星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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のんびり投稿して参ります


統合宇宙開発局

私の名前はジョン=ケラー。しがない中年アメリカ人だ。最近は髪の毛が薄くなり始めて、年齢を実感する日々だよ。

私は幼い頃から宇宙が大好きだった。夜な夜な満天の星を見上げて星座を探し、宇宙の神秘に想いを馳せたものさ。

宇宙関連の新情報のニュースが出る度に興奮したのは良い思い出だ。そんな少年時代を過ごしたからか、自然と将来は宇宙に携わる仕事をしたいと思い学生時代は青春を犠牲にして勉強に励んだ。

今にして思えば、少しは遊んでおけば良かったと後悔しているよ。

 

 

 

猛勉強の甲斐あってか私は当時のアメリカ航空宇宙局、通称NASAに入ることが出来た。

いやぁ、嬉しかったよ。小さな頃からの夢が叶ったんだからね。

これから宇宙に携わる仕事が出来るんだと期待に胸を膨らませたものさ。

 

 

 

 

だが、現実はどうだ。私はNASAで本物の天才、秀才達を目の当たりにした。

私などでは到底理解できないことを彼らはさも当然のように理解し、考えもしない奇想天外な発想を次々と提案していくではないか。

努力ではどうにもならない壁というものを、まざまざと見せつけられた。

気付けば私は中心から遠退いて閑職、窓際族と呼ばれる立場に収まっていた。

 

 

 

地球では未知のウイルスが世界的に猛威を振るい、大国が野蛮な戦争まで始め混迷を極めた。

世界崩壊の危機は何とか免れたものの、地球の抱える問題は既に国家レベルでは対処不可能なほどに悪化していた。

そこで様々なものが統合される運びとなった。無駄を省き地球人類が一致団結するためにね。各国の宇宙開発組織が統合されたのもその一環だ。

そして生まれたのが“統合宇宙開発局”だよ。各国がバラバラに行っていた宇宙開発を統合することで無駄を省けると考えられた。

しかし、現実は各国が予算を出している関係から各国の思惑をそのまま組織に持ち込んでしまった。

宇宙開発は進展するどころか、熾烈な足の引っ張り合いが日常茶飯事となってしまったよ。

 

 

 

そんな争いの中私は毎日毎日宇宙からのメッセージが受信されるのを待つと言う、まさに誰にでも出来るような仕事を任された。

年齢が高いくせに無能な私、優秀な若い連中にとって目障りなのだろうな。いつ辞めても良いような部署に回されたよ。

私としても心が折れていたし、反論しなかった。

 

 

 

そんなある日、私はいつものように椅子に座り受信機をじっと眺めていた。変わることの無い画面。いつもと変わらぬ1日の筈だった。

異変が起きたのは……そう、昼食を済ませた後だ。画面にメッセージが飛び込んできた。しかも英語でだ。

 

 

 

『地球に住まう方、もしこのメッセージが届いているなら直ぐに返信してください。専用のアドレスを記載しますので、返信してくれれば大丈夫ですから』

 

 

 

私は胸の高鳴りを抑えられず、直ぐに上司に報告した。

まだ二十代の若い上司は私を見て胡散臭そうな顔をした。

 

 

 

「たまにある悪戯だろ。相手してやれば良いさ。どうせあんた暇だろ?」

 

 

 

嘲笑しながら返されたよ。まあ、こんな悪戯メッセージを受信することは稀にある。

だが、私には悪戯に思えなかった。どうせ私が何を言っても相手にされないんだ。ファーストコンタクトのチャンスは私が貰おう。

 

 

 

『メッセージを受信した。此方は地球の統合宇宙開発局。私は職員のジョン=ケラー』

 

 

 

私はメッセージに記載されていたアドレスに返信した。地球のインターネットと接続しているのか?

私は返信しながらも発信源を逆探知しようと試みた。先ず分かったのは発信源は地球外だと言うことだ。

 

 

 

『統合宇宙開発局?NASAではなくて?』

 

 

 

数分後、あちらから返信があった。NASAを知っている?やはり悪戯なのか?

 

 

 

『NASAを知っているのか。今は統合されて統合宇宙開発局と呼ばれているよ。失礼だがあなたのお名前を伺いたい』

 

 

 

まあ、悪戯ならそれでも構わないさ。最近はロクに会話もしていないからな。

職場では居ないもの扱いだし。

 

 

返信してまた数分が経過した。文章を考えているのか?それとも……例えば木星なら電波を出しても届くに一時間近い時間が掛かる。離れているからね。

数分程度なら太陽か、水星か金星……月は近過ぎるな。

 

 

 

『私はティナ。惑星アードからやって来ました。今は木星軌道の……えっと、衛星タイタンの近くに居ます』

 

 

 

私はそのメッセージを読んで唖然とした。もし本当なら、往復で二時間は掛かるやり取りを数分で……いや、あちらはまだ分かるが、此方からのメッセージすら数分で受け取れる技術を持っていることになる。

 

 

 

『それはそれは、ようこそ地球へ。良く地球のことをご存知のようだ。えっと、名前からすると…ミス・ティナかな?』

 

 

 

『あははっ、何だか恥ずかしいです。ジョンさんはミスターですか?』

 

 

 

『ああ、しがないアメリカ人の中年男だよ。オジさんが相手でごめんね?』

 

 

 

『ふふっ、そんなことはありませんよ。信じてくれるんですよね?』

 

 

 

『もちろんだ。いや、仮に悪戯だとしても良い機会だ。人生相談くらいは乗るよ?』

 

 

 

数分おきに交わされるメッセージ。相手は女の子か。しかも多分だが若い。

のんびりやり取りをしていると、後ろが騒がしくなった。

 

 

 

「おい!今すぐに代われ!」

 

 

 

上司が怖い顔をして私を睨んでいる。どうやら逆探知が完了したみたいだ。

で、座標は……ふふっ。正直だな、ミス・ティナ。木星周辺だそうだ。みんな大騒ぎだな。

 

 

 

『ミス・ティナ、私の出番はここまでだ。私は下っ端に過ぎなくてね。上司と代わって良いかな?』

 

 

 

残念だが、上司に譲るしかないな。

 

 

 

『……いいえ、私は今回ジョンさんとしかお話をしません。成り済ましても無駄ですよ。分かりますから』

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

数分後に返されたメッセージを見て皆顔を青くしているよ。

……聡い娘だな。もしかしたら、今の私の返信だけで事情を察してくれたのかも知れない。

 

 

 

『分かった、約束しよう。地球へ来てくれるのかい?』

 

 

 

『今回はご挨拶だけです。ただ、地球の皆さんとは友好的な関係を結びたいと思っています』

 

 

 

『それは嬉しいね、個人的には大歓迎だよ』

 

 

 

『ありがとうございます。そうですね、2ヶ月後です。もう一度私はここにやって来ます。そして地球へお邪魔したいと思うのですが』

 

 

 

『そうなのかい?政府に相談しないと分からない部分も多いな』

 

 

 

『だから2ヶ月です。そちらも色々あると思いますから。2ヶ月後、またメッセージを送ります。その時に』

 

 

 

『分かった、伝えておくよ。ミス・ティナ、君と会える日を楽しみにしている』

 

 

 

「何を勝手な!」

 

 

 

後ろが騒がしいが、気にするものか。彼女は大切なお客様になるんだから。

 

 

 

『私もです、ではその日までどうかお元気で』

 

 

 

そのメッセージを最後に連絡は途絶えた。統合宇宙開発局は上から下まで大騒ぎだ。

ははっ、何だか胸がすく思いだよ。

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