星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
リーフ姉妹の来訪を聞いた椎崎首相が地球外技術研究センターへ到着したのは、夕方に差し掛かった時間になってからである。彼女は政治家としては極めてフットワークが軽いことで有名だが、日本国首相である以上どうしても外せない案件が幾つもあった事が災いした。
特に昨日フランスで発生した事件は世界中に動揺を与え、日本でも少なからず影響が出ていたことが災いした。
それでも彼女は周囲が驚くほどの早さでこれらの案件を片付け、スケジュールに無理矢理空白時間を作り上げて地球外技術研究センターへと急いだ。
護衛その他は腹心である柳田官房長官の尽力で間に合わせてくれたので、直ぐに移動できたのも幸いした。だが、しかし。
「ああ、間に合わなかった……」
「なんだこれはぁ!?」
「やっ、ヤ◯ト!?」
「いつの間に!?」
地球外技術研究センターの広大な敷地内に鎮座するSFアニメの金字塔を見て、椎崎首相や項垂れて同行した護衛や官僚達は唖然とする。夕陽に照らされたその勇姿は日本人の魂に強い感動を叩きつけた。
だが、椎崎首相はそれよりも先とばかりに周囲を見渡しセンター長である豪徳寺雅博を見つけた。
「豪徳寺センター長!」
「これはこれは首相閣下、お久しぶりですな!」
駆け寄る椎崎首相を豪徳寺は強面な顔からは想像もできない穏やかな笑みで迎えた。
地球外技術研究センター長、豪徳寺雅博。元極道と言う異色すぎる経歴の持ち主で、アニメ好き。
本人曰くアニメに救われたと公言し、足を洗った後は裏社会の被害者の支援やアドバイザーとして率先して償いのために尽力する傍ら、科学の世界へ足を踏み入れたのだ。
渡米経験もあり、その際の交流事業で当時統合宇宙開発局に属していたジョン=ケラーと知己を得て、国籍を越えた友人となる。
強面でまさに極道然とした風体なのだが、その見た目からは想像もできないほど穏やかで面倒見が良く丁重な人物であり部下達からは『日本史上最大の経歴詐称』と言われるほど慕われている。
ただし、アニメ関係だと暴走してしまうが。
「いやはや、アードの科学技術は末恐ろしいですなぁ。こんなにも巨大な物体を数時間で作り上げてしまうのですから!」
「ん、中身は無いガワだけだよ」
豪徳寺の影からひょっこり顔を出したフィーレは相変わらず眠そうな瞳をキラキラとさせていた。
「久しぶりね、フィーレちゃん。これ、貴女が?」
「ん、取り敢えずガワだけ作って色々検証してみたかった」
「ご安心を、首相。敷地内に収まっていますし、事前に各方面に通達を出しておりますよ。それに、この辺りにはカタギは居ませんからな。混乱は起きんでしょう」
「貴方の手回しを疑うつもりはないわ、センター長。でもこれ、どうしようかしら?」
「あくまでもガワだけです、首相。私もフィーレちゃんと一緒に中身を確認しましたが、完全に空洞でしたよ!」
「この大きさで中身が空洞なんて、色々突っ込みたいわね……どうすれば良いのかしらね?」
「素直に公表されては?」
「他国からまた色々言われることになるわよ。それと、国内の一部勢力からも」
「構いますまい?実証のためとは言えフィーレちゃんは見返りを求めずに作ってくれたのです。少なくとも国民の大半は両手を上げて喜ぶでしょうなぁ。大事なのはそちらではありませんかな?」
豪徳寺の言葉に椎崎首相も笑みを浮かべる。善意を受ければ素直に嬉しくなる。それが大半の日本人が持つ感性なのだ。
「全くその通りね。この件は公表するとして、フィーレちゃん」
「実証実験が終わったらあげるよ。そのまま採用しようにも、アード基準と違うところが多いから」
「扱いに困りそうね……」
「日本人にオーパーツをプレゼントしても変なことには使わない。ティナ姉ぇがそう言ってた」
何とも無責任で無邪気な期待である。日本人にも邪心を持つ者は少なくない。まして政財界には私利私欲に忠実で私腹を肥やすことに熱心な人間も少なくないのだ。
だが、他ならぬティナの信頼だからこそ椎崎首相は笑顔になる。
「ええ、その通りよ。色々終わった後の管理は任せて。責任を持って保管させて貰うわ」
「よろしく。じゃ、早速波動砲の再現をしてみよっか」
さらっと流れた言葉に椎崎首相は激しい胃痛を感じながらも鋼の精神力で耐えた。
「ちっ、地球上で試すのは待って貰えないかしら?私はアニメを見たことはないけれど、きっと大変なことになってしまうから」
「じゃあ、試すなら宇宙かな。ガワだけじゃなくて中身も作らないとなぁ」
フィーレの呟きを聞いて真っ先に反応したのはセンター長の豪徳寺である。
「資料かき集めて来んかいぃ!!中身仕上げるどぉ!!!」
「「「うぉおおおおおーーーっっっっ!!!!!!」」」
それはまさに雄叫びであった。豪徳寺センター長の檄に職員達は意気揚々と建物へ駆け込んでいく。
「そっ、そんなに簡単に出来るの?」
「これ小さいし、取り敢えず宇宙へ出られるような機関があれば良いから、明日の朝には完成してるよ」
そう話すフィーレの側にある小さなコンテナのような形をしたクラフト装置は、今もヤ◯トに光を投射して船体の生成を続けている。
「恐ろしい速度ね。でも、月面の居留地の建設には時間が掛かってるわね?」
「あれは大規模だし、月だっけ。あの衛星にはエネルギー源のマナが少ないから」
「マナが少ない?」
「マナは生命が溢れてる自然にたくさん存在する力、地球には一杯ある」
「自然エネルギーみたいなものかしら?」
「里の皆は星の生命力って呼んでた」
「星の生命力……」
不思議な魔法を扱う源であるマナ、星の生命力とも呼ばれる呼ばれる未知のエネルギーについて椎崎首相が考えを巡らせ、そして。
「フィーレちゃん、今度はおじさんと一緒にゲッター◯ボ見ようねぇ」
「いや、広範囲を纏めて吹き飛ばすならグラ◯ティブラストだ!ここはナデ◯コをお勧めするべきです!センター長!」
「イナ◯マキックで全部解決だろうが!◯◯◯を狙え一択でしょう!」
「ばか野郎!罷り間違ってフィーレちゃんが熱血女子になったり腐っちまったらどうすんだ!ここはゲッ◯ーロボ一択だろ!」
「あんなグロいもの見せる方が問題でしょうが!」
「大丈夫、お勧めは全部見るから」
「「「てっ、天使だ!!」」」
更にセンター長達がヤバそうなものを吹き込んでいるが、考察に集中している椎崎首相は見逃してしまうのだった。