星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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それは、運命

 老若男女紳士淑女の皆様、ごきげんよう。異星人対策室のジャッキー=ニシムラ(未覚醒)だ。私は現在アードにあるドルワの里で任務を遂行している。

 私の任務はケラー室長のサポート全般と、可能な限りアードやリーフの文化や風土、文明に関する情報を収集することだ。その為に最新式の記録機材を山ほど装備した。

 既に宇宙の旅で宇宙船に関する興味深いデータを収集できたが、残念ながら魔法を活用したものに関しては現状地球人には理解不能だ。

 そしてここアードであるが、非常に興味深い環境である。先ずは地球よりも大きな海洋惑星で、陸地は最大のものでも我が父祖の国日本にある四国ほどの面積しかない小島ばかりの惑星だ。これでは大規模な農業や酪農は不可能だろう。

 また海洋生物は極めて巨大で狂暴なモンスターばかりであることも判明した。遠目に見た全長百メートルを軽く超える巨大な海蛇のような生物には、流石の私も度肝を抜かれたよ。

 浅瀬ならば問題は少ないらしく、一応沿岸部では漁業も行われているが地球ほど発展はしていないな。少なくとも遠洋漁業は事実上不可能だ。

 

 

 

 そのためアード人の大半が口にするのは、栄養スティックと呼ばれるカ◯リーメイトのような栄養食品だ。これを食べれば一日に必要な栄養素を全て摂取できるという優れものだが、メリル女史がティナ嬢から提供されて食べてみた結果味は完全な無味無臭。強いて言うなら、なにも付けていない歯ブラシを噛んでいるような感覚だったらしい。

 味があることが大前提である我々地球人からすれば、そんなものは拷問に等しいものだ。多彩な味付けが施されている地球の料理が、アード人を魅了するのも無理はあるまい。

 一応アードにも料理は存在するが、ティナ嬢曰く極めて薄い塩味の魚料理くらいらしい。それもアード人はほとんど食べず、定期的に食べていたのはドルワの里でもティナ嬢だけとのことだ。彼女の味覚は地球人に近いものがあるのかもしれない。そうなれば栄養スティックだけの食事など悪夢でしかないだろうな。

 

 

 

 さて、ドルワの里を含めアードには浮き島と呼ばれる宙に浮いた島が多数存在する。まさに幻想世界の風景だが、これは海洋惑星故の事情があるのだろう。

 土地の少なさをカバーするために土地を新たに生み出す。地球で言えば埋め立てだが、凶悪な海洋生物が住まう海を開発するのは極めて困難であることは察せられる。それ故に何らかの技術ないし魔法を用いて浮き島を作り上げたのだろうな。まさに知恵と言うものだ。

 

 

 

「でも、浮き島を作るにしてもサイズには限界があるんだよねぇ。里を作る程度が限界かなぁ☆」

「あくまでも居住地としての意味合いが強いと」

「そーだよ。栄養スティックもあるし、大半のアード人にとって農園や牧場を作る必要性もないしね☆」

「ではティリス嬢、栄養スティックの原材料は?」

 

 

 

 地球でも栄養食品の類いは野菜などを原材料にしているのだ。当然栄養スティックも原材料が必要になる筈。そう思い質問してみたのだが。

 

 

 

「んふふっ、それはねー☆」

 

 

 

 ……世の中には知らない方が幸せなことがある。この事実を私は墓まで持っていくつもりだ。大半の地球人にとってショッキングな内容だったとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 さて、無事に親書を手渡すことが出来たしアード女王との謁見も終わった。ティナ嬢とフェル嬢が残されたが、察するに功績を評価されたのではないだろうか?

 間違いなくティナ嬢は此度の交流最大の功労者であり、これからも更なる活躍が望まれているんだ。充分な評価を得られるだけの事を成し遂げたと思うのだが、果たしてどうだろうか。まあ良い、既に我々が口を挟む領域ではない。ただ待つのみだ。

 

 

 

 交流についてはドルワの里の人々と良好な関係を構築できたと思う。昨晩のバーベキューは成功だったな。

 出来るだけ味が濃くならないように調整していたが……あの反応を見るに母国の、つまり合衆国らしい濃い味付けでも充分に喜ばれたような気がする。食は異星人相手にも交流の有力な手段になる。きちんとレポートを纏めないといかんな。

 既に主任務を達成している以上、我々は速やかに地球へ帰還しなければならないのだが。

 

 

 

「もしよろしければ、数日程度の滞在を許可していただきたいのですが」

「いーよー☆」

 

 

 

 ケラー室長がティリス殿に滞在の延期を申請して、あっさりと許可された。

 実は謁見後室長、同志朝霧と語らい可能ならばアード人との交流をもう少し行いたいとの結論に至ったのだ。

 

 

 

「ならばティリス嬢、可能ならば是非ともリーフ人の方々との交流も図りたいのですが!」

 

 

 

 ドルワの里には少数のリーフ人が居たが、それ以外のリーフ人とは全く交流できていないのが実情なのだ。

 あのハロン神殿にも居たようだが、接触することも出来なかったからな。

 

 

 

「それは無理かなぁ☆」

「おや、それはまた何故?」

「まあ、色々事情があるんだよ☆」

 

 

 

 そう語るティリス嬢には有無を言わせない迫力があった。ならば、同志として潔く身を退かねばなるまい。

 

 

 

「分かりました。ところでティリス嬢、アードの食物を食べてみたいのですが」

「ジャッキーちゃん、それ本気で言ってる?」

「無論ですよ。それに、サンプルは多いに越したことはありません。今後の交流のためにも、双方の食品がどんな効果をもたらすかデータを増やすべきです」

 

 

 

 悪影響が出る可能性もあるのだ。私に後顧之憂は無い。喜んでこの身を捧げる覚悟だ。

 

 

 

「んー……止めとくよ。勝手にやったらティナちゃんを困らせちゃうからさ」

「むっ、それもそうでしたな」

 

 

 

 確かに勝手にやれば彼女を困らせてしまうな。まあ、焦ることはない。アリア殿経由でお願いすればティナ嬢も否やとは言うまい。もちろん私の自己責任であることを明確にして、ケラー室長達に影響が及ばぬように注意を払い……。

 

 

 

「ジャッキーさんじゃん、お疲れー」

「おお、これはフィーレ嬢。お姉さんは大丈夫ですかな?」

 

 

 

 姉であるフィオレ嬢と一緒に居た筈だ。詳細は聞いたが、義憤を禁じ得ない。なんとか心の傷を癒せれば良いのだが。 

 

 

「おねーちゃんは部屋で休んでるよ。疲れきってたし」

「でありましょうな……フィーレ嬢は大丈夫ですかな?」

「そりゃ色々考えるけど……おねーちゃんが無事ならそれでいーよ」

「なるほど、真理ですな」

 

 

 

 複雑な背景があるのは間違いないが、先ずは姉の無事を喜ぶ。良き姉妹だ。

 

 

 

「取り敢えずこれ。色々疲れただろうし、差し入れ」

「これは忝い」

 

 

 

 スポーツドリンクだろうか?フィーレ嬢が差し出した木のコップに満たされた液体を飲むと爽やかな味が口一杯に……ん?

 

 

「フィーレ嬢、これは?」

「リーフの栄養ドリンク。疲れが取れるよ」

 

 

 

 ほう、リーフの……んん!?

 

 

 

「フォオオオオオオッッッッ!!!!!」

「ぎゃあああああっっっ!!!ジャッキーさんに飲ませたぁあああああっっっ!!!」

 

 

 

 夕陽に照らされたドルワの里に、ティナの絶叫が響き渡った。

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