【急募】兄を敵(ヴィラン)にしない方法【リメイク】 作:風人雷震
これは闇に消えた「
イレギュラーが1人だけ存在しても変わらない。コレはそんなお話。
ステインの道 〜スカビオサを抱えて〜
「俺が
私の存在だけでは兄を止めることなどできなかった。生後半年の私は何もできず…ただ、兄が血に染まる道に進むのを見るだけだった。
「……もしもし?兄さん?」
15年経った今も、何もできず、ただ兄さんに留守電を入れるだけ。私の誕生日とクリスマスにはプレゼントを贈ってくれてるのは知っている。だけど、私は兄さんの顔を知らない……もう、覚えていない。
「私、雄英に受かったの。と言っても普通科だけど……ヒーロー科はやれる気がしなくて…まだ個性を使うのが、怖くてさ…」
私の個性は
11歳の頃…首筋にチクッとした痛みを感じた瞬間、意識が飛んだ。
目が覚めた時には病院で、母から話を聞いたら個性の暴走と出血多量、そして薬物……もちろん警察が来た。私の証言は突発性の敵達と同じのようで、鏡を見せてもらったら舌が黒く染まっていた。私は被害者だと、警察は言う。
それからだ。個性を使うのが怖くなった。口を人前で開けるのが怖くなった。ずっとマスクをつけて、個性を封じて、外に出るのは最低限になった。
「なんで…」
死にかけた原因…個性による怪我は跡になった。背中は大量の刃物が生成されたため、ズタズタになった。跡になった今もデコボコしてて引き攣ってる。
「なんで私が…!」
塞がってるはずの背中が痛む。血が抜けていくような冷えた感覚…
「もうやだよぉ…」
「………」
今日の妹の留守電は、いつもと違った。弱音を吐いたのだ、泣いていたのだ。敵によって人生を壊された妹は、4年前から殻に籠ってしまった。
まだ俺がヴィジランテだった時、妹の人生を壊した奴に会った。殺せばよかった。あの時殺せばよかったんだ!!
「クソッ!!!」
贋物のヒーローも妹に近づく敵も全て排除してきた。だが妹はまだ殻に籠ってる。血に染まった俺は、妹に近づいてはいけない。妹を血に塗らしてはいけない。血塗が泣いてるのに、抱きしめてやれない。
「……だからこそ、」
正さなければならない。この社会を…敵も贋物どもを粛清しなければならない!!
「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
雄英体育祭が終わってから、学校に行く足が重くなった。舌はとっくに元に戻っていても、マスクが手放せなくて…外に出るたびに、また暴走するんじゃないかって思って…怖くなった。
今日は何故か遠出したくなって、保須市に来た。着いた時には日が暮れてて、ネカフェに行こうとした。だけなのに、私の目の前には敵がいて、すぐに逃げ出した。
「電話…!」
ずっと追いかけられてる。翼を持ってるのに私と離れて飛んでる。遊ばれてる。怖い。怖い。お願い、兄さん。出て。出て!
「兄さんッ…!!」
留守電を入れずに何度も何度も掛け直す。そろそろ足が限界で、隠れるにしても、隠れられる場所なんて無くて、お願い…出て、出てよ!
『なんだ』
「兄さん助けて!」
子供2人と向かい合っていた時だった。電話が鳴った。妹がいつものように電話してるのだと思った。しかし、何度も何度も鳴るもんだから、大した用じゃ無ければすぐに切ろうと思って出た。
「なんだ」
『兄さん助けて!』
聞こえてきた妹の声は必死で、走ってるのか息切れしてる。
「今どこにいる」
『保須市!翼を持った異形敵に追いかけられ…キャァァァ!!!』
「おい、どうした?血塗?血塗!!」
電話越しからバサバサと羽ばたく音が聞こえる。なぜ保須にいる?敵に捕まったのか?人質?いろんな事が頭に浮かぶ。だがやるべき事がある。
「待て!どこに行く気だ!?」
「貴様らには関係ない」
血塗を探さなければ。泣いているはずだ。怖がってるはずだ。俺が行かなければならない。本当に?
「ステイン!!お前に聞きたい事がある!」
「飯田…」
「なぜお前は、兄さんを見逃したんだ!!」
「……」
「お前は…兄さんを殺すことも、ヒーロー活動を出来なくすることもできたはずだ!だけど兄さんは軽傷だった!俺はその理由が知りたい!」
「………俺と同じだったからだ」
「?それはどう言う…」
「敵だ!!」
バサバサと羽ばたく音が聞こえてきた。壁を蹴ってビルに登って見れば、妹が言った特徴の敵が飛んでいる。血塗が見当たらない?どこだ。
「誰か掴んでるぞ!?」
掴んでる?敵の手足を見ると俺と同じ癖っ毛の黒髪が見えた。血塗だ。随分とぐったりしている。助けなければ。血に染まったその手で?
「……」
そうだ…俺の、手はもう……
「……けて」
俺と血塗の距離は結構離れている。けれど聞こえる。血塗の声が。
「誰か…助けて……」
体が動いた。粛清のためじゃない。ただ妹を助けるための最善の動き。
「あれってステイン?!」
「奴の仲間か!?」
「ステイン!!」
個性で敵の動きを止めて、妹を敵から離す。
「……兄、さん…?」
そうか。お前は敵の俺を見ても兄と呼んでくれるのか。
妹を抱えたまま着地をし、ゆっくりと地面に降ろす。
「ステイン!その娘から離れろ!!」
「……言われんでも」
離れようとした。視界の端に倒れている敵が異様に膨れ上がるのを見つけた。
「血塗!」
「全員伏せろ!!」
ドォォォン!!!
気付いた時には病院で、警察に監視されていた。
「目が覚めたか」
「……アイツ、は…?」
血塗は、俺の妹はどこだ。無事なのか?
「貴殿にお客さんだ」
「兄さん!!」
「血塗……」
「兄さん、良かった…生きてて良かった…!」
「血塗、怪我…は?」
「兄さんのおかげでそんなにないよ」
「……どこ、を…怪我した…?」
「…右腕」
「利き…手、じゃねぇか…」
「兄さんに比べれば大丈夫だよ!」
「そう言うことじゃねぇ…」
時間が設けられていたのか、血塗は病室から出ていった。そこから事情聴取があった。動機と敵連合との関係。そして、妹…血塗のこと。
「天使だったろ」
「「「「「シスコンか」」」」」
「こんな俺を兄と呼ぶんだ。ずっと…」
俺がタルタロスに行く前日までずっと会いに来てくれる妹。血に染まった俺をずっと慕ってくれる大切な妹。
「来たよ!兄さん!」
「学校はどうした」
「少しずつだけど行ってる」
「楽しいか?」
「前よりは楽しく感じるよ」
「……まだ、個性は怖いか?」
「うん…でもね、イレイザーヘッドに見てもらいながら練習してるの」
「血塗」
「なぁに?」
「俺が兄で良かったか?」
「……もちろん!!私を助けてくれたのは兄さんだし、ずっとずーっと大好きだもん!」
「俺も、お前が好きだ」
「両想いだ!」
「そうだな」
俺の償いが終わったら何処か出かけよう。遠くには行けないかもしれないが、兄らしいことをしてやろう。そう思ってた。なのに…なのになぜ、
「どうだい?君の妹の個性は?」
「貴様ァァァァ!!!」
妹が死んだ。血塗が死んだ。奪われた血塗の個性は、
AFOも死柄木も消え、俺は生き残った。妹の遺体は見つからなかった。
「ステイン、出ろ」
「……」
AFOとの戦いによって俺の刑は軽くなった。外に出ても嬉しさはない。ただ虚しさだけがあった。
タルタロスに入ってからは手紙を書いてくれた血塗…手紙の頻度が減ってきたのは学校が楽しくなったのだと思っていた。それが違った。
どうして血塗は死んだ?俺はどこで間違えた?捕まったからか?人を殺したからか?
「……最初から…か?」
そうだとしたら、俺はもう生きる意味などない。
「血塗…」
血塗がいないなら生きる意味などない。
「血塗」
ただ笑っていて欲しかった。血に染まらず、血に塗れず、平和な社会で笑っていて欲しかった。
「血塗」
もし、もしも次があるのならば、最初からやり直せるのならば…護り通す。護り通してみせる。今度こそヒーローになって、血塗を護り抜いて
「兄さん!」
「血ぬ
ドシャッ
あーあ、負けちゃった。