星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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よし、間に合った!


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世界で記者会見での話題は専らフェルの件が大半を占めていた。確かにハリソン大統領の宣言は衝撃的だったが、新たな異星人と言うそれを上回る話題に誰もが注目していた。なにより、ハナからティナ達を否定する気もない人々にとってハリソンの宣言はほぼ関係がないものとして受け止められていた。

だが、一部の反対派は危機感を強めその最大組織であるジャスティススピリッツは眉をひそめていた。合衆国某所、ジャスティススピリッツの幹部達が集まり、所用で参加できない者も厳重に秘匿されたリモートで参加していた。

 

 

 

「ハリソンめ、小癪な真似をする。これでは大っぴらに反対することは出来まい」

「嘆かわしいが、一部の団体は恐れをなして解散を宣言して野に下ったようだ」

「勝手なことだ。どれだけの金をつぎ込んだと思っているのか」

 

 

 

ジャスティススピリッツは決して表舞台に立たず、政財界への太いパイプと莫大な財力にものを言わせて国を裏側から操っていた。

今回の異星人来訪も反対を明確に示しているが、同時に排斥するならば技術を充分に吸い上げて合衆国の覇権を確固足るものにしてからと言う考えも持ち合わせている。

適度に末端組織を操り異星人に対する不安や危機感を煽りながら、政府に圧力をかけてティナから技術を吸い上げて抹殺することを目論んでいた。

もちろん、決して自分達へ火の粉が振り掛からないようにしながら、である。

 

 

 

「スーパーマーケットの件だが、真相は分かったか?」

「巧妙に隠されていたが、幸いと言うべきか目撃者に私の手の者が居合わせていた。信頼できるだろう」

 

 

 

そして皆が用意されたレポートへ目を通す。

 

 

 

「普通ならば荒唐無稽と嗤うところだがな」

「奴は信頼できる。私が保証するよ」

「そうか……ならば、この内容もまた真実と言うことだな」

「少なくともフィジカル面は我々地球人を上回ると見て良いな」

「やはり危険な存在だ。奴らが我々に矛先を向けないと誰が保証できる?」

 

 

 

誰もがフェルの行動にため息を漏らし、そして危機感を強めた。

 

 

 

「そこに来て、あの宣言か。厄介なことをしてくれるものだな」

「お陰で反対派の検挙率も跳ね上がっている。悩ましい限りだ」

「だが、あの内容ならば反発も必至だろう?」

「当然だ。政財界、特に保守層からの反発は凄まじいものだからな」

「当たり前の話ではないか。栄えある合衆国が異星人に降伏宣言を出したようなものだぞ」

 

 

 

政財界に太いパイプを持つ彼等だからこそ、あの宣言による影響は十分に理解していた。

 

 

 

「全く、愚かなことだ。確かに奴らは脅威的だが、時間を掛けて技術を吸い上げてしまえば我々の優位を確立できるのは必然だと言うのに」

「媚を売る等言語道断、我が合衆国大統領に相応しいとは思えんな」

「ハリソンめ、誰のお陰で大統領になれたと思っているのだ」

 

 

 

忌々しげに呟く一同を見て、上位者も静かに口を開く。

 

 

 

「飼い犬に噛まれたような気持ちだよ。じゃれ付く程度ならば許してやれたが、今回の“おいた”は度が過ぎる」

「ならば躾が必要になりますな」

「いや、奴には舞台から降りて貰う。我々の顔に泥を塗ったのだ。最早奴に居場所などない」

「そうですな、飼い主に噛みつく飼い犬など必要ありますまい」

 

 

 

誰もが下衆な笑みを浮かべる。

 

 

 

「奴には娘がいた筈だ」

「ええ、ハイスクールに通う娘が居ます。確か、ジョン=ケラーの娘と同級生でしたな」

「直ぐに身柄を確保しますか?」

「いや、異星人共に動かれては厄介だ。奴らはしばらくすれば地球を離れる。その隙に事を済ませ、我々の意向に忠実な新しい大統領が奴らとの交渉を引き継ぐ。いささか手緩いからな、少し強気でいかせるつもりだ」

「なに、心配は要らん。相手はお人好しな小娘。やりようは幾らでもある」

 

 

 

ジャスティススピリッツが怪しげな陰謀を張り巡らせている。彼等からすれば政府にすら探知は不可能だと自信を持って言える秘匿回線。だが、相手が悪すぎた。

オンラインで参加したリモートの重役達の回線へ容易く潜入したアリアは、気付かれることもなくセキュリティコードを書き換えてしまう。結果彼等の会話などは全て筒抜けとなってしまった。

 

 

 

そんな地球での陰謀を知るよしもないティナは、プラネット号の談話室にて翼を目一杯拡げて伸びをしていた。

 

 

 

「んーーッッ!……はぁ、疲れたぁ……」

 

 

 

「お疲れ様でした、ティナ」

 

 

 

そんな彼女を労るようにフェルが抱きよせ、ティナも身を委ねた。

 

 

 

「フェル~、疲れたよ~……」

 

 

 

「頑張りましたね、ティナ」

 

 

 

笑顔で彼女の頭を撫でるフェル。ティナはここ数日の経過をレポートに纏めていたのだ。アリアに任せても良いのだが、提示された素案が物騒だったので自分で書くようにしている。

 

 

 

「何で地球各国の軍事力やら技術水準を纏めてるのさ。交流には必要ないよね?」

 

 

 

『敵を知り己を知ればと地球の言葉にあります』

 

 

 

「地球の皆さんは敵じゃないからね?私たちの敵はセンチネル、そこを間違えないように」

 

 

 

『善処します、ティナ』

 

 

 

「あはは……」

 

 

 

尚、戦力評価の結果フェル一人でも場所を選べば合衆国相手に互角以上に戦えることが判明していたりする。

 

 

 

 

レポートは出来たし、ハリソンさんからはお土産も準備できたって連絡が来た。出来ればゆっくりしたいけど、まあ数日が限界だろうなぁ。アードの事も気になるし、出来れば次は他のアード人を連れて来たい。

お父さんは忙しいだろうから、お母さんかばっちゃんに声をかけてみようかな。

観光地についてはジョンさんにお任せしてるし、フェルと二人旅も良いけど私以外のアード人が来ればハリソンさん達も交流の活発化をアピールできるだろうから。

出来れば日本へ行きたい。椎崎さんとももう一度お話ししたいし。

 

 

 

 

翌朝、いよいよ地球観光の日がやってきた。これから数日間、私達は地球の名所を回ることになる。場所や時間はジョンさん達が予定を組んでくれているから、気分はツアー客かな。フェルも地球の自然に興味津々だし。

個人的には日本へ行ってみたいけど、こればっかりは勝手をするわけにはいかない。ジョンさん達にお任せしてる。

 

 

 

意気揚々と異星人対策室のオフィスへ転移した私達を、何故かオーラを纏った朝霧さんとデーモ◯閣下みたいな髪型になったジョンさんが出迎えてくれた。

二人の疲れたような笑顔を見て、私は静かに床に手をついて頭を下げた。オフィスの床の冷たさは、何だか実家に帰ったような安心感を与えてくれた。




異星人による何回目かの土下座……
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