星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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初会談

 ハロン神殿にてアード永久管理機構の面々から出迎えられた使節団一行は、そのまま荘厳なハロン神殿内部へと案内された。

 ハロン神殿は聖域と呼ばれる区域と、行政府と呼ばれる区域の二つに分かれている。今回ジョン達が案内されたのは行政府であり、アード政府の中枢が集まる政治の中心地である。一行はその行政府の貴賓室に案内された。

 アードとしても異星人を招くのは実に数百年ぶりであり、総出で出迎えこそしたものの対応そのものは政務局長であるパトラウスが代表として行うことになった。これは今回の使節団受け入れが急な決定であり各所への根回しが不十分であったことに起因している。つまり、女王一族案件(いつものこと)である。調整者達の苦労は推して知るべしである。

 貴賓室には質素ながら質の良い調度品が並べられているが、地球人からすれば意味不明な物体も少なくはない。それらに興味を惹かれながらも、中央に用意された石造りのテーブルへと向かう。テーブルの周囲には同じく石造りの椅子が並べられ、しかもそれは全て宙に浮いているのである。

 

 

 

「どうぞお掛けください」

 

 

 

 見慣れない椅子に戸惑いながらも、パトラウスの招きに応じて使節団一行は腰を降ろす。石造りに見えたその椅子もまた極上の座り心地を提供し、更に座った瞬間その人物に最適な高さや角度へ自動的に調整されたのである。

 

 

 

「これは良いものですな。是非ともオフィスに欲しいものです」

「そのタイプの椅子は純粋な科学の産物でしてな、地球でも利用することが出来ます。お近付きの印に幾つか見繕いましょう」

「それはありがたい。最近は歳なのか腰を痛めることが増えましたからなぁ」

「はははっ、なにを仰るか。まだまだお若いでしょう」

 

 

 

 緊張感に包まれていたが、パトラウスとジョンが和やかに言葉を交わし場の雰囲気を和らげていく。ティナ達とカレンは末席に座り、パトラウスの対面にジョン、朝霧、そしてジャッキーが座る。

 

 

「先ずは銀河の果てから遥々ようこそお越しくださいました。長旅になったでしょう」

「なんの。本当に銀河の反対側へ来たのかと思うほど短く快適な旅でしたよ。地球では到底不可能です」

「地球にも優れた科学技術があると聞いています。ならばこれから本格化する交流で飛躍的な技術革新を促すことも出来ますよ」

「それは大変魅力的なご提案ですな。是非ともそうありたいものです。さて、ミスター朝霧」

 

 

 

 場が幾らか温まり、ジョンは隣に座る朝霧に視線を向ける。ジョンの意図を汲んだ彼は、地球を旅立ってから肌身離さず大事に持ち歩いていたアタッシュケースを開き、質素ながら気品を感じる桐箱を取り出して立ち上がり、頭を下げながら両手で差し出す。

 

 

 

「日本国及び合衆国指導者連名の親書となります。どうか、こちらを」

「ほう、指導者からの。姉上から話は伺っております」

 

 

 

 パトラウスも朝霧に倣い両手で親書を受け取り、静かに中身を検める。

 親書は予めアリアによってアード語に翻訳されている。外交儀礼と歩み寄る姿勢を示すため、当初はアード語で親書を認める予定であった。しかし地球には存在しない独特な文字と文法は、短期間でマスターすることなど不可能であると結論付けられた。そこで、相手が優れた翻訳能力を持つならば今回は相手に甘えようとアリアに内容の翻訳を依頼。既にインターネットを通じて地球に存在する全ての言語を完璧に習得しているアリアは、一切の語弊を生じさせず完璧に翻訳したのである。

 内容としては地球、アードの友好的な関係構築を望んでいること。双方の交流を加速させるために地球へ大使を派遣してほしいというものだった。

 静かに親書へ目を通したパトラウスは丁重に桐箱へ親書を納めた。

 

 

 

「ご要望は承った。承知しているとは思うが、既にセレスティナ女王陛下の御聖断により地球との交流に異論を唱えるアード人は存在しない。これは決定事項であり、この決定が覆されることはないと断言させていただく」

「感謝します」

「しかし、政府としての交流を促すものか、あくまでも個人の交流に留めるべきかは議論が分かれているのが現状なのです」

「アード政府として意見が割れていると?」

 

 

 

 ジョンの問いにパトラウスは重々しく頷く。

 

 

 

「耳にしているとは思うが、我々アード人にとってセンチネルの居る宇宙とは恐怖の代名詞なのだ。センチネルが我々に与えた衝撃は、残念ながら地球の皆さんには中々理解されないだろう。しかし、数百年に亘る戦いで我々は百億を超える同胞を失ったのだ」

「百億……!?」

 

 

 

 パトラウスの言葉に、朝霧達は目を見開く。想像よりも遥かに多くの犠牲者を出していたからだ。

 

 

 

「正確な数値は今となっても不明なままだ。我々はセンチネルに敗北して本星へ身を隠した際に数十の植民星系を見捨てたのだ。彼らがどうなったかは一切不明だ。

 これだけの犠牲者を出してしまった過去があり、大半のアード人は宇宙を忌避している。地球への赴任など夢物語と言えるだろう」

「……でしょうな」

 

 

 

 アード側の事情を聴き、ジョン達は外交関係構築を半ば諦めかけたが。

 

 

 

「しかし、女王陛下のご意志を無下にする事など出来はしない。人員の選定に時間を要するが、必ず外交官を派遣することを誓おう。また、それまでは暫定として地球発見者であるティナを親善大使として任命することとなった」

「えっ?」

「引き続き彼女を介した交流を続けていくことで意見を一致させた。残念ながら今の我々にはこれが精一杯の対応となります。ご了解頂きたい」

 

 

 

 急に大役を任されてビックリしているティナを哀れに思いつつも、ジョンは立ち上がりパトラウスと固い握手を交わした。

 

 

 

「事情があるにもかかわらず前向きな回答をありがとうございます、パトラウス政務局長殿。今後ともどうかよろしくお願いします」

「何の。それと、ケラー団長。貴方の事は色々と報告を受けております。その、色々御苦労されている様ですな」

「はははっ、政務局長程ではありませんよ」

 

 

 

 二人の目にはキラリと光るものがあった。こうして地球とアードが初めて公式に会談し。

 

 

 

「私が親善大使……え?嘘でしょ?」

「ドンマイ☆」

「よしよし」

 

 

 これまでの因果か、突然大役を任されて頭を抱えるティナをフェルが宥めるのだった。

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