【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た 作:サクラン
それではお楽しみ下さいませ。
人間の眼が届かない地底。魑魅魍魎が跋扈する広場にて、二人の人間がそこに入り込んでいた。
「ああ、自己紹介ありがとう。だが君達の素性はある程度把握しているんだよ」
「!」
袈裟の男―スグルの自己紹介に対して単眼の怪人は疑う眼差しを向けながら話す。
「そちらの眼鏡の彼―ジーナスは“進化の家”と呼ばれる組織を立ち上げた人物。その図抜けた頭脳から人類の人工的進化に興味を持ち、動物実験を始めたとした生命の禁忌に手を染め、ヒーロー協会から指名手配される…だろう?」
単眼の怪人はジーナスの素性をスラスラと読み上げて見せた。その言葉が決して出任せでない事は、本人であるジーナスの驚いた表情が物語っていた。
「とは言え…彼だけならばまだ加入を認めても良い。その頭脳は私達も助けられる事が多そうだ。しかし―」
怪人の単眼がスグルに向けられる。
「君といるというだけで我々が信用する理由が無くなるんだよ。
「……………」
怪人の発言にスグルは特に反応を見せず、周りの怪人からは少し驚いたような声が上がる。
「去年君が起こした未曾有のテロ、“百鬼夜行”…その戦いにおいて“無限のサトル”に殺された筈の君が生きている事はもちろん、“怪異操術”を持っているだけで信用できる要素がない。レベル“鬼”以上の怪人を従えていた事から言い逃れも無駄だよ。我々としては、ここで殺す方が確実まであるのだが…」
怪人が目を細めつつ呪力を僅かに放出すると、周囲の怪人も目に見えて殺気立ち始め、レベル“竜”クラスの実力があると思われる黒い小柄の怪人や頭に王冠を被り、薄汚れたジャージを来た男も僅かに動きを見せる。スグルの近くにいた火山頭の怪人も疑いの目から一触即発の雰囲気に変わった。怪人達の動きを受け、ずっと黙っていたスグルも動きを見せる。
「―あまり近付かないでもらおう、ジーナス」
「!」
スグルが今までとは違う戦意を見せると同時にジーナスを側まで呼び寄せ、自身の周りに黒い亀裂を発生させる。すると―
「アア…久し振りの外だが、暴れんのかぁ?」
「ギググ…鉄ノ、臭イ…」
「「……………」」
―様々な怪人が姿を見せる。カブトムシのような角と甲殻を纏った巨大な怪人に、顎を忙しく開閉させ、ゴキブリを彷彿とさせる怪人、巨大な戦斧を持った怪人に、象の特徴を持った怪人がスグルとジーナスを守るようにして周囲を囲んだ。
一匹一匹がレベル“竜”クラスの呪力を持っており、これには怪人達も動きを止める。
「…まずは話を聞いてもらおう。この怪人達はあくまで自衛の為に召喚したものだ。君達が何もしなければ私も何もしない。やるというのならば、相応の被害を覚悟してもらうがね」
「…良いだろう。話してみろ」
スグルの忠告に怪人達は動きを止める。司令塔である単眼の怪人も一先ずはスグルの話を聞く姿勢を取る。
「君達の推測通り、私の術式は“怪異操術”。あらゆる怪人を取り込み、操る事ができる。例外として機械タイプ―言わば生きていないものは取り込む事はできないが、それ以外の怪人ならば、自然発生したものだろうが人間から変異したものだろうが取り込む事ができる」
「取り込む条件としては、“災害レベル換算にして二階級以上の差がある事”。レベルの高い怪人であれば相応に弱らせる必要があるが、力の弱い怪人であれば戦うまでもなく取り込める。…術式の概要としてはこんなもんかな」
スグルの術式の説明に、ほとんどの怪人が厳しい表情になる。当然だろう。例え圧倒的な実力を持ったレベル“竜”クラスの怪人であろうと、他者に弱らせられた所を奇襲されてしまってはその時点でゲームオーバーだ。
しかもスグルの実力を考慮すると“虎”までならば戦う必要もなく取り込めるという事。怪人協会に参加している大半の怪人を戦うまでもなく取り込めてしまう。
「まあ、信用できないという意見も分かる―というか、当然だよね。だからこそ、私達がいるからこそできる事を教えよう」
だが、スグルもこの程度で説得できると思う程めでたい頭はしていない。いつ堪忍袋の緒が切れるか分からない為急ぎつつ―しかし決して焦りは見せずにゆっくりと話す。
「まずジーナスは科学者であり、
「!」
スグルの発言に怪人達はざわつく。人為的に作られる怪人もサイボーグタイプの怪人を筆頭にいないわけではない。しかしレベル“竜”クラスの怪人を作るなどあり得ない話。そんな事が可能となると容易く国家転覆が可能だ。そんな中、単眼の怪人のみ興味深げに目を細めていた。
「…とは言っても、本来制御できない存在を術式の制御下に置いただけなんだがね。相応の手前こそ掛かったが、今では良い手駒だよ」
「彼と私がいれば、無限の兵力が手に入る。制御不能というだけで、レベル“竜”クラスの怪人を量産可能なんだからね。当然、私の術式で取り込んだ怪人は全て私の言いなりだ。複雑な命令であっても遂行可能だ。君としても、兵の使い潰しはしたくないだろうし…雑兵達も、下手な命令で突っ込んで死ぬのはゴメンだろう?」
これまで敵対者に対する視線を向けていた怪人の表情が、少し複雑になる。スグルの抱えている怪人がどのぐらいの量なのかは分からないが、ジーナスと組めば戦力を無限に増やせるのだ。ヒーローに対して対策を練っている単眼の怪人としても動かせる兵力が増えるというのは純粋に有り難い。
「そして…私は顔が広くてね、ヒーロー協会内に何人か内通者を潜り込ませている。ヒーローの情報はもちろん、建物内の構造、所持している呪具、呪物の数や内容もある程度掴んでいる」
スグルは懐からUSBメモリを取り出す。
「これがその成果の内の一つ、S級ヒーロー達の鍛錬会だ。全てのS級ヒーローが参加しているわけではないが、S級ヒーローの戦闘記録も共に内包している。ある程度の対策はこれを見れば練る事ができる筈だよ」
スグルはUSBメモリを手の中で弄ぶ。仲間に入れない限り情報は渡さないとでも言うつもりだろうかと単眼の怪人は警戒を強める。
「ああ、そう警戒しないでくれ。お近付きの印として鍛錬会の映像は提供しよう。空廻」
『はぁ〜い…』
スグルが声を掛けると空廻は面倒くさいという雰囲気を全く隠そうとせずにスグルの持ったUSBを掴む。スグルは蝸牛のような呪霊を呼び出した。
『んっ…』
そして空廻が少し力を入れると身体が光り、軽く電気を生み出す。蝸牛のような怪人の瞳から光が発生し、空中に映像を映し出す。
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そして流れる数々の激闘。その中でも“最強”の二人である“無限のサトル”と“戦慄のタツマキ”のぶつかり合いには難しい表情になる怪人が多かった。
「ふむ…」
単眼の怪人は驚いた様子もなくただ目を細めて何かを思案しているようだった。
「…とまぁ、私が提供できるのはこんなものかな。後は知る技術を可能な限り伝授する事を約束しよう」
スグルはそう言って話を締め括る。念の為に自分達を守る怪人達は戻さずに護衛させたままにしている。
「…何が目的だ?」
単眼の怪人はスグルに対して問い質す。
「君の有用性は分かった。しかし君が我々にここまで肩入れするのは何故なのかな?君の目的が不明瞭だ」
単眼の怪人もスグルがいる事によるメリットは絶大なものである事は理解できた。しかし本人の思想や目的が見えないのが怖い。術式も相まって単独行動の機会などを与えたくない。
「私の目的を達成する上で君達に加勢した方が都合が良いからかな。ヒーロー協会が邪魔でね。それとも、君達と仲良くしたい、世の中を目茶苦茶にしたいとか言った方が良いかな?」
「…いや、十分だ。君達を歓迎しよう。縛りとして私達は可能な限り君達を守るし危害も加えない。その代わり君達も私達に協力し、危害も加えるな。スグル君に関しては術式による取り込みを
「…良いよ。交渉成立だね」
「「……………」」
こうしてスグルとジーナスは怪人協会に所属する事に決まったが、縛りの内容に一部の怪人は怪しむように目を細めた。
「それでは早速で悪いが、ヒーロー達の対策を進めて行きたい。協力してもらうぞ。改めて、怪人協会の司令塔を行っているギョロギョロだ。よろしく頼むぞ」
「うん、よろしく。私としてもそこは早めに詰めて行きたかったんだ」
そんな怪人達を尻目に狢達は策を立てて行くのだった。
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「まず君視点から我々怪人がヒーロー達に勝つ上で必要な事を教えて欲しい。私としては、今の時点で十分勝てる戦力差ではあると考えているが…やはり可能な限りリスクを減らして確実に行きたい」
「ふむ…そうだねぇ」
スグルは顎に手を当て考える。感じられる呪力の気配からして幹部の層はかなり厚い。S級ヒーロー総出を相手にしても相性をちゃんと考えれば十分勝ち目があるだろう。
―
「…戦争の際に、二つ条件を満たせば勝てるよ。
一つは―“無限のサトル”、“戦慄のタツマキ”を戦闘不能に追い込む事。
もう一つは―“呪いの王”、両面宿儺を宿すユウジを仲間に引き込む事」
「…なるほど、その理由を教えてもらおうか」
ギョロギョロは予想よりも条件が多かったのか、少しピリついた雰囲気になる。ギョロギョロだけでなくそれは他の怪人も同じようだった。
「まず、幹部の質は悪くないと思うよ。私の術式でサポートして相性の良い相手にぶつければ十分勝ち目があると思う」
スグルの言葉に嘘はない。ここにいる怪人達は
―しかし、彼は知っている―
―あらゆる強者としての地平を超越した―
―史上最強の鬼神を―
“無限のサトル”と“戦慄のタツマキ”も、彼程ではないが限りなく彼に近い領域の強さだ。ここにいる怪人達総出で掛かっても、二人同時に相手をすればほぼ確実に全員始末されるだろうとスグルは考えていた。
「だが、“無限のサトル”と“戦慄のタツマキ”は他のS級ヒーローと同列に語らない方が良い。二人同時に相手をするとなればかなり分が悪くなるだろう」
しかしそれを馬鹿正直に伝えれば反発されるかもしれないので多少マイルドに伝える。
「私は“獄門疆”を持っている。どちらかを封印した上で、残った方に宿儺をぶつけて始末させる。他のS級ヒーローに関しては相性の良い相手をぶつけた後に数で押し切る。これが味方の被害を一番少なくする方法じゃないかな」
「! ほう、あの忌み物を持っているとは…」
スグルのプランを聞いたギョロギョロは思考を噛み砕くように目を細める。
「…うむ、プランとしては悪くない。“相性の良い幹部をS級ヒーローにぶつける”というのは私も考えていた所だ。“無限のサトル”と“戦慄のタツマキ”が最大の障害になるというのもね。ただ―」
ギョロギョロはそこで言葉を区切る。スグルは全員で掛かっても分が悪いという点に突っかかって来るのかと思ったが、返ってきた答えは予想外のものだった。
「―宿儺を仲間に引き込むのは不要だな。器を仲間に引き込むのにも手間がかかる」
「! へぇ…?」
それは戦力として宿儺は必要ないという回答。スグルとしては予想外にも程があった。
巨大な個の力を止められるのは同じ巨大な個の力だけだ。数をいくら集めた所で余計な犠牲を増やすだけだというのをスグルはよく理解している。しかしギョロギョロがそれを理解してないというのも考え辛い。
「何か考えがあるという事かな?」
「何、考えや策などと遠回りなものでないさ。ただ―我々にはオロチ様がいる」
「……………」
「!」
ギョロギョロの視線は背後に向けられる。そこには巨大な怪人が鎮座していた。スグルも広場に近付いていた時から警戒していた大きな気配の正体。
「オロチ様は間違いなく史上最強の怪人。“怪人王”に相応しいお方だ。我々は宿儺の指を三本保有していたが…指から想定できる宿儺の実力を考慮してもオロチ様は
ギョロギョロは心酔しているとも思える様子で捲し立てるが、スグルも全てが間違っているわけではない事を理解した。
(確かに、呪力の総量や出力は宿儺に並び得る―いや、僅かではあるが越えているか?先程の発言とこの妙な気配を考えるにまさか…)
「…宿儺の指も手に入れていたのか。にしても、アレから感じられる気配からして…」
「ああ、その三本の指は全てオロチ様に献上した。復活するかも分からない宿儺の為に残しておくよりは余程良い利用方法だろう?」
「違いないね」
スグルは変わらず飄々とした様子で相槌を打つ。ギョロギョロは一瞬訝しげに目を細めるが、すぐに気を取り直して元の表情に戻る。
「さて、今日の所はこのくらいで良いだろう。細かい点は後日詰めて行く。スグル君、しばらくこの鍛錬会の映像は流し続けてもらっても良いかな?相性で有利を取れるヒーローを各々把握させておきたい。ジーナス君に関しては研究室となる部屋を案内しよう。着いて来てもらうよ」
「「分かった」」
そして今日はここで解散という流れになり、ジーナスはギョロギョロに研究室兼自室となる部屋に案内された。スグルには別の部屋が用意されていたそうだが、スグルはジーナスとの相部屋で良いと言った事により共に同行する事になった。
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「…とまあ、部屋の設備としてはこんなものだ。何か必要なものがあれば悪いが自分で用意してくれ。ヒーロー共に我々の存在を気取られるわけには行かないからな」
「ああ、構わない。必要となればスグルの怪人を遣わせる」
「人使いが荒いなぁ」
一通り部屋の案内が終わり、ギョロギョロと二人はここで分かれる事となった。
「それでは今日はここで。明日からはしっかり協力してもらうぞ」
「こちらからわざわざ売り込んだんだ。働かないなんて事はしないよ」
「それなら結構。それでは、良い夜を」
そう言ってギョロギョロは自らの身体を浮かせると、部屋から出て行った。スグルは扉が閉まるまでひらひらと手を振っていたが、ギョロギョロの無機質な瞳が二人から逸れる事は扉が閉まるまでなかった。
「…どうにか認められたな」
「協力できるだけで信用は全くされてないみたいだけどね。見た限り監視の目はないように見えるが、どうせこの会話も聞かれているだろう」
ジーナスは緊張の糸が切れたかのようにため息を吐き、スグルは現状を冷静に整理する。
「それにしても、阿修羅カブトはともかく他の手札を明かす予定はなかっただろう」
「見縊っていたわけではないが、怪人側の戦力がここまで厚いとは思わなかった。下手に小出しにしていれば間違いなく私は殺されていただろうからね」
「…やはり、理由はアレか?」
ジーナスが冷や汗を浮かべつつ言及したのはオロチの事だ。阿修羅カブトが生物の進化の最終形態だと思っていた彼にとってはオロチの存在は規格外にも程がある。
「幹部も手強そうな奴が揃ってたけど、一番の理由はアレだね。いやはや、人工的な進化であの領域まで行き着くのは心底恐ろしいよ」
スグルはわざとらしい仕草で首を振る。この胡散臭い男と共に過ごしていたジーナスでも、何が本心なのかを見抜くのは難しい。
「アレは本当に、全盛期の宿儺すら凌駕しているのか?」
「大きな差はないけど、単純なカタログスペックなら越えているね。指を取り込んでる事もあるけど」
「どうするんだ。いざという時に全てをひっくり返す為の手札として宿儺は必要なのだろう?」
ジーナスは少し不安げな表情でスグルに問い掛ける。彼自身が宿儺に興味がある事も関係しているが、当初の計画では“無限のサトル”、“戦慄のタツマキ”への対策として宿儺を餌に怪人側の主導権を握り、いざという時の備えも兼ねて宿儺の復活を目指す方針だった。
が、怪人協会の戦力が予想よりも分厚かった上にオロチと言う宿儺の代わりになり得るジョーカーがいた事によって主導権を握るどころか使い走りのような立場になってしまった。正面からの激突で勝てない以上、怪人側は少しでも怪しいと感じたならいつでも自分達を切り捨てられる。
「うむ、私の見立てが甘かったね。まあそれならそれで立ち回りを変えるまでだ。仲間入りできた以上最低限の目的は果たせた。ここから頑張って行こうじゃないか」
かなり危うい綱渡りのような状況だと言うのに、スグルは一切焦らず、むしろ楽しげな表情で笑う。
「やれやれ、私は組む相手を間違えたか?」
「嫌だなぁ、そんな悲しい事言わないでくれよ。退屈はさせないよ。そうだ、折角なら一緒に寝るかい?」
「…貴様、たまに自分の性別が分からなくなってないか?」
「今更些細な事だよ。何度も経験して来たしね」
「生々しいのは止めてくれ…」
スグルは本当に気にしてない様子で言い切り、ジーナスは呆れたように呟いた。
異形の怪人達と暗躍せし狢達は、仄暗い地の底で蠢いていた。
はい、今回はここまで。次回から新章に入っていく事になるかなぁ。
・スグル(?)とジーナス
最強の二人()。阿修羅カブトは最初接触した時に取り込みました。オロチは正直予想外で全力でオリチャー発動させた。死ぬ気の交渉でなんとか加入。
・ギョロギョロ
スグルは信用してない。自分がタツマキの相手しようとしないのはサトルとの戦い見て「あっ、無理やこれ」ってなったからです。本体は元気にしてるんじゃないすかね()。
・自然呪霊ズ
今回ほぼ空気になっちゃった…。ただ次の章から真人を筆頭にちゃんと書いていきたいですね。
・オロチ
ボロスのインパクトが強過ぎて忘れられてた可哀想な人。宿儺の指を取り込んで更に強大化。ちなみにスグルの言う通り、スペックだけならマジで全盛期宿儺越えてます。
こんなもんかな。自然呪霊ズや幹部達は後々書いていきたいですね。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?
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五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
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宿儺(完全体、十種、術式情報なし)