【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た 作:サクラン
それではお楽しみ下さい。
ジュンペイを確保したナナミとユウジは、家の前から河川敷まで移動していた。
「あの…なんでここまで?」
てっきり協会に連行されると思っていたジュンペイは、わざわざこんな所まで来た意味が分からなかった。
「周りに人の目が多い場所では話しづらいでしょう。ましてや苦手な人間がいつまでも家に居座っていてはなおさら」
「!」
ジュンペイはナナミに言われて初めて気付いた。彼はわざわざジュンペイの苦手なソトムラを言い方は悪くなるが追い払ってから移動したのだ。事を荒げたくなかったという事もあるかもしれないが、そんな点まで気が回るあたりに彼の優秀さが伺える。
「さて、この辺りで良いでしょう。どうぞ、座って下さい。飲み物もあるので」
「あ、どうも…」
しかもナナミはここまで来る途中にしっかり飲み物も購入しており、ジュンペイとユウジにはコーラを、自分は缶コーヒーを飲みながらベンチに腰掛けた。
「それでは尋問を開始させていただきますが…ご安心を。私達はアナタに危害を加えるつもりはありません。できる事なら質問には全て答えて頂きたいのですが…どうしてもという場合には沈黙を選んで下さい。当然、沈黙を選んだからと言って痛めつけたりもしません。アナタが約束して欲しいのはただ一つ―
「いえ…」
「でしたら、始めさせて頂きます。よろしくお願い致します」
「ああ、はい。よろしくお願いします…」
ナナミの尋問というより面接のような雰囲気に、ジュンペイは変な緊張感が走った。
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「先程声を掛けられた事に心当たりがあると答えましたが、その内容を詳しく教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい。ええと…映画館の変死事件の事ですよね」
ナナミの確認を意味も込めた質問に、ジュンペイは正直に答える。この事に関しては監視カメラか何かで知られているので、ここで知らないという方が怪しまれる。
「ええ。被害者の遺体の状況も知っているでしょう。そこで少しアナタの術式を見せて頂きたいんです。疑いを晴らす為にも」
「…分かりました」
ナナミからの術式を見せてくれという頼みにジュンペイは一瞬躊躇ったが、敵対するつもりはなく、下手に出し渋って自分が疑われてしまったり真人が見つけられてしまうのは困る。
「“澱月”」
「!」
そしてジュンペイが自身の髪の毛の媒介に術式を発動させると海月のような式神が顕現した。
「ふむ…(特に特異性は見られない。呪力の気配からして式神が扱うのは恐らく“毒”。とてもではないが人間の身体を変形させられそうな術式じゃない…)」
ナナミは式神をジッと観察するが、特に危険性は感じられない。もちろん“毒”という危険な要素もあるのだが、とても毒では人間の形を変えられるとは思えない。見た限り式神の扱い方もまだまだ未熟であり、“残穢”も残さず立ち去れる程の実力があるとは思えない。
「(ならばやはり、犯人は別に…)―なるほど、やはりアナタが犯人ではないようだ。劇場で別の人間、あるいは怪人を見ませんでしたか?」
「うっ…えっと…」
疑いが晴れたのは良かったが、今度は別の犯人について聞かれてしまった。ここで真人の事を話してしまうのは簡単だが、そうしたら真人は殺されてしまう。怪人であるとは言え、自分を初めて肯定し、力をくれた恩人なのだ。それを裏切るような真似はできればしたくなかった。
「話したくありませんか?」
「…はい」
ナナミが聞いてくるが、ジュンペイは絞り出すように答える。脅される事も、最悪実力行使も覚悟の上だった。ナナミに何をされても良いように、ジュンペイは目を瞑る。ナナミはそんなジュンペイを見つめながら次に取った行動は―
「―なるほど。ならば仕方ありません。一旦ここまでとしましょう」
「え?」
―怒るわけでも脅すわけでも、ましてや暴力を振るうわけでもなく、質問をここまでとした。覚悟を決めていたジュンペイは思わず拍子抜けしたような声を上げる。
「ど、どうして…」
「確かに私がアナタを甚振ったりする事で自白させる選択肢もないわけではありません。ですが、そんな事をしてしまえばアナタは一生救われないでしょう」
「!」
ジュンペイの質問に対してナナミは当然の事のように答える。
事件を解決するだけならナナミがジュンペイを痛めつけるたり、拷問で事で自白させる事もできる。
しかし、それではダメなのだ。
ナナミ達は“ヒーロー”であり、その役割は無力な人々を助ける、救う事である。確かにジュンペイから情報を得るのは早い方が良い。次の被害者を減らすのは大切な事だ。
だが、それはジュンペイを切り捨てて良い理由にはならない。
ナナミは担任であるソトムラに対する態度でジュンペイが何か複雑な心境に陥っているのはなんとなく察した。というかもし何も問題がなければ不登校になどならないし、真犯人だってさっさと白状してしまえばそれで良いのだ。それをしないという事は無駄に警戒されるリスクを背負ってまで沈黙を選ぶ“理由”、“事情”がジュンペイにはある筈なのだ。
そしてそれはジュンペイの心の深い部分まで触れる事になる為、下手に触れない事をナナミは選んだ。そこを解決してしまえば簡単だが、触れ方を間違ってしまえば一生癒えない傷を負うことになる。
だから―今は触れないし、触れられない。ヒーローとして、大人として。
「アナタが自分から話そうとするまで、私は聞くことはありません。こちらで調査も進めますので。ですが―」
ナナミは改めて、自分から聞くことはない、ジュンペイが話したいと思ったタイミングで話してくれれば良いというスタンスを伝える。
「―アナタが繋がっているのが人間だったならともかく、怪人であったなら私達は問答無用で対処します」
「!」
―しかし、それだけにヒーローとして譲れない一線の事は釘を刺しておく。多少の圧と共に放たれたナナミの言葉に、ジュンペイは思わず身体を強張らせる。
「怪人には様々なタイプがいますが、全てに共通している事はたった一つ。それは―人の生命を容易く奪うという事。尊厳にしろ生命にしろ、奴らは生命を奪う事に躊躇いなどは全くしません」
ナナミから語られる怪人については、知識のないジュンペイでもあっさりと呑み込めるだけの説得力が伴っていた。
「単純に凶暴性が高いだけなら、危険ですが対処法も単純です。タチが悪いのは人の心―特に弱みやコンプレックスにつけ込んでくるタイプです。そう言ったタイプは悪知恵が働く上、最終的に本人にとって最も尊厳を踏み躙って殺します」
ナナミの的を得た説明にジュンペイは冷や汗をかく。今の自分の境遇にピッタリ当て嵌まっているから。
そして改めて真人の行動を思い返してみると、自分を肯定してはくれたが、人を殺す事や手駒のように扱う事にはなんの抵抗もなかった。よく考えれば何故自分はそれらと同じ末路を辿らないと思っていたのか。真人が望めば自分はあっさり物言わぬ屍にできる。いや、下手をすれば人として死ぬ事すらできないかもしれない。
(……でも)
それでも、ジュンペイは真人を売る選択が取れない。確固たる自分を持つ為の思想をくれた。可能とする為の力をくれた。その恩を仇で返すような真似はしたくない。
「アナタはまだ若い。分からない事や間違える事はこれからいくらでもあるでしょう」
「!」
そんなジュンペイの迷いを感じ取ったのか、ナナミは諭すように語り始める。
「それらが悪い事とは言いません。人は間違いから多くを学びますから。ですが死んでしまったらそこで終わりなんです。一度の間違いで終わってしまう事程もったいない事はありません。そしてそれを可能とするのが怪人なんです。だからできる事なら教えて欲しいです。アナタの未来を守る為にも」
ナナミはここで初めてジュンペイと目を合わせて話した。今までも別に適当に話している印象はなかったが、目を合わせて話されると彼の誠実さがより伝わった。
「…まあ、話したくなったら言って下さい。何かあれば相談にも乗るので」
「…はい」
ナナミからのささやかな気遣いにジュンペイは少し顔を綻ばせて話を一区切りとした。
ヴー…!
「! 少し失礼」
するとタイミングを読んでいたかのようにナナミの携帯が震えた。画面に映し出された名前にナナミは少し驚きつつ、通話を開始した。
「色々といきなりゴメンな。A級ヒーローからの尋問とか緊張したでしょ?俺ユウジ、一応ヒーローやってる」
「あっ、僕はジュンペイ。改めてよろしく」
手持ち無沙汰になったジュンペイが取り敢えずそのまま座っていると、同じくずっとナナミに取り調べを任せていたユウジが隣に座って来た。
「君もヒーローなんだ。僕と同じぐらいの歳なのに凄いね」
「まだまだ新人だよ。実際今回の件だってナナミンとゾンビマンさんに任せっきりだったし」
(一応上司なのにあだ名呼びはありなんだ…)
ユウジの距離感の近さにジュンペイは若干引きつつも悪い人間でない事は感じ取れたので安堵しつつ会話を続ける。
「じゃあ取り敢えず今は見習い的な感じ?」
「そうだなー、色々と勉強中ってとこ」
どちらかと言うと奥手な性格であるジュンペイだが、ユウジの持っている人懐っこい雰囲気に当てられたからか、ジュンペイも段々と口数が増えてきた。
「っていうかS級ヒーローまで一緒に来てるんだ」
「今は別行動なんだけどな。クールな大人って感じでカッコよかったな〜!」
歳が近い事もあってか、そこから他愛もない話題に逸れていく。ジュンペイがふと口にした映画の話題にユウジが飛び付き、面白かった、つまらなかった、そんな感想を交わしながら二人は笑っていた。
そうしていつの間にか日もかなり沈んできた頃、少し話し疲れた二人は風に吹かれながら休憩していた。
「ねえ、ユウジ君はさ、両親とかっているの?」
「んー?親かぁ…一応いたらしいけど覚えてねぇんだよなぁ…父ちゃんは薄っすら記憶あるんだけど、俺は爺ちゃんに育てられたから」
そんな中、ジュンペイは少し声のトーンを落として問い掛けた。ユウジはなんとなく真剣な質問であると理解し、真面目に答える。
「そっか…」
ジュンペイは返ってきた答えに若干気まずさを感じた。ユウジは特に気にしていないようだが、それでも両親とほとんど過ごしてない事はあまり良い事ではない。
しかし不謹慎であるが、僅かな共感も得ていた。ジュンペイも早くに両親が離婚し、父親の事はほとんど覚えていない。唯一の肉親は母親だけで、その母親に育てられた。
そしてその母親には感謝している。自分が学校に行きたくないと言った時にも驚いてこそいたが無理に行かせるような真似はせず、「好きにして良い」と言った上で自分は日銭を稼ぐ為に働きに出ている。自分で行かない選択を選んでおきながら薄情だとは思うが、正直申し訳なく思っている。
ふと、ジュンペイは考えた。自分がもし人を殺したら、母親はなんと言うだろうと。
「好きにして良い」と言ってくれた母親だが、自分の息子が他人を殺したと知ったら同じ事が言えるだろうか。怒るだろうか。絶望するだろうか。信じられないだろうか。
反応は予想できないが、確実な事が一つある。
自分が人を殺せば、間違いなく母親の魂は穢れてしまう。母親だけでなく、ヒーローであるユウジやナナミは自分を何として見るだろうか。なんとなく、気になった。
「…ねえ、ユウジ君はさ、僕に話して欲しいと思ってる?」
「! …まあ、そりゃね。ヒーロー歴はまだ短いけど、怪人が危ないって事は嫌って程知ってるからさ」
ユウジはここで初めて複雑そうに表情を歪ませた。そのらしくない表情からヒーローとして戦い、そこで負った“傷”があるのだと、ジュンペイは直感的に理解した。
「じゃあさ、もし映画館にいた奴らを殺したのが僕だとしたら、ユウジ君はどうする?」
「!」
ジュンペイが問い掛けると、ユウジは今までと違い目に見えて驚いた。
「まだヒーローになってから人を殺した事はないんだよね?」
「…うん、まだない」
「人の生命や尊厳を奪えるような人間は、殺すべきだと思う?」
ジュンペイは続けて問い掛ける。ヒーローとしては答え辛い質問かもしれないが、ジュンペイは純粋に知りたかった。
真人は―自分を肯定してくれた存在は自分のやりたい事をやれば良いと背中を押してくれた。母親も肯定はしてくれたが、きっと人を殺せば良いとは言わない。
そしてユウジは。新たに自分を肯定してくれた存在はなんと言うだろうか。自分と同じ歳でありながら、血を流して自分達民衆を守ろうのするヒーローは何を正義とするだろうか。
守らない方が良いと思えるぐらいの悪人でも―その正義を貫き通せるだろうか。
「…多分、ヒーローとしては殺した方が良いんだと思う。でも…」
「ユウジ君としては、殺したくない?」
「うん」
「なんで?悪い奴らだよ?」
ジュンペイは半ばムキになって聞き返した。きっと真人から教わった考え方が正しいと思いたい事もあったのだろう。ユウジはそんなジュンペイに怯む事なく、ポツポツと続ける。
「確かに許せる事じゃないし、ちゃんと裁かれなきゃいけないってのも分かる。でも、ずっとそうやって“悪い奴は倒す”っていう気持ちで続けたら、その選択肢が当たり前になっていって、いつか本当に救うべき人も切り捨てるようになる気がするんだ」
「ジュンペイがもし本当に人を殺してたとして、でもそれには理由があるだろ?だったらせめて、その理由を知った上で俺はちゃんと報いを向けて欲しい。それがきっと、ヒーローとして一番正しい向き合い方だと思うから」
ユウジはどこか遠くを見つめながら話す。まだ若く、経験も浅い彼なりに悩んだ末の答えなのだろう。
「そっか…」
ジュンペイはユウジの言葉が頭の中で反響するのを感じていた。当然自分を虐めていた奴らに対する恨みや憎しみが消えたとは言わない。
だが自分が人を殺してしまう事で自分の愛する人の魂が穢れてしまうのなら―
(僕に人は、殺せない)
―それを良しとはしないだろう。
「お待たせしました」
「おかえり、長かったね。誰と話してたの?」
突然の声に少し驚きながら振り返ると、そこにはナナミがいた。どうやら通話から戻って来たらしい。
「ゾンビマンさんと連絡が着いたので、一旦合流します。ジュンペイ君にも着いて来てもらうので保護者同伴、それが無理なら連絡を入れておいて下さい」
「分かりました」
話を聞いたユウジとジュンペイは用意されてある車へ向かう。流石に来てもらうのは忍びないと思ったジュンペイは、母親に連絡だけ入れておく事にした。
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「よし、参考人も連れて来れるみたいだな」
ナナミとの連絡を済ませたゾンビマンは、一息つきながら一服する。
(親は連れて来れないみたいだが、保険はかけた。アイツなら守り切れるだろ)
そして思わぬ協力もあったので、不測の事態にも可能な限り備えた。100%の保証はないが、人死が出る可能性は限界まで下げられたと言って良い。
(問題は…アイツか)
とは言え、確実と言えないのは真人の存在があるからだ。
真人は見た目通り生まれてからそう時間が経っていない。今の実力ではシルバーファング等を筆頭としたS級上位ヒーローはもちろん、抑えるだけならS級下位のヒーローでも可能だ。
しかし、裏を返せば生まれたての時点でレベル“鬼”の実力があるという事。ゾンビマンとの戦いでは領域や極ノ番は確認できなかったが、もし習得してなかったとしてもそのレベルに至るまでそこまで時間は掛からないだろう。反転術式であれば容易く屠れるが―ゾンビマンはどうも嫌な予感がしてならない。
(奴の術式の肝である魂…こっちの予想を遥かに超える被害者数―一秒でも早く倒さなきゃ面倒な事になる)
単純計算でも、使った改造人間の分だけ被害者がいるのだ。時間経過と共に加速度的に増える上、実力も向上するとなれば、未熟である今が最大のチャンスだ。
「おっ、来たな」
そしてゾンビマンが待っていると、目の前から黒い車が到着した。中からナナミ、ユウジ、ジュンペイの三人が下りてきた事でひとまず安堵した。
「ジュンペイ君…だな?知ってるかは分からんが俺はゾンビマンだ。よろしくな」
「あっ…よろしくお願いします…」
ゾンビマンは可能な限り柔らかい態度で挨拶するが、初のS級ヒーローとの対面という事もあって少し緊張しているようだった。
「そう言えば、すみません…母を連れて来る事はできなくて…」
「ああ、大丈夫だ。当然連れて来てくれた方が良かったが、対策がないわけじゃないんだ。とにかく、今は君を全力で守る」
ジュンペイは母親を連れて来れなかった事を謝罪するが、ゾンビマンはそれを問題ないと笑って流す。
「これからどう動きますか?」
「俺とナナミで目的の怪人を探す。ユウジはジュンペイと一緒に家に行って母親と一緒に守ってやってほしい」
「…彼一人には流石に荷が重いのでは?相手がどう動くかも分かりません」
「む…」
ユウジだけにジュンペイ達を守らせる事にナナミが苦言を呈し、ユウジがそれにむっとした表情になるが、ナナミが自分やジュンペイを心配した上での発言である事はユウジも理解している為、反発はしない。
「心配するな、頼れる味方がいる。戦力差としても十分だ」
しかしゾンビマンは確信を持った口調で問題ないと断言する。ナナミもゾンビマンの思慮深さは知っている為、それならばと追及する事はなかった。
「あのっ…!」
「ん?どうした?」
話がまとまり、各自動き出そうという時に、突然ジュンペイが待ったをかける。大人しそうな雰囲気で自ら意見をする事に内心ゾンビマンは驚いていたが、本人の様子からかなり真剣な話に思える為、口には出さずにいた。
「その…僕…知ってます…真…怪人の、居場所…」
「「!」」
ジュンペイは緊張からしどろもどろになりつつも、必死に伝えようと口を回す。
「名前は真人…で、確か魂を操る術式を持っています…見た目は人に近くて…全身にツギハギが見えます…仲間がいるようですが…僕が知っているのは真人…だけです…」
ジュンペイは自身の知る情報を全て話した。結果はゾンビマンが知る情報しかなかったが、逆に言えばジュンペイの話した事が全て事実であるという事が証明された。
「有り難い…が、なんで今話そうと思ったんだ?」
ゾンビマンは困惑した様子でジュンペイに質問する。ユウジやナナミも理由が気になっているようだ。
「色々、考えたんです。何が正しいのかって。正直、僕を虐めてた奴らを許す気なんて微塵もありません。死んだ事に対しても、自業自得としか思わないです」
ジュンペイが虐められていた、という事に関しては三人共薄々察してはいたが、彼の憎悪が垣間見える言葉に対しては、少し危機感を抱いたのか目を細めた。
「“人に心なんて無い。だからやりたい事をやれば良い”。そう教わって、それが間違っているとも思えなかった。人を平然と呪えるような心なんて無い方が良かったから」
ジュンペイの言葉に、ナナミやゾンビマンは憂うような表情になる。人が怪人に変貌するのを見た事がある二人にとって、ジュンペイの意見はある程度理解ができるのだろう。
「でも…人を呪う事で僕の大切な人の魂が穢れてしまうのなら、僕の為に泣いてくれるのなら…僕に人は、殺せません。だから、僕は…」
ジュンペイの声が震える。きっと不安で堪らないだろう。如何に怪人の世迷言と言っても、彼がその言葉に救われた面も確かにある筈だ。それを結果的に見れば裏切るような形になったのだ。そのショックは彼にしか分からないだろうし、怪人に加担した事で何をされるか、どんな目に合わされるかという恐怖もあるだろう。
ジュンペイの様子を見たゾンビマンは―
「ありがとな。よく話してくれた」
「!」
―肩に優しく手を置き、笑みを浮かべながら礼を言った。
「俺は君とここで初めて会った。君の人物像は書類上でしか知らないが…きっと多くの葛藤があっただろう」
そしてゾンビマンは、ヒーローとして向き合ったであろうユウジとナナミを見る。
「それでも、君は人間の手を取ってくれた。それが正しい事だと信じて。だから、ありがとう。君が手を取ってくれたおかげで、俺達は救う事ができた」
「っ…!はい…!ありがとうございます…!」
ゾンビマンが優しく笑うと、ジュンペイは緊張の糸が切れたのか、涙を流しながら礼を返した。ユウジとナナミ、イジチの三人は「良かった良かった」と言わんばかりの表情で頷いていた。
ゴロゴロ…!
「ん?雷?」
「予報だと雨すら降らなかった筈ですが…ゾンビマンさん、今は急ぎましょう」
「ん、そうだな、ゆっくりしてる時間は無かったな。立てるか?」
「はい、だいじょ―」
ジュンペイがゾンビマンの手を取り、立ち上がろうとしたその時だった。
ドガアアアアアン!!!
「うええ!?落ちたぁ!?」
「…いや、今のは…」
突然の落雷に全員驚きながらも咄嗟に地面へ伏せた。ユウジは半ばパニックになるが、ゾンビマンは何か違和感があるのか、落雷が起きた地点へ目を向ける。
ドゴオオオオオン!!
「爆発!?…と嵐!?」
「こうも連続に…!」
息を着く間もなく今度は反対方向から爆発音が響いた。それを合図としたのかのように空から不穏な音が鳴り響き、土砂降りの雨が身体と地面を叩いた。
「…野郎…!」
ゾンビマンは何かを確信したのか、悪態をつく。この現象の元凶を、脳裏に思い浮かべながら。
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「さて、ショータイムだね」
人の悪意より生まれし呪いは、歪な笑みを浮かべた。
はい、今回はここまで。次回ぐらいで終われるかなぁ。
・ユウジ(虎杖悠仁)
光のヒーロー。やっぱりお前他人の脳を焼く才能あるよ。
・ナナミ(七海建人)
現実主義で“ヒーロー”って称号に思うとこもありそうだけどやるってなったらちゃんと向き合いそうって感じする。
・ゾンビマン
無事復帰。誰か協力者がいるらしい。
・ジュンペイ(吉野順平)
原作と違い光堕ち。ユウジだけでなくナナミの説得があった事、真人の策略によって母親が殺されなかった事が大きいですね。これなら死なないな!
・真人
原作通りのルートはほぼ潰れました。が、何か策がある様子…
こんなもんかな。今回が穏やか()だった分次回は荒れそうです。
評価、感想もよろしければお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?
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五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
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宿儺(完全体、十種、術式情報なし)