【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た 作:サクラン
皆様も体調管理にはお気を付けて。
それではお楽しみ下さい。
もし目の前に押したら自分の嫌いな人が死ぬボタンがあったら、貴方は押すだろうか。
(そんなボタンがあっても、きっと僕は押せない。でも
少年―ジュンペイは高校生だが、平日の昼間から映画館に足を運んでいた。学校に行ってない彼にとって映画は唯一と言って良い没頭できる趣味であり、心が安らぐ時だった。
(なのに…)
しかし、劇場には先客がいた。それだけならば良い。昔の映画の再上映とは言え、自分のようなマニアが足を運んで来る可能性もゼロではないのだ。
問題は―
「━━━━━!」
「━━━━━!」
(よりによって…)
―その者達も高校生だったのだが、その姿には見覚えがあった。それは自身と同じ学校の不良達。あまり良い思い出のない人物達だった。
ジュンペイは学校で彼らに虐められていた。その理由も理不尽なものであり、『映画研究会』として細々と活動していた所を不良達に目を付けられ、追い出されそうになった事で少し反発したら怒りを買ったのか、目を付けられて虐められるようになった。
その内容も酷いもので憂晴らしの暴力はもちろん、生きた昆虫の踊り食い、根性焼き、暴力を振るう理由も憂晴らしからありもしない罪の濡れ衣と、段々と頻度も上がっていった。当然そんな行為を繰り返して学校に行けるわけもなく、不登校になった。
(全然内容入ってこない…)
そしてそんな不良少年達が行儀良く映画を鑑賞するわけもない。というか映画を見る為に来たのではなく、学校をサボる上での時間潰しと、僅かに残った外見を気にして人目につかない場所が欲しかっただけだろう。その証拠に、今も話しながらスマホを弄っていた。
(喋るな!電源も切れ!本当鬱陶しい…)
ジュンペイは髪に隠れていない片目も瞑りながら、座席の手すりを指で叩く。ジュンペイ本人としては映画に集中したいのだが、彼らが好き勝手している所為で全く集中できない。注意しようにも、彼らに間違いなくいちゃもんを付けられる上、また虐められる可能性を高い。聞いたとしても、それで直すような人間ならまずこの場所にいない。
「…君達」
「! ああ?」
「んだテメェ?」
そんな時、彼らの一つ後ろの列の座席に座っていた青白い肌の青年が立ち上がる。彼も鬱陶しく感じていたのか、注意するつもりのようだ。
しかし彼らが大人しくしている筈もなく、メンチを切って威圧する。もし一般人であれば気後れし、彼らと同じような人種であれば同じように威圧する場面だが―青年は怯える事も、威圧し返す事もなく、まるで友人と接するように肩を組むと―
「―マナーは守ろうね」
「ア゙ぁ゙っ?」
「え゙え゙っ?」
―頭部を形容し難い形に変形させ、変形した彼らをゴミのように捨ててしまうと、フラフラと歩きながら劇場の外へ出て行った。
「…今のって…」
あまりに現実離れした出来事に、ジュンペイは半ば呆然としながら不良達―の死体に近付く。三人を頭部は元の質量からはあり得ない程に引き伸ばされていたり、凹んだりしていた。
明らかに普通の人間にはできない所業。恐る恐る触ってみると、三人共脈は止まっていた。
「あの人…凄く普通の人っぽかったけど…」
ジュンペイは先程出て行った人物の姿を思い出す。スクリーンからの光のみが光源であり、青年はジュンペイよりも前の列の座席に座っていた為逆光になっており、顔はもちろん細かい服装すらも分からなかったが、この異常現象から考えられる事は―
「怪…人…」
―そう、怪人しか考えつかない。
ジュンペイもTVなどで毎日のように目にしている、人知を越えた力で人類に牙を剥く者達。同じような力を操る者としてはヒーローも当て嵌まるが、人を守る事が役割であるヒーローがこんな事をするのはあり得ない。よって可能性は怪人のみに絞られる。
「ヒーローに通報…するべき?」
ジュンペイはヒーローに通報するべきか迷う。もしアレが本当に怪人だったならかなり危機一髪な状況だった。自分に気付いていたのかは分からないが、もし自分も目を付けられていたらここにある死体に混じっていてもおかしくないのだ。怪人が相手なら助けなかった事を咎められる事もないだろう。
「でも…」
しかしジュンペイは携帯を取り出す事はせず、死体に改めて目を向ける。
そして考える。「こんな奴らを丁寧に弔う必要があるのか?」と。
彼らは決して善人とは呼べない人間だ。学校でも不良として煙たがられていたし、決定的な犯罪こそ犯していないが、学校にバレないよう行っていた行為を全て白日の元に晒せば退学にするには十分だろう。
そして自分は―
「…行かなきゃ」
ジュンペイは呟くと、直感を頼りに青年の後を追って行った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「映画館の…アナタがやったんですか」
「へぇ…君、俺に興味ある?」
そして感覚を頼りに青年の後を追うと、偶然にも出会う事ができた。改めてハッキリと分かる所で青年の姿を見ると、姿形こそ人間と同じだが、ツギハギだらけの身体と放つ雰囲気は人ならざる者である事が分かる。
そして問い詰められた青年―否、怪人は焦る事も悪びれたような様子もなく、薄笑いを浮かべながら言葉を返す。
「まあ、やったのは俺だけど…だったらどうする?責める?それともヒーローに通報する?」
「彼らは君にとって、特別だった?」
怪人に言われ、改めてジュンペイは自身が彼らにされた事を思い出す。
『大丈夫大丈夫ww』
『食える食えるww』
ずっと人とも思われていないような扱いを受けて来た。そんな扱いを受ける自分を、誰も助けてくれなかった。見ようともしなかった。
そもそも、あんな奴らに情を持つ必要はない。他人にあんな所業をしたのだ。あの死に様も当然と言える。そうに決まっている。
そして―ジュンペイを虐めていたのは彼らだけではない。
「…僕にも同じ事が、できますか?」
「! …良いよ、着いておいで」
ジュンペイの絞り出したような言葉を受けて、怪人は少し驚いたような表情になった後、怪しげな微笑みを浮かべてジュンペイを案内した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「見えるか?これが呪力の残穢だ」
「いや全っ然見えないっす」
Z市、ゴーストタウン入口前。三人のヒーローが立ち入る事を禁ずる鉄柵の前で荒廃した町を眺めていた。一人の少年がうんうんと唸りながら目を細めている。
「それは見ようとしていないからです。怪人は当たり前のように認識していますが、残穢は怪人本体と比べて“薄い”。目を凝らしてよく見て下さい」
「ん〜…?」
そしてユウジは言われた通り目を凝らして見てみると、薄っすらとモヤのようなものが足跡のように残っているのが確認できた。
「おっ、見えた見えた!」
「当然です。見る前に気配で悟って一人前ですから」
ユウジが見えて無邪気に喜んでいると、ナナミは特に褒める事なく冷静に諌める。その淡白な反応にはユウジも思わずズッコける。
「ぐっ…もっとこう、褒めて伸ばすとかさぁ…」
「褒めも貶しもしませんよ。事実に即し、己を律する。それが私です。社会も同様であると勘違いしていた時期もありましたが…その話は良いでしょう」
「無駄話をしてられる時間は流石にないからな。そろそろ行くか」
ゾンビマンが持って来ていた剣で錠前を破壊する。
「うし!気張って行こーぜ!!」
「いえ、そこそこで済むならそこそこで」
「………(なーんか噛み合わねえなぁ…)」
「…ま、油断せずに行くか」
ユウジは気合いを入れるように拳を鳴らすが、ナナミは冷めた態度で進む。ゾンビマンがフォローするように声を掛けながら、三人はゴーストタウンに足を踏み入れた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「さっき言ってた事件ってさ、監視カメラとかには何も映ってなかったの?」
「そうだな。被害者以外には、
「ん…?待って。じゃあ犯人って怪人じゃなくない?」
ユウジはふと疑問に思った。TVなどで毎日のように怪人に関するニュースを目にしている。つまり怪人はそういった電子機器類にも映る。だが監視カメラに映らなかったという事は、犯人は怪人でないのではないか。そう思ったのだ。
「確かに、その少年がやった可能性もなくはないが、そっちの身元特定は警察に任せてある。それと、怪人がやった可能性も結構高い」
「え!?なんで!?映んなかったんでしょ!?」
ユウジは心底驚いた様子で叫ぶ。それを見兼ねたナナミがサングラスを掛け直しながら説明する。
「サトルさんから説明を受けてないと仮定して話しますが…一口に“怪人”と言っても様々な種類が存在します。全て挙げて説明するのは手間が掛かるので、掻い摘んで話しますね」
「まずは人間や普通の生物が変異したタイプ。これは元は普通に存在する生き物が環境やフラストレーションから突然変異したものです。あるいは科学の力によって生み出された生命体もここに当てはまりますね。例としては…少し前にD市に現れた巨人がそうですね」
ユウジは耳を傾ける中、ゾンビマンは少しだけ表情を険しくした。
「そして次に人類とは別の知性生命体タイプ。これはユウジ君も覚えがあるでしょう」
「え?」
ユウジは一瞬何を言っているのか分からなかったが、今まで戦って来た相手を思い出していくと、すぐに心当たりのある相手がいた。
「あ!魚のやつか!」
「そう、J市に現れた深海族と名乗った怪人も、あれは最初から知性を持った生物であって我々人類の天敵です」
ユウジは以前戦った深海王を思い出す。確かに彼らは人類に害意を持っていたが、別に元が人間というわけではなかった。
(確かに魚の究極進化ってわけでもないだろうしな…)
「そして最後が―人の負の感情を元に発生するタイプ」
「あー…そういやなんかメグミがそんな奴もいるって言ってたような…」
ナナミの発言したタイプに、ユウジはそう言えば初めてメグミと会った際にそういう怪人もいる事を説明していた事を思い出した。
「このタイプの怪人を協会は“呪霊”と呼んで区別しています。このタイプの怪人は発生経緯が他とは一線を画しているからか、電子機器に映りません。幸いなのは他より特別強い怪人というわけではない事ですね」
「あ、なるほど。そういう怪人がいるから…」
「そう、映像に映ってなかったとしても怪人の仕業である可能性に高いし、調査が必要ってわけだな」
ゾンビマンが話を締め括ると、三人は残穢を追いながら調査に戻る。怪人が屯していないか、廃墟の中までしっかりと確認する。
「想像以上にいないね、怪人」
「残穢も散発的なのが不気味ですね。野良が一時的にいただけならそれまでですが…どうにもきな臭い」
「この前の深海族みたく、組織を組んで統率されているのかもしれんな。問題はこれだけ探しても見つからない上に、俺達相手にチャンスと見て襲って来ない辺り相当警戒心の強い敵だって事だが…」
おおよそゴーストタウン内の調査を終わらせたが、見つかったのは残穢ばかりで肝心の怪人は全く見つからなかった。ここ最近はピーク時より怪人の発生率は落ちているらしいが、これは明らかにおかしい。
「地下はどうする?一応入れそうな穴がいくつかあったけど…」
ユウジが近くの穴を指さすが、ゾンビマンが首を横に振る。
「止めとけ。もし怪人の集まりがマジにあったとして、俺達だけで対処できる数なら良いが、無理だったらヤバい。もっと頭数揃えて調査する必要がある」
「それもそうか、了解」
そして三人は調査を終了させ、廃墟の外に出る。
「さて、出ようかー」
外に出て少し歩いていると、ゾンビマンとナナミが立ち止まる。
「あれ?どしたの?」
「…報告書に書く数が増えそうだな」
「車に到着する前で良かったですね。問題は相手が面倒かどうかですが」
軽く言葉を交わすと、二人は自身の得物を構える。そこまでして何が起こるか分からない程、ユウジは頭の回転は鈍くない。
「ユウジ君、数は分かりますか?」
「強そうなのが一体…」
「と、それより弱い奴が複数だな」
「え?マジ?」
テンポ良く会話を交わしていると、呪力の気配が濃くなると同時にひたひたと足音が聞こえて来た。そして―
「おべっおべんとぅー」
「いぃっいいー、せんざい」
―ビルの陰から複数の異形―怪人が姿を現す。
「出たな!」
「いや…」
ユウジが拳を構えるが、ゾンビマンは腑に落ちない態度で目を細める。すると―
「ったく、折角“噂”の場所に来たってのにそれらしい気配がないなぁ?」
―全身影のように真っ黒で頭からは昆布を髪の毛のように生やした怪人が反対側からヒーロー達を挟むようにして現れた。
「無駄足かよ…憂晴らしに街の中央で暴れてやるか」
そして恐ろしい宣言を口にする。どうやら在来種の怪人ではないようだが、これは見逃せない。
「ヤバい!アイツ街で暴れる気だ!」
「問題ねえ、俺が相手をする。二人は後ろ二体を頼む」
ユウジが焦るが、ゾンビマンは斧を担いで相手をすべく前に出る。
「ゾンビマンさん!」
「ユウジ君、彼はS級ヒーローです。例えあの怪人がレベル“虎”を越えていても、簡単に負ける事はないでしょう。それに―私達の相手も、逃がすわけには行きません」
「…っ、頑張って!」
ユウジはせめてもの激励を送り、自身の相手へ集中する。ゾンビマンも言葉で答える事はなかったが、その言葉はしっかりと受け取った。
「ユウジは左の個体を、勝てないと判断したら呼んで下さい」
「ちょっと俺の事ナメすぎじゃない?」
ナナミの発言にユウジは少し過保護過ぎないかと呆れる。こちらの怪人から感じられる呪力の圧はどれだけ高く見積もってもレベル“狼”の範囲を出るものとは思えない。
「ナメるナメないの問題ではありません。貴方は子どもで私は大人、私には貴方を自分より優先して守る義務がある」
「
どこまでも過保護なナナミに、ユウジは本気で呆れる。ユウジとしては自分ももうヒーローとしての自覚は持っている。自分の事は自分でなんとかするつもりだ。
「君は確かに死線を越えて来た。けどそれは大人に―ましてやヒーローになったわけじゃない」
しかしナナミも伊達や酔狂、ましてや馬鹿にする為だけにユウジを子ども扱いしたわけではない。
何せ彼は―ユウジをヒーローとして認めたわけではないのだから。
「お気に入りの惣菜パンがコンビニから姿を消したり、枕元の抜け毛が増えていたり。そういう小さな“絶望”の積み重ねが―人を大人にするのです」
ナナミはスーツのボタンを外しつつ鉈を構えて戦闘態勢を取る。
「私の術式はどんな相手にも強制的に弱点を作り出す事ができます。7∶3、対象の長さを線分した時、この比率の“点”に攻撃を当てる事ができればクリティカルヒットとなります」
「成功すれば私より格上の者にもそれなりにダメージを与える事ができますし、呪力の弱い者であればこのナマクラでも両断できます」
「聞いていますか、ユウジ君」
「あ゙!俺に言ってたの!?」
「なんか喋り始めたな」と他人事で話を聞いていたユウジにとってはまさに寝耳に水であり、怪人の動きに目配せしつつもナナミの話にも耳を傾ける。
「そういうのってバラして良いもんなの?」
「バレても問題のない術式、問題のない相手、あるいは敢えてバラす事でミスリードを誘うのも良いでしょう」
「メリットはあります。手の内を曝すという“縛り”が、術式効果を底上げするのです。こんな風に」
ナナミが腰を落として呪力を滾らせる。その練度は今のユウジとら比べ物にならない程洗練されたものであり、解放前の呪力からでも彼の実力がよく分かる。そして―
「━━━━━ッ!!」
ズバババン!!
「おっ」
―一瞬で駆け出し、怪人の手足を四つとも斬り飛ばした。その長さは全て、綺麗に7∶3の割合だった。
「私からは以上です」
「すんげ」
(そもそも刀身がグルグル巻きなのに、その上峰打ちでブッタ斬った!!)
スティンガー、イナズマックス、トウドウと、A級ヒーローはユウジも今まで目にして来たが、彼もまた最上級のヒーローに恥じない実力だった。
「━━━━━ッ!!」
ドゴン!!
「っと!」
しかしナナミに気を取られている隙を狙って怪人が飛び込んで来た。が、それをユウジが簡単に食らうわけもなく地面を蹴って回避した。
「余所見は関心しませんね」
「話し掛けたのだぁれ!!」
ナナミからの言葉にキレ返しながらも怪人から目は離さず、呪力を生み出して拳に流し込む。
「フーーー…」
そしてユウジはバングからの教えを思い出していた。
『オヌシの呪力は遅れてやって来ておる』
『遅れて?』
『まあ黒閃を出せてないヒーローは極端な話皆そうなんじゃが、オヌシは更に極端じゃ。オヌシの瞬発力に呪力が追い付いておらず、かつ留める技術を未熟じゃから軌跡として残っておるのじゃ』
『そしてそれが逆に変則的な呪力の流れを作っておる。拳が当たったと認識した直後に本命の呪力がやって来る、つまり―一度の打撃に、二度の
「━━━━━ッ!!」
ドッパパアン!!
ユウジが拳を怪人に叩き込むと、身体が浮いた直後に遅れて辿り着いた呪力が更に穿った。
「“逕庭拳”」
『これも相手のジャスト防御を剥がしたりする為なら使えそうじゃの。が、基本的には黒閃を狙って行け。単純な威力が違い過ぎるからの』
『うす!』
「…けど、中々上手く行かねえなー」
怪人に技が通用したのは嬉しかったが、やはりドンピシャで呪力をぶつけるのは難しい。掌を何度か握り締めながら、ユウジは苦難していた。
(素の身体能力が人間離れしているのか…初撃が少ない呪力ながら並のヒーローの120%は成立している。そこに流れて来る本命の呪力…やられる方は想像以上に嫌でしょうね)
なお、ユウジの戦い振りはナナミもちゃんと見ていた。彼から見てもユウジの戦闘力はヒーローになってまだ数ヶ月の新人と思えない程度には強い。特に身体能力に関しては凄まじい。
(伸び代もある。100%の身体能力に100%の呪力が乗せられるようになれば…まあ、そこは本人も分かっているようですし、私が一々口にする必要もないでしょう)
「ファングさんの弟子なだけあるわけだ」
「おっおべ」
「失礼、今トドメを」
ナナミは怪人を中途半端な状態で放ったらかしていた事に気付き、トドメを刺そうと鉈を振り上げる。が―
「…嘘でしょう」
―怪人の手首に巻き付けられた、時を刻む時計を見て、その動きを止めた。身体に引っ掛かっているような具合でもなく、どう考えても手首に巻き付けている。人間と同じレベルの知性を身に付けているならともかく、この怪人は明らかにそのレベルの知性は持っていない。これから考えられる可能性は…
「ユウジ君!!」
「!」
嫌な発想に辿り着いたナナミは今にもトドメを刺そうとしているユウジを止める。
「今度は何!?」
「トドメは待って下さい!」
「そりゃなんでまた?」
「私の相手の方で気になるものを見つけました」
そう言うとナナミは怪人から外しておいた時計を見せる。
「時計…?」
「ええ、私の相手が付けていました。まるで―
「…は?じゃあこいつらって…」
ユウジは理解が追い付いていない表情で聞く。信じられないと言わんばかりの剣幕だが、ナナミは落ち着くよう諭す。
「…まだ確定したわけではありません。幸いにも、拘束は可能な相手です。本部の医療班に受け渡して詳しい調査を依頼します。正体もそこで判明するでしょう」
ナナミが説明を終わらせると、ユウジは複雑そうな、不安を感じさせる表情で怪人を見た。もしもの事を考えると心が痛む事だが、こればかりは違う事を祈る事しかできない。
ゴシャアッ!!
「「!」」
そうしていると後ろから何かを強く叩き潰したような音が響いた。二人が驚いて後ろを振り返ると、そこには頭に斧が突き刺さった怪人が横たわり、全身に傷を作ったゾンビマンがパンパンと手の埃を払っていた。
「お疲れ様でした。援護に行けず申し訳ない」
「いや、良いさ。頭の昆布を伸ばして攻撃するって都合上、お前の術式とは相性が悪かっただろうからな。ゴリ押しの効く俺が当たって正解だった。で、お前らの当たった二体はなんで生かしてる?」
「それが―」
ナナミが状況と推測を話していくと、ゾンビマンの表情も険しくなる。ナナミが話し終えると、ゾンビマンは一本のタバコに火を点けて一吸いした後、神妙な表情で指示を出した。
「…とにかく、事件の調査に移る為にも一旦ここ出るぞ。あの怪人の件もある。ここはやっぱりどうにもきな臭ぇ、長く滞在してても良い事はないだろう」
「分かりました」
「うす」
ゾンビマンとナナミが怪人を運び、三人はゴーストタウンの外へ出た。ゾンビマンのみ少し振り返り、柵の向こうを見つめるが、そこには虚しく廃墟が広がっているだけだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「“S級仮想怨霊”、そう呼ばれる怪人がいる。怪人の中でも呪霊は人間から漏出した呪力の集合体。実在しなくとも共通認識のある畏怖のイメージは、強力な怪人となって顕現しやすい」
薄暗い下水道。そこでは一人の人間と一体の怪人が共存していた。怪人は一見人間らしい格好でハンモックに横たわり、詩集を読みながら少年に授業をしていた。
「共通認識のある畏怖のイメージ…有名な怪談や妖怪って事ですか?」
「そ、トイレの花子さんとか九尾の妖狐とか色々。ヒーローはそれらをS級仮想怨霊として登録し警戒してる。正体不明の強力な呪霊も、取り敢えず仮想怨霊としてカテゴライズするあたりそれしか見えてないって感じだよね。でも人々が常に恐れているのはそんなお伽話じゃないだろう?」
「…天災とか?」
少し考えた末に少年―ジュンペイが答えると、寝そべっていた怪人はムクリと起き上がる。
「君との会話は、ストレスがなくて助かるよ」
「いえ、そんな…」
褒められる事に慣れていなかったジュンペイは、少し頬を赤く染めて謙遜した。
「大地を、空を、森を、海を、人々は恐れ続けて来た。それらに向けられた呪力は大き過ぎるが故に、形を得る前に知恵をつけ、今まで息を潜めていたんだ。他にも、色んな環境から生まれた怪人がいるけどね。皆誇らしい仲間だよ」
壮大なスケールの怪人達にジュンペイは呆然とした。が、ここで一つの事が気になった。
「真人さんは、なんの怪人なんですか?」
短い人生、その中でTV越しでも見てきた怪人の中で、真人は群を抜いて人らしい。そんな風に感じた彼がなんの怪人なのか気になった。
「人間」
ポツリと、真人は答えた。
「俺は人間同士が憎み、恐れた腹から生まれ堕ちた怪人だよ」
人から生まれた怪人は、特に気にしてないように、自然体で話した。しかし、その奥に潜む真意は、誰にも分からなかった。
はい、今回はここまで。長く感じないようテンポ良く書いていきたいですね。
・ジュンペイ(吉野順平)
原作通り不登校。読み返して改めて思ったけど拗らせてんなぁ…
・真人
こっちも今の所は原作通り。入場料金払え。
・ユウジ(虎杖悠仁)
流水岩砕拳を会得してるので原作よりも強め。ただ黒閃を出すのに難儀中。
・ナナミ(七海建人)
原作から変わりなし。だけどまともな大人がもう一人いるから気は楽かも。
・ゾンビマン
昆布インフィニティ撃破。そろそろ本格的に戦わせたい。
・昆布インフィニティ
原作と違ってハゲがいないので普通に撃破。ゾンビマンとの戦いも書こうと思ったけど長くなりそうだったのでカット。
こんなもんかな。次回から大きく動かして行きたいですね。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?
-
五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
-
宿儺(完全体、十種、術式情報なし)