星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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政体の違い=平等な頭痛

 アード使節団がアードで交流を深めている頃、地球でも動きがあった。既に使節団派遣は各国へ向けて公表されているが、当然ながら猛烈な抗議に晒されることになった。

 

 

 

「これは合衆国及び日本によるアード利権の独占を意味している!地球全体の利益を最優先にすべき案件であるにもかかわらず、恩恵や情報をひた隠しにする両国の暴挙を許してはならない!」

 

 

 

 先ず真っ先に反発したのは当然と言うべきか、中華である。そして。

 

 

 

「両国の行動は、国際協調に歪みを入れるような行いであることは明白である。両国が各国に対する説明責任を果たすことを望むと共に、アード外交へ向けた足並みを揃えることを願うものである」

 

 

 

 ティナ達が来訪した際にテロの発生を許してしまったブリテンも、中華に遅れじと声明を発表したのである。大失態を演じ欧州各国からの強い批判に晒されているブリテンは、得意の外交を用いてこの問題の解決を図ったのである。

 幸い使節団派遣は日本と合衆国のみによる独断に等しく、国際社会への不義理は間違いなく攻撃するには最適な環境であることも拍車をかけた。

 ブリテンとしてはもう一度ティナ達をブリテンへ招くことで失態の汚名を払拭し、尚且つ欧州唯一の来訪地としてのアドバンテージ確保を狙っていた。政治外交に秀でた彼らが得意分野での挽回を図るのは必然とも言えた。

 

 

 

 各国からの批判を予測していた合衆国及び日本も負けじと反論を繰り広げる。

 

 

 

「先ず使節団派遣について国際社会に諮らなかったことは、合衆国大統領として謝罪申し上げます。要望された通り、可能な限りの情報開示を行わせていただきますので冷静にお願いします」

 

 

 

 先ずハリソン大統領は使節団派遣については前々から検討していたこと。各国に諮る前段階でアード側から使節団派遣の打診があったこと。同時にティナ達がアードへ戻る必要が生じて、調整する時間的な余裕が無かったことを説明した。

 説明を聞いて最初に意見を述べたのは中華主席黄卓満である。

 

 

「時間的な余裕がなかったと言うが、次回来訪時に同行することも可能だったのではありませんか?」

「黄卓満主席のご意見はもっともですが、先方からの願ってもない提案に対して迅速に対応することが正解であると判断しました」

「何故ですかな?」

「お忘れなきように、彼らは我々より遥かに格上の文明なのです。そして、アード側からの初めての提案なのです。ならば速やかに遂行すべきなのでは?」

「大統領、君にはプライドが無いのかね?」

「国益、いや地球の利益に勝るプライドなど捨てましたよ。ただ、相手は圧倒的な差がありながら誠意を尽くしてくれる相手です。人類が初めて邂逅した異星人がアード人であったことに心から感謝すべきでしょう」

 

 

 

 ハリソンと黄卓満が言葉を交わす様を議場にいる各国首脳は、静かに見守りつつ様子を窺っていた。何故ならば、真っ先に食い付きそうな連邦が不気味な沈黙を保っていることである。

 合衆国と中華首脳が火花を散らし、場が落ち着いたのを見計らい今度はブリテンのチャルズ首相が日本の椎崎首相へ質問を飛ばす。

 

 

 

「マダム椎崎、使節団の件についてはある程度理解を示しましょう。アード側の都合があったのならば、仕方ないと考えます。

 しかし、使節団の人選について質問したい。大半は合衆国の異星人対策室職員なのだが、貴国だけは外交官を派遣している。

 つまり、貴国だけは交流だけでなく国際社会に先んじてアードと正式な外交関係構築を意図していると受け取られるのも無理はないのではないかな?」

「チャルズ首相にお答えします。今回の人選に関しては、私とハリソン大統領、そして異星人対策室で行っています。

 時間的な余裕がなかった事もあり、メンバーはティナちゃんと親しい人物を優先的に選ばせていただきました。人選についてお答え出来るのはそれだけです」

「ふむ、ミス・ティナと親しい人物か。それならば納得は出来るが、同時に抗議させていただきますぞ。何故ならば、彼女がもっとも長く滞在して交流しているのは合衆国と日本だけです。

 或いは、このような事態を見越して、そのように仕向けたのではありませんかな?」

 

 

 

 チャルズ首相の言葉に会場もざわつく。椎崎首相は内心溜め息を吐きながら言葉を返す。

 

 

 

「何度も申し上げていますが、彼女達相手にそのような打算を持ち込む限り決して良好な関係は構築できません。

 彼女達と接する際は政治外交を抜きにして、それこそプライベートで親しい友人と接するようにすることが関係構築の鍵なのです」

「やれやれ、貴国と言い合衆国と言いそればかりだ。どうやら両国はアード人と関係を深める極意を独占したいようだ」

 

 

 

 椎崎首相の答えに対して黄卓満主席は溜め息を漏らす。この反応も無理はない。黄卓満含めて大半の国家元首はティナと直接接したことはない。

 人間である以上自分達の知識や経験、常識を頼りとするのは当然であり、尚且つその知識や経験によって成功を収めたのだから尚更である。

 

 

 

「ともかく、次回からはしっかりと各国に情報を共有してほしいものですな。今の状況は国際協調を乱すものと判断されても仕方ありませんぞ」

「決して軽んじた訳ではありませんが、ご意見は真摯に受け止め今後に活かしたく思います。ただ、改めて各国に要請したいのはアード人、つまりティナ嬢達の安全確保を最優先にしていただきたいのです。

 これまでティナ嬢本人の人柄もあり問題にはなりませんでしたが、使節団を派遣した以上アード政府も彼女達の動向に注意を払う筈。対処を誤れば、地球全体の問題となりかねません」

「どこぞの島国が失敗したのは承知しているが、それはあくまでも当事国の責任だろう」

 

 

 

 ブリテン首相は苦々しい表情を浮かべ、中華の主席は鼻で笑う。だが、ここで椎崎首相が発言する。

 

 

 

「これまでの交流で得られた情報を分析すると、アード側は地球の政治体制を正しく認識できない可能性が非常に高いのです」

「何故ですかな?」

「彼らは統一政体を持つ惑星国家です。地球のように様々な政体が存在する状態を正しく理解できるか分かりません。彼らからすればこれまで発生した事件は、全て地球の責任であると認識している可能性があるのです」

 

 

 

 椎崎首相の言葉に場がざわめく。

 

 

 

「では、無関係な我々も失態を演じた者達と同列に扱われる可能性があるということですかな?」

 

 

 

 ここでアード問題と距離を取り中立を保っている中東の盟主が口を開く。

 

 

 

「残念ながらその通りです。最早、地球に無関係な人間は存在しないと考えてください」

 

 

 

 椎崎首相の断言に、場が静まり返る。アードとの交流は、意図せずして地球の団結を強制させる効果をもたらした。

 アード側が地球の政体を正しく認識できずどんな事柄も全て地球の意思であると判断される危険性をこの場にいる誰もが理解し、そして為政者達は頭を痛めた。

 

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