星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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次回は来週になりそうです…


傷跡

フェルと思う存分にバイカル湖での一時を満喫できた。大自然に圧倒されて、そこで生きる生き物達の逞しさには感動すら覚えた。

それと、やっぱり温泉は最高だ。海外の温泉に浸かったのは始めてだけど、絶景を眺めながらフェルと文字通り羽根を伸ばせた。

日本へ行く機会があるなら、温泉巡りをしてみたいな。前世の数少ない娯楽だったし。

 

 

 

「フェル、そろそろプラネットへ戻る?」

 

 

 

温泉からあがってしばらく景観を楽しんでいた私は、フェルに声をかけた。ちょうどお昼時だし、フェルの魔法があればいつでも来ることが出来るからね。

 

 

 

「いえ、実はもう一ヶ所行きたい場所があるんです。ダメ、ですか?」

 

 

 

そんなに不安げな顔をしなくて良いのに。

 

 

 

「良いよ、今日はとことんフェルに付き合うつもりだから。ただ、場所を教えてくれたら嬉しいな」

 

 

 

バイカル湖ではビックリしたけど、出来れば前もって知っておきたい。海外旅行なんてしたことないし、日本以外なら何処へ行ってもビックリさせられるんだから。

 

 

 

 

「えっと、場所は……この国です。ウクライナ?」

 

 

 

フェルの言葉を聞いて、私は前世で毎日報道されていたニュースを思い出した。決して愉快なものじゃない、悲惨な戦争の内容を。

 

 

 

「アリア、インターネットに繋げて」

 

 

 

『畏まりました』

 

 

 

「ティナ?」

 

 

 

「ちょっと待ってて」

 

 

 

目の前に現れた画面を操作して、キーワードを打ち込んで検索をかけた。すると、直ぐに目的のものが表示された。画像を表示してフェルにみせる。

 

 

 

「フェル、お願い。少しだけ時間をちょうだい。ここへ行きたいんだけど」

 

 

 

私が見せた画像を見つめていたフェルは、笑顔を浮かべてくれた。

 

 

 

「分かりました。じゃあ、人払いの魔法を」

 

 

 

「ううん、祈りに来ている人を追い出すようなことはしたくない。このままで良いよ」

 

 

 

「ウクライナへ行ったことが知られてしまいますよ?」

 

 

 

「うん、覚悟の上だよ」

 

 

 

私がしようとしていることは、完全な自己満足だ。もしかしたら非難されるかもしれない。でも前世で知っている出来事だから、無視は出来ない。フェルがウクライナを選んだのは偶然だろうけど、それならその偶然に乗っかろう。

 

 

 

「分かりました。それじゃあ、行きましょう」

 

 

 

差し出された手を握り、目を閉じる。魔法陣の暖かな光を感じて、身体が引っ張られるような感覚に身を委ねる。

次に目を開いたら、そこには一面の花畑と白く大きな石碑が佇んでいた。うん、静かな場所だ。

 

 

 

「おい、あれ」

「翼がある……まさか、噂の?」

「なんでここに!?」

「合衆国に居る筈じゃ……?」

 

 

 

やっぱり周りには現地の人が居たけど、気にしない。

 

 

 

「ティナ、これはいったい……?」

 

 

 

石碑を見上げていたら、フェルに質問された。

 

「慰霊碑だよ。亡くなった人達への祈りと、その事を忘れないための……大切な場所」

 

 

 

私は当事者じゃない、アード人だ。前世でも同じ時代に生きていただけで、何の関わりもない。だからこれは完全な自己満足。

慰霊碑なんて世界中にあるし、歴史を見ればあの戦争もこれまで地球で引き起こされた数多の悲劇の一つに過ぎない。

それでも、偶然とは言えこの地に来る機会が出来た。上手くは言葉に出来ないけど。

 

 

 

「ティナ……?」

 

 

 

ただ……

 

 

 

「世界が平和でありますように」

 

 

私には、祈ることしか出来ない。願わくば、二度と同じ悲劇が起きませんように……。

 

 

 

「ありがとう、フェル。じゃあ、次はフェルの行きたい場所へ行こっか。人払いの魔法はもう必要ないよ」

 

 

 

しばらく祈りを捧げて、私はフェルへ視線を向けた。連邦はまだしも、ウクライナは確か合衆国とそこまで仲は悪くない筈。それに、この場に居る人達には見付かってるんだ。今さら隠す必要もない。皆遠巻きに私達を見つめている。慰霊碑の前だからか、騒ぎを起こさずに配慮してくれるのは有り難かった。

 

 

 

「もう良いのですか?」

 

 

 

「うん、良いよ。さあ、行こう」

 

 

 

「分かりました」

 

 

 

私達は手を繋ぎ、見ている人達に手を振って再び転移した。

目を開くと、そこには……は?

 

 

 

「なっ、なにこれっ!?」

 

 

 

どこまでも続く線路と、それをアーチ状に覆う植物のトンネルが視界いっぱいに広がっていた。

なにこのファンタジーな空間は!?いや、ファンタジーな存在そのものの私が言うのも変だけどさ。

 

 

 

「地球の景観を調べていたらここの画像を見つけまして。えっと、鉄道のとある区画みたいです」

 

 

 

「こんな場所があるなんて知らなかったっ!良く見つけたね、フェル」

 

 

 

いや、前世でもこんなにファンタジーな空間は見たことがない。ウクライナにこんなにも素敵な場所があるなんて知らなかった。海外にも旅行に行くべきだったなぁ。そんなお休み無かったけど。ハハッ。

 

 

 

「ティナ、どうしました?」

 

 

 

木々のトンネルに包まれた素敵な空間を満喫していると、ティナが遠い目をして乾いた笑みを浮かべるのが見えました。

たまにティナはこんな顔をするんですよね。全てを諦めたような、悟ったような顔。

正直可愛らしい容姿を持つティナには似合わないと思います。

 

 

 

「何でもないよ、フェル。バイカル湖もここも素敵な場所だね。フェルと一緒に来て正解だったよ」

 

 

 

そうやって笑顔を見せてくれました。良かった。

私が見てみたいと言うのもありますが、最近色々と考えることが増えているティナの気晴らしになればと思いましたが……成功したみたいですね。

 

 

 

「森の中に居るような気分だよフェルと二人で歩くだけで心が癒される」

 

 

 

「私もですよ、ティナ」

 

 

 

「あれ?あれって」

「羽がある……?」

「もしかして、ティナちゃん達!?」

「なんでここに?」

「あっ、見て。ネットで大騒ぎになってるよ。慰霊碑に参拝してくれたみたいだ」

「慰霊碑に?」

 

 

 

人払いの魔法を使わなかったので、周りには地球人が何人か居ました。なぜか男女の組み合わせばかりが目立つのが気になりますが。

それと……やっぱり大騒ぎになっているみたいですね。後でティナと一緒に謝ろう。それより今は……。

 

 

 

「ティナ、手を繋ぎませんか?」

 

 

 

「ん?良いよ」

 

 

 

周りの人達が手を繋いでいるので、私もそれに倣うことにしました。もしかしたら、現地の儀式のようなものかもしれませんし。

差し出された手を握ると、自然と笑顔が浮かんでしまいます。願わくば、この幸せが一日でも長く続きますように。




ちなみに訪問した場所はウクライナの愛のトンネルです。
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