星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ドルワの里にジョンさん達を招いて最初の朝がやってきた。昨日は結局みんなバーベキューに夢中で家族をジョンさんに紹介する暇がなかった。私もティルの面倒を見たり、フェル達と一緒にどんどん焼くので忙しくて余裕がなかったんだよね。
ジョンさん達は里のみんなと食を通じてしっかり交流したみたいで、今日行われるパトラウス政務局長との会談や女王陛下との謁見に弾みがついたと言ってた。本当なら案内役の私が間に入るべきだったんだけど……仕方ない。
昨晩は家じゃなくて里にある宿屋で私達も過ごすことになったんだよね。家へ帰るつもりだったんだけど、ばっちゃんが何故か意味深な笑顔を浮かべて宿を勧めた。しかも私達だけじゃなくて、ティル達新しく生まれた子供達も一緒にお泊まりすることになった。
まあ、子供達は可愛いから問題はない。フェルが母性全開で接していたし、カレンもああ見えて面倒見が良いから直ぐに仲良くなって人気者になった。騒がしくも充実した夜を過ごせたよ。
「おはようございます、ティナ」
「おはよー、フェル」
朝陽に照らされた里の空気を胸一杯に吸い込んでいると、起きてきたフェルが声をかけてきた。私も早起きなんだけど、フェルは私以上に早起きだ。まだまだ早朝なんだけどなぁ。
「部屋はどうだった?フィーレはゆっくり休めたかな?」
生憎宿には個室しかなくて、フィーレだけは良く懐いているフェルと一緒に寝たんだよね。
「フィーレちゃんは起きてくるのが遅くなるかもしれません。その、夜更かしをしていまして」
フェルの事だから夜更かしに付き合ったんだろうなぁ。
「ごめんね、付き合わせちゃって」
「いえ、フィーレちゃんと一緒に居ると楽しいので。あっ、もちろんティナ達もですよ?」
「分かってるよ、フェル。フィーレの夜更かしの原因は?またなにか調べてたのかな?」
「はい、日本のロボットアニメを調べていました。その、月◯蝶というのが私達の羽に似ているから再現したいと」
「よし、全力で阻止しよう。地球が大変なことになっちゃうからね。アリア、ちゃんと監視してて」
『畏まりました、ティナ』
「ティナ?」
「ジョンさん達を信用してるけど、強すぎる兵器を地球人に渡すのは抵抗があるんだよね」
センチネル用に使ってくれるならいいけどさ。ハリソンさん達を信用しているけど、地球に渡せば間違いなく地球内部の戦いで使いそうな気がする。安心できるまで強すぎる兵器は開発させないし、譲渡もしない。元地球人として、それだけは譲れない一線だ。だって、地球人の気質を考えたら怖くて渡せないもん。
え?ガン◯ム擬きの段階で手遅れ?
……ナンノコトカナー。
「これは……ティナさん、フェルさん。おはようございます」
「「おはようございます、朝霧さん」」
ちょっと現実逃避をしていたら、朝霧さんが挨拶をしてくれたのでフェルと一緒に挨拶を返した。
「早いですね、朝霧さん」
「ええ、今日は重要な日ですから少しでも準備をしておこうと思いまして。打ち合わせもしたいですからね」
「あっ、でもばっちゃんはまだ寝てますよ?」
政治絡みはばっちゃんに丸投げしてる。素人の私がやるより、ばっちゃんが対応した方が良いだろうし。
「そうでしたか……いや、それでもちょうど良かった。実は椎崎首相からティナさんへの贈り物を預かっているんです」
「美月さんから?」
フェルと顔を見合わせて首を傾げた。はて?聞いてないけど。
「椎崎首相からアードへ無事にたどり着いたら渡してほしいと言付けられまして、今まで黙っていました。お許しを」
「別に怒ってないですよ?なんだろう、サプライズかな?」
美月さんも茶目っ気があるみたいだ。
話をして居ると朝霧さんが持ち歩いているトランク(今回の訪問のために個人用として朝霧さんにプレゼントしたもの)を開いて、中身を取り出す。
取り出されたのは……加工された綺麗な石が埋め込まれたペンダントと……日本刀?
「アクセサリーと武器でしょうか?」
フェルも首を傾げてる。
「こちらのペンダントには、翡翠が使用されています。翡翠は繁栄と長寿の意味があり、アードとリーフ、地球の繁栄と存続、全ての人民に命を散らすことなく天寿を全うして欲しいという祈りが込められています。
二つ目は流星刀と呼ばれる日本刀です。この刀には、鉄隕石と呼ばれる宇宙から飛来した鉄を大量に含んだ隕石が使われていています。日本では装飾品としての意味合いもありますが、椎崎首相はセンチネルと戦うこともあるティナさんの身を案じ、そして武運長久の祈りが込められたものだと推察できますね。どちらもティナさんが来日された後に椎崎首相が個別に発注したものです」
「美月さんが……」
刀を受け取り、そっと鞘から抜く。朝陽に照らされた刀身を美しいと感じてしまうのは、前世が日本人だからかな。それに、ペンダントも綺麗だ。うん、折角だから身に付けよう。
「ティナ、動かないでくださいね」
「ありがとう、フェル」
フェルが後ろへ回ってペンダントを着けてくれた。うん、綺麗で良い感じ。
「それは、武器ですか?」
「うん、日本刀だよ。日本で千年以上の歴史がある由緒ある武器かな。流石に現代では使い途もないけどね」
ロマンはあるけど、地球でも銃が主流だ。アードでも私が愛用しているビームランスみたいに、ビーム兵器が当たり前。
日本刀を使うような機会は先ず無いだろうけど……うん、身に付けておこう。適当に腰のベルトに差しておいた。長さは私の体に合わせてくれたみたいでちょうど良い。地面に鞘が付くこともないし、動きが制限されないように軽量化してあるね。
『解析完了、アードの技術を用いれば実用可能なレベルまで強化できます』
「止めとくよ、アリア。折角の貰い物だからね。朝霧さん、ありがとうございます」
「お礼ならば椎崎首相へ伝えてあげてください。ペンダントはまだしも、日本刀を選んだことを少し不安にされていましたから」
「美月さんの気持ちはちゃんと伝わりました。地球へ戻り次第、お礼を伝えて贈り物を用意しないとね?」
「はい、ティナ」
「実は、フェルさんにもありまして」
「え?私にも?」
「はい。フェルさんは常に髪をサイドポニーにしていますが、髪留めが質素であることを気にされていましたので、こちらを」
朝霧さんが取り出したのは、緑色の可愛らしいリボンだ。
「フェル、動かないでよ?」
「ティ、ティナ!?」
ちょっと翼を羽ばたかせて飛び上がり、髪留めを外してリボンでサイドポニーにする。うん、フェルの綺麗な金の髪に緑色のリボンはよく似合っている。美月さんのチョイスは……これ、多分私好みなんだろうなぁ。ちょっと複雑だ。
「似合ってるよ、フェル」
「……ありがとうございます、ティナ」
まあ、ほっぺを少し赤くして上目遣いで恥ずかしげに笑うフェルを見られただけで満足だよ。