【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た 作:サクラン
それではお楽しみ下さい。
第二十七話 幼魚と逆罰―壱―
「フー…」
「………」
静まり返った道場。そこでは一人の少年と老人が構えて向かい合っていた。互いの呼吸音だけが響き渡る中、最初に仕掛けたのは―
「シッ!!」
―少年の拳だった。ほとんど前動作がなく放たれた右拳は真っ直ぐに老人に向かって行く。呪力が十分に籠められた拳を老人が食らえば間違いなくひとたまりもないが―
ヒュオッ
―老人は向かって来る拳に合わせるようにして掌を添えると、僅かに逸らす。そうすると少年の拳は老人の顔面の真横を通って行った。
「! ラァッ!!」
少年は逸らされた拳をパワーで強引に勢いを殺すと、足を開いて構えを変えて拳をそのまま老人に向けて横薙ぎに振るった。
「━━━━━」
寸での所で放たれた手刀を老人は難なく屈んで躱すと、そのまま少年に向けて拳を放つ。
「━━━━━ッ!!」
しかし少年は回避の動きも防御の構えも見せず、空いていた左の拳を老人に向けて放つ。そして拳同士が激突すると思われたが―
「ッ!!」
ヒュオッ!
「!」
―少年の拳が僅かに直線上から外れ、老人の拳よりも内側に潜り込ませると、老人の拳に沿わせるようにして拳を放つ。外側から回り込ませるようにして拳を放った事で老人の拳は少年の顔面の真横を通り過ぎて行った。
そして少年の拳は老人の顔面まで迫っている。“入る”。少年はそう確信した。
「━━━━━ッ!!」
「グッ!?」
しかし老人が逸らされた拳をそのまま振り下ろし、少年の腕を殴り付けた。腕が強引に降ろされると同時に拳も当然動きを止める。
「━━━━━」
ドゴッ!!
「グハッ!?」
そして少年の懐に潜り込んだ老人が掌打を放つと、少年は肺の空気を吐き出しながら道場の床を転がった。
「ほい、またワシの勝ちじゃの」
「ちっくしょー!!」
そして老人はニカリと笑いながら勝ち誇り、少年は地面をのた打ち回りながら悔しがった。
「マジかぁ、あれも対処されるかぁ…」
「練度は様になっとるし、あの動きもオヌシと同じレベルの相手ならまず不可能じゃよ。後は呪力操作と地力じゃな」
(相変わらず凄え…)
先程までのピリついた雰囲気からは打って変わり、まるで仲の良い祖父と孫のような空気感で話すのはS級4位ヒーロー“シルバーファング”とC級268位ヒーロー“ユウジ”。
S級特訓会の後にユウジが門下生として入門する事を頼み込み、シルバーファングがそれにあっさり許可を出した事で無事弟子入りを果たしたわけである。
「分かってはいたけど、S級は遠いなぁ…」
「オヌシなら必ず来れるじゃろ。宿儺の器である以前にオヌシ自身の素質が高いからのう」
「どうすりゃ良いのかな〜?」とぼやいて呪力操作の練習をするユウジを尻目に、シルバーファングはその成長性に内心驚いていた。
サトルから呪力の基礎操作自体は十分可能としているとは聞いていたが、特訓会よりも更に操作術が向上している。頂点の戦いに参加する上での結界術への適正があるかは未知数だが、反転術式ならば鍛錬を重ねれば十分習得の目処がある。
そして何より、ユウジの中でも最も輝く才覚、武術への適正。入門した際に何か武術、あるいは格闘技を修めていたのか聞いたのだが、本人は「爺ちゃんから空手をちょっと。後は喧嘩ぐらいかなぁ」と言ったのを聞いてシルバーファングは驚いた。彼と手合わせしていると、様々な武術の動き、技を使って来る事が何度かあった。しかも闇雲に使っているわけではなく、それぞれ最大限の効果を発揮するタイミングで使っていた。
彼から武術に対する高い適正を瞬時に感じ取ったシルバーファングは“流水岩砕拳”も一つ一つの技を教えるわけではなく、いくつかの動きのパターンを教えるだけに留め、後はとにかく実戦形式の手合わせを繰り返した。
ユウジの場合、下手に“流水岩砕拳”を極めさせるよりも基礎だけを教えて実戦を経験させる事の方が効率が良い。恐らくその方が自然と自分の動きの中に取り入れる事ができる。事実これまでの戦いの中からユウジは様々な学びを得て成長している。
(…まるで
シルバーファングは一人の弟子を思い出す。その弟子は愛想は良くなかったが、修練には真面目に取り組み、何より武術の才に溢れた弟子だった。
しかしある時―シルバーファングが不在であった時―に突然実力派の弟子達をまとめて再起不能にしてしまい、他の弟子達も恐れて辞めてしまった。ケジメとして戻ったシルバーファングが叩きのめしたが、何処かに逃げ出し、今や消息不明だ。残ったのはその日サボっていなかったもう一人の弟子のみ。ユウジの人の良さから無いと思いたいが―今度こそ正しく育て上げると、シルバーファングは内心で決意を固めていた。
「お前本当どうなってんだよ…俺あんな動きできねえぞ」
「タイミングだよタイミング。まあ正直チャランコはまず身体作りからじゃねえかなぁ…」
「申し訳なさげに言うなぁ!!なんか自分が惨めになるから!!」
なお、当のユウジはもう一人の弟子、チャランコと騒いでいた。チャランコはお世辞にも強いとは言えないが、バングにとっては残ってくれた最後の弟子だ。愛着も湧いているし、ユウジが入門してからは少しでも先輩やとして良い顔を見せようと以前より鍛錬にも積極的に参加するようになったのでバングとしてはユウジが来てから良い事しかない。
「…さて、大分動いたし休憩にするかの。今はちと暑いしいっちょかき氷でも作るか」
「やったー!かき氷マシーンとかあるの?」
「確か倉庫の奥にしまい込んでる筈だ。引っ張り出さなきゃいけない」
「よし!じゃあ俺引っ張り出して来るからちょっと待ってて!」
そして数分後、倉庫に取りに行ったユウジが戻って来るまでにバングとチャランコはかき氷の準備を完了させていた。
「へー、シロップとかもあったんだ」
「ワシにとっちゃここが家じゃからな。必要なもんは一通り揃えてあるぜ」
そして三人仲良く座り込み、氷を削って作り始めた。
「バング爺ちゃんシロップ何にする?」
「んー…取り敢えず抹茶で頼む」
「ほーい、チャランコは?」
「俺はブルーハワイで頼む」
「(なんか意外だ…)じゃあサトル先生は?」
「僕は王道のイチゴ!練乳マシマシで!!」
「小学生みたいなチョイスじゃん!似合わなっ!」
「分かってないなー。この濃いシロップのお祭り感が良いんじゃーん」
「まぁ分からなくはないけど…って先生!?」
あまりに自然と溶け込んでいたサトルにユウジは全く違和感がなく、しばらくしてからようやくおかしい事に気付いた。
「どうした。何かあったのか?」
「ユウジに任務が降りて来てねー。甘そうなシロップの香りもあって馳せ参じたってわけだ。んー♪やっぱこの甘さだよねー♪」
もはやシロップより練乳の方が多いのではないかという程に練乳がかけられたかき氷を心底幸せそうにサトルは噛み締めていた。
「任務?」
「そ、怪人討伐ってわけじゃないんだけど捜索任務が任されてね、下に迎えが来てるから食べ終わったら下りてね。詳しい事は迎えの人から聞けるから」
「ふーん、了解」
ユウジは少し食べる速度を上げてかき氷をペロリと平らげる。若干頭を痛そうにしながらも、ユウジは準備を整えた。
「んじゃバング爺ちゃん、チャランコ、先生、行って来る!」
「ん、気を付けてな」
「頑張れよー」
「お土産待ってるねー」
三者それぞれの反応を受けながらユウジは途轍もない長さの階段を降りて行った。
「…んで、誰が同行するんじゃ」
ユウジの姿が見えなくなると、バングは真剣な表情でサトルに問い掛ける。
「大丈夫だよー。僕も信用できる二人に任せたから」
「なら良いが…」
バングは一先ず表情を和らげるが、それでも不安は抜けきっていない。ユウジは宿儺の器故に大半の上層部から良く思われていない。宿儺の指を見つけやすくする為に任務の危険度も並のヒーローより高い。任務に乗じて始末しようと考えてもおかしくない。
「不安なのは分かるけどさ、立場はどうであれヒーローを続ける以上ユウジも向き合わなきゃいけない事だよ。行き着く答えだけは、僕達が決めちゃいけないからね」
「そこは分かっておる。…オヌシも何かあれば言うのじゃぞ。“最強のヒーロー”である以前に、ワシにとっては可愛い弟子なんじゃ」
「…ハハッ、おじいちゃんには敵わないね」
二人は穏やかに笑うと、かき氷を食べながら雑談に興じるのだった。
(S級4位と3位の圧力やべぇー…)
なお、トップヒーローに挟まれたチャランコはその絵面に冷や汗をかくのだった。
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「迎えが来てるって言ってたけど…お!あれか!」
ユウジが長い階段を下り切ると、そこには黒い車が一つ止まっており、スーツを着た男が二人と、コートを羽織った男が一人煙草を吹かしながら待っていた。
「こんちゃーす、あのーヒーロー協会の…」
「ユウジ君ですね。はい、こちらで合ってますよ」
ユウジが少し緊張した様子で確認すると、眼鏡を掛けたスーツの男が丁寧に対応した。
そしてその後ろに立つ二人の男、その内のコートを羽織った男の方はユウジも知っているヒーローだった。
「あ、アンタは!」
「よっ、特訓会振りか?まあ話しはしなかったからほぼ初対面みたいなもんか」
青白い肌にニヒルな笑顔、その男はS級9位ヒーロー、ゾンビマンだった。
「改めて、ゾンビマンだ。今回の任務を一緒に任された。よろしくな」
「うす!改めてユウジっす!よろしくおなしゃす!」
ゾンビマンから差し出された手をユウジは握り、握手を交わす。サトルとはまた違った“ちゃんとした大人”の雰囲気に、ユウジはカッコ良さを感じていた。
「そして今回はもう一人、A級ヒーローからも一人同行する奴がいる」
ゾンビマンは自分の側にいるサングラスをかけたスーツの男を指指す。指指された男はサングラスをかけ直し、ネクタイを整えてユウジに向き合う。
「A級ヒーロー、穿点のナナミと言います。ユウジ君ですね、はじめまして。以後お見知り置きを」
丁寧な挨拶に若干面食らいながらユウジも挨拶を返す。
「ユウジっす。よろしくおなしゃす」
ユウジが挨拶を返したのを見届けると、ゾンビマンは煙草を手の甲で消火し、三人に指示を出す。
「よし、顔合わせは済ませたし、細かい事は車で説明する。取り敢えず乗ってくれ。イジチ、頼んだ」
「分かりました」
そして四人は車に乗り込むと、何処かに向けて移動する。
「で、今回の任務って何なの?」
「Z市内の調査だとよ。Z市は全ての町の中でもトップクラスに怪人の発生率が高い。あまりの怪人の多さから立入禁止のゴーストタウンまでできたぐらいだからな」
「ここ最近、Z市内での行方不明者が多いそうです。残穢―怪人の痕跡もいくつか確認できたそうなのでここで一度調査をするのだとか」
「なるほど…」
調査の概要はユウジも理解できたが、まだ納得できない事が残っていた。
「でもさ、それってA級ヒーローとS級ヒーローそれぞれ一人ずつも必要?」
任務の内容に対して動員したヒーローの質が高過ぎるように思える。強い怪人と直接相対するわけでもないのに何故ここまで強いヒーローを動員する必要があるのか。ナナミもランクを見てみるとA級の中でも最上位に位置する。恐らく相当優秀なヒーローなのにも関わらず何故こんな調査に当てるのかユウジには分からなかった。
「“調査”とは言いますが、その結果怪人が確認されたのならその駆除も任務に含まれています。そして今回の怪人は少なくとも身を隠すだけの知性がある―ものによっては災害レベルが“鬼”を越える相手が姿を現す可能性もあります」
「質が悪いのは弱い怪人でも姿を隠す事があるって事だな。今回の相手は実質災害レベル不明ってわけだ」
「それでも戦力を渋って無駄な犠牲を出すわけには行きませんからね。『なんて事はない相手だと思っていたら敵わない相手が出て来た』なんて笑い話にもなりませんから」
「怪人にも色んなタイプがいるんすね」
「まあ、俺なら最悪敵わなくても生きて帰る事はできるし、考えられてはいるな」
二人は敢えて話さなかったが、ゾンビマンには宿儺が暴走した際のストッパー役も兼ねている。本人の戦闘力では抑える事は無理だが、ユウジが任務に出向く際は“必ず一人はS級ヒーローを同行させる事”が義務付けられている為、今回の任務の適正も相まって白羽の矢が立ったと言える。
なお、この事はユウジに伝えない事を二人は決めていた。伝えて気を使わせるのも無駄だし、自分で気付くのなら折り合いをつけるだろう。
「今回の調査って怪人の痕跡を追ってくんすか?」
「それもしていくが数日前に怪人が起こしたと思われる事件に関わった人物がいるからそっちも追う」
「これがその事件の資料だ」と、ゾンビマンから手渡された資料に目を通す。
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記録―Z市キネマシネマ
上映終了後
男子高校生3名の変死体を従業員が発見。
死因 頭部変形による脳圧上昇 呼吸麻痺
「あの、映画館の…アナタがやったんですか」
薄暗い路地裏、そこでは二人の青年が出会っていた。声を掛けた青年は髪の毛で片目を隠し、気弱そうに話し掛けた。
「へぇ…君、俺に興味ある?」
そして話し掛けられた青年は全身にツギハギが目立ち、何より―人の気配を発していなかった。
こうして、人と異形は交わる。
はい、今回はここまで。ちょっと短めになっちゃった…
・ユウジ(虎杖悠仁)
バングに弟子入り。流水岩砕拳を会得した事で原作より確実に強くなります。すっくんはどう思われますか?>すっくん「ツマンネ」
・バング(シルバーファング)
有望な弟子が増えて内心ウキウキ。一番弟子とどんな末路を辿るのかはまだ分かりません。
・チャランコ
やる気はあるけど原作とあまり変わってません。無慈悲!ただ善人ではあるのでユウジとは仲が良いようです。
・サトル(五条悟)
なんか生えてきました。原作でもなんとかして新しく生えたりしませんかね?
・ゾンビマン
保護者枠として同伴。ナナミンと並んで立ってたら絶対カッコイイ。
・ナナミン(七海建人)
原作通り参戦。原作の癖のある一級見てるとホントナナミンって貴重な人材だったんだなって。
・ジュンペイ(吉野順平)
原作通りアカン奴と遭遇。生き残れるかなー?
・真人
こっちも原作通り。怪人協会にいた筈なのになんで?って思うかもしれませんがちゃんと理由があります。詳しくは次回。
こんなもんかな。ここからは呪術の世界観が強くなってくるかなぁ。
評価、感想よろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?
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五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
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宿儺(完全体、十種、術式情報なし)