【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た   作:サクラン

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本誌で遂に次元斬の条件が明かされたので25話をちょろっと修正しました。よろしければご一読下さいませ。

それではお楽しみ下さい。


第三十話 幼魚と逆罰―肆―

 ドンドンッ!!

 

 薄暗い下水道、人が寄り付かないその場所で人外同士の戦いが行われていた。ゾンビマンは片手に銃を、片手に剣を持って駆ける。

 

「よく動くね」

 

 もう一人の人外―怪人である真人は手から何か小さな“モノ”―元人間が改造されたモノ―をいくつか落とす。

 

「“無為転変”」

 

 そして術式を発動すると、その小さな“モノ”は急速に巨大化してゾンビマンを貫くように伸びる。

 

「━━━━━」

 

 しかしゾンビマンは剣を壁に突き刺して強引に身体を持ち上げる事で直撃コースから回避した。

 

「ん〜…!(楽しい!!)」

 

 攻撃を躱したゾンビマンを見て真人は苛立ちではなく楽しさを感じた。先程はこちらの神経を逆立たせる物言いに苛立ちを感じていたが、やはり強い相手に思考を巡らせて戦うのは楽しいものだ。

 

(明らかに元の体積を越えた変形してんな…魂を弄る関係上無視できるのか?どっちにしろガンガン使って来るから燃費が悪いわけでもなさそうだ)

 

 楽しげな真人とは反対に、ゾンビマンは冷静に思考を回していた。

 ゾンビマンは身体の性質上勝ち筋は持久戦となる。となると相手の燃費は悪い方が相性は良いのだが、真人は出し惜しむ事なく積極的に変形を使って来る。先程の魂の理屈も含めると魂そのものを捉えない限りダメージが入らないのかもしれない。

 もしその理屈が正しければゾンビマンどころかどのヒーローも手に負えない程の怪人だ。救いとしては最弱クラスの自分でも容易に抑える事が可能な程度の実力である事だが…

 

「だ…だすけてぇ…」

 

「!」

 

 その時、ゾンビマンの足元から醜い―しかしハッキリと聞こえる声が耳に届いた。足元に視線を落とすと引き伸ばされた肉体に苦しそうに呻く苦悶の表情を浮かべる顔があった。

 

『改造された人間はまず助からん、迷わず殺せ。それが被害者の為でもある』

 

 それはゴーストタウンから戻った後、怪人の身体を調べたショウコから言われた言葉。曰く、改造された人間は脳を弄られた形跡があったとの事。そんな状態で身体の形も変えられれば無事で済むわけもないし、事実ゾンビマンも迷いはない。

 

「あーごめんね。いっぱい練習したんだけどね、脳?意識?の方はまだ精度悪くてさ。そうやって魂の汗が滲み出る事があるんだ。気にせず続けよう」

 

 当然真人も大して気にする様子もなく、軽く言及する程度で済ませる。

 

「気にしちゃいねぇよ」

 

 ゾンビマンも、手強い怪人を前にして心を痛めている時間はない。しかしせめてもの弔いとして、目に浮かんだ涙を優しく拭う。

 

「私情は持ち込まない主義なんでな」

 

 そしてゆらりと顔を上げると言葉とは裏腹に剣呑な雰囲気を漂わせており、真人に対する怒りが伺える。

 

「嘘が下手!!魂が揺らいでるよ」

 

 そんなゾンビマンの下手な嘘がツボに入ったのか、真人は思わず噴き出した。

 

「えーと…S級なのは知ってるけど、何位だったけ?」

 

「9位」

 

 真人に順位を聞かれたゾンビマンは特に隠す事なく答える。自身の順位などに興味は無いし、協会の付けるランキングはあくまで“貢献度順”だ。S級の中でも別格である1〜3位は例外としても、それ以下のヒーローは全く実力順ではない。ゾンビマンとしてはむしろナメてくれていた方が有り難いぐらいだ。

 

「ふーん、結構高めなんだね。人間の浅い考えも作用してるんだろうけど、殺り応えはある。実験体としてベストだね」

 

 水路を跨いで互いの出方を探るように歩く二人。真人は独り言のように呟きながら軽やかに歩く。

 

 

 

 

 

「感謝するよ」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 すると次の瞬間、気付いた時には至近距離まで真人が近付いてゾンビマンの脇腹に手を当てていた。その速度に驚きながらも剣を振り下ろすが―

 

 

 

 

 

「“無為転変”」

 

「グッ…!?」

 

 

 

 

 

 ―真人の方が一手速い。

 術式を発動させるとゾンビマンは普段戦いの中で感じる痛みとはまた違った感覚に陥った。自分の内側から肉体を掻き混ぜられるような、激痛と異物感に苛まれた。

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

「! マジ―」

 

 ゴシャアッ!!

 

 しかし痛みではゾンビマンは止まらない。身体の動きに異常がない事を把握すると、持っていた剣を逆手に持ち替えて真人の脳天から串刺にするように振り下ろし、動きを止めると思っていた真人は躱すことができず、もろに食らってしまう。

 

 ズバババッ!!ドンドンドンッ!!

 

 しかもそれだけでは飽き足らず、追撃として剣で滅多斬りにした上で銃弾で頭を貫く。人間どころか怪人であってもオーバーキルと言える攻撃だが、不死身であるゾンビマンとしてはこのぐらいはやらねば安心できない上、先程の真人の発言も引っ掛かっていた。

 

(魂の形を保って修復するにしても、考える頭が必要になる。こんだけやってダメなら…)

 

 そして傷を放置したままだった事を思い出し、どのような状態か確認する為に服を上げて身体を調べる。

 真人が手を当てた箇所を見てみると、その部分だけ肉体を掻き混ぜたような痛々しい傷ができていた。

 

(複雑な傷だからか、あるいは魂に干渉したからか、傷の治りが遅いな。食らったのが一回だったから良かったが、何回も食らったら俺でもどうなるか分からんな。だが―)

 

 ゾンビマンは剣で傷が作られた箇所を斬り落とす。すると先程までとは比べ物にならない早さで傷が塞がって行った。

 

(―こうすれば問題ない。他のヒーローじゃこんな事はできねえから、俺が当たって正解ではあったな。俺としては二度とゴメンだが)

 

 傷を修復しながら煙草に火を点け、休憩代わりに一服する。そしてふと真人の死体に目を向けると、身体から呪力の気配が消えてない事に気付いた。その死体がピクリと動いた事も。

 

「…マジか」

 

 そして粘土を捏ねるように真人の身体が盛り上がり、修復されていく。数秒もしない内に無傷の真人が復活した。

 

「いやー見かけによらず殺意高いね」

 

「そう言うお前はしぶといな、アメーバかプラナリアかよ」

 

 身体の埃を払い、なんともないように復活した真人をゾンビマンは煽りつつ武器を構える。が、その内心はよくない。

 

(悪い予感が当たったか。コイツは魂を捉えて攻撃しない限りは何度でも復活する。しかも自分の形を変える分にはほとんど消耗しないのか?全く疲れた様子がない)

 

「アッハハ!強がらなくても良いよ。魂は嘘を付けないんだからさ」

 

 ゾンビマンの魂が揺らいでいるのを感じ取った真人はからかうように笑う。そして自分の腕を剣のように変形させた。

 

「君の考えは当たってるよ。身体をぐちゃぐちゃに潰されようが、魂の形さえ保てば死にはしない。自分の形を変える分にはどれだけ弄ってもノーリスク、呪力の消費も自己保管の範疇だ」

 

 真人は見せびらかすように、自分の身体を自在に変形させて見せる。ゾンビマンは表情こそ変えないが、また厄介な手札が増えてしまったと、内心で舌打ちした。

 

「でもまあ、有利とは言え勝確とは言えないよね。君は不死身なわけだし」

 

 だが、真人としても楽勝とは言えない。ゾンビマンの不死身は誇張でもなんでもなく、真人の現状の攻撃手段では追い詰めるのは難しい。

 

「じゃあどうする?諦めて死んでくれると有り難いが…」

 

「まさか!あくまで()()()()の話だよ。俺の呪力は自己保管で済むけど、君はどうかな?攻撃に使えるだけの呪力はいつまで保つ?斬ったり潰したりは効かないけど、脳を弄っても無事でいられるかな?」

 

 真人が指折り数えながらゾンビマンへ質問を投げ掛ける。ゾンビマンはその質問に答えこそしなかったが、回答としてはゾンビマン自身も“分からない”。

 ゾンビマンは四肢を切断されようが心臓を潰されようが頭を吹き飛ばされようが再生して復活する事が可能だが、それは身体の部位を失ってこそ発揮される。歪な形に変形させられてそれを治せるかは未知数だ。

 そこが問題なかったとしても呪力が保つかは微妙な所だ。武器に籠めたり防御に使う呪力は決して多くはない。が、継続的に使い続けていればいずれ尽きる。

 

「…ざっと一週間ってとこか?」

 

 ゾンビマンは残った呪力から自分の戦える時間を計算する。状況は良いとは言えないし、不確定要素もある。それでも真人をここで逃がす方が怖い。術式を考えると死体を残さず人を殺す事など容易だろう。

 

 ―ならば少なくともここで重傷を与える。あわよくば倒し切る。

 

「おいクソ野郎。泥試合だが覚悟しろよ」

 

 ゾンビマンは少し変わった啖呵を切り、真人との戦闘を再開した。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 所変わって夕暮れの街並み。そこを歩いているのは一人の少年―ジュンペイだった。

 

「ジュンペイぃ」

 

「!」

 

 自分の家に入ろうとすると、玄関先に座っていた肥満気味の男が声を掛けた。その男はジュンペイも見覚えがあり―あまり会いたくない相手でもあった。

 

「駄目じゃないか、学校サボって」

 

「ソトムラ…先生…」

 

 ジュンペイの学校の担任だった。不登校の身であるジュンペイとしては会いたくないのも当然と言える。

 

「聞いたか?サヤマ、ニシムラ、ホンダ、亡くなったって」

 

 そして担任である以上生徒が亡くなった事は把握しているらしく、映画館で真人に殺された三人の情報も知っているようだった。

 

 

 

 

 

「オマエ、仲良かったよなぁ」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 ―次に言われた言葉には、ジュンペイは気まずさも忘れて本気で呆然とした。そんな明らかに変わった反応を見せたジュンペイにソトムラは気付かず、そのまま続ける。

 

「友達もいないオマエをよくかまってやってたろ。それなのに葬式にも出ないで…一緒に行ってやるから、線香だけでも上げに行こう」

 

 彼の話す言葉は、ジュンペイからすれば理解不能としか言いようがなかった。

 

(仲良し?僕が?あいつらと?)

 

 いじめはバレないよう隠れながら行われていた為、知らないというのなら百歩譲ればまだ分かるが、あの光景を見てなお()()()()()()()ように見えるのなら病気か何かとしか思えない。

 

(正気じゃない)

 

 何も見ていない能天気な担任に、ジュンペイの怒りの限界点は容易く突破した。

 

「教師って…学校卒業してから学校に務めるから、おおよそ社会と呼べるものを経験してないですよね」

 

(どいつもこいつも―)

 

「だからアンタみたいな―デカい子どもができるんでしょうね」

 

 ソトムラが聞いてないかなどに興味がないジュンペイは、彼にとっての無能さを吐き捨てるだけ吐き捨てると、真人から与えられた“力”を発動しようとする。傍から見ればただ指を立てただけに見えるだろうが、知識のある者が見れば呪術を行使しようとしているとすぐに分かる。

 

「何ブツブツ言ってんだ?引き籠もって頭おかしくなっちゃったか?なんて、アハハ」

 

 その知識がないソトムラは自分に向けられている力に気付いていない。もうあと数秒もすれば、ジュンペイの力が襲い掛かるだろう。

 

「すいません、失礼します」

 

「「!」」

 

 一触即発の空気の中、落ち着いた―しかし思わず動きを止めてしまう程に凛とした声が割って入る。二人が思わず声の聞こえた方に目を向けると、そこにはスーツを着た一人の男と少年が立っていた。

 

「A級7位ヒーローのナナミと申します。少しお話を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか」

 

 ナナミは軽くお辞儀をしながら、二人に近寄る。その振る舞いは決して暴力的なものではなく、むしろ品の良さすら感じさせる程のものだったが、一つ一つの仕草から「動いてはならない」と言われているようにジュンペイは感じた。

 

「あ、あの、私達に何か…」

 

 ソトムラもA級上位ヒーローからの聞き込みという事態には流石に面食らったのか、冷や汗を流しながらおずおずと聞き出した。

 

「いえ、私達が用があるのはそちらの少年です。ここ最近、この辺りで怪人の目撃情報がありましたので、その証言者である彼に聞きたい事ができたので。彼が最近学校を休んでいるのも、怪人に怯えての事でしょう。トラウマを抱えていてもおかしくありませんから」

 

(え?)

 

 ジュンペイはナナミの言い分に疑問を抱く。確かに怪人と接触した事は嘘ではないが、学校に休む理由は特に伝えていない。にも関わらずナナミは当然のように話している。

 

「シーッ…!」

 

「!」

 

 するとジュンペイの隣に立っていた少年が口元に人差し指を当てて静かにするように伝える。

 

(この場は穏便に済ませる為に喋るなって事か)

 

 その意図を理解したジュンペイは話さない方が良いと理解し、特に喋る事もなく成り行きを見守る。

 

「そんな…!ジュンペイは大丈夫なんでしょうか!?」

 

 ナナミの話を聞いたソトムラは、血相を変えてジュンペイの安否を問いただす。その様子は純粋に心配しているようだった。

 

「落ち着いて下さい。怪人に狙われているわけではないですし、私達が来たのは守る為でもあります。教職の立場としては心苦しいでしょうが、今はひとまずそっとしてあげて下さい。私達が必ず守ります」

 

 ナナミはそんなソトムラを落ち着かせて安心させる為に守り切ると断言する。ナナミ本人としてはあまり断言はしたくないが、立場あるヒーローである以上、不安を煽るような事を言うわけには行かない。

 そしてどれだけ不確定だろうが根拠が無かろうが、言った以上は実現させるつもりでやる。ナナミはどちらかと言えば現実主義だが、大人としての責任感はちゃんと身に着けているし、自分の発言がどれだけの影響力を持つかは理解している。

 

「そ、そうですか…分かりました」

 

 ソトムラはまだ不安の残る表情だが、実績のあるナナミからの言葉だからか、ある程度納得はしたようで、渋々と引き下がった。

 

「じゃあ、ジュンペイ。気を付けてな」

 

「……………」

 

 去り際にソトムラは心配した表情でジュンペイに声を掛けるが、ジュンペイは複雑そうな表情で沈黙を貫いていた。

 

「…さて、それではお話させて頂きましょう」

 

 ナナミは一息つくとジュンペイの方に向き直る。

 

「まずは即興の理由に合わせてくれてありがとうございました。彼に下手な刺激を与えずに帰って欲しかったので、君をダシにするような事になってしまいました。申し訳ない」

 

「…いえ、気にしてないので、大丈夫です」

 

 しかしナナミとしてはジュンペイをダシに使った事は不義理に値する。本人が気にしてなかったとしてもナナミとしてはちゃんと謝罪しなければならない事だ。

 

「そうですか。それでは私達が声を掛けた理由に心当たりはありますか?」

 

「…はい」

 

 とは言えそれはそれ、これはこれ。実力行使でこそないものの、尋問が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「本当に不死身だね。正直ナメてたよ」

 

「そりゃこっちの台詞だ。いい加減くたばりやがれ」

 

 ゾンビマンが武器を振るい、真人がそれを回避する。戦い始めてからかれこれ一時間は経過しているが、決着が着く気配は全くなかった。

 

(無意識とは言え、魂を多少は呪力で防御してるのが痛いな。一回じゃ即死させられないし、触れられる時間も一瞬だから変形させる部位が選べない)

 

(膠着状態だが、時間で不利になるのは俺の方だな。どれだけ有利に立ち回っても、奴の魂を捉えられない以上消耗する呪力は少ない。対して俺は修復を速めるのにある程度呪力食うからな)

 

 しかし互いにしっかりと勝負を着けるべく思考を回している。立場が真逆故に考えている事も違うが、共通している事が一つあった。

 

 

 

 

 

(このまま行けば勝つのは俺(奴)だな)

 

 

 

 

 

 それは勝負を続ければ勝つのは恐らく真人になるだろうという事。戦闘において有利に立っているのはゾンビマンだが、呪力効率の点においては真人が勝っている。呪力切れと同時に肉体を変形させられれば、ゾンビマンと言えども無事でいられるかは分からない。

 

(とは言えその決着の着け方はつまらないな。折角なら不死身を殺す事で勝ちたい!)

 

 しかし真人はその決着は望まない。初めての戦闘だがその中で自分でも分かる程に成長している。少なくとも負ける事はないのだから、このぐらいは欲張っても良いだろう。

 

 

 

 

 

(―とか考えてんだろうな。まあ俺にとっては好都合だが)

 

 なお真人の思考はゾンビマンにはお見通しである。ゾンビマンもこのまま戦えば自分が不利になる事ぐらい分かっているのだから、当然その対策も済ませていた。

 

(流石にもう分かるが、コイツは呪霊。しかも恐らくまだ生まれたばかりだ。俺と戦いが成立する事から他のS級なら足蹴にできる。何より―()()()()()()()()

 

 ゾンビマンは真人がどういう怪人なのかを戦いの中で観察しながら考えていた。そして気付いた点として、真人が人間の負の感情を元にして生まれた呪霊だと言う事。

 呪霊タイプの怪人は身体が呪力でできている事からか、最も反転術式が効果を発揮する。

 ある程度の量と出力さえあればあっさりと倒せてしまう程度には反転術式の効き目が良いのだ。

 

(俺がコイツを抑え続けてタツマキやサトル、あるいはユウタが来ればその時点で詰み同然―とは言えピンポイントでその三人が来てくれると思わねえ方が良いだろうな。最低限他のS級が来るまで足止めできればそれで良い)

 

 ゾンビマンは真人の術式を把握して自分で倒す事がほぼ不可能なのを悟った瞬間、協会へ応援申請を端末を操作して送っている。他のS級も暇ではない為すぐに駆け付ける事はできないだろうが、足止めだけであれば自分でも事足りる。

 そうして駆け付けたS級に情報を伝達し、後はタツマキやサトル、ユウタが来るまでローテーション制で真人を足止めすれば良い。

 

(…なーんか胡散臭いな。この感じ…ひょっとして何か考えがある?タイマンにおける策なら見てみたくはあるけど…応援を呼ばれたりするのはちょっと困るな…)

 

 攻撃に対して銃撃で応戦するゾンビマンを見て、真人は何か違和感を覚えた。真人はまだ戦闘をについての理解は浅いが、ゾンビマンが何も考えずに戦うだけの阿呆には見えない。何か勝算を持って勝負を挑むタイプに見える。

 

(だったら…)

 

「逃げまぁす!!」

 

「!」

 

 真人はゾンビマンに背を向けて全力で逃走した。その速度は決して追い付けないという程ではないが、こちらから追い掛けなければ逃げられてしまう程の速さだった。

 

「チッ!(気付かれたか!)」

 

 そしてゾンビマンもそれを追わないわけには行かない。生まれたばかり故にまだ倒しやすいが、もう今の時点で術式の特殊性も合わせればレベル“鬼”はある相手だ。

 それにこれはゾンビマンがなんとなく感じた印象だが、この怪人はどこかサトルに似ている。絵に描いたような軽薄さ、しかしその奥に在るドス黒い強さ。

 あって欲しくない事だが、強さが完成すればサトルやタツマキであっても手を焼くレベルの怪人になる可能性もゼロではない。

 そうなる前にここで倒さなければならない。ゾンビマンは全速力で曲がり角を曲がった。

 

 

 

 

 

「引っ掛かった」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 いつもより焦っていたからだろうか。曲がった先に真人はおらず、下水道の天井に蜘蛛のように身体を変形させて張り付いていた。ゾンビマンも咄嗟に真人の方へ向き直り、銃の引き金を引くが―

 

 

 

 

 

「“無為転変”」

 

 

 

 

 

 ―真人の方が一手速い。

 ゾンビマンの顔を掴み、真人はしっかりと魂の形を認識し、ゾンビマンの顔が大きく歪むように術式を発動させた。

 

「ゔっ」

 

 そして真人の予想通りにゾンビマンは顔を歪め、地面に倒れた。

 

「あー!楽しかった!殺り甲斐のある相手だった!」

 

 自分の策が上手く決まった真人は嬉しそうにしながら地面に降り立つ。初の戦闘でS級ヒーローが相手だった為、どうなるかと思ったが勝てて良かった。

 

(術式もより理解が深まったし、分かった事も多かった。これなら漏瑚やギョロギョロも文句ないでしょ)

 

 最初外で遊んでみたいと言った時はあの二人に相当嫌な顔をされたが、S級ヒーローを屠ったと報告すれば文句の付けようもないだろう。真人は心底上機嫌な気分で、その場から立ち去ろうとした。

 

 

 

 

 

 ドンドンッ!!

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 その時、銃声が響いた。それと同時に立てなくなった真人が呆けた様子で自分の足を見ると、両足に一発ずつ、銃弾が撃ち込まれていた。

 しかし今ここで銃を放てる存在は確実に殺した筈、魂も確認してハッキリと死んでいる事を確認した。そう思い真人がゾンビマンの死体があった方に目を向けると―

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 ―頭部は確かに変形させられたままだが、その銃口はしっかりと真人に向けられていた。

 

「…マジで?」

 

 真人は軽いリアクションだが、実際には意味が分からなかった。今もゾンビマンの魂の鼓動は感じられない。にも関わらず彼の身体は動いている。

 

「……………」

 

 そしてぎこちない動きで立ち上がると、変形した自分の首から上を斬り飛ばした。すると断面がモゴモゴと蠢き、高速で新たな頭が生えた。

 

「フゥー…流石に死ぬかと思ったな。三途の川が見えた」

 

「…どっちが化け物なんだよ」

 

 そして特に何事も無かったのかのようにゾンビマンは首を鳴らし、真人は想定外の事態の連続に頭が追い付いていなかった。

 

「“魂は常に肉体の先に在る”だったか?どうやら例外があるみたいだぜ。お前の言った通り俺の“不死身”は俺に()()()()()()()()()()()()()だ。俺自身の魂が死んだ事になろうが、身体に刻まれた特性は死なない。俺にとって肉体は魂と同格―いや上なのか?とにかくお前の理屈は通用しないみたいだ」

 

 ゾンビマンから推測混じりの理屈が告げられるが、それでも真人の動揺は収まらない。これまで数々の人間の今際の際を見てきたが、魂が完全に死んでなお生き返る存在は間違いなく初めてだ。

 

(―とは言え、俺もあまり余裕がない。さっきの蘇生と回復で呪力がゴッソリ持ってかれちまった。魂を蘇らせるには普通の修復速度を速めるのとら比べ物にならない呪力が必要になるのか。こりゃ持久戦はキツいか…)

 

 しかしゾンビマンもあくまで自分の特性に救われた形であり、しかも魂の蘇生に呪力の大部分が使われてしまった。残りの呪力量としては4割以下と言った所であり、いつもの戦法はできない。

 

(だが、多少強引にでもコイツはここで仕留める。時間はかなり稼いだ。他のS級が来るまで絶対に止める)

 

 しかしそれでも真人を野放しにする方が危険だ。幸いにも真人は先程の蘇生に相当ショックを受けたのか、かなり参っている様子だ。術式は厄介だが、直接戦闘ならこちらの方が有利だ。

 そう考えたゾンビマンは真人を逃さない為にも駆け出す。真人も応戦するべく改造人間を取り出す―

 

 

 

 

 

 パリッ

 

 

 

 

 

 ピシャア!!ゴガアアアアア!!

 

「!?」

 

「!」

 

 

 

 

 

 しかし突如として雷を纏った突風が天井を突き破って二人の間に割って入り、その勢いのままにゾンビマンを追い出すように外へ吹き飛ばした。

 

 ドゴシャアッ!!

 

「!? うわあああああ!?」

 

 空高く吹き飛ばされたゾンビマンはダメージも相まってまともに受け身も取れずに地面へ叩き付けられる。

 たまたま近くを通りかかっていた一般人が突然のショッキングな光景に悲鳴を上げるが、ゾンビマンは既に肉体を修復させていた。

 

「悪い、驚かせちまったな。怪我はないか?」

 

「は、はひぃ…」

 

 ゾンビマンは驚かせた事を素直に申し訳なく思い、謝罪しつつ手を差し伸べるが、一般人はもはや頭が追いついておらず魂が抜けたような表情をしていた。

 

(やられたな。今のは仲間の術式か。こっちが応援を呼ぶ暇があるなら、向こうもそりゃ同じ事考えるか)

 

 一般人に手を貸しながら、ゾンビマンは先程の光景を思い出す。少なくともレベル“鬼”はあるであろう攻撃規模、姿を見せずにあの場まで近付いた事から相当手強い怪人だ。

 

(戻っても逃げた後だろうな。ここからどう動くかが分からねえから、取り敢えずナナミ達と合流するか)

 

 一般人の無事を確認したゾンビマンは、ナナミ達と合流するべく移動を開始した。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 乱入者によって崩壊した下水道。そこでは雲のような人型がツギハギの怪人を心配するように屈んでいた。

 

「いやーゴメン空廻、助かったよ」

 

『あのねぇ!!真人はフラフラし過ぎ!!大抵の事じゃ死なないとは言え、本当に死んじゃったらどうするの!?』

 

「だからゴメンて、風が強いよ」

 

 雲の怪人―空廻は飄々とした真人に対して烈火のごとく怒っており、その身体は感情を現すように暴風と雷が轟いていた。

 

「っていうかなんで来たの?ギョロギョロの指示?」

 

『あの肉袋がそんな有情な指示出すわけないでしょ。あくまでボクの独断だよ』

 

「なるほどね」

 

 真人がここに来た理由を聞くと、空廻は少し勢いを落として答えた。空廻の言葉に多少棘が混じっていたのが気になるが、その事は後回しにした。

 

「で、俺を連れて帰って来いって命令?」

 

『違うよ、言ったでしょ()()って。なんかやろうと思ってるだろうから手伝いに来たんだよ』

 

「ありがと♡嬉しいよ」

 

気持ち悪い!!いいから教えて!』

 

 真人が若干ぶりっ子な態度を取ると、空廻は暴風を吹かせながらドン引いた。しかししっかり真人に協力するつもりなあたりに彼(?)の優しさが伺える。

 

「色々考えはあるだけどね―」

 

 そして真人は邪悪な笑みを浮かべながら空廻に計画を話す。人の呪いの脅威は変わらず人間に牙を剥いていた。




はい、今回はここまで。長くなっちゃったなぁ…


・ユウジ(虎杖悠仁)
ナナミンがメインに動いてくれてるので今回は空気。原作最新話カッコよかったぞ!!!!!

・ナナミ(七海建人)
ちゃんとした大人。こういう場を丸く収める力はめっちゃ頼りになりそう。

・ジュンペイ(吉野順平)
愚かな子ども(辛辣)。ナナミンに呪術使うとこガッツリ見られてるので次回尋問です。

・ソトムラ(外村先生)
原作の太った先生。見るべきものを見れてなかっただけで教師としてのプライドはしっかり持ってそう。

・真人
初戦で天敵程じゃないけども攻撃が通用しない相手が出て来てドン引き。ただ成長も早そう。

・ゾンビマン
原作のパパ黒見てたらこの人も肉体>魂なんじゃないかなって。ただ魂の蘇生には呪力バカ食いします。

・空廻
本格的なお披露目。若干情緒不安定気味。見た目が描写されてませんがその家しっかり書きます。呪霊サークルだと漏瑚の次に強いです。


こんなもんかな。後五話以内には次の章に行きたいですね。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?

  • 五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
  • 宿儺(完全体、十種、術式情報なし)
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