星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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メリクリ!


陰謀(力業)

 ハリソンさん達と会った直後に発生した大爆発は皆に衝撃を与えた。方角からして市街地みたいだけど、とても心配だ。

 今すぐにでも現地へ飛び出していきたいけど、フランスでの失敗が私の脳裏に過って二の足を踏んでしまっている。

 急がないとたくさんの人が亡くなってしまう可能性もあるのに、臆病になってしまった自分が歯痒い。

 フェルに抱きしめられて迷ってる私の周りでは状況が動いていた。ハリソンさん達は、冷静に状況を把握するために動いている。

 

 

 

「ティナ、焦っては駄目だ。先ずは情報を集めて状況を把握するんだ。君の気持ちはちゃんと分かっているから」

 

 

 

 ジョンさんが優しく諭してくれた。それだけで不安が和らぐんだから不思議だよね。

 ちなみに私達三人への避難指示は出されていない。まあ、私が介入すると思って言わないのかもしれない。これまでがそうだったしね。もしかしたら頼りにされているのかもしれない。

 

 

 

『ティナ』

「アリア、なにか分かった?」

 

 

 

 ブレスレットが点滅して、周りに居たハリソンさん達も一斉にこちらを向いた。

 アリアからの情報は何よりも早いからね。

 

 

 

『報告します。発生地はワシントンプラザ、地下駐車場に停められていたトラックが爆発。周囲の自動車を巻き込み連鎖的に爆発が継続。大火災が発生し、敷地内はパニックに陥っています』

 

 

 

 トラックが爆発!?これ、偶然じゃないよね……?

 ハリソンさん達も驚いている。

 

 

 

「アリア、私から質問して構わないかな?」

『問題ありません、ハリソン大統領』

「ありがとう。現場の状況は?」

『こちらになります』

 

 

 

 空中に投影されたのは、銀河一美少女ティリスちゃん号や周辺のカメラ等の映像を瞬時に組み合わせたもので、まるで現場に居るような臨場感がある。

 燃え盛る建物、逃げ惑う大勢の人々が映し出されて、自然と手に力が入る。今すぐにでも助けに行きたい。私でも手伝えることはたくさんある。でも、フランスで勝手にやってたくさんの人に迷惑を掛けちゃったから……。

 

 

「ティナ、大丈夫ですよ」

「フェル」

 

 

 

 フェルが私の手を握って優しく微笑んでくれた。そして、黙って映像を見ていたハリソンさんが私を見た。優しげな目だ。

 

 

「迷っているみたいだね、ティナ嬢」

「また勝手に動いたらハリソンさん達に迷惑を掛けちゃいますから……」

「ふむ。私の仕事は、国民を守ること。そのために最善を尽くすことだ。だから最善を尽くすために、君の背中を押そう」

「えっ?」

 

 

 

 ハリソンさんがなにかを決意したような顔を……。

 

 

 

「合衆国大統領として、ティナ親善大使に人命救助への助力を要請する。一人でも多く救ってくれ」

 

 

 

 ハリソンさんの言葉を聞いた瞬間、色んな感情が私の中に渦巻いた。そして。

 

 

 

「ありがとうございます!フェル!」

「はい、ティナ」

 

 

 

 私はハリソンさんにお礼を言って、フェルと一緒に窓から飛び出した。目一杯翼を広げて、全力で羽ばたいて風に乗る!一秒でも早く現場へ辿り着けるように!

 

 

 

 残された一同はただハリソンへ視線を向けた。ただ一人、ティリスだけが楽しげな笑みを浮かべている。

 

 

 

「思いきったねぇ、ハリソン君。ティナちゃんを誘き出すための罠かもしれないんだよ?☆」

「無論、承知していますとも。クサーイモン=ニフーターが行方を眩ませました。直前に銃器を手に入れた可能性もあるとの情報もあります。万が一に備えてティナ嬢達を逃がす。それが最善でしょうな」

「でもティナちゃんを行かせた」

「最善手を打てばティナ嬢は間違いなく後悔し、そして重い凝りとなるでしょう。それだけは避けたい」

「ティナちゃんに拘る理由は?」

「はははっ、ティリス殿もお分かりでしょう。彼女以外、例えば貴女が交流の主役となった瞬間対等な関係による交流は二度と望めません。もちろん貴女だけではありません。

 ティナ嬢以外では例外無く地球はアードに隷属する、謂わば帝国と植民地の関係になる。アード側は善意で片っ端から地球の問題を解決するでしょう。我々の文化や事情を一切無視してね」

 

 

 

 そこに善意は関係ない、それほどの差がある。ティナの(的外れなことも多々あるが)地球に対する理解が異常なのだ。

 

 

 

「それに、フランスの件で皆さんは警戒心を増した。特にフェル嬢だ。以前に比べて警戒心が強いように感じました。今も真っ先にティナ嬢を護れる位置に立っていた。

 彼女を出し抜いてティナ嬢を傷付けることは不可能と確信していますし、クサーイモン=ニフーターにはそろそろ退場して頂きたいですからな」

「なぁんかティナちゃんを利用して、邪魔者を排除しようとしているように見えるなぁ☆」

「全ては地球とアードの為ですよ。不甲斐ないことですが、あの男を我々が捕まえるのは困難ですから」

 

 

 

 ワシントンプラザ。広い敷地内にはたくさんの建物があるけど、一番大きなデパートが燃えてる。そしてたくさんの人が逃げて、たくさんの消防車や救急車が……あっ!

 

 

「ウィリアムさん!」

「ティナ嬢!来てくれたか!」

 

 

 

 消防士さん達の中に見知った顔が居た。国際救助隊のウィリアム=バーグさんだ。よし!ウィリアムさんが居るならやり易い!

 

 

 

「よぉし皆!いつものようにやるぞ!」

「「「ウォオオオーーーッ!!」」」

 

 

 

 皆の気合いも十分!一人でも多く助けないと!

 

 

 

 

 近くにあるビルの屋上。早朝からじっと息を潜めていた男が静かに対物ライフルのスコープを覗き込む。そこには地上へ降り立ち、消防士達と簡単な打ち合わせをしている異星人の少女が映っていた。そっと照準をその翼へ定め。

 

 

 

「地球は俺達のものだ!宇宙人は出て行け!!!!」

 

 

 

 引き金が引かれ、轟音と共に大口径の銃弾が撃ち出され一直線にティナへ迫る。今まさにティナの翼を貫かんとした瞬間、フェルがティナの前へ躍り出た。金属がぶつかり合うような音が響き、彼女の足元に押し潰されて平らになった銃弾だったものが落ちる。

 フェルは一度だけ遥か遠くに居るであろうクサーイモン=ニフーターを睨み。

 

 

 

「さっ、ティナ。いきましょう。私も手伝いますから」

「うん!」

 

 

 

 ティナへ向けて笑みを浮かべ渦中へ飛び込む。

 

 

 

「くそっ!あの羽虫擬きめ!だが、次は無いぞ!」

 

 

 

 クサーイモン=ニフーターは素早く次弾を装填し、引鉄に指を添える。だが、二度と弾丸が撃ち出される事は無かった。

 振り下ろされた強靭な脚が対物ライフルを踏み砕く。粉々になった銃を見せ唖然としつつ見上げた先には、踏み砕いた張本人が立っていた。

 

 

 

「主義主張の自由はあるべきだし、彼女は君のような人間も居ることを許容した。優しい子だ。だが、君は一線を越えた。越えてしまった」

 

 

 

 ファーストコンタクターであり、ティナがもっとも信頼する地球人。

 

 

 

「もう見過ごせないぞ、クサーイモン=ニフーター」

 

 

 

 ジョン=ケラーである。

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