【呪術廻戦✕ワンパンマン】ハゲの代わりに呪われた人達がやって来た   作:サクラン

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ワンパンマン3期のムービーでモチベが上がったので投稿。怪人協会編は全部やるのだろうか。

それではお楽しみ下さい。


第三十七話 人間怪人

 A市、ヒーロー協会本部。ヒーローが集うその一室では一触即発の空気が流れていた。

 

「…おおよその数が集まったので始めさせてもらおう」

 

 口元にマイクを取り付け、額から冷や汗を流しつつも口を開いたのは、ヒーロー協会幹部のシッチだ。シババワの遺した「地球がヤバい」という予言に対して対策を練るチームのリーダーでもある。色々と問題の多いヒーロー協会幹部の中でも屈指の常識人であり、それ故にマサミチと共に胃を痛めることも多い苦労人だ。

 そんな彼が冷や汗を流す現状ともなれば当然只事ではない。

 

「さて…訝しむような表情を浮かべる者も多いが、まずは感謝を申し上げたい」

 

 壇上で声を発しながらここに集まった者達をシッチはぐるりと見渡す。

 

「君達のような裏社会の住人が我々の呼びかけに応じてくれたことには、本当に感謝している」

 

 そう、裏社会の住人に向かってだ。

 彼らは鎖に繋がれているということや、厳重な牢屋越しに話し掛けているわけでもない、正真正銘自由の身である上でこの場にいるのだ。

 それは何も心を入れ替えただとか、罪を償う気で来たのではなく、ヒーロー協会が裏社会の住人に呼び掛けるという異常に対する興味や、ノロマなヒーローなんかには絶対に捕まらないという自信の上にある。シッチの側で控えているA級上位ヒーローに対して一切臆する様子が無いこともその証拠だ。

 

「高額賞金首に一流の殺し屋、武器商人や狂科学者(マッドサイエンティスト)まで集まってるな」

 

 深い青色の中華服を着た男がこの場に集った者達を見渡して呟いた。

 

「連中になんの用があって呼び出したのかは知らんが犯罪者どもがノコノコ現れるとはな。我々も舐められたものだ

 

 そしてこの場に集まった者の中で最も巨体を誇る褌一丁の大男が額に青筋を浮かべながら吐き捨てる。

 

「気持ちは分からなくもないですが呼び出したのはシッチさんです。何も考え無しにということはないでしょう。お二人共落ち着いて」

 

 同僚二人が殺気立っている中それを諌めるのは整ったスーツにサングラスを掛けた男―ナナミだった。この三人が今回の護衛として選ばれた信頼の置けるA級ヒーロー。

 

A級7位ヒーロー “ブルーファイア”

 

「フン、分かっている。妙な動きでもしない限りは消し炭にすることもない。話が終わるまではな」

 

A級6位ヒーロー “穿点のナナミ”

 

「…話が終わってもある程度は待ってください。この数は流石に手間です」

 

A級5位ヒーロー “重戦車フンドシ”

 

「なんだこんなクズどもに臆しているのかナナミ。先日の件で弱腰になっているのか?」

 

 犯罪者、ヒーロー共に殺気立っている状態だが、互いに潰し合おうという様子はない。戦闘力重視でA級上位のヒーローを三人選んだことは間違いでは無かったと、シッチは内心で胸を撫で下ろした。

 

「では話を始めるとしよう。お手元の資料を見ていただきたい」

 

「待て」

 

「「?」」

 

 シッチが話を始めようとすると、低く良く通る声が話を遮った。

 

「ユウジという名前のヒーローは何処にいる?この本部施設には住んでいないのか」

 

「ん…?何だね君は?ヒーローに知り合いがいるのか?悪いが関係の無い話は後にしてもらえるか、大事な話なんだ」

 

 何処からか聞こえた質問をシッチはあしらうが、声の主は一つ舌打ちを打つと手元の()()()()()()()()

 

「…『レベル“虎”以上の災害発生率が異常に高くなっており過去三年間の平均と比べると今年は6倍、これは大予言者シババワが遺した「地球がヤバい」災害の前兆、若しくは始まっている可能性がある。このまま大災害や強力な怪人が頻発すればヒーロー達は疲弊し対処できなくなる。予言では半年以内に過去最大級の危機が訪れることが示唆されており現状からその危機が去ってないことは明らかである。既にS級ヒーローまでもが忙しく現場に出回っているが災害が多過ぎる為手が回らない状況。ついては…今後一層激化するであろう人類を守る戦いにおいて人格の善悪を問わず戦闘力の高い者に協力を要請する』…要約するとこんなところだろう」

 

「あ、あいつ…まだ配っていない資料までも…いつの間に…!?」

 

 これから話す筈だった内容を当然のように話して見せたことにシッチは冷や汗を流し声の主―裏梅に目を向ける。視線を向けた裏梅は心底どうでもいいと言いたげな表情を隠さずに告げる。

 

「有象無象を守る為に力を貸せだと?随分変わったとは思っていたが、まさかここまで下らん内容だとは思っていなかったぞ。要は貴様らと共に正義の使いごっこをしろというのだろう?本気で説得しようと思うのであればもっと頭を使うことだな」

 

「くっ…!」

 

 裏梅の散々な言いようには流石のシッチも顔を顰める。しかし今の内容を聞いたことで動揺が広がっているのは犯罪者達だけではなかった。

 

「今の話は本当なのか!?“ならず者達に助けを求める”!!!それが協会の決断なのか!!??」

 

 真っ先に声を発したのはブルーファイアだ。その声量には強い困惑と怒りの感情が籠められていた。無論、それはもっともなことだ。

 ヒーロー協会に所属しているヒーローは皆自分の立場がどういったものか理解している。結果や実力が振るわないC、B級の中には短格的な行動をする者がいるが、長らく所属している者であれば自分の中で理想のヒーロー像を持って活動している。

 そしてそれはこの場にいる三人も同じ。A級上位ヒーローであるだけに、それによって生じる責任や必要な覚悟も当然分かっている。だからこそなんの覚悟も信念もない無法者達に“人を護る”ということをさせることに反発が生まれているのだ。

 

「……そうだ!今まさに人類が一致団結しなければ乗り越えられない壁にぶち当たっているんだ!!!」

 

 ブルーファイアの反論を受けたシッチは複雑な表情をしつつもそれを肯定する。シッチとしてもならず者達に助けを求めることがヒーローのするべきことでないことぐらい当然分かっている。

 

「今いるヒーローC級290名!B級101名!A級38名!S級19名!明らかに不十分だ!殺しや強盗、暗殺業などを認めるわけには行かないが、ヒーロー並の実力を持つ者が裏社会に多く存在するのも事実!タダとは言わん!怪人討伐さえしてもらえれば、相応の謝礼は払うつもりだ!!!」

 

 しかしもう手段を選んでいられる場合ではないのだ。戦力はともかくとして、根本的な数が足りない。本来なら全ての街一つにS級ヒーローを一人は配置したいが、ヒーローの事情もあるしそもそもそんなに人数がいない。シッチとしてはサトルやタツマキを筆頭としたS級ヒーローに頼り切っている現状をどうにかしたいという気持ちもあるし、金さえ払えば人命を救えるのなら安いものだと思っていた。

 

「……………」

 

 そしてナナミとしてもシッチの言葉に思うところがあった。先日の戦闘でもレベルの違う相手とやり合ったばかりだし、童帝やゾンビマンに丸投げしてしまった記憶がある。そう言った事態を減らす為にも、今の話は完全に間違っているとは言い切れなかった。

 

「やめとけ。金の無駄だ。いざという時、こいつらは使いものにならんぞ」

 

 ナナミが頭を回している中、重戦車フンドシはバッサリと使いものにならないと切り捨てた。彼はヒーローという立場誰にでも背負うことができるものではないと思っているし、相応の覚悟や信念が必要だと考えている。そう言ったものがこの場にいる者達からは一切感じられない。ならば当然、いざという時にアテにすることもできないだろうというのが、重戦車フンドシの意見だった。

 

「し、しかしこれから起きる災害の規模というのは…」

 

 重戦車フンドシの強い意見に、シッチがおずおずと反論しようとしたその時―

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい!この大予言って当たってる当たってる!すごいな!大予言者ってのは!前代未聞の災害レベル“神”がやって来るって分かったんだな!!??」

 

 

 

 

 

 ―この場にそぐわない愉しげな声が響き渡った。

 皆が声のした方に顔を向けると、そこには一人の青年が立っていた。細身ではあるが服の上からでも分かる恵体と、つり上がった三白眼、逆立った銀髪と、一見すれば町中にいるガラの悪い人間にも思えた。

 

「オッサンの言う通り無駄だ!ここにいる連中が束になって掛かっても俺は絶対に殺せない!」

 

「は?」

 

 そして青年の放った訳の分からない言葉にシッチは思わず間抜けな声を出す。しかし青年は構わず好戦的な笑みを浮かべて続けた。

 

「俺はガロウ!怪人に憧れて修行し数々の武術道場を潰して来た男だ!ここにも沢山餌がいる!俺の強さを引き出す為の餌が…さあ!やろうぜ!」

 

(ガロウ…?)

 

 青年―ガロウの名前にナナミは聞き覚えがあった。一時期名のある武術道場が一人の暴漢に潰されたという被害を聞いたことがあったからだ。怪人災害ではなかった為に自分が出張ることはなかったが、まさかこんな若い青年がそれを成し得たというのは予想外だった。

 

「せっかく集まったんだ!誰が一番強いか試してみようぜ!俺はその為に来たんだよ!」

 

「やめろ。そんな下らんことの為に君達を集めたわけではない。君はもう良い。帰れ」

 

 ガロウが一人で盛り上がる中、シッチはそれをバッサリと切り捨てた。先の件も含めて予想外の事態が立て続けに起こった為にこれ以上脱線させるのはゴメンだった。

 

「帰れ?それが客人に対する態度か?正義の役人さん」

 

 シッチの冷ややかな言葉を聞くとガロウは先ほどの態度が嘘であったかのように静かになった。そして薄い笑みを浮かべ、愉しげに言った。

 

「うんうん決めたぜ。臆病者には罰を」

 

「悪を執行する。皆殺しパーティーだ」

 

 まるでヒーローを彷彿とさせる決め台詞を言い放つと、身体から呪力が立ち昇った。

 

「ちっ戦闘狂か。三人とも悪いが仕事だ。つまみ出してくれ」

 

「了解した」

 

「…一先ず取り抑えますか」

 

 シッチからの指令に重戦車フンドシが拳を鳴らし、ナナミは鉈を抜いた。

 

「シッ!」

 

(((速い!!)))

 

 そしてガロウが拳を構えたかと思うと、一息にこちらまで飛び掛かって来た。その速さは予想以上のものであり、A級上位に名を連ねる三人からしても驚きだった。

 

「―戦車砲パンチ!!!」

 

 しかし肉弾戦というのなら重戦車フンドシにとっては望む所だ。ガロウの動きに合わせてその剛腕に力と呪力を籠めてパンチを放った。単純な攻撃ではあるがこのスタイルで今まであらゆる怪人を倒して来た。如何に鍛えていようとも生身の人間の身体など粉々に―

 

 

 

 

 

「あ〜折れてるね〜ちゃんと信念籠めて殴ったのかオッサン?」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 ―なっていなかった。土煙が晴れて自分の腕を見ると、あらぬ方向に折れ曲がった剛腕が血を流し、ガロウが嘲笑いながらこちらを見ていた。

 

「そんなモンなくても強え奴は強えんだよば〜〜〜〜〜っか!」

 

「うぉらあっ!!!」

 

 バギィ!!!

 

 そして先の言葉を使いながら重戦車フンドシを煽ると、自身の二倍以上もあるその巨躯を軽々と殴り飛ばしてダウンさせて見せた。

 

「━━━━━………ッ!!」

 

「おっ」

 

 バゴォ!!!

 

 重戦車フンドシを倒して一息ついたガロウの背後から、一人の影が飛び掛かる。ガロウは少し驚いたリアクションを取りつつも、その奇襲を軽々と躱して見せた。

 

「へぇ、動けるんだな。頭働かせることしか能が無いみたいな見た目のクセして。ちょっと驚いたぜ」

 

「…私としても、貴方がここまでできるとは思っていませんでしたよ」

 

 ガロウを奇襲した影―ナナミはネクタイを自身の拳に巻きながら、目を細めてガロウを睨み付ける。戦闘態勢を取っているものの、その内心は穏やかではなかった。

 

(パワータイプとは言えフンドシさんの攻撃を軽々と見切り、攻撃を叩き込める速さ。恐らくは私とブルーファイアさんが組んでも勝機は薄い。どうにかS級ヒーローが来るまでの時間稼ぎを…!)

 

 そう、ガロウは強い。恐らく自分達の手に負えない程に。

 彼に勝てるとすればS級ヒーロー、A級の中だと実力が頭一つ抜きん出ているアトミック侍の三弟子か…現1位のアマイマスクだけだろう。

 

「…シッチさん、応援を呼んでください。恐らく彼は私達の手に余ります」

 

「!? なんと…!」

 

 そしてナナミはシッチに連絡を頼んだ。本部には最低でも一人はS級ヒーローが常駐する決まりになっている。できることなら即制圧が可能な上位組が来てくれるとありがたいが、この際贅沢は言ってられない。

 

「人間が怪人を名乗るとは…!愚かな!」

 

 一方でブルーファイアはナナミと挟み込むようにしてガロウの背後に陣取った。その額には青筋が浮かんでおり、相当頭に来ていることが分かる。

 

「A級7位ブルーファイアが、お前を火葬してやる」

 

 そう言ってブルーファイアが両腕をクロスさせ、右腕を前に突き出すとそこから彼のヒーローネームの由来となった青い炎が噴き出した。それに成す術なく呑まれたガロウは痛みを感じる間もなく消し炭に―なるはずだった。

 

「ほうほうほう。興味深い。やっぱりこういう小細工は唆るよねぇ。だがタネがバレると最高にカッコ悪いぜ」

 

 ガロウは少し離れた場所に逃れており、もぎ取ったブルーファイアの腕から覗いている火炎放射器を興味ありげに観察していた。

 

(…こいつっ!!)

 

 ブルーファイアは気付けば自分の右腕が消えており、血が滴り落ちている地面を痛みに耐えながら見ているしかなかった。

 

「ギャハハハ!あの若僧A級ヒーロー相手にやるじゃねえか!」

 

「良いぞ!もっとやれぇ!!」

 

 あっと言う間に二人のA級ヒーローを倒して見せたガロウの実力に、裏社会の住人達は盛り上がる。アンダーグラウンドな世界で生きる彼らにとってはヒーローなど目の上のタンコブ的な存在であり、それが痛い目を見るとなれば面白いことこの上ない。その気持ちを隠すことなくガロウを囃し立てることで称賛する。ガロウはそれに対してどんなリアクションを取るかと思えば、少々予想外のものだった。

 

「んん?いやいや何言ってんだ有象無象ども」

 

 周りの喝采に少し困惑したような反応を返すと、ガロウは周囲のならず者達をぐるりと見渡して言い放った。

 

「死ぬんだよお前らも。ちょっと理解が遅いぞ!」

 

「な、なんだとコルァ!」

 

「お前どうかしてんじゃねーのか!?誰が得すんだよ!」

 

「俺らが何をしたってんだ!?」

 

「テメーもこっち側の人間だろうが!!」

 

 そのあまりに寝耳に水の内容にはならず者達の間でも動揺が広がった。当然ガラの悪い野次が飛んでくるが、ガロウはそのままの調子で続ける。

 

「お前らは怪人を分かっていない。いいか、ヒーローは遅れてやって来るが怪人はいつも先手。理由もなく突発的に現れるものだ。こっち側だのあっち側だの言うのも間違ってるぜ。お前らは人間側、俺は怪人側なんだからよ」

 

「……………」

 

 ガロウが語った怪人の意義についてならず者達はほとんど興味はなく、その訳の分からない理論に絶えず怒声を浴びせるが、ナナミは何か引っ掛かるものを感じていた。

 ナナミも最初は自分の実力を誇示するために怪人を名乗っているのだと考えていた。しかしガロウはならず者達と協調する構えを見せず、あまつさえ彼らすら敵だと言う。それに怪人とはなんたるかを語るその姿からは―今の今まで軽薄だった語り口とは違い、何か“真剣さ”のようなものを感じたのだ。

 

「おっと、そういやオッサンまだいたな。ヒーローのクセして仲間一人も助けられねえのかよ?」

 

「…ええ、自分の立場は自覚しているつもりです。貴方も、逃すわけには行かない」

 

 ガロウはそこで思い出したようにナナミの方へ振り返り、犠牲になったヒーローを助けられなかったことを嘲笑う。明らかに挑発、自分の矜持を傷付ける為の言葉。しかしナナミは自分のことは良く知っている。感情に流されるような真似はしないし、最後まで責任を果たす為に動く。だからこそ―

 

 

 

 

 

「貴方は何故、怪人を名乗っている?」

 

「ああ?」

 

 

 

 

 

 ―この質問をすることも、責任を果たす為だ。

 本来、怪人を庇うことなどまずあり得ない。それが元人間だったとしても、怪人に堕ちた時点でそれらしいものは全て取り除かれてしまうからだ。先の二人が明らかに人間であるガロウを倒すことに躊躇がなかったのも、そのケースだと思ったからだろう。

 しかしナナミの勘はそれは違うと訴え掛けていた。ガロウはそう言ったケースの怪人達とは何かが違うと。何かに執着することで怪人化することもある。ガロウもそのパターンの可能性の方が圧倒的に高い。それでもナナミが違うと感じた理由は―

 

 

 

 

 

(これほどの強さ。怪人にならずにここまでの強さになることはそうない。先の言葉から恐らく彼は武術を修めている。執着で怪人になるような人間がここまで自らを鍛え上げるとは考え辛い。とにかく怪人のような異形になってない時点で彼は絶対に何かが違う)

 

 

 

 

 

 ―そう、強いことだ。今の時点でA級ヒーローを二人無傷で倒して息すら上がっていない。成長性も加味すればそれこそS級の階段に手を掛けることすらできるだろう。これほどの強さに至っていながら他の怪人のように異形になってない。これは明らかにおかしい事態だ。少なくともナナミは人の形を守っていながらここまで強い怪人は記憶にない。

 自分から怪人を名乗り、しかし悪人と協調することはしない。そこに何か気付かなければならない気がするのだ。

 

「へぇ、人に見えるからまずは説得を試みるってか。正義の味方らしい考え方だな」

 

 ガロウはナナミの質問に対して厭味ったらしく返す。

 

「だが、そうだな。お前も含めて教えとくか」

 

 だが意外にも怒ったりはせずに、むしろ快さすら感じさせるような様子でガロウは己を怪人だとする理由を語った。

 

「最強の怪人になるんだ。どんなヒーローだって敵わない絶望の象徴!俺はそれに憧れている!だから狩るんだ。今の半端にしか人を救えない有象無象のヒーローどもを乗り越えてな!!!」

 

 それはあまりにも現実味のない、まるで幼子が夢見るヒーローへの憧れのようだった。実際周囲のならず者達からは困惑と侮蔑の声が上がっている。

 

「………なるほど」

 

 そんな中ナナミは納得した様子を見せると、改めて拳に巻いたネクタイをキツく締め直す。

 

「…どちらにしろ、見過ごすわけには行きません。一先ず捕縛させてもらいます」

 

「やってみろ!ヒーロー!!!」

 

 ガロウが吼えると同時にナナミがガロウに向かって駆け出す。最後に立っていたのは―

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「…? なんだ、何か暴動でも起こったか?」

 

 所変わってヒーロー協会本部に続く道路で一人の男が歩いていた。

 男の名は音速のソニック。裏社会で名の知れた忍者である。今回はヒーロー協会が裏社会の住人に呼び掛けるという異常事態が起こり興味本位で訪れたが、内容が想像以上にバカらしかったのでさっさと抜けて来たのだ。会場の警備もソニックからすればザルそのものだったので抜け出すのは苦でなかった。そうして帰路についていたが、協会の方で何か戦闘音のようなものが聞こえた気がしたので、一瞬立ち止まったのだ。

 

「なんじゃい面白味のない。ヒーローと協調するのはそんなに嫌か?」

 

 そんなソニックの目元から口が生えて、老人の声で喋り出す。このことにもすっかり慣れきってしまったソニックは、舌打ちを挟んで返す。

 

「…あんな偽善者どもと仲良しこよしごっこなんて死んでもゴメンだアホらしい」

 

 その言葉には強い忌避感があり、本気で嫌なのだということがよく分かる。ソニックは恨んでこそいないが嫌いな人物が二人おり、その二人がどちらもヒーローをしていることも相まってヒーローというものが嫌いだった。

 

「しかし中々強者も多かったなぁ。特に()()()()()

 

 だが老人の方もソニックの考え方は理解しているからか、それ以上追及することはせず、あの場にいた強者を想起する。

 

「少しくらいやり合っても良かったんじゃないか?おヌシの速さなら逃げられるじゃろ」

 

「誰が逃げるだと?負けることはないが手間だから戦わなかっただけだ!」

 

 まるで最初から負け前提のような物言いに、ソニックは思わず怒声を上げる。ソニックからすればあの場の誰が相手であろうと勝つつもりでいるし、負けなどあり得ないと考えている。しかし一度戦い始めてはかなりの連戦になるし、暗殺者として活動している以上あまり目立ち過ぎるのもよろしくない。だから戦わなかったというだけで断じて逃げたわけではない。

 

「そうは言っても青年はともかくおなごは厳しかったろう。なにせ―」

 

「―儂ら以上の呪力量じゃぞ」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「━━━━━」

 

 ヒーロー協会本部の廊下を一人の影が駆ける。

 その影―裏梅はある場所を目指していた。羂索が提供して来た情報頼りにヒーロー協会とやらに来たが、呼ばれた理由が想像以上に下らず、本音をぶちまけるついでに他の者達が騒ぎを起こすのが理想だったが、あの青年が上手く騒いでくれたおかげで楽にこうして動けていた。無論戦っても負ける気はないが、今後のことも考えると目立つのはよろしくない。必要であれば戦闘も辞さないが、理想は誰にも見つからず最短で“ブツ”を入手して脱出することだ。

 

「!!」

 

 バゴォ!!!

 

 そう考えていると、壁の向こうから凄まじい呪力の“起こり”を感知し、裏梅が咄嗟に飛び退くと轟音と共に壁がぶち破られ、巨体が飛び出して来た。

 

(…面倒な手合いだな。凍結させて動きを止めるか)

 

 そのパワーと呪力出力からただの雑魚でないことを感じ取ると、裏梅は白い息を吐いた。すると周囲の気温が不自然に下がり始め、果てには霜まで舞い降りた。

 

「“氷凝呪法”」

 

 裏梅は自らの術式の名を読み上げ前方に優しく息を吹き掛けた。

 

「“霜凪”」

 

 すると一瞬で巨体諸共廊下が一瞬で凍り付いた。

 これが裏梅の術式、“氷凝呪法”だ。効果は単純で自ら冷気を発し、それを操ると言ったもの。単純故に裏梅の呪力量と出力が加わるとまさに災害級の威力を誇る。凍結が大抵の相手に有効なのもあり、千年前にはトップクラスの術師として名を馳せていた。

 

(…死んではおらんか。だが凍結が弱まるまでは動けまい。このまま放置してさっさと動くか)

 

 しかし氷越しに感じる呪力から相手は死んでない。無論最大出力でなかったこともあるが、雑魚であれば芯まで凍ってそれで終わりだっただろう。そうなっていない時点でこの相手は中々の強者ということであり、戦闘ではなく凍結による行動停止を選んだことは間違いではなかっただろう。

 

(目的の場所はもうすぐだ。嗅ぎ付けられる前にさっさと―)

 

 

 

 

 

 バリィン!!!

 

「なっ―ッッッッッ!!???」

 

 

 

 

 

 そうして動き出そうとした瞬間背後から氷が砕けた音が耳に入り、まさかと思って振り返ると黒い巨腕に殴り飛ばされた。咄嗟に呪力と術式でガードしたが、それを以てしても威力は軽減し切れず凄まじい衝撃と痛みが頭に走った。

 

「ぐっ…!?ガハッ…!」

 

 どうにか意識は保ったものの、あまりのダメージに吐き気と目眩、頭痛が治まらない。ここまでダメージを負ったのは千年前の戦いでもそうなかった。

 

(私の凍結を一瞬で砕いたのか…!?全力でこそなかったが楽々逃れられるような威力にしたつもりはない。無理に動けば身体が割れる恐れすらあると言うのに…!)

 

「いきなり凄い攻撃が来たからどんな凶悪犯かと思ったが―まさかこんな子が仕掛けてくるとは」

 

「!」

 

 ふらつきながらも立ち上がった裏梅の前では黒光りする巨体が佇んでいた。その姿は先程の霜凪による凍傷などは一切見られず、強引に凍結から逃れたことによるダメージも負っていない、完全無欠の恵体だけがそこにあった。

 

「だがちょうどトレーニングメニューを終えた所だったから、良いクールダウンになった!心なしか、筋肉の輝きも増したように見える!!礼を言おう!!!」

 

 S級13位ヒーロー、超合金クロビカリ。

 千年前に実力者として名を馳せた裏梅の攻撃を受けてなお、その身体の輝きは一切弱まっていなかった。

 

(話は聞いていた“S級ヒーロー”と呼ばれる者か…どれ程のものかと思っていたが…認識を改める必要がありそうだ) 

 

 裏梅は口元の血を拭いつつ、反転術式で身体を治す。治しても鈍い痛みは取り除くことはできなかったが、動くことに支障がない程度には回復した故に戦闘は行える。

 

「! 反転術式…とても裏社会でこそこそしている人間にできる芸当じゃないな。何者だ?」

 

「答える必要はない。すぐに終わらせるのだからな」

 

 クロビカリからの質問に裏梅はとんでもない呪力の“起こり”で答える。その呪力量の大きさからクロビカリは防御の構えを取る。

 

「氷凝呪法、最大出力―」

 

 そして裏梅は術式を解放する。それは先程のような小手調べではなく、正真正銘の最大出力。相手を永遠の氷獄に閉じ込める大技―

 

 

 

 

 

「―霜凪!!!」

 

 バギィン!!!!!

 

 

 

 

 

 ―それによって裏梅達のいた階層は丸ごと凍り付き、まるで精彩な氷のオブジェのような見た目となった。

 

「…これなら当分出て来れまい。急ぐか」

 

 そして裏梅は凍ったクロビカリを放置し、目的の場所へ急ぐ。トドメを刺さなかったのはあれでも死んでるとは言い切れず、かつ倒すには時間が掛かり過ぎてしまうからだ。裏梅の直接的な火力が低いわけではないが、氷柱などの物理火力でクロビカリを倒すのは骨が折れる。ここで戦って負けるのが最悪であり、それを防げるのであれば逃走も吝かではない。

 

「―ここだな」

 

 そうして駆けて行く内に地下の重々しい扉の前に辿り着いた。その扉に張られている結界は“防ぐ”というよりは“隠す”為のものであり、普通に通っただけでは気付かず通り過ぎてしまうだろう。

 

「…千年前から変わらんな、貴様は」

 

 この結界を張った本人に対して皮肉の言葉を送ると、扉を凍て付かせて砕き中へ侵入する。そこには厳重な封印がかけられた呪物に溢れており、居るだけでも身体に寒気が走るような場所だった。

 裏梅は周囲の呪物には目もくれず、最奥を目指して歩く。そして辿り着いた場所には「特級」と書かれた札があり、他と比べても明らかに異質な気配が漂っていた。

 

「―こんなものか」

 

 羂索からの指示であった呪物を一通り回収すると、外に気配を漏らさない特製の袋にしまい込む。

 

「これをまた渡せば良いんだったな…失敗してくれるなよ、羂索」

 

 裏梅は呟くと術式で地面を穿ち、空洞を空けてまた術式で蓋をした。

 その後遅れて到着した職員達が忌庫を調べると、特級呪物“宿儺の指”6本、同じく特級呪物“呪胎九相図1〜3番”が紛失しているのを確認、同時刻頃に本部7階多目的ホールで協会外部の者を多数集めた所自らを怪人と名乗る“ガロウ”という青年の手によってA級上位ヒーロー3名と他152人が重傷の怪我を負った。

 そして招かれた者の内の一人が協会内で不審な動きをしていた所、招集を受けていたS級ヒーロー“超合金クロビカリ”が交戦するも結果としてその者は逃走、クロビカリ自身も凍結させられたが軽く解凍すると自力で脱出、負った手傷も軽い凍傷程度のものだった。

 

 この報告は協会内に大きく波紋を呼ぶこととなり、特に宿儺の指の盗難は裏社会に特級呪物が流出したという確証が流れる可能性を危惧して情報統制を行い、協会内部で留めることとした。

 しかし協会内に外部の者を多数集めたこと、“人間怪人”ことガロウの出現、クロビカリから逃げ切り、宿儺の指を盗んだとされる謎の人物は協会内に不穏な影を落とすことになった。




限界まで進めようと思ってめっちゃ長くなっちゃった。まあええか(思考放棄)


・ナナミ(七海建人)
真人の一件でワンランクアップするも早々に災難と交通事故を起こすハメに。他二人よりは粘ったけどガロウ相手は流石に無理だった。ガロウの主張に何か感じることがあるみたい…?

・重戦車フンドシ、ブルーファイア
原作通りガロウ相手に撃沈。

・シッチ
まともなだけに胃を痛める機会が多そうな人。けどフンドシやブルーファイアを「S級にも引けを取らない」って評価するあたり戦闘への理解はちょっと浅そうだなって。まあこれはしゃーないけど。

・ソニック
裏梅くんちゃんに役目は取られたけどひっそり来てた。けど執着してたハゲがいないので資料くすね取って内容確認したらさっさと帰りました。ソニック自身の呪力効率はともかく総量はそんな多くないです。おじいちゃんの呪力が全然ないので。

・おじいちゃん
集められた内容に興味はないけどどんな強者が来るのかとちょっとウキウキしてた。ガロウと裏梅はかなり手強いって評価です(ソニックは絶対認めんけど)。

・クロビカリ
筋トレしてたら呼び出されて向かってたら裏梅と遭遇。冷凍されましたがちょっと凍傷負った程度で普通に元気です。バケモンです。裏梅とガチっても多分7割ぐらいで勝てます。

・ガロウ
原作通り暴れました。ちょっと見返したけどお前強くなる程アマちゃんになっていってない?こっちでも大暴れしてもらう予定。

・裏梅
羂索から渡された資料でヒーローについて一通り頭に入れてたけど想像以上のアマちゃんで呆れた。けどクロちゃんと戦ったことでS級ヒーローに対しては相応に警戒してる。呪物を回収して逃げ帰りました。


こんなもんかな。今モチベが最高に高まってるのでわりとコンスタントに進められると思います。モンハンやり始めたらそっちに浮気するかもしれない()

評価、感想もよろしければお願いします。

それでは次回をお楽しみに。

明かされた全貌!殺し合いはどっちが強い?

  • 五条悟(不意打ち虚式なし、縮小領域アリ)
  • 宿儺(完全体、十種、術式情報なし)
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