星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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十月になれば多少は楽になる筈だったんだけどなぁ(  ̄- ̄)


ジョンさん、事件の真相を知る

 異星人対策室のジョン=ケラーだ。ミスター朝霧とティリス殿の三人で最後の打ち合わせをしている最中に見かけたティナは、普段の彼女からは考えられない程の怒気をその身に纏っていた。

 何時も傍に居るフェルの呼び掛けにも反応しないのは明らかに異常だし、このまま行かせてしまったらこの誰よりも優しい少女は取り返しのつかない事をして傷付いてしまうだろう。少なくとも私はそう思ったし、そして見過ごすという選択肢は存在しなかった。

 私は努めて笑顔でいつものように声をかけて、彼女を落ち着かせることを優先した。

 ティナは“ちょっとうっかりな所はある”が、基本的には聡い娘であり優しい心の持ち主だ。その心に秘めた怒りを鎮めるならば努めて優しく接するのが正解だろう。

 

 

 

 そして私の想いは通じたようだ。追い付いてきたフェルに謝りながらティナは複雑な表情を浮かべている。ふむ。

 

 

 

「ミスター朝霧、済まないが……」

「お任せを、ケラー室長。ジャッキーさんも手を貸してくれるみたいなので何とか間に合います」

「本当に済まない。この埋め合わせは必ず」

 

 

 

 ティナをこのままにはしておけない。とは言え、提出する資料などの再確認をしなければならない。ティナの対応をするためには、それをミスター朝霧に頼むしかない。非常に心苦しいが、どうやら言わずともミスター朝霧は私の意を汲んでくれたようだ。全く出来た青年だよ。彼らのような同僚を持てて私は幸せ者だ。

 

 

 

 ミスター朝霧が足早にこの場を立ち去り、代わりにティリス殿が用意してくれた切り株をそのまま利用したようなテーブルと椅子にティナ、フェル、私、ティリス殿が腰掛ける。見た目は切り株なのに極上のソファーに座っているような感覚は慣れないな。

 フェルは当然のようにティナの隣へ寄り添うように座り、私達はテーブルを挟んだ反対側だ。有難い、フェルが寄り添えばティナもいくらか落ち着くだろう。

 

 

 

「察するに、ティリス殿はなぜティナがこうなったか承知していると見受けますが?」

 

 

 

 本人の口から聞いても良いのだが、先ずは頭を抱えていたティリス殿に問い掛けた。今必要なのは客観的な情報であり、間違いなくティリス殿は承知している筈だ。

 

 

 

「うー……ティドルに何と言えば良いのか……」

「お父さん……?」

「話すよ。私だってその場に居た訳じゃないから、あくまでもパトラウスから聞いた話になるからね」

「構いませんとも」

 

 

 

 間違いなく機密の類いだろうし、間違いなく胃を痛めるような内容だろうがティナの心を少しでも落ち着かせるためならば易いものだ。

 

 

 

 

 ティリス殿からはあくまでも報告された内容と前置きされたが、これは酷い。我々地球人はリーフ人と言えばフェルとフィーレしか知らない。もちろん資料としては些か排他的な種族だと聞いてはいた。

 しかしアードとうまく共存共栄を行えているから、少なくとも地球に今も根強く存在する民族や人種問題の解決策があるのではと期待していた面がある。

 特に我が合衆国は人種の坩堝と呼ばれる程の多民族国家だ。人種問題等が根強く残っており未だに解決策を見出だせないでいる。それ故に希望も大きかったのだが……度を越えている。

 確かにフェルはフィーレや里で交流したリーフ人と外見的な差異がある。これはもちろんティナもそうなのだが、ティナは問題なく受け入れられているように見えた。

 しかし、まさか大多数のリーフ人がフェルの存在を疎ましく想い、更に排除するために動いたと。

 しかも襲撃を画策した首謀者は、わざわざ里に居たフィーレの姉でありティナの友人であるフィオレを言葉巧みに洗脳して同行させたというのだ。

 その真意は部外者である私にも分かる。フィオレを連れることでティナの警戒心を薄れさせるのが狙いだろう。

 ……無茶をするティナに寄り添い、いつも暖かな笑みを浮かべているこの少女を……ティナと共に数多の地球人を救ってくれた優しい娘に……全てを失いながらも、それでも懸命に前を向いて歩く健気なフェラルーシアという名前の年端も行かぬ女の子に……そのような卑劣な行いを……!

 

 

「……」

「ジョンさん!?」

「ん?ああ、済まない。ちょっと力みすぎたようだ。なに、すぐに治るさ」

 

 

 

 知らぬ内に私の拳に力が入ったようで血が滴りティナを驚かせてしまった。いかんな、怖がらせてしまったかもしれない。自重せねば。

 

 

 さて、この凶行ではあるがティナの父であるティドル氏がその身を以て阻止したそうだ。昨晩挨拶を交わしたが、ティドル氏は穏やかな青年だった。少なくとも荒事が得意には見えなかったな。

 純粋な魔法だとアード人はリーフ人に一歩及ばないそうだが……娘達を護りたい一心が彼に種族の差を越えさせたのだろう。右腕を失い掛けるほどの重傷を負いながらも首謀者を撃退。首謀者等は自害したみたいだが、その際ティドル氏は重傷の身でありながらフィオレを救い、保護したと。

 そしてこの件についてはティナ達に知らせないように手を回したらしい。だが、フィオレが罪悪感に堪えられずティナに全てを告白。親友の命を狙われて、更に父親が重傷を負わされたのだ。如何に優しい彼女でも、怒るのは当然と言える。とは言え。

 

 

 

「ティドル氏の気持ちは、分からないでもない」

「ジョンさん?」

「いや、私も娘を持つ身だ。もし私が彼の立場だったとしても、カレンには知らせないように手を回しただろうな」

「それは、どうしてですか?」

 

 

 

 フェルがティナに寄り添いながら、彼女に続いて言葉を紡いだ。

 

 

 

「はははっ、子供に心配を掛けたくないのが親というものさ。まして、ティナ達は今地球との交流という大切な使命を果たしている最中、余計な心配を掛けたくないと思うのは無理もない」

「秘密にされるのはもっと嫌ですよ」

「君も何時か分かるさ、ティナ。だからこそ、ここはティドル氏の、お父さんの意志を汲んであげてくれないか?」

 

 

 

 ティドル氏はこの事件が種族間の致命的な問題になることを避けようと動いたようだ。もっとも、根回しをする前にリーフ側は敢えて事件を公表して長老の一人が謝罪と共に自害して果てたらしい。命を懸けた謝罪だ。これでアード側は追及が難しくなった。

 ティリス殿が毛嫌いする理由が分かるよ。

 

 

 

「……分かりました」

 

 

 

 絞り出すような言葉だ。色んな感情が含まれているのは分かるし、これはお父さんと……自惚れて良いなら私の顔を立てて我慢してくれたのだろう。

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 だから私は、感謝の言葉を口にした。私は所詮部外者、アード内部の問題に口を挟む資格はない。だが、それでも耳を傾けてくれて我慢してくれたこの少女に感謝と敬意を。

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