【急募】兄を敵(ヴィラン)にしない方法【リメイク】 作:風人雷震
「血塗!」
俺は、胸に倒れ込んだ血塗の安否を確認する。先ほど吐いた物で喉を傷つけたのかゴロゴロと音が鳴っている。
「ステイン!」
「…ミッドナイト、血塗を病院に」
「ダメよ」
「ミッドナイト」
「このまま行ったら、貴方…ボルターを殺すでしょう」
「………」
「貴方が連れて行って。その方が血塗ちゃんも安心するわ」
「……すまなかった」
血塗を背負い、入り口まで走る。俺の心臓がうるさく鳴る。当たり前だ。妹が死ぬかもしれなかったのだ。GPSの反応が消えた時、俺はUSJに行こうとした。だが、他の奴らに止められた。振り解いて行けば血塗はここまでならなかったかもしれない。
「血塗…血塗…」
目の前で吐いた妹…涙を浮かべて苦しそうに、必死に異物を吐き出してた妹……
「ステインさん!」
「……力道…」
「血塗は…?!どうしたんだよ血塗!?」
「赤黒…!」
「ステイン、彼女は…」
「早く、病院に連れて行ってくれ。ハァ……ボルターと戦闘して、火傷が何ヶ所かある。そして、個性が暴走したのか、ハァ……剃刀を吐いて、喉に傷が…」
「「「「「っ!?」」」」」
「分かりました。同伴していただけますか?」
「ああ」
俺は血塗と共に救急車に乗せられ、病院へ向かった。俺は病院に着く間、血塗の手を…握ることしかできなかった。
「ステイン」
「……婆さんか」
「彼女の様子はどうだい?」
「検査の結果、火傷は全て軽いもので、喉は深い傷はないとのことだ」
「そうかい」
「婆さん」
「なんだい?」
「俺は何で雄英にいるんだろうな」
「……」
「妹の危機に駆けつけられなくて、目の前で苦しそうにしていたのに、守るためにヒーローになったのに…俺はなんで、」
「そういうのは誰にでもあるさ。オールマイトにも、ね」
「!」
「今回は助かった。だけど、次はどうなるか分からない。それを踏まえて、アンタがどうすれば良いか考えな」
「………そう、だな」
流石に話し声がうるさかったのか、血塗の目が覚めた。
「血塗!」
「体力は大丈夫かい?」
「……寝ていたのである程度は回復してます」
「無理して話さなくてもいいんだよ」
「すみません」
「はい、チユーーーー」
俺が出る前にやるなよ。何で婆さんが血塗にチューしてるとこを見なくちゃいけないんだ。
「………結構体力持っていかれますね」
「ペッツお食べ」
「あ、シンリンカムイ。私、ギャングオルカの入れ物持ってます」
「おや、ファンかい?」
「ギャングオルカに一度だけ会ったことがあります。不審者かと思って失礼なことしちゃいましたけど…。シンリンカムイは、どうやって水飲んでるのかなぁ…って気になりはしますけどファンではないです」
「そうかい。それじゃ、次の患者のところに行ってくるよ」
「はい、ありがとうございました」
相澤も重傷だったからな…
俺は椅子に座り、血塗を見る。
「……血塗、秀一や力道たちにメールしておけ。心配してたぞ」
「あ、分かった」
「メールしながらで良いから聞いてくれ」
「うん」
「ボルターが死んだ」
「……は?」
「護送車の中で死んでいた」
「自害?」
「分からん。だが、死因は感電による重傷不整脈のようだ」
「個性を使用した形跡は?」
「不自然なことに全くない。そして、一度だけ護送車が大きく揺れた時があったようでな。その時には死んでいたのでは?と言われている」
「………」
血塗の瞳が揺れている。何かを知っているのか?血塗を見つけた時、血塗はボルターが死なないようにしようとしているのを見た。今にも個性が爆発しそうな敵を助けようとしていた血塗を。
「ボル、ターは…ヒーローに、なれたはずなんだ」
「血塗?」
「個性事故のか、意図的かは分からない…でも私は前者だと思うんだ。己の個性で人を、殺してしまって、誰も助けてくれなくて、救ってくれなくて、夢を諦めてしまったアイツを…助けたかった……」
「だからといって…」
「…兄さん?」
「だからといって!お前が死にかける必要はないだろう!?」
「にい」
「どれだけ心配したと思ってる?!目の前で剃刀を吐いてたお前を見て!!俺がどれだけ不安になったと思っている!?!!」
「……」
「お前が…死ぬかと、目の前から消えるかと思ったんだ……」
怖かった。守ると決めた妹が死んでしまうかと思った。
「兄さん、私は助けられたんだよ」
「ハ……?」
「ボルターに、助けられたんだ」
「何を言って…」
「今日気づいたんだけどね?私の個性の金属変換は、欠けているんだ」
「欠け…」
「ボルターに触れた時にちょっと感電してさ…その後に吐いちゃって…今はすごくスッキリしてるから、ああ…何か欠けてるんだなぁ…って思ったの」
「それと、助けられたのがどう結びつくんだ…」
「あのままだったら内臓から刃物とか出てたかもしれなくて…」
「は?!!!」
「だから、結果的に助けられたんだよ。私は、ボルターに。兄さんを不安にさせて、心配させたのは…その、ごめんなさい。でも、私は自分の行動を後悔していない。私はヒーローになるって決めたんだ。例え、相手が敵であっても、私は助けたい。救いたいんだ。兄さんのように」
「!………もう、今回のようにならないでくれ…お袋達も心配していた」
「うん。ごめんなさい」
本当に…無茶をする妹だ。だが、そんな妹を守ると決めた俺も……ああ、アイツらが俺に注意するのはこういうことか。次からは、できるだけ無茶をしないように気をつけよう。