星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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日本政府の苦悩

 緊急国会は最後の最後で議場内が騒然となるハプニングに見舞われてしまったが、それ以外の情報の共有と言う点では無事に目的を果たすことが出来た。だが、最後に発生した事案について政府閣僚は頭を抱えることになる。

 

 

 

「よりによって国会の場で公然とアードを批判するなんて、なにを考えているのかしら?」

 

 

 

 会議室に閣僚達を集めて椎崎首相は頭を抱えていた。

 

 

 

「不幸中の幸いは、メディアを立ち入らせていないことでしょうか。少なくとも全世界に中継されると言う最悪の事態は免れました」

 

 

 

 緊急で招集したこともあり、今回議場にはメディア関係者を入れていない。無用な混乱を避けるためである。とは言え、この慰めの言葉は文字通り気休めにしかならないことは明白である。

 

 

 

「人の口に戸は立てられぬと言います。発言内容が国民に知られるのも時間の問題でしょうな」

「それだけならまだ良い。罷り間違ってこれが総理の発言だと誤った情報が広まれば、政権にとって大打撃ですぞ!」

「いや、政権だけの問題ではありません。間違いなく外交問題に発展します。そうなれば嬉々として中華が介入してきますぞ!」

「メディアの閉め出しは失敗だったか……」

「反政権側のメディアが事実無根の偏向報道をする可能性は非常に高いです。何せ議事録はありますが、録音データや映像がありませんからな」

「もし政権が倒れて、迫水議員の政党が多数派ともなれば悪夢です!」

「“世界融和党”だったわね」

 

 

 

 世界融和党。迫水議員が属する政党であり、近年急速に議席を増やしつつある新興政党である。その本質は椎崎首相曰く“タガの外れたロマンチスト集団”である。

 所謂リベラル政党よりもより極まった団体であり、人類皆兄弟と言う理想実現のために邁進している。ただ、その過程に関しては極めて楽観的かつ親中路線なのだが。

 また、アードを侵略者として断定している点も異質である。

 

 

 

「まさか中華からの非公式な要求を国会の場で発言するとは思いませんでした」

「あれで平和になると本気で信じているから厄介なんだよなぁ」

「公安委員長、彼らは中華のスパイではないのか?」

「残念ながら今現在一切繋がりを確認できていません」

「あそこまで露骨な親中なのにか!?」

「はい、断定は出来ませんが…」

「とは言え、内容をアード側へ知られずに済んで何よりでしたよ」

 

 

 

「手遅れよ」

 

 

 

 椎崎首相の言葉は場の空気を凍り付かせた。そして彼女は徐に携帯端末を取り出してテーブルの上に置いた。すると勝手に電源が入り。

 

 

 

『ごきげんよう、椎崎首相。国会の内容は全て把握しています』

「ごきげんよう、アリア」

 

 

 

 突如として聞き覚えのある声が流れて閣僚達が目を見開く。

 

 

 

「バカな、どうやって!?録音機の類いはないはず!」

「まさか、端末からか!?」

『ご明察。ネットワークがある限り、私は何処からでも情報を集められます。地球のセキュリティレベルは心配になるほど低いので』

 

 

 

 アリアは議員達が持っている携帯端末からあらゆる情報を収集し、更に国会でのやり取りを聞いていたのである。

 

 

 

「ティナちゃんには?」

『まだ誰にも伝えていません。内容の精査は当然として、日本国政府の立場を改めて確認したいのです』

「我が国はアードとの交流を受け入れていますし、政府としても方針を変えるつもりはないわ。私個人としても、ティナちゃんの信頼を損ねるような真似をするつもりはないわよ」

『信じます。しかしながら、私は地球人を過小評価して、ティナを傷付けてしまいました。あのような失敗は二度と繰り返しません。よって、世界融和党なる組織への速やかな対処を推奨します』

「思想の自由があるのよ、アリア。なにもしていないのに捕まえる事は出来ないわ」

 

 

 

 これが合衆国ならば話は早かった。アードを批判することが罪に問われるからである。

 

 

 

『では情報を提供します。世界融和党は密かに銃器その他の武器を大量に備蓄しています。詳細なデータを送信しますので、対処を要請します』

「なんだと!?」

「武器を備蓄している!?何故だ!?」

 

 

 

 アリアの情報を受けて皆が目を見開く。

 

 

 

『党内で交わされた音声データ及びメッセージを分析した結果、クーデター或いはアード人排除のためと推定されます』

「ありがとう、アリア。公安委員長、直ぐに裏付け捜査を開始して。裏が取れ次第対処を。状況次第では超法的処置も許可します。責任は私が取ります」

「はい!」

「皆さんも気を引き締めて。我が国でテロなんか絶対に起こさせないわよ!」

「「「はい!」」」

 

 

 

 テロ対策に政府が動き始めた頃、ティナ達は滞在先である旅館やすらぎにて長旅の疲れを癒していた。

 

 

 

「あ~……気持ちいい~……これ良いわねぇ…」

 

 

 

 フィオレは初体験となる温泉を存分に堪能していた。温かな湯に体を沈め、目一杯に伸びをする。必然的に一部が強調され、強い眼差しを向けるティナに気付く。

 

 

 

「何処見てるのよ、ティナ」

 

 

 

「なんで私の周りにはスタイル抜群の女の子が集まるのかなぁって」

 

 

 

「あんまり良いものじゃないわよ。ねぇ?フェル」

 

 

 

 フィオレはティナを後ろから抱きしめて湯船に浸かるフェルへ視線を向けた。

 

 

 

「そうですねぇ、肩が凝ったり動く時に邪魔だなぁって思うことはありますね。走ると擦れて痛いんです」

 

 

「でも羨ましいよ。私なんて平均以下なんだからさ」

 

 

 

 リーフ人はアード人より背が高い傾向にあるが、それでもティナは同年代に比べて小柄である。

 対するフェル、フィオレは同年代に比べても発育が良い。

 

 

 

「んふふっ、私のせくし~ぼでぃでティナちゃんを悩殺しちゃったかな☆」

 

 

 

「……ハッ(嘲笑)」

 

 

 

「辛辣☆」

 

 

 

「でもこのお風呂、温泉だっけ? 温かいお湯に浸かるのがこんなに気持ちいいなんて思わなかったわ」

 

 

 

「私も初めて体験した時は感動してずっと入っちゃって……のぼせちゃいました」

 

 

 

「何シレッと可愛らしいエピソード披露してるのよ、フェル」

 

 

 

「フェル姉ぇがやると嫌味がないから良い」

 

 

 

 姉に背を預け、その胸を枕にして端末(防水)を弄るフィーレ。

 

 

 

「分かるよ、フィーレ」

 

 

 

「コラ、フィーレ。折角のお風呂なんだからそれ仕舞いなさい」

 

 

 

「や」

 

 

 

「一言どころか一文字で断られてるよ?フィオレ」

 

 

 

「はぁ……しょうがないんだから」

 

 

 

「ふふっ、フィーレちゃんらしくて可愛らしいです」

 

 

 

「たまにはのんびりするのも悪くないね☆」

 

 

 

「だねぇ。フィーレがあんなの作ったからどうなるか心配だったけど、何とかなりそうで良かった。明日は合衆国へ行こう。ハリソンさん達に挨拶しないとね」

 

 

 

「「「はーい」」」

 

 

 日本政府の慌ただしさとは裏腹に、少女達(?)の穏やかな夜は過ぎていった。

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