【急募】兄を敵(ヴィラン)にしない方法【リメイク】   作:風人雷震

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アナタのおかげ

 

 

ずっと怖かった。痛かった。助けてくれる人がいなくて悲しかった。寂しかった。

 

 

「お嬢、外で遊びましょう」

 

 

だから嬉しかった。でも私のせいでこの人が怒られるかもと思って最初は断った。

 

 

「オーバーホールからは許可をもらってますよ。怒られません」

「ほんと…?」

「えぇ」

 

 

久しぶりにお外に出た。途中であの人とすれ違ったけど、何も言われなかった。本当に出て良いんだと分かった。

 

 

「何して遊びますか?」

 

 

なんで敬語なの?

 

 

「…組長のお孫様なので」

 

 

気にしないよ。

 

 

「では…じゃなくて、じゃあ…遠慮なく」

 

 

うん。

 

 

「お嬢、何して遊ぶ?」

 

 

あれやりたい。

 

 

「ブランコか。押してやろうか?」

 

 

楽しい。

 

 

「そりゃあ良かった」

 

 

……なんでお外に出してくれたの?

 

 

「……なんでだろうな…俺自身も分かんねぇ」

 

 

自分のことなのに分かんないの?

 

 

「大人ってのはそういうもんだ。お嬢みたいなガキ…子どもの方が言語化できんだよ」

 

 

大人って変なの。私もそうなるの?

 

 

「さぁな。お嬢次第じゃねぇか?」

 

 

それから毎日お外に出してくれた。ミミックさんって呼ぶと困ったように笑う。お外だと入中って呼んでほしいって言われた。だから入中さんって呼んだ。

 

 

「…なんだ?お嬢」

 

 

安心するように笑う入中さん。

 

 

「お嬢、コレ…」

 

 

リンゴのヘアゴムとアクセサリー。

 

 

「知り合い…いや、腐れ縁?まぁ、知り合いにたまたま会ったから選んでもらったんだ」

「かわいい…」

「そうか。アイツに礼言っとかないとな…」

 

 

入中さんにその人の話をねだった。

 

 

「アイツとは…もう6、7年くらいの付き合いだな。仕事が終わって休憩しようと海を眺めてた時に会ったんだ。妙に大人びてて、大人顔負けの考え方をするクソガキでな。年相応になってきたがクソガキ態度は変わらずだ」

 

 

その人のことを嬉しそうに楽しそうに話す入中さん。

 

 

「アイツは、俺が極道だって知っても変わらず接してくれたんだ。当たり前のように俺の名前を呼んでよ。年甲斐もなく…嬉しくなっちまったんだ」

 

 

泣きそうな声で入中さんは話す。

 

 

「アイツに出会わなかったら俺は極力お嬢と関わらなかったんだろうって思う。もし、あの時立ち止まらなければ、俺はアイツと……アイツに、本名(なまえ)を呼ばれなければ…堅気の当たり前を求めなかっただろうな」

 

 

入中さんはその人に救われたの?

 

 

「……ああ。アイツには返し切れねぇ恩がある」

 

 

ねぇ、入中さん。私、もっとお外に出たい。もっと遊びたい。そして、その人に会ったらお礼言いたいの。入中さんを助けてくれてありがとうって。

 

 

「大丈夫だ。お嬢…もう少し、もう少しで堅気になれるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい。もう我儘言わないから、もうお外に出たいって言わないから、

 

 

「残念だよミミック…お前が裏切るなんて」

「ぉ…ばー、ほーる……!」

「エリを返してもらう」

「っざけんな!!」

 

 

だから、やめて

 

 

死穢八斎會(おれら)のせいでどれだけお嬢が傷ついたと思ってんだ!!俺らが守るべき仁義(モン)を俺らが壊しちまった!組長が倒れた今、俺らがお嬢を守らなきゃいけねぇ!!」

 

 

もうやめて

 

 

「テメェらが守らねぇなら俺が守る!!」

英雄症候群(ヒーロー気取り)が」

「ああ。感染(うつ)っちまったかもな。知り合いに雄英生徒(ヒーロー見習い)がいるからよ」

「死ね」

 

 

ダンッ…!!

 

 

「入中さん!!」

「エリ、お前のせいでコイツは死ぬんだ。お前が外を望んだからこうなった。お前が願うからこうなったんだ」

 

 

ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

 

「帰るぞ。エリ」

「おじょう…っ!」

 

 

ごめんなさい…入中さん。私のせいで。ごめんなさい。死なないで。ごめんなさい。ありがとう。楽しかった。嬉しかった。ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリィィィィ!!」

「エリちゃん!!」

 

 

あの時のお兄さんたちが助けに来てくれた。戦って、ボロボロになっても、助けに来てくれた。嬉しい。でも、また…私のせいで

 

 

 

「お嬢!!」

 

 

 

知ってる声。ずっと聴いてた。安心する声。良かった。生きてた。でもなんで?なんで来たの?死ぬかもしれないのになんで…

 

 

「迎えに来やした!!」

「入中さんっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい貴様なぜ突入してきた?バカか?貴様を発見した時どれだけ焦ったと思ってる。血塗はこのことを知ってるのか?貴様の独断じゃないだろうな?」

「そいつからの頼みで入ったんだが?」

「やはり血塗は天才だな」

「手のひら返しがスゲェな」

 

 

ちぬり…さん?

 

 

「前に話しただろ?そいつの名前が、その……ち、血塗って名前で」

「名前呼ぶだけなのに恥ずかしがるな童貞か」

「兄妹揃ってホンットに失礼だな!!」

「兄さーん!皆んなー!!」

「……アイツだ」

 

 

入中さんのヒーローは女の人で、

 

 

「キミがエリちゃん?」

 

 

キレイで

 

 

「はいコレ。リンゴ好きなんでしょ?リンゴのストラップあげる」

 

 

とっても優しい人。そして、

 

 

「入中さん、お疲れ様です」

「本当にな」

「ところで…」

「ん?」

「明らかに不審な痣が組員…特に入中さんが突入した方向にいた方たちにあるのは何故なのか。説明していただきましょうか」

「ちょ、ちょっとした仕返しみたいなやつだ!」

「それについてはどうでも良いです。私は」

「良いのかよ…」

「こちらとしては良くないんですけど…」

「俺が対応するが」

「ナンデモナイデス…」

「……お前の兄貴便利だな」

「そうですね。それで痣の件なんですが」

「誤魔化されなかったか…」

 

 

入中さんの好きな人。

 

 

「せめてもう少し目立ちにくいところにしてくれれば文句は言いませんよ」

「それヒーロー見習いが言っちゃいけないやつだろ」

「安心しろ。俺は血塗を人質にした奴を半殺しにしたことがある」

「なんでお前はヒーロー免許剥奪されてねぇんだよ」

 

 

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