【急募】兄を敵(ヴィラン)にしない方法【リメイク】   作:風人雷震

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「楽しいか?お嬢」

「うん」

「そうか」

 

 

ニコニコとボールを蹴るエリの腕には包帯が巻かれている。見て見ぬふりをしてきた俺の罪。いや…今も変わらないか。

 

 

「そろそろ帰るぞ」

「……うん」

 

 

俺はオーバーホールに逆らえない。こうやってエリを外に出してやるのにも苦労した。だが、エリに笑顔が増えてきたことが俺は嬉しい。

 

 

「…悪りぃな。俺ができるのがコレぐらいでよ」

「ううん。少しでも、お外に出れるの嬉しい。だから私もっと我慢しようって思えるもん」

「我慢なんて…」

 

 

しなくて良い。そう言いたかった。でも、言えなかった…

エリが我慢しなければアレがもっと酷くなる。外にも出られなくなる。俺のこんな僅かな抵抗も意味がなくなってしまう。

 

 

「そう、だな…」

 

 

血塗(アイツ)ならどうしただろう。大人顔負けの考えをするガキはどんな行動をするだろう。俺の知らないところでボロボロになるアイツは…

 

 

「……早く帰らねぇと怒られるな」

「!」

 

 

次、アイツに会えるのはいつだろうか…できるだけ早く会いたい。会って話したい。他愛もない話をしたい。アイツの愚痴につきあって、美味い飯を食って、それで……

 

 

「またね、入中さん!」

 

 

次も会えることを約束する。

堅気の普通…忘れていたソレを思い出させてくれるアイツは、今、何をしているんだろうか。

 

 

「ミミック」

「……何だ?オーバーホール」

 

 

アイツに触れることはできない。ヒーローを目指してるアイツに仁義を捨て、薄汚れた俺を触れさせられない。

もう俺は極道ではない。もう死穢八斎會は敵予備軍ではない。完全なる敵だ。組長が残した仁義はもうどこにも無い。それをアイツに知られたく無い。

 

 

「…ということだ。分かったか」

「おう、他の奴らにも報告しとくわ」

 

 

俺がまだ敵予備軍だと信じてるアイツに隠し通さなければ…

いつかバレるのだとしても、俺は……

 

 

「ミミック」

「あ、ミミックさん」

「ミミックさん」

「ミミック」

「ミミック」「ミミックさん」「ミミック」「ミミック」「ミミックさん」「ミミック」「ミミック」「ミミック」「ミミック」「ミミックさん」「ミミックさん」

「………」

「ミミックさん?どうしましたか?」

「…ちょいとココに確認しに行ってくる」

「わかりました」

 

 

ミミックと呼ばれると吐き気がするようになった。アイツと会った後は一段と酷くなる。落ち着かせるために長時間死穢八斎會を離れる。アイツと会った後もそこら辺を散策して戻ってた。

 

 

「保須か…」

 

 

コレならアイツと会わずに済むし、少しは楽にできるだろう。

死穢八斎會内も、堅気の街も息苦しい。息のしやすい場所なんて限られてることは分かっていても、他の場所を探しちまう。

 

 

「……着いたか」

 

 

だけど、アイツに会いたいと思っちまう。

息のしやすい場所を作ってくれるアイツに…

堅気の普通を教えてくれるアイツに……

そんなことを考えてたからなのか、いるかも分からない神が俺のことを見ているからなのか…

 

 

「あれ?入中さん???」

「……何で保須(ここ)にいるんだ…」

「いや、それ私のセリフ」

 

 

少しだけ、息がしやすい。

 

 

 

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