星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
異星人対策室長兼使節団長のジョン=ケラーだ。長旅を終えて無事に惑星アードへ辿り着いた私達は、そのままティナの故郷であるドルワの里へ案内された。
集会所と呼ばれる古代ギリシャの評議会を思わせる会場には老若男女問わぬ大勢のアード人達が集まっており、一瞬歓迎されていないのではと気圧されてしまったが、ティナ達が挨拶すると皆が笑顔で迎えてくれた。先ず感じたのは家族愛に似た暖かさだな。
アード人は同胞意識が地球人より遥かに強いことは情報として得られていたが、この光景を目の当たりにすると納得できるな。
それに、我々に対する視線を明らかに友好的なものだ。
「ふふふっ、ティナちゃんの妹というのは世を忍ぶ姿!その正体は、ドルワの里の里長をやっているティリスちゃんなのだ!☆」
「「「イェーイーッ!!!」」」
「まあ、四人は知ってたんだけどね☆」
「「「知ってたんかい!!」」」
ティリス殿を中心に皆のノリも良い。ティナ達も早速大勢のアード人達に囲まれているし、このままではいかん。場の雰囲気に飲まれる前に、せめて挨拶をせねば!
「ご歓談中失礼を致します!」
「「「ザワザワッ……!!ザワザワッ……!!」」」
「私は地球から参りました、有効使節団を率いるジョン=ケラーと申します。このような歓迎をしていただき、心から感謝致します。どうか、少しだけお時間をいただきたく」
それから始まるジョンのスピーチは、短くも壮大なものであった。異星人の少女との出会いと交流。地球で過ごした日々と、彼女達の活躍が物語のように語られ、集会所内に居るアード人達全員が耳を傾けて聞き入っていた。
ジョンは詩人というわけではないし、俳優でもない。しかし自分の目にした出来事を拙いながらも懸命に語るその姿は自然と皆の注目を集め、いつしか場の空気を完全に支配していた。
「彼女達によって地球が得られた利益は計り知れない。いや、それどころか私達は滅亡の機から救われたのです。そして今回、皆様からのご厚意によってこの場に立てたことを誇りに思います。
今後もアードの皆様の健やかなる発展を願い、皆様の良き隣人となれるよう尽力する次第です。些か長くなってしまいましたが、私からは以上です。ご静聴、ありがとうございました」
「「「ォオオオオッッ!!」」」
スピーチを終えたジョンを大歓声と拍手喝采が包み込んだ。当事者であるティナ達は恥ずかしげにはにかんでいるが、里の子供達の活躍を聞いて喜ばない者はドルワの里に存在しない。
「いやぁ、ケラー団長は演説の天才かな?☆」
「はははっ、必死だっただけですよ」
「うんうん、謙虚なのは良いことだよ☆ただ、どうしよっかなぁ?☆歓迎の宴を考えていたけど、はっきり言ってアードの料理は地球に比べて味気ない、いや不味いんだよねぇ☆」
「その様なことは……」
「HAHAHA!ならば歓迎の感謝としてこの不肖ジャッキー=ニシムラが腕を奮いましょうぞ!」
ここで声を挙げたのは我らがジャッキー=ニシムラ(天然記念物)である。
実はハイパーレーンを航行中にティリスから相談を受けていたジャッキーは、密かに準備を行なっていたのだ。
相談の内容としては、歓迎する際の食事の面で不安が残るという点だ。アード人は一部の富裕層などを除いて基本的に無味無臭の栄養スティックで食事を済ませている。
だが、客人に出すようなものではない。魚介類を使った料理もあるが、塩味が基本であり地球人の基準からすれば美味しいと言えるような代物ではない。
この相談に対するジャッキーの回答は。
「ここはアード人、リーフ人、地球人を問わず皆で一緒にワイワイ楽しめる食事をしましょう!その名は!バーベキュー!!!」
「「「なっ、なんだって~~~ッッッ!!??」」」
ドルワの里の住民達のノリの良さ&毒され具合にティナは頭を抱えたが。
ドルワの里は数百人規模、更にアード人は代謝が良いのか地球人よりよく食べる。当然用意すべき食材も山のように必要となるが、持ち運びに関してはトランクを用いることで解決。また、そもそも親善用にと交易品とは別に用意された大量の食料品があるので準備に問題はなかった。
ジョン、朝霧も手伝いながらトランクから大量の串に刺された食材や大きな鉄板を取り出し、手際よく準備していく。アード人達は興味津々といった様子で作業を見守り。
「あっ、ジャッキーさん。私も手伝いますよ」
「えっ!?ティナ姉ぇ料理が出来たの!?」
ティナの発言にフィーレがビックリして、周りのアード人達も同様に驚いた。アード人は基本的に料理をしない。魚料理はあるが、わざわざ作らなくても栄養スティックがある。
調理マシーンもあるが、あちらはエナジーカートリッジが高価なので庶民の手には届かない。
「別に料理ってほどのものじゃないけど……」
「ティナ、私も一緒に作りたいです」
「うん、フェルも一緒にやろっか」
「アードの皆さんもご一緒に!作り方は極めてシンプル!この食材を刺した串を焼くだけ!それだけです!それだけなのに皆でワイワイ食べられるのが、バーベキュー!」
早速簡易コンロで熱せられた鉄板に油をひいて串に刺さった肉や野菜、魚介類を次々と焼いていく。ドルワの里のアード人達は地球の食べ物を口にした経験はあるが、それらは保存食としての缶詰である。もちろん味も良かったが、温かい料理を食べたわけではない。ましてアードにおいて畜産が可能な土地は限られている。肉など先ず口にする機会は無い。
そんな彼らの目の前でバーベキューを始めればどうなるか。香ばしい香りが一面に充満し、食欲をそそる。
焼き上がった串は最初に子供達へ提供される。一気に増えた子供達は親に勧められて恐る恐る口へ運び。
「「「おいしーっっ!!」」」
目を輝かせて食べ始め、それを見ていた親達も。
「俺も手伝う!」
「私もよ!」
「鉄板が足りない!?なら作れば良い!」
「じゃんじゃん焼いてじゃんじゃん食べるぞー!☆」
「「「ォオオオオッッ!!」」」
そこからはまさにお祭り騒ぎとなった。大量の鉄板が魔法で生成され、準備された大量の串を老若男女問わぬアード人達がジョン達の助言に従いながら次々と焼いていく。そして地球の味を存分に堪能する。そこに種族の差は存在しなかった。
「成功だね、感謝するよ同志ニシムラ☆」
「なんの、我が父祖の国には同じ釜の飯を食うという言葉があります。皆が一緒に美味いものを食べる。そうすれば、笑顔が溢れる!」
「んふふっ、良い言葉だね☆」
急遽開催されたバーベキューは、ドルワの里のアード人達と使節団を親密な関係へと導く。食は宇宙を繋ぐのだ。
~~オチ注意~~
「みんな、準備は良いな?」
バーベキューが終わった夜、ティドルを中心にドルワの里の男性陣が悲壮な覚悟を胸に栄養ドリンク剤エネルゲンエクストラを一気に飲み干した。
そんな彼らを里の女性陣はまるで獲物を狙う肉食獣のような目付きで見つめていた……。
アリア
『なぜティナには効かないのか。調べる必要がありますね』