【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た 作:サクラン
それではお楽しみ下さい。
「街中大騒ぎだ…!」
「改造人間の掃討はほぼ完了しましたが雲の呪霊が好き放題した分の消火活動がまだ終わってませんから。ユウジ君は被災者の救護を、建物が崩落している箇所があるので」
「ウス!」
炎によって明るく照らされている街中を二人のヒーローが駆ける。
真人を惜しい所で逃がしてしまった二人は意識を切り替え、街の住民の救護活動を行っていた。改造人間はほとんど討伐が完了しているが、まだ空廻の大規模攻撃によって出た被害は鎮圧できていない。これ以上の犠牲者を出さないようにする為にも、ユウジ達は身体の疲労も気にせず動いていた。
「二手に別れた方が良くない?」
「いえ、撤退したとは言え敵勢力がいないとは確信できません。少々過剰ですがここは安全性重視で事態が収まるまでは共に行動しましょう」
ユウジが効率的に救護活動を行う為にナナミと別れて行動するべきではないかと進言するが、ナナミはそれを却下する。それは言ったこともそうだが別の理由も絡んでいた。
(…彼に責任を負わせるにはまだ早い。何かあった時には私が対処しなくては…)
ナナミは不安を胸の内に秘めたまま、火の手が上がっている街を駆けて行った。
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「あ、ありがとうございます!」
「いえ。それよりも速くシェルターへ、まだ倒壊の恐れのある建物も多くあります。できるだけ火の手が上がっている道路は避けて向かってください」
「わ、分かりました!」
そして駆け回ること10分、何組目か建物に塞がれて身動きが取れずにいた家族を助け出すと、シェルターへ向かわせる。同行できないのは心苦しいが、まだ終わっていない以上手放しに行動するわけには行かなかった。
「ユウジ君、次は…」
ナナミは見える範囲の救助は終わったと判断し、ユウジに声を掛けようとする。しかし―
「……………」
―ユウジの様子がおかしい。崩れた建物の前で呆然と立ち尽くしている。自身の無力さに打ちのめされているのだろうか。その気持ちは分からないこともないが、今は助けられる者を助けるべきだと、ナナミは声を掛けようとしたが―
「え〜ん…!」
「!」
―そこで気付く。街中から響くサイレンの音に混じって、子どもの泣き声が微かに聞こえることに。まさかと思い、ユウジの元へ走って行くと―
「パパ〜…!ママ〜…!」
「……………」
―瓦礫の前で親を呼びながら泣きじゃくる一人の男児と、それを見てユウジは呆然と佇んでいた。その表情はどうすれば良いか分からないというよりも―絶望しているように見えた。
「…僕、両親と逸れたのですか?」
ナナミはそんなユウジにあえて話し掛けず、泣きじゃくる少年に問い掛けた。
「! A級7位の…!助けて!パパとママが僕を庇って…!」
少年はナナミの姿を見て名の知れたヒーローだと気付くとナナミに助けを求めた。ヒーローなら、きっと助けてくれる筈だと。
「…少し離れていて下さい。瓦礫を退かすので」
ナナミは少年の「助けて」には答えず、瓦礫を退かす為に少年に離れるように伝えた。少年は両親と離れることに少し不安がったが、助けてくれるのだと思い、両親に向き直った。
「パパ!ママ!もう少しで出られるよ!ヒーローが助けに来てくれたから!頑張って!」
少年は守ってくれた両親にエールを送る。もう少しで助かると、助けてくれると。しかし両親が息子のエールに言葉は返さない。そのことを少年は少し疑問に思うも、気絶しているのだと一人で納得し、邪魔にならない場所まで下がった。
ナナミは少年に礼を告げると、自身のネクタイを拳に巻き付ける。
(…流石に殴って吹き飛ばすことはできない。少々骨が折れそうですが持ち上げるしか…)
積み重なった瓦礫の山を眺めながら、ナナミはどう退かすかを考える。一人で退かすにはかなり時間が掛かる。いくら
「俺が持ち上げるよ。ナナミン」
「! ユウジ君…」
その時だ。後ろから無感情な声が掛けられる。振り返るとユウジがこれまた無表情で立っていた。
「俺ならこの瓦礫を持ち上げられる。タイミング見て引っ張り出して欲しい」
「…ユウジ君、今の君に無茶は―「ナナミン」
自分一人で瓦礫を持ち上げるという発言にナナミは無茶はするなと止めるが、それはユウジが割り込んで来たことによって遮られる。
「俺がやるから」
そしてどこまでも無感情に―そう思える声色と表情でユウジは訴える。ナナミはその表情を少し悲しそうに見つめて―そして諦めた。
「…分かりました。すぐに助け出すので少しの間お願いします」
ナナミはそうしてユウジに頼むと、瓦礫の間から上半身がはみ出している場所ですぐに助けられるように屈んだ。ユウジはそこから少しズレた場所で瓦礫の出っ張りに指を掛けている。
「お願いします」
「せー…のっ!」
ナナミが合図を送るとユウジはタイミングを合わせて指に力を入れて、瓦礫を僅かに持ち上げる。ナナミは隙間が広くなったのを確認すると、素早く奥に手を伸ばして身体を前に引っ張る。掴んでいる手に感じるぬめりを無視してどこかに引っ掛けたりしないよう、慎重に引っ張り出した。身体が全て出きったのを確認すると、ナナミはもう一度瓦礫の中を覗き込む。少しの間覗き込んでいたが、しばらくして―
「……もう大丈夫です」
「!
「………
「! そうか…」
―あまり表情の変わることのないナナミの表情が分かりやすく歪み、質問への答えにユウジも悲痛に顔を顰める。ナナミが出て来たことで少し離れていた少年が駆け寄って来た。
「ハァ…ハァ…ありがとう!ヒーローさん!パパとママはどこ?」
少年は息を切らしながらもナナミとユウジに礼を言い、自分を守ってくれた両親の姿を探す。
「ねぇ、パパとママは?寝てるの?」
しかし明らかに姿が見えない。二人が何も言わないことと言い、その表情からは不安が色濃く見られた。そしてナナミが少し離れた場所から一つの包みを持って来た。
「…君に見せてあげられるのはこれだけです」
そしてその包みをめくると、一人の男性の顔が見えた。
「! パパ!パ…」
少年はその顔は自分の父親だとすぐに気付いた。そして嬉しさのあまり駆け寄るが―おかしいことに気付く。
「………パパ?」
ナナミが抱えている包みから覗いている表情は確かに父親のものだ。それは間違いないと断言できる。ある意味自分の顔以上によく見ているし、覚えている。厳つさを感じながらも確かな優しさを携えた表情も、怒った時の怖い顔も、悲しい時に流す涙も、よく覚えている。自分より高い背中の頼り甲斐も。
ならば何故―ナナミが抱えている包みの下半分は、明らかに短いのか。
大雑把にしか分からないが、父の身長はナナミより少し小さい程度。ならばナナミが父親を抱えた場合、背中と膝裏を持ち上げるような体勢になるはずだ。なのに―
「…パパはケガ、したの?」
呆然とした表情で少年は言葉を絞り出す。
「…恐らく君を庇った際に、瓦礫が下半身に直撃しました。この傷では―治るよね?」
ナナミが言葉の先を言おうとした瞬間、少年は割って入った。ナナミはそれに怒る事なく、ただ黙って聞き入れた。
「だって…だって昨日まで元気だったんだよ?今日だって一緒に買い物してくれたよ?それにママは?ママはどこいったの?ヒーローさん達さっき話してたよね?ママだってパパのすぐそばにいたよ?ママは探さないの?」
少年は泣きそうになりがら、ナナミ達を問い詰める。ナナミ達が答えを返さないことが答えのようなものだが、それでもそんな筈はない。そんなわけがないと自分に言い聞かせる。
「少年、君の両親は―」
「ヒーローなんでしょ!?」
―ナナミが事実を告げようとした瞬間、少年が泣き叫ぶ。ナナミはその言葉に僅かに顔を顰め、ユウジは辛そうに歯を食いしばる。
「ヒーローは人を助けるのが仕事なんでしょ!?ならパパとママも助けてよ!ヒーローなんでしょ!?」
しかし少年からして見ればそんな二人の事など関係ない。今までヒーロー達ならどんな強い怪人でも倒してくれると思っていた。自分達を守り、助けてくれると思っていた。それなのに目の前の“ヒーロー”を名乗る二人は両親を「助けられなかった」、「治せない」という。そんなことあるわけがない。あっちゃいけない。夢と希望に満ち溢れ、幸せを当たり前に享受していた少年にとって、それが当然の認識だった。
「…少年、ここはまだ危ない。私達がシェルターに連れていくのでそこで―」
それなら、目の前で突っ立っているこの二人は―
「そんなのヒーローじゃない!!!」
「……………」
―少年はナナミの差し出した手を振り払い、叫んだ。自分達を守ってくれない、救ってくれないヒーローなんてヒーローじゃない、認めない。ヒーローに憧れていた少年にとって、それは当然の答えだった。
「うわああああああああああん!!!」
「! 少年!」
そして遂に限界の来た少年は泣きながら走り出してしまう。これまで黙って聞いていたナナミも流石にそれは許容できず、追い掛ける。まだ火の手が収まっていない区域もあるし、瓦礫に至ってはほとんど手つかずだ。転んだりしては大怪我につながる危険性もある為、嫌われているのも承知でナナミは追い掛ける。
ボシュン!!!
「うわっ!? うっ…」
すると少年が走っているのに目掛けて何かガスのようなものが降り注ぐ。勢いのままに突っ込んだ少年はガスを嗅ぎ、そのまま倒れてしまった。
「少年!」
「大丈夫ですよ。即効性の睡眠ガスですから」
「! 童帝君」
ナナミが少年を抱き抱えると、空から降りてきたのは童帝だった。ランドセルから出したプロペラを中にしまい込み、心配はいらないと告げる。
「負傷は大丈夫なんですか?」
「まだ騒ぎが収まってないのに、僕だけ寝ているわけにも行かないでしょう。何より
「…それは君だけの責任では―「僕が了承して受け負ったんです。呪力にも余裕があったんだから別の式神を護衛に付けとくなりしていれば死ぬことはなかった。僕の責任です」
「……………」
童帝の冷静でいながらもまくし立てるような言い方にナナミは口を噤む。
童帝が言っているのはジュンペイの母親の件だろう。これに関してはそこまで責任感を感じる必要はない。そもそも自分達は援軍を頼んだ側の立場であるし、空廻を一人でほぼ抑え切ったのは間違いなく偉業だ。もし童帝がいなければ被害がもっと拡大していただろうし、全滅していた可能性だってある。
何より怪人側―真人のジュンペイやヒーローに対する悪意の執着度合いの高さはこちらの予想を超えていた。それを見抜けなかった自分達にだって当然責任がある。
童帝に全く非がないとは言わないが、責任を全て負っ被さるのは違うし、S級ヒーローと言えども彼はまだ10歳の子どもだ。その罪やそれによって生まれる非難は自分達大人が負うべきなのである。
しかしナナミは、彼にそれ以上言葉を掛ける事はできなかった。何故なら―
「…情けない…!!」
―その歯を食いしばった表情と、そこから滲み出るように呟いた言葉を聞くと、とても言えなかった。
「…それじゃあ、この子はよろしくお願いします。僕は他の地区に行くので」
「…分かりました。お気を付けて」
そして童帝は子どもをナナミに預けると、そのまま空へ飛び立った。ナナミ達は子どもをシェルターへ運ぶべく別の方向へ足を運んだ。
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そうして怪人災害発生から1時間38分後、建物からの火災は完全に鎮火され、分かっている限りの住民の避難が完了した。
しかし今回の災害による死者、行方不明者は100人以上にも昇り、重軽傷者は500人以上にもなった。建物への被害も金額に換算すれば凄まじい額となり、今回の災害が防げなかったヒーロー協会には当然、責任が問われる事となった。
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「…休んでなさい。怪我も軽くはないでしょう」
「…いや、いい」
ひとまず避難と救助活動を完了させたユウジとナナミは、近くにあった公園のベンチに腰掛けていた。幸いその場所は大きな被害に遭っておらず、年季の入った遊具がポツポツと鎮座していた。
ゾンビマンと童帝は報告の為にZ市支部に戻っており、今頃理不尽な追及を受けているのだろうとナナミは想像した。
「ユウジ君、今の君は“ヒーロー”なんです。いざという時に動けなくて困るのは私達だけじゃない」
そしてずっと寂れた遊具を眺めているユウジに対してナナミは注意する。真人から受けた傷は命に関わる程ではないものの、軽くはない。しかし感情論だけで言っても聞かないとナナミは半ば確信している為、あくまで事務的に休むことを勧めた。
「…ナナミン、俺は今日、人を殺したよ」
「……………」
しかしそれを聞いてもユウジは答えず、代わりに自分の犯したことを語る。ナナミもそれに割って入ることはしなかった。
「俺はさ、別に自分が完全無欠だなんて思ってなかった。サトル先生やタツマキは当然として、バング爺ちゃん達S級ヒーローの足元にも及んでないことぐらい分かってる」
「昔から身体動かすのは得意だったし、人並みより動けるってことは分かってた。―だけどそれが、
「でも、宿儺の指を食うってことは、俺にしかできないことだった」
ユウジの話に、ナナミは相槌を打たない。
「“他の誰にもできない”。だったらせめて、これだけはやろうと思った。例えその果てに待つのが死ぬことでも、自分にできることをやり切ってれば、後悔はしないって」
「そんでそれだったら、救える人はできるだけ救っとこうって思った。俺は強くない…だったらせめて、目の前の人を必死に守っとこうって…」
淡々と話していた声色が、徐々に震え始める。
「だがらさ…分がっでたんだ……自分が弱いっでごどぐらい…」
「いばのおれ゛じゃ…皆を守るごどはでぎないっで…」
ユウジの足元に、雫がいくつか滴り落ちても、ナナミはそちらに顔を向けない。
「でもお゛れは…人を゛ごろして…ごども一人救ってやる゛ごともできなくで…」
声色に、嗚咽と鼻水をすする音が混じる。
「お゛れは…!弱い゛自分が憎たらしい゛…!!」
その瞳から、大粒の涙が流れる。
「ヒーロ゛ーなんて…おれは…!!」
“名乗れない”。その言葉が続く前に―
「“ヒーロー”なんていませんよ。この世には」
「!」
―凛とした声が割って入った。
「少なくとも…今の世の中に活動する全てのヒーローの中に、“真のヒーロー”なんて呼べる者はいないと、私は考えています」
声の主―ナナミが語るその意見は、到底ヒーローとは思えない―ヒーローとして言ってはいけないことだと、ユウジは思った。
「そもそもヒーローという称号は到底一人の人間に務まるものじゃない。あらゆる悪を完全に撃滅し、誰一人死なせることも、泣かせることもない。どれか一つだけでも難しいというのに、それら全てを満たすなど―サトルさんやタツマキさんでも不可能だと断言できます」
ナナミはこれまでヒーローとしてずっと見て来た。自分じゃ手に負えない超災害級の怪人も、それを打ち倒すことができるヒーローも。
しかしそんな事例の中には一つ足りとも―“被害0”などと言う物はなかった。フラッシュやアトミック侍、クロビカリやシルバーファングと言った上位格のS級ヒーローが出動したものでも、最強の双璧を成すサトルとタツマキが出動したものでも、それ程の案件と確定した時点で、被害0はあり得なかった。
「絵物語の中で“ヒーローは遅れてやって来る”、という言葉があるように、私達ヒーローは通報なりその目で直に発見するなりして現場に駆け付けるのが基本なので―
“ヒーローは遅れてやって来るもの”。この言葉は真理を突いているとナナミは考えていた。ヒーローは助けを呼ぶ声を聞いてそこに駆け付ける。それはその通りだが―裏を返せば助けを呼ぶ声がなければ駆け付けるのは非常に難しい。
言うなれば今のヒーロー協会が行っているのはヒーロー達の地力に任せた対処療法であり、闇雲に怪人を倒した所で災害が減るわけではない。
「“ならそもそも災害の発生を防げば全ての人々を救い、守ることができる”。これができれば一番ですが、こんなものこそ人一人の強さでどうこうできるものでもない」
そう、それは決して人の身に実現できるものではない。サトルやタツマキがいくら強くとも地震の発生そのものを防ぐことはできないし、怪人の発生が減るわけでもない。
「だから結局私達にできることは―自分にできる力を持ってしてがむしゃらに救い続けるしかない」
「その過程で何が起こっても、その結果を変えることはできない。時間が過去に戻ることはないのですから」
奇しくも以前にトウドウが言っていた事と同じことをナナミは言った。“時間が遡ることはない、結果は結果として残り続ける”。
確かに、その通りだ。いくら自分を呪った所で死んだ人間が蘇るわけもない。なら今の自分がやるべきことは―
「だから私達にできることは、とにかく強くなることしかない。力無き正義ほど、罪なことはないですから」
―少しでも強くなって、救える人間を増やすしかない。それがヒーローとしての自分にできる精一杯のことだから。
「…ただ、私としては君や童帝君がこの生き方を選ぶのは憚られます」
「!」
しかしナナミにとって、ユウジや童帝がそういう生き方を選ぶのはあまり喜ばしいことではない。何故なら―
「罪や罰、そう言った責任を背負うのは我々大人の役目です。ヒーローだろうとそうじゃなかろうと、君達がその重りを背負うにはあまりに早い」
―彼らはまだ子どもなのだ。例え人々の為に身を粉にするのが正しい在り方だとしても、彼らにだって若人が享受して良い小さな幸せや、青春がある。それを捨てて社会の治安を意地すべく戦う―端から見ればそれは称賛される、憧れる生き方なのかもしれない。
しかしその為には、捨てるものがあまりに多過ぎる。ヒーローとして真摯に向き合う程、人として当たり前の幸せを捨てなければならない。
そしてナナミは、学生の頃に近い生き方を選び…道を外してしまった者を知っている。彼の至った結論は極端だと思うし、正しいとも思えない。だが…その結論に至った事を、責める気にはなれなかった。
「ただ…ヒーローとしてしか生きられない君には、背負うなと言うのは無理な話ですし、君の性分からして背負ってしまうでしょう」
ユウジが選んだ生き方は、彼と近い。他者の為に自身を犠牲にする生き方。その真面目に全てを受け止めてしまう性分も、そっくりだ。その生き方は正しいが折れやすく、また折れた際に取り返しがつかなくなってしまう。
しかもユウジは宿儺の器という立場であり、もう引き返すことができない。今更ヒーローを辞めることも、止まることも許されない。だから、ナナミから伝えられることは―
「自分なりにヒーローとしての価値観、指針を持ちなさい。正義も悪もその人間によって在り方を変える。自らとの違いに苦悩する時もあるでしょう。そんな時絶対に揺るがない、譲れないものがあれば、きっと後で後悔することもない」
―ヒーローの先達として、伝えられるべきことを伝える。強さという面で自分が伝えられることは少ないし、そもそもシルバーファングの弟子なのだからそんな所はあっちがどうにかしてくれる。彼の素質も十分以上のものであるし、経験を積んでどんどん強くなるだろう。
だが、心は別だ。迷ったまま勝てる程ヒーローの世界は甘くないし、間違った道へ進んでしまうと誰も幸せにならない。だからこそ、せめて彼が後悔することがないように、自分が伝えられることは伝えておく。完全な味方になるということは難しいが、せめて大人として見守ることぐらはできる。まだ彼はヒーローとなって日が浅いし、迷うことも悩むこともいくらでもあるだろう。そんな時に相談相手になるぐらいは、自分にだってできる。
それが大人としての自分が果たすべき、最低限の役割なのだから。
「…うん、分かった。ありがとう。ナナミン」
話を聞いていたユウジは目元を拭い、笑みと共にナナミへ礼を伝えた。ナナミはその顔を見て安心…とまでは行かないが、最低限前は向けたようだと薄く笑みを浮かべた。
(こちらはなんとかなるとして…問題はこの後ですね…)
ナナミは改めて今回の件が一段落着いたことを実感した。だが、後処理とユウジにどんな意見が投げ掛けられるかを危惧しつつ、天井を仰いだ。
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「は…?今…なんて…?」
「…どういう事かな?」
薄暗い地下。そこは怪人協会に所属する怪人達が根城としている場所である。空廻に連れられ戻って来た真人は、呆けた顔でギョロギョロを見上げながら聞き返した。
「言った通りだよ。真人、空廻」
しかしそんな真人の心境は知ったことではないと言わんばかりに、ギョロギョロは感情を感じさせない声と視線で真人を見ていた。
「君達にはここで死んでもらう」
そしてあっさりと、彼らの命を奪うと宣言した。
はい、今回はここまで。結局クッソ時間掛かってるじゃねぇかぁ!
・ユウジ(虎杖悠仁)
やっぱり曇らせられる男。ヒーローの負の側面にやられつつもナナミンのメンタルケアでなんとか復帰。
・ナナミ(七海健人)
ちゃんとした大人。子どもは好きって程でもないけどちゃんと向き合ってくれる辺りやっぱり聖人。ヒーローやってるけど“ヒーロー”って言葉はあまり好きじゃ無さそう。
・童帝
S級の中でもぶっちぎりで苦労人。色んな事に板挟みされ過ぎて潰れてないのが不思議。
・ゾンビマン
今回は影も形もなかったけど協会の方へ報告に行ってる。
・怪人達
真人と空廻がピンチ。果たして制裁は逃れられるのか!?
こんなもんかな。最終巻が発売されてモチベが上がってるので書ける時に書いときたい。
評価、感想もよろしければお願いします。
それでは次回をお楽しみに!
明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?
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五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
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宿儺(完全体、十種、術式情報なし)