星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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ジョンさん単独謁見(胃痛付き)

 ティアンナの気紛れにより、想定外のセレスティナ女王との謁見を果たしてしまったジョン=ケラー。だが、彼は痛む胃を労りながらも心を落ち着かせる。

 もとより本日正午にパトラウス政務局長と会見後に謁見する予定であったので、スケジュールが繰り上がっただけだと自身を納得させる。それよりも重要なのは、自分の言葉、態度が地球の命運を分けるという重大すぎる責任である。

 ジョンは静かに片膝をつき、胸に右手を添えて深々と最敬礼をする。アードの最敬礼は土下座のような姿勢で翼を広げて地面に着けるものであり、当然ながら地球人には不可能である。そのため朝霧やティリスと語らい、地球の最敬礼を行うことにしていたのである。

 

 

 

「女王陛下に拝謁賜り、歓喜に堪えません。私は地球より参りました、ジョン=ケラーと申します。この度、使節団の団長を任されています」

 

 

 

「お話は伺っていますよ。こうして地球からのお客様に会えたこと、嬉しく思います。ただ、少し予定とは違う様子ですが」

 

 

 

 セレスティナ女王は困った笑みを浮かべて妹を見る。

 

 

 

「仕方無いじゃない、気に入ったんだから」

 

 

 

 気安く話す二人を見て、ジョンは疑問を持つ。それを察したのか、ティアンナはローブを脱ぎ捨てた。そこにはセレスティナ女王と同じ二対の翼があり、二人の間に特別な繋がりがあることを察することが出来た。

 だがそれと同時に、非常に嫌な予感もしているのだが。

 

 

 

「改めて、ティナの母のティアンナよ。見ての通り、セレスティナ女王は私の姉になるの。義理とかじゃなくて、正真正銘の姉妹よ」

 

 

 

 ティアンナの告白にジョンは目を見開く。異星人対策室及び合衆国政府が事前に想定していた中でも最悪の事態が、今まさに現実になろうとしていた。彼は緊張で乾く口内を何とか潤し、恐る恐る口を開く。

 

 

 

「あっ、……あなた様が女王陛下の妹様ならば……彼女は……ティナはっ!!」

 

 

 

「まあ、そうね。正真正銘姉様の姪っ子よ」

 

 

 

「可愛らしい姪っ子ですよ」

 

 

 

 ティアンナは王妹。そしてその娘となれば、どう解釈してもティナはアード王室直系のお姫様である。

 ティナがアードの重要人物である可能性について、地球では慎重に議論がなされていた。

 アリア経由で伝わるアードの情勢からして、ただ一人の少女が独断で宇宙へ飛び出し単身で銀河の反対側へ赴き、アードから見れば原始文明とも言える地球と交流するなど有り得ないことだからだ。

 それを加味して、ティナがアード政府重役の身内或いは王族である可能性も議論されてきた。しかし、自らの危険を顧みない彼女の献身性から、少なくとも王族では無いだろうとの意見もあった。

 ジョンとしてもティナはアード有力者のお嬢様だろうとぼんやり考えたことはあったが、まさかの王室直系の姫である。

 

 

 

「あっ、これアードでも最重要機密だから内密にお願いね」

 

 

 

 さらっと伝えられたアードの最重要機密であるという事実に、ジョンの胃は悲鳴を上げた。その様な重大な秘密を、初対面かつ異星人の自分に何でもないような気安さで伝えられても対処に困るのだ。まして機密ならば相談することもできない。彼は激しい胃痛に耐えながら、疑問を口にした。

 

 

 

「その事を、ティナ……殿下は?」

 

 

 

「ティナで良いわよ。そして、この事をあの娘は知らないわ」

 

 

 

「知らないのですか?」

 

 

 

「はい、ティナには伝えていません。ティアンナが私の妹であることを知るアード人も一握り。ドルワの里でもティドルを除けばティリスくらいでしょうか」

 

 

 

「なんと」

 

 

 

 細心の注意を払って秘匿されていることがよく分かる。

 

 

「いけませんね、このままではゆっくりお話をすることが出来ません」

 

 

 

 セレスティナ女王は手にした杖で地面を一度だけ優しく叩くと、次の瞬間魔法陣が現れて木製のテーブルと椅子が現れた。セレスティナ女王はゆったりと座り、ティアンナも隣に座る。

 

 

 

「どうぞ」

 

 

 

 女王に促されてジョンも立ち上がり、一礼して対面に腰かけた。木製の地球でもよく見られる椅子のようだが、座り心地は非常に柔らかくまるで上質なソファーに座っているような感覚を覚える。

 ティアンナが右手を小さく振ると、遠くに居た近衛兵数名が深々と一礼してその場を離れた。

 

 

 

「宜しいのですか?」

 

 

 

 初対面、それも異星人と会うのに衛兵を下げるという行為にジョンは緊張を覚えるが。

 

 

 

「構わないわよ。貴方も肩の力を抜いて頂戴、ケラーさん。娘がお世話になっている人を姉に紹介しているだけなんだから」

 

 

 

『それは無理だ!!!』。ジョン=ケラーの心の叫びであるが、彼は冷や汗を流しながらも笑みを浮かべた。

 いつの間にかテーブルには地球のティーセットが用意されており、ジョンの見知った品が目に映る。

 

 

 

「これは、地球の産物ですか?」

 

 

 

「ティナが前の交易で持ち帰ったものでね。この紅茶と呼ばれる飲み物と、クッキーだったかしら?この軽食が姉様の好みなのよ」

 

 

 

「恥ずかしながら、とても美味しくて」

 

 

 

 妹の紹介に恥ずかしそうにはにかむセレスティナ。その姿にジョンはティナの面影を見た。確かに身内だ。

 

 

 

「地球の産物が女王陛下のお気に召した様子で、何よりでございます。今回は献上品としてこれまでの保存食ではなく地球の高級食材を御用意させていただきました。また、併せて調理方法などを記載した本なども持ち込んでおります。午後からの謁見で献上させていただきますので、ご笑納頂ければ幸いでございます」

 

 

 

「まあ、地球の食材を?」

 

 

 

「保存食とはまた違うのよね?」

 

 

 

「保存技術も発達して中々侮れない味ではありますが、やはり新鮮な生鮮食品には一歩及びません。また、今回は調理においても才を発揮する職員を同行させていますので直ぐに調理することも可能です」

 

 

 

「それはとても楽しみです」

 

 

 

 ジャッキー=ニシムラ(格闘タイプ)の御前調理が決定した瞬間である。

 その後も一時間ばかり和やかな談笑が続いた。特にセレスティナとティアンナはティナの活動についての話を求め、ジョンは出来る限り詳細に地球に於ける活動を伝えた。また同時に。

 

 

 

「地球の内輪揉めに巻き込み、姫殿下を危険に晒してしまったこと、地球人として心からの謝罪を申し上げます」

 

 

 

 ジョンはティナに向けられた悪意も隠さずに伝え、深々と頭を下げた。既にアリア経由で知っていた姉妹は改めてジョンの誠実な人柄に感心し。

 

 

 

「そうでした。フェラルーシアもまたリーフの王族で、おそらく唯一の生き残り。私の親友の忘れ形見であるあの娘の事もどうかお願いしますね」

 

 

 

 更にぶちまけられた超重要情報はジョンの胃に特大の穴を空けたが、彼は鋼の精神で耐えた。

 尚、この後一旦ドルワの里へ戻ったジョンは直ぐに胃薬一気飲みを敢行、胃を修復して事なきを得た。




ティナ
「もうやめてあげて!ジョンさんのHPは0だよ!」


ティリス
「だが断る(無慈悲)」
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