【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た   作:サクラン

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最近の投稿頻度が落ちているのはをYouTubeを始めたからです。
え?そんなの私達からしたら知ったこっちゃないって?ごもっともです()

それではお楽しみ下さい。


第三十二話 傲慢の罰

 Z市。突然の雷雨に見舞われたこの街はちょっとしたパニックに陥っていた。

 

「やっば!土砂降りじゃん!どっか建物に入らないと!」

 

「先程の落雷の位置…確かヒーロー協会のZ市支部があった筈ですが…」

 

 そして傘など持って来ていなかったヒーロー三人とジュンペイは当然びしょ濡れになる。ユウジとジュンペイはあたふたするが、ゾンビマンとナナミは神妙な表情で考え込んでいる。

 

「…取り敢えず、これが偶然かどうかを判断する為に連携を―」

 

 ゾンビマンが携帯端末を取り出し、連絡をかけようとした次の瞬間―

 

 

 

 

 

 ドオオオオオン…!!

 

「「!!」」

 

「いっ!?」

 

「うわっ…!?」

 

 ―休ませる暇は与えないと言わんばかりに、遠くのビルで爆発が起こった。それと同時にゾンビマンの端末に連絡が来た事を知らせるバイブが響いた。

 

「俺だ。どうした」

 

「ゾンビマンさん!大変です!爆発したビルから大量の改造人間が…!!」

 

 ゾンビマンが電話に出ると、イジチの焦った声が豪雨の中でもハッキリと分かる程度には聞こえた。よく耳を澄ませてみると悲鳴も聞こえる事から改造人間は無差別に周囲の人間を襲っているらしい。

 

「周囲に対応できそうなヒーローは?」

 

「偶然居合わせたC,B級の方々で対処を…しかし殲滅ペースが追い付いていません!規模的には最低でもA級ヒーローが複数必要かと…!支部への連絡も先程の落雷の所為か繋がりません!」

 

「報告したツギハギの怪人はいるか?」

 

「今の所確認できていません!しかし改造人間が何処からともなく増えているように思える事から近くに潜んでいる可能性はあります!」

 

「…分かった、とにかくお前は避難誘導を頼む。対処に当たってるヒーロー達にはツギハギの怪人が出たら無理せず撤退するように伝えろ。A級かS級が来るまでは周囲の改造人間の対処だけに尽力するようにしてくれ」

 

「分かりました!」

 

 携帯を切ったゾンビマンは状況の悪さに思わず舌打ちし、どう対処するべきか思考を巡らせる。

 

(改造人間がいるって事から真人とか言う怪人が絡んでいるのは確定してる。ただ何が目的だ?単にこっちに被害を出したいだけなのか?それとも…何か別の狙いがあるのか?)

 

 ゾンビマンが背後に立っているユウジとジュンペイをちらりと見る。片や宿儺の器、片や真人と繋がりがある。この二人に対して何か良からぬ事を考えていてもおかしくない。

 

(ジュンペイだけ母親と合流させて、それ以外は全員改造人間の対処に当たるか?アイツには負担を増やす事にはなるが、ユウジには真人やその仲間の対処は荷が重い…)

 

 ゾンビマンもナナミも範囲や数をカバーできるような攻撃手段は持っていない。改造人間の方も放置はできない以上、絶対に応援が必要だ。

 

(そしてこの悪天候。恐らくは真人との戦いに割って入って来た奴だな。アイツは更に厄介だ。対処できるのは…恐らく任せるしかない)

 

 更に状況を悪くしているのは、この悪天候を引き起こした元凶―恐らくゾンビマンと真人の戦いに乱入して来た怪人だ。攻撃の出力から考えるに、どれだけ低く見積もってもレベル“鬼”はあるだろう怪人。しかも戦闘スタイルの相性を考えるとゾンビマンでは相性が悪い。

 しかし不幸中の幸いなのは協力者がいるという事。あの協力者なら恐らく対処が可能だ。だが言い方を変えればその協力者は悪天候の怪人に掛かり切りになってしまう。瞬殺して即応援に来てもらうのが理想だが、それはあまりに希望的観測過ぎるだろう。敵の力量が不確定である以上計算し辛いが、戦闘を開始すればしばらくは加勢に来れないと見るべきだ。

 

「「!?」」

 

「なんだぁ!?」

 

 その時、思考に耽っていたゾンビマンが思わず顔を上げてしまう程の呪力の“起こり”を上空から感じ取る。その出力は呪力操作、感知に関してはまだ未熟なユウジですら感じられてしまう程。

 

「マズい!伏せろ!」

 

 ゾンビマンが叫んで警告し、ユウジがジュンペイに覆い被さるように共に伏せ、ナナミがそれを守るように鉈を構え、更にその上からゾンビマンが守るように立ち塞がった。

 

 

 

 

 

 ゴロゴロ!ドガアアアアア!!

 

 

 

 

 

 それから一秒も経たぬ内に空が昼かと思う程に光り、大量の雷が雨のように降り注ぎ、街を穿った。

 

「街が!」

 

「…もはや猶予は与えないという事ですか」

 

「だがこれで、倒すべき相手もハッキリ見えた」

 

 ユウジが街の様子を心配し、ナナミは厳しい表情で敵の魂胆を見抜く。ゾンビマンも表情こそ厳しいが、倒すべき相手をハッキリと認識していた。その先には、空をふわふわと飛行する人影があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お〜?あの感じを見るに気付いたかな〜?』

 

 雲のすぐ側を飛行する人影―空廻はこちらを睨み付けるゾンビマンの姿を発見していた。真人からの指示で嵐を巻き起こし、追加で落雷の雨を引き起こした空廻は一息ついて休んでいた。

 

『全く〜人使いが荒いよぉ〜。いくら実際の天候を利用するって言っても呪力は消費するんだからさぁ〜』

 

 空廻の術式は“天候操作及び具現化”。空や天候に対する負の感情を元に生まれた空廻は嵐も雷雨も思うがままに事象化できる。しかし当然それには呪力を使うし、大規模な天候を生み出すとなればその分消費も大きくなる。この雷雨や先程の落雷もそこそこの呪力を消耗してしまった。

 

『ま、頑張らなきゃなのはここからだよね〜。来るかな〜?』

 

 空廻は地上を見渡すが、特に何か変わった事はない。しかしゾンビマンが誰かに連絡しているようだった。

 

『ん〜?こっちの狙いがバレたかな〜?まあ良いや。何回もやればそのうち来るでしょ』

 

 空廻はゾンビマンの行動から一瞬警戒すべきかと考えるが、すぐにそれを止めた。飛行する自身をどうにかできるヒーローは限られているし、本当に危険になれば逃げれば良い。真人からもそう言われているし、無限のサトルや戦慄のタツマキが来たとしても逃走ぐらいなら可能だ。

 

『それじゃあ〜もう一発〜行ってみよ〜!』

 

 空廻はその指先を空に向けて術式を発動し、また落雷の雨を降らせようとする。

 

 ボッ!!

 

『んん?』

 

 すると空に向かって掲げた腕を何かが貫いた。空廻が飛んで来た方を見下ろすと、巨大な何かが高速で自分に向かって来ていた。

 

『―釣れたね』

 

 そしてただ一言ぽつりと呟くと、表情を薄ら笑いから無表情に変え、それに呼応するように白い雲のような身体が不穏な黒に変わった。

 

「“雷虎(ライコウ)”!!」

 

「ガルアアアアアァァァァ!!」

 

 それと同時に眼下から高い声が響き、その後に獣の咆哮と金色の雷が空廻に向かって放たれた。

 

「“万雷”」

 

 空廻は腕を上に掲げて指先から電気を放つと、一瞬空が光って複数の落雷が降り注ぎ、獣の放った雷に当たって相殺した。

 

『誰が来たのかと思ったら、君か』

 

 空廻は冷静に目を細めて、目の前の乱入者を捉える。直に会った事はなかったが、その姿には覚えがあった。

 

「…怪人に知り合いはいないんだけど。どこで知ったのかな?」

 

 小柄な身体に、背中に背負ったランドセル。一見どこにでもいる小学生男児としか思えないその姿はS級6位ヒーロー、童帝だった。

 ゾンビマンの出した応援信号をいち早くキャッチして駆け付けた彼は、ゾンビマンからの頼みでジュンペイの母親の保護に入っていたが、空廻を見過ごす事は流石にできないと感じて止めにやって来たというわけだ。

 

「街への攻撃、迷惑だから止めてもらえない?」

 

『嫌。この街丸ごと怪人(私達)にくれるなら考えてあげても良いけど』

 

「怪人にそれは贅沢過ぎるでしょ、今のままで我慢して下さいな」

 

『じゃあダメだね。君を殺して反撃の狼煙を上げさせてもらおうかな』

 

「悪いけど、ここで止めさせてもらう!」

 

 空廻が呪力を漲らせ、童帝がそれに対抗するように啖呵を切る。

 数秒後、空には二つの雷が轟いた。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「童帝が!?」

 

「ああ、応援に来てくれてな。空の方はアイツが抑えてくれる」

 

 ゾンビマン達は街を駆け、空で戦う童帝を視界に入れつつ現場へ向かっていた。なお呪力操作も身体能力もまだ未熟なジュンペイはユウジが背負っていた。

 

「ならば私達は―」

 

「―街で暴れてる改造人間の方だ」

 

 そうして話している内に火の手も上がっている街に辿り着く。状況としては阿鼻叫喚であり、数人のヒーロー達が連携して辛くも凌いでいるという状態だ。

 

「酷え…!」

 

「…相変わらず胸糞悪いことをしてくれる。俺が鎮圧に当たる、ナナミはユウジと一緒にジュンペイを守れ。他の民間人と合流してそこの護衛を頼む」

 

「分かりました」

 

「了解!気を付けて…!」

 

 ナナミとユウジに指示を出し、二人と別れたゾンビマンは斧と剣を構え、荒れる街中へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「うっ…!多過ぎるんですけど!」

 

「気持ちは分かるが踏ん張れ!ここ突破されたら皆終わりだぞ!」

 

「口ヨリ手ヲ動カセ!応援ガ来ルマデ耐エロ!」

 

 街の一角、小さなビルの前では数人のヒーローが改造人間を相手にしていた。水色の髪にスーツを着込んだ女ヒーローが刀で迎撃するも次から次へと押し寄せて来る改造人間に、徐々に疲労が見えてきていた。

 それでも彼らがここで耐えるのは、中に大勢の人々が避難しているからだ。ここを突破されれば中にいる人々は皆殺しにされてしまうだろう。

 

「っていうかお前サイボーグだろ!こう…ビームとか出せないのか!?」

 

「出センコトハナイガココハ街中ダ!アマリ大キナ攻撃ハデキナイ!」

 

 覆面を被った男が手から角が発射しつつ腕から剣を生やして応戦しているサイボーグに叫びながら聞くが、サイボーグからは苛立ちを含んだ怒鳴り声が返ってきた。

 

「(ここで“竜”は使いたくないな。メカ丸の方も大規模攻撃はできないとなると…)じゃあ気張るしかないな!」

 

 無い無い尽くしではあるが、だからと言って小言を言ってる場合ではない。人々の命が自分達の肩に懸かっているのだ。死んでもここは通せない。

 

「うわっ!?」

 

「!! ミワッ!!」

 

「ちょっ!?ええっ!?おおい!!」

 

 しかし戦い続けたとして状況が好転するとは限らない。居合で迎撃していた女性が数に対処しきれず改造人間に抑え付けられてしまった。それを見たサイボーグは思わず目の前の敵を放置して救援に駆け出し、覆面を被った男は驚いて声を上げる。

 ギリギリの状況で陣形が崩れた。「このままでは突破される」男はそう思ったが―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 

 

 

 

 ―一つの影が割って入り、改造人間達を一気に弾き飛ばした。それを見た覆面の男は感激したように目を見開く。

 

「ナナミサーーーーーン!!」

 

「お待たせしました。ここから押し返します」

 

「うす!」

 

 興奮して叫んだ男に対してナナミはあくまで冷静に士気を高め、男も気合いが入った様子で返事をする。

 

「無事カ!?ミワ!!」

 

「はひぃ…助かりましたぁ…」

 

 一方抑え付けていた改造人間を全て倒したサイボーグは女ヒーローに手を貸して立ち上がらせていた。

 

「(他のヒーロー達が応戦してくれてたのか!)ジュンペイ、取り敢えず建物の中に隠れててくれ。俺はこっちを手伝うから」

 

「いやっ…!僕もっ…!」

 

 ジュンペイを逃がして戦場へ向かおうとするユウジをジュンペイは引き止めようとする。自分も式神を扱う事はできる。無力ではない。戦える。そう思ったからだ。

 

「ダメだ」

 

「!」

 

 しかしユウジはそれを良しとしなかった。なぜならば―

 

 

 

 

 

「俺達はヒーローだ。ここの戦いでジュンペイ達が死んだら、俺達の敗けだ」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―そう、ヒーローだからだ。ヒーローの役目は戦いで勝つ事ではなく、誰かを守り、救う事だとユウジは解釈していた。

 ならばここでジュンペイが死ねば役目を果たせなかった自分達の敗けだ。

 

「だからここは耐えてくれ。ジュンペイが逃げれば、俺達の勝率は上がる」

 

 だからこそ逃げて欲しい。足手まといだとか以前の問題として、自分達が勝つために。

 

「…っ分かった!ユウジ君も気を付けて!」

 

「応!」

 

 ジュンペイは悔しさを滲ませながらもユウジに激励を送り、ユウジもそれに力強い声で応えた。

 ジュンペイが建物の中に逃げ込んだのを見届けると、ユウジは目の前の戦いに目を移した。そこでは改造人間達が次々とヒーロー達によって数を減らされている。

 

「無理をしてまで戦う必要はないですよ」

 

「! ナナミン…」

 

 複雑な表情で成り行きを見守っていたユウジの側に、少し余裕ができたナナミが話し掛ける。

 

「ごめん、俺も戦わないと…」

 

「だから良いんです。自分の中での踏ん切りが付けられるまで、しっかり悩んで下さい。何か相談したい事があるなら聞きますし、こればかりはアナタ自身が答えを出さねばならない事ですから」

 

 戦わないユウジをナナミは責め立てるような真似はしなかった。ナナミもユウジが背負っている責任はあまりに重い事を知っている。だからこそ、彼が壊れてしまうような事があってはいけない。

 

「…うん、分かった。ありがとう」

 

「アナタはここの護衛をお願いします。何が起きるか分かりませんから」

 

 ナナミは建物前を守る事だけユウジに伝えると、また戦線に戻って行った。ユウジはそれを申し訳なさげな表情で見送った。

 

「…いや、戦いはまだ終わってねえんだよな。だったらしっかりしねえと!」

 

 ユウジはそこで今一度気合いを入れ直すべく自分の頬を叩く。戦えないにしても大勢の命が懸かっている事に変わりはないのだ。答えを出すのはまた後でも遅くはない。今は自分に与えられた役割を全うするのが最善だ。

 

 

 

 

 

「うわああああああああああ!?」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 その時、誰かの叫び声が響いた。ユウジはそれの声が聞こえた方角に驚いた。

 不謹慎ではあるが、単なる叫び声ならこの状況下においてそこまで珍しいものではない。まだ混乱は収まりきっておらず、ヒーロー達も慌ただしく動いている。

 ユウジが驚いたのは声の聞こえた方向が自身の真後ろ―つまりビルから聞こえて来たからだ。

 

「━━━━━ッ!」

 

 誰に指示を受けるまでもなく、ユウジは全力で駆け出す。暗いビルの中に入ると、確かに上階の方から叫び声が聞こえていた。

 

(いつの間にビルに入られた!?隣接してるビルから入り込んだのか!?)

 

 全速力で駆けながらも、何故入り込まれたのか疑問が生まれた。一応このビルの左右隣にもビルがあり、そこから入り込まれた可能性もあるが、音もなく可能なのだろうか。どこか腑に落ちないままユウジ叫び声の元に辿り着いた。

 

「うわあああああ!?」

 

「きゃあああああ!!」

 

「酷え…!」

 

 そこでは異形の生物に人々が襲われており、地獄絵図と化していた。

 

「グアアアアア!!」

 

「ッ!!」

 

 視界に入った瞬間襲い掛かって来た異形を反射的に殴り飛ばすと、ユウジはその存在になんとも言えない嫌悪感を抱いた。

 

「こいつらまさか…」

 

 そしてその感覚から最悪の可能性に辿り着く。そして思わず周囲を見渡すと、その存在が目に入った。

 

 

 

 

 

「やあ、ジュンペイ」

 

「…真…人さ…」

 

 

 

 

 

 そこにはまるで友人に会ったかのように気軽に話し掛ける真人と、真人に怯えるジュンペイの姿があった。

 

「(ツギハギの怪人!ゾンビマンさんが言ってた魂を操るって奴か!)逃げろ!ジュンペイ!」

 

 ユウジはすぐさまジュンペイを助けようとするが、改造人間達に阻まれて助けに行く事ができない。

 

「そんなに怯えなくて良いじゃん?俺との仲でしょ?」

 

「う…あ…」

 

 真人は怒るわけでも驚かすわけでもなく、自然体で話す。しかしジュンペイは怯え切った様子で言葉すら発せられていない。

 

「…ま、ジュンペイはさ、まあ頭良いんだろうね」

 

 真人はその手の中で小さく縮めた人間をイジりながら続ける。

 

「でも熟慮は時に短慮以上の愚行を招くものなんだよ。君はその典型―だったんだけどね。ヒーロー共がやってくれたよ全く」

 

 真人はここで初めて表情を歪め、ヒーローに対して悪態を突く。ゾンビマンに飲まされた辛酸は未だに印象に残っている。

 

 ―だからこそ、彼はそれの憂晴らしをすべく動く。

 

「でも、この状況だからできる事もあってね。面白いもの見せてあげる

 

「! 止めろ!」

 

 ジュンペイだけでなくユウジの方にまで振り返って笑みを浮かべた真人にユウジは強烈な危機感を覚えた。しかし真人は残酷にも行動を続ける。

 

「はい、ご案内〜」

 

 真人が背後で手を組むと、何かが動いて人の形を成した。しかしそれは誰かを襲うわけでもなく、ぼーっとそこに佇んでいた。

 

(? 誰だ?)

 

 改造人間を抑え付けつつ、ユウジはその人間を注視する。どこからどう見ても普通の一般人―なのだが、それを見ているとどうにも危機感は収まらない。

 一方ジュンペイは呆然とした様子で真人の背後にいる人物を見つめている。そして真人がゆっくりとその人物の前からどけると―

 

 

 

 

 

「母…さん…」

 

 

 

 

 

 ―一人の女性―ジュンペイの母親が佇んでいた。

 だが、その様子は明らかにおかしく周りで叫び声や異形の怪人が暴れまわっているというのに目が虚ろなままだ。ジュンペイも明らかにおかしいと感じたのか、慌てて母親に駆け寄る。

 

「母さん!なんでこんな所にいるの!?大丈夫!?ねぇ!!」

 

 真人がすぐ側にいるにも関わらず、必死に身体を揺さぶって呼び掛ける。息子に必死の剣幕で揺さぶられて、母親は僅かな反応に見せる。

 

「ジュン…ペイ…」

 

「!! そうだよ母さん!僕が分かる!?」

 

 反応を見せた母親にジュンペイの表情に光が灯る。その表情を見たジュンペイは母親は少し悲しそうに笑うと―

 

 

 

 

 

「愛してルゥ」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 ―その笑みを気味の悪い笑みに変えてそれと同時に頭部が変化し、異形の身体となった。その悍ましい光景にはユウジも思わず動きを止める。

 

「…え?は?なんで?母さん?」

 

 目の前で起こった現象を信じ切れないジュンペイは異形―母親に呼び掛ける。硬直していた母親はその声に反応すると―

 

 

 

 

 

「━━━━━ッ!!」

 

「ッッッッアアアアア!!??」

 

 

 

 

 

 ―容赦なく目の前のジュンペイへ噛み付いた。ジュンペイは元母親の異形に襲われる恐怖と痛みから絶叫を上げる。

 

「ジュンペイ!」

 

 ここでユウジも硬直が解け、ジュンペイが殺されないよう母親を抑え付ける。

 

「母さん!!母さん!!」

 

 ユウジが抑えて藻掻く母親にジュンペイは涙を浮かべながら何度も呼び掛ける。元に戻るかもしれない。その奇跡を信じて。

 

「ジュンペイ…!」

 

 ユウジは必死に考える。どうにかして母親を救う術を。しかし自分ではどうしようもない以上できる事などない。諦めかけたその時に―

 

 

 

 

 

「ケヒヒヒッ、愉快な事になっているなぁ、小僧」

 

「! 宿儺!」

 

 

 

 

 

 ―ユウジの目元から口が現れ、中にいる宿儺が声を出す。ユウジはそれを見て思った、“呪いの王”と称される程の存在なら、治す術を知っているのではないかと。何を要求されるかは分からないが、とにかく今は母親が救えるのならなんだって差し出す。

 

「なんでもする!俺の事は好きにして良い!だから頼む!ジュンペイの母ちゃんを治してくれ!!」

 

 藁にも縋る思いでユウジは宿儺に叫んだ。自分が死んでも良い。それでも救えるのならと、ユウジは宿儺に賭けた。破格の要求に宿儺は―

 

 

 

 

 

「断る」

 

「! テメェ!」

 

「!」

 

 

 

 

 

 ―宿儺の答えにユウジは青筋を立て、真人は意外に思った。もし今のユウジの言葉をダシにすれば自由の身となるのも難しくない。最悪敵対する事になるかと身構えたが、真人としては幸いだった。

 

「言ったろう?愉快ではないか!力も平穏も全てを欲しがった身の程知らずの餓鬼が調子に乗った結果自らの過ちで破滅する!これ以上の道化がいるか!?」

 

 宿儺はジュンペイを嘲笑い、その願いを傲慢だと一蹴する。それを聞いていたジュンペイは自分の行動の愚かさに思わず硬直してしまう。

 普通に考えればそうだ。怪人になんて着いて行くわけもない。しかし目先の甘い誘惑に釣られてノコノコ着いて行った結果がこれだ。自分の選択で、身の程知らずの理想を抱いた所為で母親はこんな事になったのだ。

 

「そして惨めだなぁ小僧!そんな餓鬼を愚かにも救おうとし、未来も矜持も全て捨てて俺に縋ろうと、何も救えないとは!これが民衆を守る“ヒーロー”とやらの姿か!?実に惨めで滑稽だぞ小僧!」

 

 宿儺はそんなジュンペイを救おうとするユウジも嘲笑う。

 あんな大口を叩いた癖に救う方法は自分に縋るだけ。情けなく、滑稽な事この上ない。

 

(まあこれはこれで…)

 

 そして真人としても改めて宿儺の言葉を聞くと面白い事この上ない。理想と現実の擦り合わせができてない馬鹿な餓鬼共が、こんな情けない表情を見せているのだ。思わず腹の底から笑みが溢れてくる。

 

 

 

 

 

「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!」」

 

 

 

 

 

 耳障りな下衆な笑い声がビルの中に響き渡る。ジュンペイは放心し、そんな中ユウジはふと確信した。

 

 

 

 

 

(ああ、そうか)

 

 

 

 

 

 怪人である真人も、自分の中にいる宿儺とも。

 

 

 

 

 

(こいつらは)

 

 

 

 

 

 絶対に相慣れることはない。

 

 

 

 

 

(どこまで行っても―怪人なんだ)

 

 

 

 

 

 殺さねばならない“敵”なのだと。

 

 

 

 

 

「ジュン…ペイ…」

 

「!」

 

 その時、母親が消え入るようなか細い声を出す。

 

「タス…て…」

 

 そして言葉にならない言葉を遺すと、その場に崩れ落ちた。

 

「母…さん…」

 

 呆然とした表情が徐々に崩れ、目元からは涙が溢れ始める。今際の際に母親が遺した言葉に、ジュンペイは泣き崩れた。

 

「うわああああああああああ!!!」

 

「…あ〜笑った笑った。ま、結局馬鹿なガキに変わりはなかったってことかな。心配せずともすぐに会えるからさ、再会の言葉を考えておきなよ」

 

 腹を抱えて笑っていた真人は目元の涙を拭いつつ、ジュンペイに手を伸ばす。溜飲は下がったとはいえ、元凶が生きたままというのは面白くない。後は適当に改造してヒーローとでも戦わせれば良い。

 

「じゃあ―!!??」

 

 真人がジュンペイに触れる寸前、真人の本能が最大の警鐘を鳴らす。懐を見るとユウジが拳を握り締めて構えていた。

 

(宿儺の器!狙って来たか!けどヒーローとしてはまだ未成熟、万が一を潰す為に防御さえ固めれば触れて終わりだ!)

 

 真人からすれば負ける事はあり得ないが、ゾンビマンの例もある。ダメージを与えて来る可能性を考慮して全力で呪力で防御し、かつ間に極限まで縮小した改造人間で防御を固める。そうすればカウンターで触れてしまえば殺せる。真人の考えは決して間違いではなかった。

 

 

 

 

 

「━━━━━━」

 

 

 

 

 

 しかし唯一の誤算があったとするなら―

 

 

 

 

 

 ―現在のユウジの集中力とそれをモノにする天運を侮っていた事だろう。

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!!」

 

 ズドオオオオオン!!!

 

「ガハァ!?」

 

 

 

 

 

 ユウジの拳が改造人間に触れた瞬間、空間に黒い火花が散り、その勢いのままに真人をビルの外まで吹き飛ばした。

 

「ユウジ君…」

 

「…ごめん、ジュンペイ」

 

 涙で顔をグシャグシャにしてユウジを見つめるジュンペイに対して、ユウジは振り返らずに話す。

 

「後で殴っても蹴ってくれても良い。でも今は…とにかく逃げてくれ。その代わり―」

 

 ユウジはそこで言葉を区切り、底冷えする程の低い声で―

 

 

 

 

 

「―絶対にアイツは殺す」

 

 

 

 

 

 ―その殺意を口にした。そしてジュンペイの返事を待つ事なく、真人が吹き飛ばされたビルの外へ駆け出すのと同時に、外の改造人間を倒し切ったヒーロー達が同じフロアに到達した。

 

「凄い音が聞こえたと思ったら…」

 

「何があったんだ?」

 

「…三人共、疑問は後で。今はとにかく救助を」

 

「了解ッス、ナナミサンは?」

 

 

「―私は彼を追います」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「ガ、ガフッ…!」

 

 ビルの外まで吹き飛ばされた真人は口から血を吐き、ダメージの後が色濃く残っていた。

 

(どういう事だ…!?宿儺の器は戦闘者としてはまだ未熟の筈…にも関わらずあの打撃!いやそれよりも―)

 

 真人はユウジがあれ程の威力の攻撃を放てた事に驚愕するが、そこは問題ではない。どれ程強力な攻撃を繰り出そうとも、魂に響かない以上は無意味となるのだから。しかし真人の傷は現在でも治ってない。それが示す事は―

 

 

 

 

 

(ユウジは魂の形を知覚し、確かに捉えている!“呪いの王”である宿儺を宿しているからか…自然とそれを可能としたのか!)

 

 

 

 

 

 ―真人の魂にさえダメージを通しているのだ。魂にさえダメージを与えられる以上は治癒の際に消耗する呪力も確かなものであり、頭を潰されれば死ぬ恐れもある。

 まさに天敵。そう思った真人の目の前に、ビルから飛び降りたユウジが着地し、憤怒の表情で殺意を発露させて宣言する。

 

 

 

 

 

 

「ぶっ殺してやる」

 

「…正義の味方の言う事じゃねぇなぁ?“ヒーロー”」

 

 

 

 

 

 そして互いに殺意をぶつけ合い、人と怪人が激突する。




はい、今回はここまで。次回か次次回に決着です。


・ユウジ(虎杖悠仁)
一足早く黒閃経験。原作でも曇っててちゅらい…

・ジュンペイ(吉野順平)
というわけで生存するも母親死亡。なんのお咎めなしとは行きませんでした。

・ナナミ(七海建人)
ユウジの応援へ。ユウジの黒閃はなんとなく感じ取ってます。

・防衛ヒーロー三人
まあピンと来る人ならピンと来るかなって。

・ゾンビマン
街全体の鎮圧へ。真人やユウジのいる位置からはかなり離れてます。

・童帝
というわけで応援は彼でした。戦闘力は上位陣に一歩劣りますが手数なら随一です。新しいポ◯モンと一緒に空廻を抑えます。

・空廻
空の呪霊です。真人から賑やかしをお願いされて協力してます。不確定戦力の誘き出しも兼ねてるので童帝の相手をします。

・宿儺
主導権握れるチャンスを捨ててでも小僧を煽りに来る呪いの鑑()。でもこの描写はどうしても入れときたかった…

・真人
やれる事はやって行くスタイル。けどその分しっぺ返しも多いです。原作の同じ時期より数段強い小僧を相手にします。


こんなもんかな。YouTubeで投稿頻度遅くなりますが死なない限り失踪はしないのでご安心を。

アンケートはただの興味なので気軽にお答え下さい。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?

  • 五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
  • 宿儺(完全体、十種、術式情報なし)
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