか防御するか。アトミック侍は冷静に魔虎羅の動きを見極める。
ガギィン!!
魔虎羅が選んだのは防御。腕の剣を振るい、斬撃を弾き飛ばした。しかしアトミック侍としてもこの程度は想定済み。更に斬撃を放ち、魔虎羅の接近を牽制する。
「━━━━━ッ!」
「!」
そのまま突っ込んで来ると思っていた魔虎羅だが、急にその場で身を屈めて止まると、思い切り地面を踏み込んで空中へ跳んだ。当然地面と水平に放たれていた斬撃は空を斬る。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
そして魔虎羅は空気を大量に吸い込み、呪力と共に圧縮して放つ。俗に言う空気砲だが、魔虎羅が放てば一気に人を肉塊に変えかねない凶器と化す。その上空中からの攻撃ではどうしても防御するしかない。流石のアトミック侍も空中歩行までは可能としていないからだ。
「━━━━━……」
向かい来る空気の弾丸に、アトミック侍はまた刀を鞘に納めて構える。
―また斬撃を放って防御するつもりなのか。
モニタールームで見ているヒーローや、初めてアトミック侍の戦闘を見るツクモやジェノスはそう思った。
構えるアトミック侍が選んだのは―
「昇龍斬!!」
ゴオオオオオッ!!
「!?」
―防御ではなく、攻撃だった。
腰を低くして構えていたアトミック侍は、身を翻すようにして抜刀し、
その斬撃の軌道と速さを予測していなかった魔虎羅は龍巻に呑み込まれ、全身を斬り刻まれる。その威力に体勢を崩した魔虎羅は地面に向かって落下して行く。
「━━━━━ッ!」
魔虎羅が落下しているのを確認したアトミック侍は、地面から跳躍して魔虎羅に向かって跳ぶ。そして刀を構え、魔虎羅に対して狙いを定める。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
全身を斬り刻まれ、ダメージを受けた魔虎羅だが、アトミック侍の姿を捉えるとせめてもの反撃として剣を全力で振り抜く。苦し紛れの反撃とは言え、ギリギリまで引き付けてのカウンターだ。防御せざるを得ない。まだ挽回は可能だと魔虎羅は判断した。
既にアトミック侍の眼前には魔虎羅の剣が迫っている。後0.1秒後には額が貫かれているだろう。
しかしアトミック侍は一切集中を乱さない。自身の命の瀬戸際とも言える極限状態の中でも維持できる集中力は、もはや異次元の領域と言えた。
その集中力はまるで“水鏡”。だからこそ彼に対して、“それ”は微笑んだのだろう。
「―アトミック斬!!!」
アトミック侍が刀を振り抜く。音も何も無かったが、一瞬黒い閃光が輝いているようにも見えた。
魔虎羅は何をしたのかよく分からなかったが、構わず剣でアトミック侍を貫く―
「―??」
―が、それができない。いつの間にか剣が消えている。それだけではない。自身の身体が思うように動かない。よく見ると突き出した右腕に赤い線が細かく刻まれていて―
ザアアアア…
―その先を思考する事は魔虎羅はできなかった。刹那の合間に繰り出された数百の斬撃で身体が粉微塵にされたからだ。その場には無傷の法陣だけが残されている。
「法陣も斬ってみたが…本当に硬えな」
アトミック侍は刀を鞘に納めつつ、残された法陣を見つめながらもボヤく。アトミック侍のした事は至極単純、魔虎羅の剣が自身を貫くよりも速く全身に斬撃を叩き込んだだけだ。
しかし当然簡単な事ではない。まず今の魔虎羅の速さがかなり速い。しかもその上で眼前の剣が自身の身体を貫くよりも速く攻撃したのだから凄まじい絶技だ。
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「…今の見えた人」
「見えた」
『かなりギリギリだがまあ追う程度には』
そしてその速さには他のS級も驚いていた。ツクモもアトミック侍の動きを見ることはできず、むしろ魔虎羅の反撃で「決まった」と思った程だ。この中でアトミック侍の動きを僅かでも見ることができたのはフラッシュとその中に棲まう存在、そして次点でシルバーファングぐらいだろう。
「けどまあ、先の説明も含めると納得が行くよ。
そしてツクモは先のフラッシュの説明を思い出す。
「“風”―“気流”と言い換えても良いのかな?とにかくその性質を持った呪力。それをあんな風に活かすとは恐れ入ったよ」
そう。アトミック侍の呪力特性は風や気流と同じ性質を持つ。聞いただけだとシンプルながらに強力に思える印象だし、実際それがアトミック侍の強さの一端を担っている事に違いはない。
『そう簡単なものではない。奴の呪力は風と全く同じ性質を持っている―つまり呪力を使えば周囲の気流の流れに影響されるという事だ』
しかしフラッシュの説明によると呪力を解放すると周囲の気流の流れに影響されてしまう―端的に言ってしまえば操作が他の者と比べてとても難しいらしく、緻密な呪力操作が求められるのだと言う。
故にアトミック侍も初めは必要最低限の分の呪力を流し、怪人を倒す土台だけ作って戦っていたのだと言う。事実それだけでも十分戦えていたし、S級ヒーローの名に恥じない実力だった。
ならば何故あの戦い方に辿り着いたのか。ツクモはそれをこっそりシルバーファングから教えてもらった。
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『初めてS級特訓会を開いた時じゃったかのう?ヒーロー同士での模擬戦を行う事になってな。アトミック侍は同じ剣を使うという事で閃光のフラッシュと当たったんじゃが…』
『惨敗だったのかい?』
『いやそういうわけではなかったのじゃが…剣速はともかく本人の走力に差があり過ぎての。結果としてはフラッシュが終始優勢だったのじゃよ』
以前より行っていたS級特訓会ではS級ヒーロー同士で戦い、互いの技術の研鑽、交流する機会があった。初回にアトミック侍はフラッシュと戦い、終始劣勢に追い込まれていた。
剣速はフラッシュにとっても十分侮れない速度ではあったのだが、それでも回避不能なものではなかった。故にフラッシュからすれば攻撃圏内に入った時のみに注意すればどうとでもなる相手だったのだ。
それによりフラッシュはアトミック侍を速さで終始翻弄。当然再起不能になる負傷やどちらかが死ぬまで続けるわけには行かない為、勝負は引き分けの形で終わったが、その時に見せたアトミック侍の驚愕と悔しさに満ちた表情はよく覚えているという。
『アトミック侍も強者故に気付いた筈じゃ、もし殺すつもりで勝負を続ければどうなったのかを。フラッシュの速さは自身の剣速をも上回りかねないものだった事をな』
そこからアトミック侍は自身を徹底的に鍛え直したという。基礎身体能力はもちろん、今まで操作の難易度から最低限に留めていた呪力の性質にも向き合い、試行錯誤を繰り返した。シルバーファング自身としても若者(シルバーファング視点)が変わろうとすればお節介を焼きたくなる性分である為、助言を言ったり相手になったりしていた。
しかし呪力特性に関してはどうしても操作が難しく、二人は頭を悩ませていた。限界まで出力を高めれば周囲の気流に影響されないのだが、それではフラッシュのような同格以上の相手には持久戦に持ち込まれてしまうと厳しくなる。
そして数々の方法を試していた中でアトミック侍が目を付けたものがあった。それは―
―シルバーファングの兄が開発した武術、“旋風鉄斬拳”だった。
これはシルバーファングの操る武術と並んで有名な武術であり、習得難易度が高い事で有名である。しかし拳術でありながら斬撃を可能とするという点において、アトミック侍は何か通じるものを見出し、シルバーファングに頭を下げてまで兄であるボンブと会わせてもらった。
『話は聞いたぜ。ウチの“旋風鉄斬拳”を知りたいらしいじゃねえか。俺としても構わねえが…ウチは“シン・陰”と同じように門下生にしかその技術を教えてねえ。すまねえが教えてやることはできねえな…』
シルバーファングから頼まれ、アトミック侍と話すボンブだが、少し申し訳なさげに教える事はできないと話す。これは“旋風鉄斬拳”だけに限らず、武術関連は基本的に“門下生にしか教えない”という“縛り”で武術そのものの効果を底上げしている。故に詳しく教える事は“縛り”に抵触してしまう為、教えられないのだ。
『それはあくまで“教えられない”だけなのか?じゃあ…“使っているのを見るだけ”ならどうなる?』
『! そうだな…それなら“縛り”を破った事にはならねえ筈だ。説明しながらとかならアウトだろうが、黙って使うのを見てるだけなら問題ねえ』
アトミック侍の提案にボンブは盲点を突かれたような表情になった。教える事は確かに“縛り”に反するが、戦闘を見ているだけならば問題ない。そうでなければそもそも戦う事もできないからだ。
『ただ、お前さんが理解できなきゃそれまでだぜ?』
『ハハッ、構わねえよ。見る事さえできりゃ十分だ』
ボンブが挑発ように笑い、アトミック侍も同じように笑った。
そこからはトントン拍子に話が進み、ボンブが使っているのを観察したり、実際に手合わせを繰り返して感覚を掴む。
そしてアトミック侍は“旋風鉄斬拳”が自身の呪力を限界まで練り上げ、瞬間的に解放する事で斬撃を放つものだと理解した。
自身の呪力特性との相性の良さを確信したアトミック侍はボンブから見て学んだ体内で呪力を練り上げ瞬間的に解放する方法を繰り返し鍛錬し、自らの物とするとそれによって得られる身体能力の向上率、それから考えられる呪力による強化時間を検証し、同格ならば十分かつある程度の格上相手でも下剋上が狙える身体能力の向上率が得られるバランスを追及し、“一秒間”という時間に辿り着いた。
それからも鍛錬に鍛錬を重ね、二度目のS級特訓会ではフラッシュにリベンジを果たし、フラッシュの闘志とプライドにも火が点いた事で今や二人は互いを
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「やはりライバル関係というのは良いねえ。こんな催し物があったならもっと早く参加すれば良かった」
「オヌシもまだまだこれからじゃろう。何かをするのに遅過ぎるという事はないぞ?」
「ふふっ、違いないね」
今もなおその鍛えた実力で魔虎羅を圧倒しているアトミック侍を見て、ツクモとシルバーファングは笑みを漏らす。
『大したもんだよなあ?本当』
「…フン」
またフラッシュと中にいる存在も、多くは語らないもののしっかりとアトミック侍の戦いを捉え続けていた。
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「……………」
一方戦闘エリア。アトミック侍は残った法陣だけをジッと見つめていた。もう戦闘は終わった扱いではないのか。普通ならそう思うだろう。
ガコンッ
「!」
しかし魔虎羅は違う。残った法陣だけが急に回転すると、まるでテープを巻き戻すかのように再生し、元に戻った。
魔虎羅は一度適応した攻撃であればどれだけ粉微塵にされようと再生する。それは誇張でもなんでもない。
「━━━━━━━━━━ッ!!」
再生した魔虎羅はアトミック侍に向けて剣を振るう。適応した事によって更に速さは上がっている。
「━━━━━ッ!!」
しかしアトミック侍はそれを上回る速さで刀を振り抜く。呪力強化の恩恵を受けている一秒の間の速さはフラッシュに匹敵する程のものだ。剣速に至っては更に速い為、ここまで適応を重ねた魔虎羅でも追い付く事は容易ではない。
そしてアトミック侍の斬撃が魔虎羅を襲う―
「! マジか」
―事はなかった。正確に言えば捉えはしたのだが、斬った際の手応えが全くなく、液体を斬ったような感覚だった。魔虎羅の身体をよく見ると半透明になっており、身体を液状化させていた。
これはマズいと、アトミック侍は冷静に現状を把握する。どれだけ剣速が速かろうが攻撃力が高かろうが液体は斬れるものではない。怪人であれば破壊すれば倒せる核があるのだが、魔虎羅にはそれはない。強いて言うのであれば法陣が核に当たるかもしれないが、アトミック斬でも破壊できなかった以上それも難しいだろう。
しかも液体である為タツマキが叩き潰しても意味を成さない可能性がある。まさに八方塞がり。もはや誰にも止められないのではと思われたが―
―“最強”は一人ではない。
「虚式―茈」
ゴオン!!
「うおっ!?」
突然横から仮想の質量が魔虎羅を法陣もろとも呑み込んだ。アトミック侍は咄嗟に距離を取った事で巻き込まれずに済んだが―
「おいてめえ危ねえな!下手すりゃ巻き込まれてたぞ!?」
―それは見逃す理由にはならない。味方が近くにいるというのに奥義をぶっ放した
「いやーアトミック侍なら躱せると思ったからさー。あのまま続けても意味無かったと思うしベストタイミングでしょ?」
「だとしても合図か何か出せ!“起こり”があっても危ねえんだよ!!」
100%正論である。もし腕でも巻き込まれていれば反転術式で腕を生やす事はユウタやショウコでも不可能である為、隻腕か義腕で生活する羽目になる所であった。
「まま、ゆっくり休みなよ。強いて言うなら斬撃が効かない場合の対策があった方が良いかな」
「フン!次は負けねえ」
アトミック侍はサトルの適当さにうんざりしながら観客席に戻って行った。
「お疲れ様でした」
「おう」
そして戻った観客席ではユウタが労うように濡れタオルを渡す。アトミック侍は大きな傷は負っていない為、反転術式も軽く済んだ。
『…何も言わねえの?』
「言う必要もない」
フラッシュは中の存在からの質問にぶっきらぼうに答えていた。なお、ツクモやシルバーファングと言った面々はその様子を微笑ましげに眺めていた。
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「んじゃ、次が最後か。おじいちゃーん!!」
サトルが大声で呼ぶとシルバーファングは腰を上げる。
「やれやれ、こんな催し物の最後の戦いがこんな老いぼれで良いのかのう?」
「良いんじゃないかい?おじいちゃんのカッコいいとこ見てみたいけどね」
「ホホッ、若いお嬢にそう言われたとあれば一肌脱ぐとするかのう」
そう言ってシルバーファングは観客席から飛び立ち、サトルの隣に着地する。多少背は曲げているものの、その立ち姿には一切の衰えが感じられない。
「ふー、そいじゃいっちょやるとするかの」
「無理はしないでね。おじいちゃん」
祖父と孫のような会話をしながら、シルバーファングは構える。その構えはまるで穏やかな川のように美しく、それでいて激流のようになにもかも打ち砕けそうな力強さを感じさせた。
「んじゃ、よろしこ」
―S級4位ヒーロー“シルバーファング”
S級ヒーローの中で最高齢でありながら最強に次ぐ地位を築いているヒーローとしての牙を、今見せる。
はい、今回はここまで。次回はバングおじいちゃん回です。
・アトミック侍
私の推し。だけど雑に盛るのは面白くないよなって事でロマン砲みたいな感じに。呪力強化中ならフラッシュと同等以上の瞬発力、それを更に上回る剣速、村田版日輪抜刀時以上の攻撃力、飛空剣の射程超アップ、黒閃発動率アップと破格の性能です。インターバルの時間はマジで一瞬ですが同格以上の相手からすれば十分隙になり得るのでちゃんと足し引きの理屈は合ってます。ヨシ!
・フラッシュ
今作だとアトミック侍とライバル関係に。一回ボコして舐めてたけど二回目はボコ返されたのでライバル心MAXに。ちなみに実力としてはガチで互角、勝ったり負けたりです。
・ボンブ
文字を打ってくと予測変換で凡夫が出て来る困った人(自分の所為)。関係ないけど技の殺意高過ぎるんよなあ…弟の技の理屈はまだ分かるんだけど貴方どうやって指で斬撃飛ばしてるんです??
・魔虎羅(まこーら)
今回はスライムまこーら。液状化行けるかなと書いてる途中に思ったけど原作でも呪力を変化させてたしまあ行けるやろ!の理論で実装。そろそろ適応に差を出すのがキツくなって来た…
・シルバーファング(バングおじいちゃん)
常識人。冷静に考えて原作ランク3位なの凄過ぎない??
こんなもんかな。呪術原作が終わるまでにS級特訓会終わるのか本当に不安になって来た…
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?
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五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
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宿儺(完全体、十種、術式情報なし)